町家人気の背景には伝統や歴史への敬意があるようだ。でも、それだけで異国の住宅を買う気になるだろうか。考えを巡らせていると、京都大学大学院の高田光雄教授がヒントをくれた。ポイントは京町家の構造自体にあった。
■自国では味わえない住み心地
蒸し暑い京都の夏を乗り切るため「風通しを良くすることをひたすら追求した」(高田教授)建築様式。玄関から奥の間まで続く細長い通り庭(土間)や、奥に設けた坪庭など、風通しを良くする工夫が随所に設けられている。ふすまを開け放てば外部と内部の境界は消え、四季の変化を体で感じ取れる。高田さんは「夏を乗り切る手段の庭が、住居と自然の一体感を生み出した」と指摘する。
洋式住居では熱を極力外に逃がさぬように厚い壁で各部屋を区切り、家全体も覆う。自国では味わいにくい快適な住み心地が外国人を引き付ける魅力なのかもしれない。
京都市の景観・まちづくりセンターによると、市内には約4万7千カ所の町家があるとされる。小西二郎事業第三課長は「多くが明治から昭和初期までに建てられています」と教えてくれた。
古都に息づく京町家だが、相続や管理の難しさから毎年多くが失われてマンションや駐車場に姿を変えている。行政と市民が協力して保全に取り組んでも減少を止められないのが実態だ。世界に誇る町家の魅力を私たちがしっかり理解し、後世に伝えていきたい。
(京都支社 古川慶一)
[日本経済新聞大阪夕刊いまドキ関西2013年6月19日付]
フラットエージェンシー、町家
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