基本的に双方の立場の差が大き過ぎる。韓国政府は2012年、日本の民主党政権が示した「佐々江案」(日本の首相による直接謝罪、日本政府の予算による補償)にプラスアルファがなければ、国民を納得させられないとの立場だ。具体的には日本政府の謝罪表現がこれまでよりも進展していなければならず、どんな形であれ日本政府が組織的に慰安婦を強制動員したという事実が含まれなければならない。
しかし、安倍政権は「佐々江案」について、「前政権が先走ったものだ」として、受け入れられないと主張している。安倍首相が首脳会談後、日本人記者団に対し、慰安婦問題について、「未来世代に障害を残すことがあってはならない」と述べたことは、追加的な謝罪、賠償を考えていないことを遠回しに述べたものと受け止められている。
元外交官は「安倍政権に対する期待レベルは低かったため、失望した点も特にない。右翼傾向が歴代政権で最も強い安倍氏と慰安婦問題の決着を付けるという韓国政府の戦略に元々無理があった」と指摘した。韓国政府内部では慰安婦問題について、実務レベルだけでなく、閣僚レベルからも交渉余地がないという言葉が漏れる。両首脳に確固たる「信念」があるため、首脳間で解決するしかないのが現状だ。
それでも今回の首脳会談後、双方から「険悪」な言葉が出なかったのは、「慰安婦問題であらゆる韓日関係が悪化してはならない」という双方の利害が一致した結果とみられる。韓中日首脳会談と韓日首脳会談がようやく再開され、韓日関係が再び最悪の状況に逆戻りするシナリオを避けた格好だ。また、朴大統領にとっては、韓日関係の改善を強く求める米国に誠意を示す必要もあったとみられる。オバマ米大統領は先月、朴大統領が訪米した際、記者会見で「韓日は歴史的な問題を解決し、未来志向的な関係を築くべきだ」と呼びかけた。