■2年前から暖められてきた宮野真守特集案
――いやいや、村上さん。どうやら『伊福部崇のラジオのラジオ』に出演して、「俺が最多出演だ!」って自慢していたらしいじゃないですか?(笑)。
村上 そういう間違った情報を流さないでくださいよ(苦笑)。そんなわけないじゃないですか。
――『声優ラジオの時間ゴールデン』も無事発売して、ダイエットした体もリバウンドで増量中って噂も聞きましたよ。あんまり調子に乗らないでください!
村上 体重が元に戻りつつあるのは事実ですが、調子になんて乗ってないです(笑)。11月からは再び真面目にダイエットやら次の本の下準備やらに入っているので、本当にやめてください。
――まあ、この辺で関係ない話は止めておきましょう(笑)。さて、今日は10月28日に発売した『声優ラジオの時間ゴールデン』の制作秘話についてお聞きしたいと思います。今回はいつ頃から制作に動き出したんですか?
村上 これまでは前号が発売して6~8ヵ月ぐらいは売り上げを見る期間があったんですけど、おかげさまで毎号好評をいただき、それが実績になっているので、実は4月の時点でGOサインが出ていたんです。
――『声優ラジオの時間アンコール』が昨年12月発売ですから、わずか4ヵ月で次号の制作が決まったと。
村上 はい。それからオファーをしていって、最終的に10月発売になった、という感じですね。
――表紙&巻頭が宮野真守さんになったのはどんな経緯で?
村上 ちょっと極端な話になっちゃうんですけど、実は2年前に『声優ラジオの時間 NEXT SEASON』で、宮野さんと高木俊さんとの演劇ユニット・SMILY☆SPIKYを取材した時から心に決めていたんです。あの取材の時にふざけながらも高木さんが「2年後にコントライブや公録をやりたい」と話してたんですね。それが実現するとなったら、うちが取材しないわけにいかないじゃないですか。そもそもその時の思いから始まっていて。
――そんな前からアイディアはあったんですね。
村上 あれから『SMILY☆SPIKYのなまはこっうぇ!』はほぼ欠かさず聴いてきました。あとは『NEXT SEASON』後に、僕は『お笑いラジオの時間』を立ち上げたんですけど、その2冊目の『続 お笑いラジオの時間』で芸人のR藤本さんと山里亮太さんの対談を企画したんです。その取材準備として聴いた『おしゃべりやってま~す第2放送』に見事にハマってしまって。これにも宮野さんが出演していたんです。
※対談には宮野さんの名前もちょっとだけ出てきます。「藤本さん?」「ベジータだ!」ができて感動しましたよ。
――宮野さんが高橋美佳子さんや山里さん、R藤本さんと共演していた番組ですね。
村上 僕が聴き始めてから山里さんはまったく出てませんでしたけどね(苦笑)。それが去年の1月ぐらいだったかな? さらに4月からは今回取材した『RADIO SMILE』が始まって。これも初回からチェックしてたんですけど、「構成作家を入れていない」という話が出ていたので、「これは取材しなきゃ!」って強く思うようになっていたんです。
■50ページブチ抜き企画を勝手に考案
――結果的に宮野さんが出ている3番組をフォローするようになったわけですね。
村上 あとは構成作家の長田宏さんの存在も大きいですね。『NEXT SEASON』で取材した時は知らなかったんですけど、長田さんが『おしゃ2』をはじめ宮野さんの番組を担当していることを知り、イベントなどで会うたびに「宮野さんは凄いですね」なんて話してたんですよ。
――今回の巻末企画でも登場した長田さんとそんな会話をされてたんですか。
村上 長田さんとは世代も近いですし、聴いてきたラジオ、聴いているラジオも結構リンクするんですよ。だから、会えばラジオトークで盛り上がっちゃうんですけど、そういう経験もあって、余計にまた取材したいという気持ちになってました。はやる気持ちを抑えきれず、「その時は取材させてもらいます」って長田さんに言ってましたから(笑)。
――一応、強調しておくと、あくまでこの時点では“勝手”に考えていただけなんですよね?
村上 そうなんです。一部の本誌スタッフに話しただけで、勝手に自分の中で温めていただけなんですよ。最初は「3番組で50ページぐらいの企画をやってやろうか!」なんて息巻いてました(笑)。
――ただ……。
村上 SMILY☆SPIKYのイベント開催話はある意味、定番のネタみたいなもので実現してませんし、『おしゃ2』に至っては番組自体が終わってしまって(笑)。それでも企画をやりたいという気持ちが強かったので、今回みたいな形に落とし込んで実現したんです。
――そんな壮大な話だったんですか。
村上 2年前の取材後に、山里さんを何度か取材させてもらっていたんですけど、『おしゃ2』の過去回配信が始まって、宮野さんにとっても山里さんにとっても『おしゃ2』の存在ってかなり強いんじゃないかなって思うようになったんです。今回のインタビューでも話したんですけど、この番組は“エピソード0”な部分が山里さんサイドにもあるんですよ。
■宮野真守と山里亮太の共通点
――それは『お笑いラジオの時間』を作ったからこそ見えてきた部分なんでしょうね。
村上 言い回しなんかも、実際は『おしゃ2』で作られたところがあるんでしょうし、『不毛な議論』で何度も出てくるTVゲーム話も、その下地には宮野さんや長田さんが関わっているわけじゃないですか。僕は別のムック本で山里さんにファミコンの思い出話を取材した経験があるぐらいなんで、そこにも驚いたんですよ。
※2011年発売。山里さんがロングインタビューでファミコン話をしています。
――村上さんが気づかないところで、実は宮野さんの存在が凄く近くにあったと。
村上 それに、R藤本さんを『お笑いラジオの時間』で取材した直後に、『おしゃ2』の番組の中でちょっと話題になったんですけど、宮野さんが「ラジオの時間! 知ってる!」って反応してくれたのがまた嬉しかったんです。そういうことが重なっての今回の取材でした。
――実際の取材はどうでした?
村上 宮野さん自身も『ラジオの時間』を覚えてくれてましたから、本当に和やかに進みました。さっき話した山里さんとR藤本さんの対談が載った本も持っていったんですけど、宮野さんも笑いながら読んでいて(笑)。僕も嬉しくなっちゃったんで、「山里さんが今度プロレスデビューするんですよ」なんて報告もしておきました。
――プロレス記者としての情報が活きたと(笑)。
村上 これは宮野さんの取材に限らずなんですけど、やっぱりこっちがちゃんと下調べをしていって、番組をちゃんと聴いてるってことが伝わると、皆さん本当にグッと距離が縮まって、話してくれるんです。あとラジオ好き特有の「同じ番組を聴いているとすぐに仲良くなる」って現象があるじゃないですか。僕も宮野さんと同時期に『ナインティナインのオールナイトニッポン』を聴いていたんで、その話でちょっと盛り上がったりして、凄く真摯にいろんなことを話していただけました。
――先ほど話に出た山里さんのこともガッチリと聴いていたのが印象的です。
村上 記事にはしてなかったんですけど、以前山里さんに宮野さんのことを質問したことがあったので、それをぶつけてみたら、宮野さんも楽しそうに山里さんのことを振り返っていたのが印象に残ってますね。宮野さんは今、『RADIO SMILE』で「とにかくリスナーさんと向き合って、メール1通1通を大事にする」という番組作りをしているじゃないですか。実は山里さんも似たような部分があるんです。通常、深夜ラジオではスペシャルウィークになるとゲストを呼ぶものなんですけど、山里さんは年に1回、『大喜利甲子園』という企画をやっていて、その時はゲストなしでとにかくたくさんの投稿を紹介しているんです。その企画をやる際、山里さんは「ゲストはリスナーの皆さん」「リスナーがこの番組を作っている」ということを言っているんですよ。
――それって宮野さんが今回のインタビューで言っていたことに凄く近いじゃないですか。
村上 だから、宮野さんからその言葉を聞いた時に余計にジーンとしてしまって。まあ、山里さんの番組は相当にゲスな下品な番組ではあるんですけど(苦笑)、繋がっているところはちゃんとあるんだなって思いました。山里さんの話に限らず、昔の話を根掘り葉掘り聞かれるのって答えるのも大変だったと思うんですけど、1時間近くインタビューで話してくれて、本当に笑いの絶えない取材になりました。細かい部分を抜かしてはほぼ原稿に活かしたので、1万字以上の原稿になってよかったです。たぶん巻頭インタビューとして見ても、過去最長なんですよ。
――番組収録にも同席されたんですよね?
村上 写真撮影もさせていただきました。伊福部さんや長田さんの話にも通じるところなんですけど、番組の収録中や準備しているところでも、横で見ている僕らのことを楽しませようとしてくれるんです。しかも自然に。それは本当に凄いなと思いましたね。しかも、リスナーさんにもそれ以上の気持ちで接していて、本当にじっくりメールを読んでいらっしゃって。プロ意識のある方なんだなと改めて実感しました。
■早熟だけれど大器晩成
――『ラジオのラジオ』内でも話されてましたけど、宮野さんの魅力ってどんなところにあると思いますか?
村上 僕はまだライブを見たことはないですし、声優としての活躍もちゃんと追えているとは言えないので、あくまでもラジオ上での印象なんですけど、本当に今回のキャッチコピーにある「ラジオは人を笑顔にする」を体現しているような人だなって思います。
――確かにラジオの中での宮野さんっていつも笑っていて、映像がなくても笑顔なのが伝わってくるというか。
村上 でも、真面目な話をするモードになる時はガラッと雰囲気を変えるので、そこもゾクッとします。これはプロレス用語で、かつてジャンボ鶴田さんに向けて言われていたんですけど、“早熟だけれど大器晩成”という言葉があるんです。
――矛盾しているようにも聞こえるけど、要はずっと成長し続けているという意味ですよね。
村上 宮野さんってこの言葉が凄くシックリ来ると思うんですよ。子役から芸能活動をスタートさせて、それこそ『おしゃ2』初期の時点で魅力が完成されているのに、今でも「未完成」な感覚がするんです。伸びしろしかない、というか。ラジオについてもそれは当てはまることで、宮野さんならそれこそ「深夜の2時間生放送をやって、芸人さん顔負けのネタコーナーでハガキ職人を歓喜させる」なんてことも、「朝の情報番組を担当して、リスナーを爽やかな気分に導く」なんてこともできそうじゃないですか。それどころか、普通にゴールデンタイムのバラエティ番組にも出てきてもいいんじゃないかと思うぐらいで。
――宮野さんに対する村上さんの期待感がハンパないのがよくわかりました(笑)。
村上 宮野さんはインタビューの最後に「10年後で」なんて冗談で言ってましたけど、10年後には更なる高みに行っていそうな気がします。その時に宮野さんがどんなラジオをやっているのか、今から楽しみですよ。あとは高木俊さんや山里さんにそれぞれ宮野さんの話を聞くなんてこともいつかしてみたいです。ひとまず、宮野さんの曲をカラオケで練習しながら、そんな機会を待ちたいですね。
※後日更新の(2)に続く
※過去のバックナンバーについても振り返り記事がありますので、興味のある方はぜひ。どれも長いですが…。1号目については企画自体の立ち上げなどにも触れています※
『声優ラジオの時間アンコール』ができるまで
『声優ラジオの時間 NEXT SEASON』ができるまで
『声優ラジオの時間』ができるまで
