東郷隆
2015年11月3日17時13分
エスカレーターで急ぐ歩行者のために片側を空けるマナーが定着しているが、追い越しの際に体や荷物があたって転倒するケースが目立っている。東京消防庁の調べでは、搬送される人がここ数年で増加。鉄道事業者は注意を呼びかけ、メーカーも対策に乗り出した。
国内最多の1日75万人が乗車するJR新宿駅。エスカレーターの右側を次々と急ぎ足のサラリーマンらが歩いて上っていく。左側に立つ利用者は、しっかりと手すりをつかんでいた。
友人との会合で週3回ほど新宿駅を利用するという横浜市の須藤孝夫さん(78)は「できるだけ端に寄っている。荷物があたって転んだことがあるので」と話した。
東京消防庁によると、都内でエスカレーター事故で救急搬送されたけが人は増えている。2012年は前年より93人多い1289人で、13年は1380人、14年は1443人にのぼった。年齢別では65歳以上が58%で、5歳未満が4%だった。重傷は16人いた。
歩行中の事故では「後ろから来た男性と接触して転び、右手や右ひざに軽いけが」(2月、52歳女性)、「上りエスカレーターを飲酒後に上り、バランスを崩して後ろ向きに約30段転落して重傷」(6月、66歳男性)などがあった。
東京都身体障害者団体連合会(都身連)には、追い越しされた際に白杖(はくじょう)を蹴られたという視覚障害者の相談もある。
脳梗塞(こうそく)で左半身にまひが残る立川市の杉田陽子さん(68)は右側の手すりにつかまりたいが、慣習に従って左に並ぶ。体の前で右手をクロスして手すりをつかむ。「右側に立って、じゃまと怒鳴られたことがあった。バランスは取りにくいが仕方ない」
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朝日新聞社会部
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