旭化成建材、データ改ざん常態化か 300件に疑い 関与10人以上
旭化成建材(東京)がくい打ち工事をした物件にデータの改ざんが相次いで見つかっている問題で、同社が過去約10年間で実施した工事3040件のうち、約1割の300件前後で改ざんされた疑いがあることが、関係者への取材で2日、分かった。10人以上が関与したとみられ、不正が横行していた可能性がある。同社と親会社の旭化成は同日、会見し、発端となった横浜のマンションの担当者が関わった43件のうち、19件で改ざんを確認したと公表した。
ここまでの社内調査で大きな数字が浮上した。くい打ち工事3040件中、データが改ざんされた疑いがあるのは実に300件。10人以上が関与したとみられる。残りの他の物件も精査しており、関与者数は増える見通しという。
現時点では、横浜市のマンション以外で建物が傾くといった異常が見つかったとの報告はないとされるが、不正が社内で常態化していた可能性もある。
旭化成がこの日、3040件の調査状況を説明するとして開いた会見では、「調査中」として、こうした数字は明らかにされなかった。データ改ざん関与者も、複数いるとはしたものの、人数は非公表。ただ、平居正仁・旭化成副社長は「会社ぐるみ」との指摘について、「多くがそういうことをしてしまう環境にあった」と認めた。「チェック体制にも問題があった」という。
国土交通省への説明期限が13日に迫るが、平居氏は「間に合うか分からない。すべてを明らかにするには数年かかる」とした。また「くい打ちのミスを隠すためのデータ流用ではないと思われる」などと、現場責任者らの“悪意”を否定する発言を繰り返した。
この日5時すぎ、国交省は不正が相次いで発覚していることを重視し、建設業法に基づき旭化成建材の異例の立ち入り検査に入った。組織としての施工管理やチェック体制、法令順守に問題があったとみて調査した。
◆横浜市マンション担当者さらに18件で不正
発端となった横浜市のマンション傾斜問題で、くい打ち工事の担当者男性が関わった、ほかの18件で不正をしていたことが会見で明らかにされた。
関わったのは9都県41件とされていたが、新たに愛知県内で2件判明し、全部で43件。うち、データ流用などがあった物件は横浜のマンションを含めると19件。打たれたくいは計3662本で、その約5%にあたる179本で不正が行われていた。
男性には弁護士や調査委員会が繰り返しヒアリングを行っている。男性は一貫して「データの流用は間違いないが、検査はしており、電流計が跳ねなかったのは1本もなかった」と話しているという。くいが、地下の強固な支持層に到達すると電流計に波形反応がある。