「特攻拒否」中1が劇 鹿児島 地元の逸話ネットで見つけ [鹿児島県]
太平洋戦争末期に特攻命令を拒否した航空部隊を、鹿児島県曽於市の末吉中1年4組の生徒たちが演劇に仕立て、30日の文化祭で披露した。担任も生徒も知らなかった地元の逸話。取り上げたきっかけは部隊を特集した静岡新聞(静岡市)の連載記事で、インターネットのニュースサイトが橋渡しの役割を果たした。
劇の題材は、静岡県焼津市で発足し、曽於市にあった岩川基地に展開していた「芙蓉(ふよう)部隊」。指揮官の美濃部正少佐は部下の命を無駄にしないために特攻命令を拒否し、効率的な夜間攻撃に徹して戦果を挙げた。
記事は8月にニュースサイト「ヤフーニュース」に配信され、劇の題材を探していた担任の堀之内勝幸教諭(44)の目に留まった。「生きて国を守る手段を選び、『二度とばかな戦争を繰り返すな』と遺言した美濃部少佐の思いを生徒に学んでもらいたかった」
許可を得て記事から少佐の発言などを引用し、取材した記者に監修してもらいながら台本を作った。生徒には演技指導よりも、記事や台本を読み込んでもらうことを重視したという。
劇は、元隊員がひ孫に当時を語り聞かせる場面や回想を中心に描き、少佐が上官の特攻命令に逆らうシーンも。生徒は緊張の面持ちで、時折声を詰まらせ、感情を込めて懸命に演じた。
少佐役の野村陸人さん(13)は「記事で感じた部下思いの部分が伝わるよう心掛けた。実際に演じて、国のために死ぬことが素晴らしいと教えられた時代に、自分で正しいと思う意志を貫いたのはすごいと実感した」と話した。
=2015/10/31付 西日本新聞夕刊=