【ニューヨーク=高橋里奈】軍縮問題を扱う国連総会第1委員会は2日、日本が提出した核兵器廃絶決議を賛成多数で採択した。同様の決議案提出は22年連続だが、初めて世界の指導者らに被爆地訪問を促すことを盛り込んだ。中国と北朝鮮、ロシアの3カ国は反対した。中国代表は「広島・長崎の悲劇は日本が始めた侵略戦争の必然的な結果だ」と主張、再び歴史問題を持ち出し対日批判を繰り返した。
決議は賛成156票で可決した。韓国や米英仏、イランなど17カ国は棄権した。共同提案国は107カ国だった。昨年共同提案した米英は、核兵器の非人道性を訴える非保有国に態度を硬化させ棄権に回った。
第2次大戦の終結と原爆投下から70年を迎えたことを機に、世界の指導者らに被爆地訪問を訴える同様の文言は、4月末から5月の核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書案に盛り込むはずだった。だが中国の強硬な反発で削除された経緯がある。
中国の傳聡軍縮大使は2日の委員会で「旧日本軍の化学・生物兵器の使用などにより中国で3500万人が犠牲になった」と強調、「広島・長崎だけに注目するのか」と反発した。国連教育科学文化機関(ユネスコ)が「南京大虐殺」に関する資料を世界記憶遺産に登録したことに対し「日本は分担金を停止すると脅した」として、「露骨な偽善でありダブルスタンダードだ」と訴えた。
日本の佐野利男軍縮大使は記者団に対し中国の主張は「きわめて遺憾」と述べ、「国際社会の圧倒的多数が決議を評価している」と語った。
オーストリアが提出した核兵器の禁止や廃絶に向けた法的枠組みへの努力を誓う決議も128カ国の賛成で採択されたが、被爆国だが米国の「核の傘下」にある日本は棄権に回った。
中国、原爆投下、核廃絶決議