町田徹「ニュースの深層」
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日銀は日本経済復活の兆しに水を差すつもりか? 「黒田バズーカ」見送りがもたらす負のインパクト

2015年11月03日(火) 町田 徹
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【PHOTO】gettyimages

予防注射を打たないようなもの

日銀は先週(30日)の金融政策決定会合で、追加の金融緩和を見送った。追加緩和への期待がにわかに盛り上がっていたにもかかわらず、市場に肩透かしを食わせたのだ。

日銀を取り巻く環境を見れば、首相官邸が早くも来夏の参議院選を最優先するモードに突入し、外国為替は1ドル=120円台の円安が続いている。日銀としては、これ以上円安に振れてはマズイとの政治的判断が働いたものとみられる。

目先のことだけを考えれば、この決断は、輸入物価が高騰して、昨今の生鮮食品の値上がりに拍車がかかる懸念が薄れる可能性があり、われわれ庶民にとってはありがたいものかもしれない。

しかし、今回の「黒田バズーカ第3弾」の先送りは、インフレターゲット達成の先延ばしだけでなく、中国バブルの崩壊に伴う輸出減少が、好調な企業業績の足を引っ張る懸念を放置したことに他ならない。来春以降、ようやく一部に明るさが見えていた賃上げのペースを、鈍らせる懸念もある。 

予防注射があるのに、蔓延確実なインフルエンザの対策を打たないような、そんなリスクのある判断を、日銀が下したと言わざるを得ない状況なのである。

くすぶり続けていた日銀の追加金融緩和がにわかに現実味を帯びたのは、先々週木曜日(22日)のことだ。欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が記者会見で、「12月(3日)の理事会で、緩和度合いを精査する」と表明し、追加金融緩和に踏み切る構えをみせたのがきっかけだ。

翌23日、中国人民銀行が預貸の基準金利と預金準備率をセットで引き下げた。リーマン・ショック以来の措置で、中国経済の崩壊に対する危機感の強さを浮き彫りにした。ユーロや元に対し、円が買われる可能性が高まったわけだ。

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