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【スポーツ】

<首都スポ>アルティメット 王者は「究極」のサラリーマン軍団

2015年11月3日 紙面から

仕事をこなしながら「究極」を追い求める文化シヤッターバズ・バレッツのメンバー

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◆全日本17連覇「文化シヤッターバズ・バレッツ」

 高く、遠くへと放たれたフライングディスクが地面に落ちる前にキャッチする。米国発祥の「究極」という名のつく「アルティメット」は投げる、走る、跳ぶ。さまざまな要素が求められる競技だ。日本ではまだなじみは薄いが、実は1999年から今年に至るまで、全日本選手権17連覇という前人未到の大偉業を成し遂げているチームがある。日本で唯一の企業チームとして活動する文化シヤッターバズ・バレッツ。平日は営業マンとして取引先を走り回り、土日は河川敷でフライングディスクを追いかけ、広いコートを駆け抜ける。マイナー競技と侮るなかれ。まさに「究極」を追い求める日本最強軍団がここにある。 (フリーライター・田中夕子)

◆今夏のMVP 猪俣祐太

 鮮やかな青のユニホーム姿で、手に握るのはフライングディスク、ではなく携帯電話。前人未到の17連覇を達成した最強チームの選手とはいえ、プロではなくサラリーマン。貴重な全体練習を行う土日の練習中も例外ではない。「シャッターが開かない」という取引先からの連絡に、四苦八苦する選手の姿を見ながら、全体の練習が進む。それが「究極」の名がつく競技で、日本の最高峰に立つ選手たちの現実だ。

 チームに属する19人の選手は大学からアルティメットを始めた選手ばかりで、それまでは野球やバレーボールなど競技経験もさまざま。競技歴わずか5年、今夏の全日本選手権でMVPに輝いた猪俣祐太(24)=日体大卒=は高校までサッカーのゴールキーパーだった。たまたま同級生の姉がアルティメットの選手でもあったことから、最初は付き合い程度に始めた。だが、風に左右されるフライングディスクの独特の浮遊感や、さまざまな駆け引きを擁する競技に魅了され、気付けばすっかり夢中になっていたと言う。

 「経験を重ねるほど得られるすごさがあるし、どこまででも追及できる。それが何よりの魅力です」

◆「レジェンド」吉川洋平

 猪俣にとって「憧れの存在」というのが、日本のフライングディスク界では「レジェンド」と称される吉川洋平(39)=日体大卒。抜群の運動神経で、中学生のころからバレーボール部でセッターを務めたが、強豪校特有の、時に理不尽に感じられるような厳しさになじめず、高校のバレーボール部は1年で退部した。

 その後は別の部活動に属することなく、アメリカンフットボールのクラブチームでプレーし、大学でアルティメットの存在を知った。最初は「アメフットに似ている」という程度の軽い気持ちだったが、すぐさま才能が開花。大学4年時には全日本選手権を制し、日本代表にも選出された。

 「チームは17連覇だけど、(自分は)その前年から優勝したから、個人的には18連覇中。だから、チームの中で偉そうに威張っていられるんです(笑)」

 最初は文化シヤッターの社員としてバズ・バレッツに入部した。8年目を迎えた2006年、大阪で開催された世界クラブ選手権で日本勢として初優勝を遂げた際、「別の道も歩んでみたい」と社業を離れた。現在は強化選手としてバズ・バレッツで活動しながら、平日は特別支援学校の教師として教壇に立つ。日本代表選手の選考にも携わる立場となり、来年になれば40歳。当然ながら「辞め時」を考えることもある。

 「自分がレシーバーとしてディスクをキャッチできなくなったら終わりかな。でもアメリカの選手を相手にしても、全然戦える。だから、まだ行ける、そう思ううちはまだ辞められない。ずっとトップでプレーしたいし、アルティメットという競技を、もっとメジャーにしたいですよね」

◆代表&エース 松野政宏

 多くの人にこの競技を知ってほしい。そう願うのはチームのエースであり、日本代表としても活躍する松野政宏(32)=大体大卒、も同じだ。高校時代は野球部に属し、ポジションは外野手。落下点に入る、という点ではアルティメットと共通するが、ボールとディスク。飛んでくるものは違えば、動きも大きく変わる。

 「野球では落下点は1つしかないんです。でもディスクは風の影響をもろに受けるので、『この辺かな』と予測して動いても、浮いたり、伸びたり。簡単には読めないところが、ものすごく楽しいんです」

 今年1月に結婚した。妻の明奈さん(29)も13年にコロンビアで開催されたワールドゲームズの、ミックス(男女混合)部門で日本代表として出場した元選手。平日は仕事に明け暮れ、週末は練習や試合に明け暮れる生活の理解者でもある。年齢を重ね、会社での仕事は増える一方だが、サポートを続けてくれる会社に恩返しをしたい、という気持ちも人一倍強い。

 「自分が成長させてもらったように、これからの選手や世代に向けて、いい環境をつくってあげたい。そのために、まずは全日本選手権で20連覇して、ギネスに申請したいですね(笑)」

 大きな夢と野望を胸に。最強のサラリーマン軍団は、未来に向けて戦い続ける。

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 首都圏のアスリートを全力で応援する「首都スポ」面がトーチュウに誕生。連日、最終面で展開中

 

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