インタビューを終え、帰り支度をしていると、イ・ヨンエが「食事をしていって」と声を掛けてくれ、イ・ヨンエ宅の近所にある飲食店に行った。おかずにイシモチが出されると、イ・ヨンエは「わが家では私が魚係」と言って皿を取り、一つ一つ骨を取ってくれた。「子どもたちに食べさせるとき、小さな骨でもあったら大変ではないですか。だからこれだけは、夫やおばには任せず、自分でやります」。そう言って、イ・ヨンエは皆のご飯の上に魚の身をのせてくれた。その姿を見て、こう尋ねた。
-家でインタビューを受けるとおっしゃったので意外でした。人見知りだと思っていたので。
「そうです。以前は誰かが家に来るというと、驚いたりしました。『なんでうちに来るの?』と。記者の皆さんと食事をするなど、考えたこともありません。ですが、私も変わりました。最近、わが家の門はいつも開いています。週末には夫と手をつないで市場に出掛けたり、多くの人たちの中でホットク(お焼き)を食べることもあります。最近のわが家の家訓は『これ以上何を望むのか』です。ほかに何を望むでしょうか。今こうして幸せなのに。私も今は、この変化をのんびり楽しみたいと思います」
そう言って、イ・ヨンエは笑顔を浮かべた。いつの間にか、辺りは薄暗い夕方になっていた。