今回のような光景が見られた背景には、柳仲逸監督の思いがあった。サムスンは2011年のアジアシリーズで日本のソフトバンクを破って優勝したが、柳監督はそのとき、優勝セレモニーを最後まで見守りサムスン選手たちに拍手を送ったソフトバンク選手たちの態度に感銘を受けたという。柳監督は「同じような立場になったら、必ず同じようにやろう」と考えていたという。
世界最高のプロサッカーリーグとされるイングランド・プレミアリーグでは、優勝チームが決まると、次の試合の相手選手たちは試合前、通路の左右に並んで優勝チームの選手たちに拍手を送る。普段は試合中はもちろん、試合が行われない日常でも激しいやりとりを行う相手だが、この日だけは優勝チームをたたえるわけだ。プレミアリーグだけではない。海外の主なサッカーリーグではどこもこのような光景が定着している。
これまで韓国のスポーツ界は、韓国社会にまん延する1位至上主義をそのまま反映していた。2位というのは決して誇るべきものとは考えられていなかったのだ。しかし今回勝者をたたえるサムスンの選手たちを通じ、ファンたちは「美しい敗北」が存在することも知った。われわれも今後のプロ野球の伝統として残したい一つの光景を目にすることができた。