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NPO団体 ポラリスプロジェクト 藤原氏

September 7, 2011Executive

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今回は、NPO団体ポラリスプロジェクトの代表、藤原さんにお話をお聞きします。

ポラリスプロジェクトは、人が人を支配する「人身売買」の撲滅にむけて活動しています。「ヒューマントラフィッキング」と聞けばまるで他の国の事の様に思えますが、日本でも様々な問題が起こっています。

まずは、身の回りで何がおこっているのか、現状を知ってほしいという藤原さん。インタビューをお読み頂き、一人でも多くの方の関心を頂けたら幸いです。

 

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ポラリスプロジェクトはアメリカのワシントンDCに本部を置く非営利団体です。世界的に行われている人身取引(人身売買)や関係する取引の撲滅をめざしています。実際に被害者の救済や支援から始まり、現場での経験を活かしながら、最終的にはより良い政策を打ち出していく為に様々な活動を行っています。

 

人身取引(ヒューマントラフィッキング)日本での現状をお聞かせ下さい。

人身取引は、世界第二の犯罪産業で、同時に最も急速に拡大している産業です。1200万人が今現在この犯罪の被害にあっているといわれています(ILO)。日本は「最低限の取り組みがなされていない」と、米国政府の報告書で七年連続指摘されています。公式訪問で日本を選び来日した国連の人身取引特別報告書は、昨年日本に対して様々な課題と提言を盛り込んだ報告書を国連で発表しました。

人身取引といっても内容は様々で、日本では主に3つの大きな問題にわける事ができます。①性的目的の人身取引②児童ポルノ③違法労働目的の人身取引などがあげられます。

まずは、性的目的の人身取引です。この件では外国からの女性達へ対する支援が多いです。被害者の国籍は様々です。例えばフィリピン、韓国、ルーマニア、ロシア、コロンビアなどから女性からのSOSに応えています。オーストラリアや米国からの被害も当団体には届けられています。電話のホットラインで被害者を知る人から連絡が寄せられるケースと、地域住人の方の通報から問題が発覚するケースがあります。

すぐに警察に持っていくのではなく、同じ女性である私達が心のケアをしながら意思疎通を図り、本当の状況や背景にある事情を突き止める事で、警察にも調べやすい環境を創っています。

多くのケースで立ちはだかる壁は、持って産まれた人権を忘れてしまう程加害者からの支配が大きすぎる事、それによる精神的ダメージや異常なまでの自責の念、もしくは逆に問題の意識の低さもあげられます。

「日本でウェイターをするという話で来日したのにパスポートをとられて性風俗で働かされている」「自国では一ヶ月数千円の給料だが、日本で何万円も貰えるだけ良いだろう」「給料を契約期間の最後に払ってもらうという約束だから逃げ出さない」様々なケースで問題が表面化せず留まり続けているというスパイラルがあります。

そんな状況で苦しんでいる女性達を、各国出身のポラリスのスタッフが電話相談等を通じて、 もっと安心安全な人生をとアドバイスしています。傷つき疲れきった心で、通常の考え方を忘れてしまった人達もいます。それは間違いだと気づかせるお手伝いをしています。これは民間団体だからこそできる強みです。警察では難しい事です。

実は私たちは警察よりも有力な情報を持っている事があります。NPOだからこそ被害者の心の奥まで入っていける、また被害者のSOSのサインを見過ごさない事ができます。

警察や入国管理局は、職業柄「捕まえる事」を前提にして活動しますので逮捕後に取り調べが始まる訳です。でも被害者の女性達も「売春をさせられている」「不法就労」「違法滞在」その上に「逮捕された」という状況では本音を打ち明ける事が難しいのは言うまでもありません。私たちが一度その前に彼女の話を聞きだすことで、警察と良い連携活動を実現させています。警察も熱心な方ばかりですし、最近は以前よりもNPOや他団体との協力に深い理解を示す様になったと思います。

また私達は、警察や入国管理局や行政関係者への研修も行っています。

 

②、性的な人身取引に関連し、日本には児童ポルノ市場が非常に大きなマーケットとして現在も拡大しています。被害者は10代の子供で、これは本当に深刻な問題です。ビデオやDVDに写る映像は目を覆いたくなる様な、信じられない内容ばかりです。データは無制限に複製され、小学生、中学生が被害になった内容の物に対する需要の高さには驚くばかりです。

児童ポルノのケースに関しても、積極的に撲滅へ向けて活動をしていますが、多感な時期に周りの心ない大人に傷つけられた心をケアする事はとても大変な事です。

性産業はGDPの数パーセントにものぼるといわれます。

日本ではここまで性産業が細分化されている、ソープランドからヘルスやイメクラまで、また無店舗型、店舗型、派遣型、等様々な形が存在しています。しかしながら法の規制がきかない部分も多く、違法な風俗店が多くあります。買春者同士の変な結託でいかがわしい店へ行き、性を買う。それを配偶者や恋人も片目をつぶって見ている、 性を売買する文化がかなり寛容されているそんな日本。売買春は被害者のいない犯罪と呼ばれることがありますが、ポラリスを通して会う当事者は事情で仕方なく従事していたり、意に反して働かされているケースがほとんどです。

買春者の意識改革を切に願うと共に、被害者自身にも意識改革を促し、性的にも精神的にも肉体的にも暴力を受けた女性が、立ち直り素晴らしい人生を送れるよう活動を続けています。

 

③、違法労働目的の人身取引労働についてですが、日本は中国やフィリピンからの被害者を多く抱えています。インターン(研修生)という名目で日本にやってきて、農場や工場で時給あたり200~300円で雇っているケースがあります。

研修生には、労働者ではないので労働法などが適用されず最低賃金なども守られないような事態が横行していました。近年の国際的な批判のもと改善はされていますが、全てがそうではないのです。実際に、過労死、脳の病気や心臓疾患に至るケースが発生し、一年間で20~30人が死亡している事が大きく報道されました(2008年)

アメリカの国務省や国連から「日本の研修生制度は人身取引と同様である」とはっきり言われているのです。

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ポラリスプロジェクトでは、去年は34名の女性を救いました。他の団体や大使館もケースに応じて活躍しています。

しかし警察庁が認定している被害者は日本で17人だけなのです! そんなに少数な訳がありません。私たちの見積もっている数は54,000人です。官民関係なく、明るみに出てこない問題を解決する必要がありますし、その為には民間企業の力も必要不可欠なのです。

 

立ち上げ当時のお話をお聞かせ下さい。

2002年に米国ブラウン大学を卒業したばかりの二人の若者によって立ち上げられました。きっかけは、大学のすぐ近くの閑静な住宅街で韓国の女性が人身取引をされたというニュースでした。韓国から借金という名目で連れてこられた人達でした。体中には痣があり、マンションの一室で売春を強要させられたという現実に創設者達はショックをうけました。

アメリカでも当時法律は名ばかりで、徹底はされていませんでした。

メディアは「メキシコ人達が違法にトマト農場で働かされている」と言う様なニュースを取り上げるのですが、誰もこれを「ヒューマントラフィッキング」として捉えていない時代でした。しかし世界的な流れで今よりも拡大されるだろうという声が除々に高まりつつありました。

マンションの一室の拠点にボランティアをしに行った事がきっかけでした。当初は数人でのスタートでしたが、相談電話の開設やPRカードを配ったり、韓国語、英語、スペイン語、等の他言語でのサービスのPRも功を奏して、確実に相談が入る様になりました。

警察も私たちの重要性をすぐに理解し協力的でした。ポラリスと警察と福祉機関が一緒になって被害者を認定し、 被害者の後ろにある大きな人身取引組織を割り出すという「DCモデル」を確立したのも私達です。

 

ポラリス日本支部の立ち上げで苦労された事は?

まず資金不足の問題がありました。日本支部設立当初は、米国の国務省から2年間の補助がありました。それからは一人で企業訪問をし、意識の共有や寄付金のお願いをしました。米国商工会議所にもお世話になりました。

日本人の問題意識の薄さを解決していくのも苦労の一つです。それはこれからも被害者支援の傍ら問題を伝えていく事を行っていく必要があります。それに関しては、イベントやメディアを使って問題意識を高めています。

CNNが人身取引問題を啓発するフリーダムプロジェクトを行っていたり、MTVは5年以上に渡り人身取引問題の啓発に力をいれています。 ボディショップは3年に渡りSTOP人身取引キャンペーンに注力し、毎月のイベント会場を提供してくれています。意識改革のハンドブックの配布や全国の店員も話をできる様に社員教育を徹底されています。

 

団体内の雰囲気についてお聞かせ下さい。

日本支所では多くの国際的なマインドを持つ方々のサポートによって成り立っています。日本は女性が多いですが、アメリカは理事長から男性です。サポーターがポラリスプロジェクトに参加されたきっかけはそれぞれですが、「海外の難民問題や人権抑圧問題をきっかけに」「身近な存在が性犯罪にあった事がある」というキャリアウーマン、学生、弁護士志望の方、等が活躍しています。

「日本の社会は平和に見えるけど、無視している物がとても多いよね」という考えの方が多いですね。

 

私たちは何をすればいいのでしょうか?

まず、ポラリスのFacebookかツイッターをフォローしてください。世界の時事ニュースの裏に隠された人身取引の現状を噛み砕いてお伝えしています。最近では某大手アパレルブランドが人身取引をしていたという衝撃のニュースがありました。労働者をとじこめて過酷な労働を強いていたとの事です。

また、人間として消費者としての社会的責任を考えられる人がもっと増える事を望んでいます。このシャツが作られた背景には何があったのか、性風俗を利用する人に対しては、社会にどんな影響を与えているのかを少し考え、責任をもって行動する事を啓発していきたいです。

まずは知る事から。セミナーを東京大学や米国大使館で行いますので是非参加してください。

 

求職中の方へのメッセージ。

PR活動と資金調達活動の両方を担当して頂きますので非常にやりがいがあります。人と話す事が好きな人は大歓迎です。

様々な団体や企業に向けて、この問題定義と少しのサポートで事態が変えられるという事を伝えてください。

またイベントやメディアへのアプローチを通じて、広報活動を自由に仕掛ける事が可能です。私たちには寄付で集まったお金しかないのです。そのお金で女性を救い、病院へ連れて行き、シェルターで保護する事ができます。今の所、行政から資金はもらえていません。活動の糧である寄付金とファンを増やす事、そして共に伝えていきましょう。

明るい方のご応募をお待ちしています。

 

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