【ソウル=原田逸策】2日の日韓首脳会談で、朴槿恵大統領は韓国の環太平洋経済連携協定(TPP)への参加を巡り、日本の協力に期待を示した。日本は韓国のTPP参加を表向き歓迎するが、引きかえに日本製の自動車などに韓国がかける関税の撤廃を勝ち取り、韓国市場での失地を回復する戦略も温める。
韓国がTPPに加わるには、日本や米国など参加12カ国すべての了解が要る。朴氏が言及した「協力」とは日本政府による「すみやかな了解」とみられる。「高いレベルのTPPをアジアに広げていく」(安倍晋三首相)ために韓国の取り込みは欠かせず、日本はTPPへの韓国合流にも前向きだ。
ただ、日本もTPP参加前に米国に市場開放を約束させられた。日本のあるTPP担当交渉官は「参加了承には韓国が日本の工業製品にかける関税をなくす約束が要る」と指摘する。韓国は日本製の自動車(8%)や化学製品(6.5%程度)に関税をかける。
日本はTPPで水産物の関税をなくしたが、ノリなど海藻類だけは維持した。ノリを生産する韓国のTPP参加を見越して、関税交渉で取引するカードとして使えるように温存したとされる。
韓国の輸入車市場は拡大が続くが、日本車はドイツ車に押されてシェア低下が続く。韓国と欧州の自由貿易協定(FTA)が発効し、欧州車の関税が一部なくなったことも要因だ。日本との自動車部品の貿易では近年は韓国側が黒字だ。
12カ国によるTPPは域内である程度つくった製品は関税がなくなるため、TPPに参加すれば海外展開を急ぐ韓国製造業が恩恵を得やすい。韓国が結んできた2国間FTAにはない利点だ。TPPに参加するメキシコに現代自動車グループは新工場を建設中だが、韓国はメキシコとFTAを結んでいない。
韓国経済界にはTPP参加への慎重論もある。大韓商工会議所の朴容晩(パク・ヨンマン)会長は「自動車市場は日本から無差別攻撃を受けかねない」と警戒感をにじませる。
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