kafranbel-aug2011.jpgシリア緊急募金、およびそのための情報源
UNHCR (国連難民高等弁務官事務所)
WFP (国連・世界食糧計画)
MSF (国境なき医師団)
認定NPO法人 難民支援協会

……ほか、sskjzさん作成の「まとめ」も参照

お読みください:
「なぜ、イスラム教徒は、イスラム過激派のテロを非難しないのか」という問いは、なぜ「差別」なのか。(2014年12月)

「陰謀論」と、「陰謀」について。そして人が死傷させられていることへのシニシズムについて。(2014年11月)

◆知らない人に気軽に話しかけることのできる場で、知らない人から話しかけられたときに応答することをやめました。また、知らない人から話しかけられているかもしれない場所をチェックすることもやめました。あなたの主張は、私を巻き込まずに、あなたがやってください。

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2015年11月02日

「非合法レイヴ」のあの時代〜映画『リフ・ラフ』(ケン・ローチ監督)

1つ前に、今年のハロウィンでの「非合法レイヴ illegal rave」関連のことを書いた。ロンドンのランベス地区で「ハロウィン(ハロウィーン)」(今年はたまたま土曜日だった)に行なわれた「無許可(非合法)の音楽イベント」に来た人々が、警官が封鎖していたため会場に入れず、怒って暴れて警官隊と衝突した件だ。衝突した群集は1000人ほどで、封鎖の時点で会場内には既に500人が入っていたといい、場内から聞こえてくる音楽(近隣の住宅の住民はもちろん、帰宅途中現場に居合わせたというジャーナリストの実況ツイートにも「現場から音楽が聞こえてくる」とは書かれていなかったが)でますます「なぜ私たちは入れないのか」というフラストレーションが募り、何かをきっかけに「暴動」と言われるような状態になった。取材のため訪れていたコラムニストは、そのきっかけは「警察がレイヴに来た女性を殴ったこと」だったと指摘している

が、この事態についてすべて「警察が悪い」と言ってよいのかどうか、私にはわからない。何か、雰囲気が「違う」ような気がするのだ。むろん、(アメリカ流の)ハロウィンの「おどろおどろしい」イメージを全面に出した企画なのだから、あんまり「ハッピー」な感じがしないのかもしれない。でも、それだけなんだろうか……という疑問点はきっと解決することはないだろうけれど、31日の夜から1日の朝にかけてのランベスでの騒動についての報告の記録には、先ほど、加筆した。

さて。そんなこんなでまた表に出てきている「非合法レイヴ illegal rave」だが、ウィキペディアには "free party" としてエントリーされている。元々は、空き倉庫などにゲリラ的に機材を運び込んで、入場料をほとんど取らずに行なう非商業的なアティテュードのクラブ・イヴェントだった。「アシッド・ハウス」以降イングランドではごく一般的で、開催の告知は大手メディア(NMEなど)の告知欄ではなく人から人へと口コミで伝えられた。当時の記録映像も、今は検索するだけで見ることができる。例えば下記のようなものが。



こういう形のパーティは、1980年代末から90年代前半に盛り上がった。英国ではサッチャー政権の時代が「人頭税(ポール・タックス)」構想で終わり、反保守党の人たちが盛り上がったにも関わらず1992年の総選挙でジョン・メイジャーの保守党政権が続くことになったという時期だ。サッチャリズムの過激な「改革」は、大勢の人々をおいてけぼりにして進められ、「富裕層のための住宅」の現場の人々が明日食うにも困っているという状態が当たり前のものとなっていた。ロンドンの多くの通り(ピカディリーとかシャフツベリー・アヴェニューのような目抜き通りを含む)の建物の軒先には、家のない人たち(ホームレス)が寝袋や毛布に包まっていた。私を含め学校でしか英語を習ったことのない多くの日本語話者が、"change" には「小銭」の意味があるということをリアルに知らされたのは、そういった人々がダンボールに書いて弱々しく掲げていた "Spare some change please" という言葉によってだった。

その時代のロンドンの「最下層」のドラマが、ケン・ローチ監督の映画、『リフ・ラフ』だ(楽天SHOWTIMEで200円+税で2日間のレンタルができるのでそこにリンクしてある)

映画の冒頭、クレジットが流れる中、1990年ごろのロンドンの街が映し出される。


※この映画、音楽がスチュワート・コープランド(The Policeのドラマーで、映画音楽家)なんだ。


※これが「ロンドンで当たり前の光景」だったと言っても信じない人のほうが、今は多いかもしれないが、本当にこうだった。もう手元にないが、当時の『地球の歩き方』にも「ロンドンといえば、そこらじゅうにホームレスがいる」ということが書かれていた。そのころの東京ではまだ「ホームレス」という言葉も定着しきってなかったかもしれない。

オープニング・クレジットのあと、映画は「スティーヴン(スティーヴ)」と呼ばれる/名乗る男(ロバート・カーライル)を中心に進む。革製品の店の前で寝袋に包まっていた彼は、もう使われなくなった病院(赤レンガの、ヴィクトリアンの建築)を高級フラット(マンション)として改装する工事現場で日雇いの作業員として働き始める。

この現場には、大都市ロンドンに仕事を求めてきた別の都市の人たちや、地元ロンドンの人たちが集まっている。黒人もいればエイジアン(南アジア人)もいるし、やたらと口汚いロンドナーもいる。ドレッドヘアの人もいれば、鋲(スタッド)がいっぱいついたいかにものベルトをしてる人もいる。多くは「ワケあり」だろう。スティーヴも深刻なワケありだ。

作業員たちはそれぞれ「人間」として描かれ(この人たちの「訛り accent」の多様さといったら!)、あれこれ笑えるシーンを織り込みつつ(当時「最先端の男」の持ち物だったある物のシーンが、ローレル&ハーディかというくらいベタなコメディ)、ケン・ローチらしい「論争」シーンもたっぷりで(労組の活動家の演説から、数ポンドをめぐる作業員同士の諍いまで……ちなみに当時、「5ポンド」といえば、バブル崩壊直後の東京での「1000円」の感覚でだいたい合ってた)、オチも爆笑もの(犬が……)のすばらしい映画だ。オンラインで手軽で簡単に見られるのだから、多くの人に見てもらいたいと思う。

ただしハリウッド映画みたいなのしか知らない人には退屈でならないと思うし、「ブラック・ユーモアだ」ということがわかりやすくないブラック・ユーモアが肌に合わないマジメな人には、特にラストはがまんならないかもしれない。あと、「この映画の製作において動物は一切傷つけられていません」というお約束ができる前の映画なので、今から見ると若干ショッキングなところもあるかもしれない。

トレイラーで、A new kind of British comedyって言ってたのか(笑)。



DVDのカバーの写真になってる「男女のロマンス」は、ストーリーの重要な要素のひとつではあるが、メインではない(と私は解釈する)。そもそもこのシーン、映画にあったかな?(最終的にカットされたシーンかもしれない)

リフ・ラフ [DVD] -
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この「女」(スーザン)が、またどうしようもないというか、ストーリー映画でよくここまで感情移入のできない(どうでもいい)造形ができるものだと感心してしまうほどで、でもそのどうしようもなさゆえに忘れられなくなるシーンがあったりするのだから、いやぁ、映画って、本当におもしろいですね!

で、新たにこの現場にやってきたスティーヴに家がない(「友達のところに居候している」)ということを知ると、初対面の同じ職場の作業員たち(みんなキャラが濃い)が彼に「住むところ」をあっせんしてやる。



この「暮らし方」が、日本語では「不法占拠」と呼ばれているが、当時は(決して「多く」はなかったかもしれないにせよ)珍しくなかった「スクワット squat(ting)」だ。当時の音楽・映画の雑誌などでは「スクワット」、もしくは「スクワッティング」というカタカナ語で普通に通用していた(アメリカ偏重の界隈ではどうだったのか、私は知らない)。
https://en.wikipedia.org/wiki/Squatting

「スクワッティング」は、空いている住宅などに、ドアをこじ開けるなどして入り込んで、勝手に住み着いてしまうという「暮らし方」で、当時は「非合法」かもしれないが「違法」ではなかった(その後、完全に違法化された)。「不法」であることより、人が人として生きること(「人権」)を重く見た制度設計になっていた。『リフ・ラフ』でスティーヴが住むことになったのは「ハイ・ライズ high rise」と呼ばれるタイプの高層集合住宅(団地)で、スーザンが住んでいるのは誰も手入れをしなくなったようなテラスト・ハウスだ。





なお、この場所は、映画の画面に写っている道路名をGoogle mapsに入れてみると、この場所に間違いない。映画の中でスーザンが歌うパブ(人種的に多様な場所だ)がストーク・ニューイントンだが(スティーヴの働く現場は路上の車を見るにたぶんセヴン・シスターズで、ストーク・ニューイントンからまっすぐ北に、1キロか2キロだ)、さすが「リアル」にこだわるケン・ローチ、スーザンの住んでいる家もストーク・ニューイントンだ。今では随分事情が変わってきていると思うが、90年ごろのストーク・ニューイントンは非常に荒いので「行くな」と言われるようなエリアだった。問題は麻薬で、「昼間でも夜でも、空き家に入り込んでヤクをキめたヤク中が街路をうろうろしているので、非常に暴力的になりうる」ということだった。Google Street Viewなどを見ると、今では全然そんな雰囲気ではなくなっている。手入れされた家々は、見違えるように立派だ。

先日、少しニュースになったマンチェスター・ユナイテッドのガリー・ネヴィルとライアン・ギグズの所有物件とホームレスの話(や、あのようなホームレス支援活動)も、こういう「不法占拠」<<<<<「人権(生存権)」という基本的な考え方(ケン・ローチの映画はどの作品でも強烈に全面に出ているが、「人を死なせない」ことに大きな価値を見るのが「人権」という《思想》である)の上にあるといえよう。

私の友人の友人の輪の中にも、スクワッティングで暮らしている人がいた。一度、訪問したことがあるが、雨漏りがひどくても誰も修繕してくれない、セントラル・ヒーティングが機能していないといったことを除けば、私が家賃を払って身をおいていた激安フラットと変わりない住環境だった。彼女は「いつ追い出されるかわからない」状況なので、家具などは持っておらず、床に直接マットレスを置いて寝ていたが、それは『リフ・ラフ』の中のスティーヴやスーザンの生活と同じだ。

それが「非合法」のあり方の一部だ。

「非合法 illegal」というショッキングなフレーズに「恐ろしい」と震え上がるのも、「スリル満点」とワクワクするのも、極端で過剰な反応だ。でもそのフレーズを使う人たちは、極端で過剰な反応を引き起こしたがっている場合がある。

ランベスでの騒動の引き金となった無許可の音楽パーティは、「ハロウィーン」と「スカム」をかけて「スカモウィーン」と銘打ったイベントで、「イリーガル・レイヴ」としてネットで宣伝していたそうだが、2015年の今、住宅街の真ん中でそういう企画をしている人たちが何をしようとしているのか、私には正直ちょっとわからない。

少なくとも、「みんなでデカい音で音楽を楽しもう」という趣旨ではないように思うが。

※この記事は

2015年11月02日

にアップロードしました。
1年も経ったころには、書いた本人の記憶から消えているかもしれません。


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【2003年に翻訳した文章】The Nuclear Love Affair 核との火遊び
2003年8月14日、John Pilger|ジョン・ピルジャー

私が初めて広島を訪れたのは,原爆投下の22年後のことだった。街はすっかり再建され,ガラス張りの建築物や環状道路が作られていたが,爪痕を見つけることは難しくはなかった。爆弾が炸裂した地点から1マイルも離れていない河原では,泥の中に掘っ立て小屋が建てられ,生気のない人の影がごみの山をあさっていた。現在,こんな日本の姿を想像できる人はほとんどいないだろう。

彼らは生き残った人々だった。ほとんどが病気で貧しく職もなく,社会から追放されていた。「原子病」の恐怖はとても大きかったので,人々は名前を変え,多くは住居を変えた。病人たちは混雑した国立病院で治療を受けた。米国人が作って経営する近代的な原爆病院が松の木に囲まれ市街地を見下ろす場所にあったが,そこではわずかな患者を「研究」目的で受け入れるだけだった。

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