早稲田大学では、2015年11月2日、小保方晴子氏の博士学位に関する記者会見を行いました。あわせて、その他の博士学位論文に関する現時点での調査結果について報告を致しました。以下は、会見要旨です。
1.本学先進理工学研究科における博士学位論文の取扱いについて
(1)結論
小保方晴子氏に授与した博士学位について、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定した。
(2)これまでの経緯
大学は、本学学位規則23条に則って、2014年10月6日付で、小保方晴子氏に授与された学位を取り消すが、学位を授与した先進理工学研究科における指導・審査過程には重大な不備・欠陥があったと認められるため、一定の猶予期間を設けて再度の博士論文指導、研究倫理の再教育を行い、博士論文を訂正させ、これが適切に履行された場合は学位を維持できることとした。
この決定に従い、先進理工学研究科では2014年11月に指導教員を選出し、論文提出・審査のスケジュールなどと共に本人への通知を行い、再度の論文指導体制を整えていたが、小保方氏の事情により、6月になるまで指導を始めることができなかった。
指導教員らは、小保方氏の来校が困難であることを考慮して、直接本人のもとを複数回訪れることに加え、メールや電話によって、草稿の内容確認や訂正指示等の指導を行った。また、倫理教育についてもe-ラーニングでの受講環境を提供し、本人は9月までに所定の講座を修了した。
しかしながら、指導教員らの指示に従って何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、審査に付すべき完成度に達していないことから、先進理工学研究科では10月29日の運営委員会で協議を行い、論文審査に付すことができないことを確認した。また、小保方氏より猶予期間の延長を求められていたが、これには応じないことをあわせて決定した。
これを受けて、大学は、10月30日の研究科長会の議を経て、「博士学位論文として相応しいもの」が提出されないまま、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。
参考:早稲田大学学位規則
第23条 本大学において博士、修士または専門職学位を授与された者につき、不正の方法により学位の授与を受けた事実が判明したときは、総長は、当該研究科運営委員会および研究科長会の議を経て、既に授与した学位を取り消し、学位記を返還させ、かつ、その旨を公表するものとする。
2.その他の博士学位論文の確認について
(1)調査の対象とした博士学位論文
小保方氏以外の博士学位論文について、早稲田大学は、2014年3月および10月に、全ての研究科に対して不適切な博士学位論文の有無に関する調査を指示した。これに基づいて本学図書館が博士学位論文をリポジトリに掲載するサービスを本格的に開始した2006年度から2014年9月までに学位が授与された論文について調査を行うこととした。また、それ以後に学位が授与された論文についてもリポジトリ掲載前に確認を行っている。それらの合計は2,789本である。
なお、2006年度より前の博士学位論文についても各研究科の判断により調査を行っている。
(2)現時点での調査結果と取扱い
現時点で、2006年度以降に学位が授与された論文についての調査はほぼ完了しており、その結果、「不正の方法により学位の授与を受けた事実」が判明した論文(学位取消しの対象)は発見されていない。
しかしながら、論文の字句を含む厳格な調査を行った結果、研究の本質に関わらない部分において、引用不備などの訂正を要する博士学位論文が89本発見された。これらの論文のうち48本についてはすでに訂正作業が終了し、各研究科運営委員会で訂正確認がなされている。それぞれの訂正された論文については訂正確認報告書を作成し、順次これを本学図書館のリポジトリにて公開するとともに、国会図書館に情報を提供している。
(3)再発防止策について
本学では、2014年10月6日に、「課程博士における博士学位および博士学位論文の質向上のためのガイドライン」を策定し、同ガイドラインに基づいて各研究科の特性に応じた基準・手続きを定め、新たな研究指導および博士学位論文審査を実施している。
「課程博士における博士学位および博士学位論文の質向上のためのガイドライン」主要項目
研究倫理教育 | 学位取得の必修要件とし、研究科毎に研究倫理教育責任者を置く |
指導体制 | 副指導教員を必置とする指導体制の強化、および論文作成途中の提出物や指導記録の系統的管理の徹底 |
審査体制 | 審査の公開、審査手順と期間、審査員の役割と責任の明確化 |
博士学位論文最終版の提出 | 学位論文の最終版提出の手順と方法 |