視聴率も好調なNHK連続テレビ小説「あさが来た」。ユニークなストーリーや出演陣の演技に加え、注目なのが大河ドラマ級とされるセット。予算削減が叫ばれるテレビ業界、もちろんNHKもひとごとではない。限られた予算内で豪華さを演出する秘策とは。
ヒロインあさ(波瑠)は京都の裕福な商家の生まれ、嫁ぎ先も大阪有数の両替商。リアリティーを追求するため、NHK大阪放送局で一番大きいT1スタジオ(約160坪)を目いっぱい使用したセットは、店部分や住居部分、石灯籠を配した日本庭園まで用意。一つのセットとしては通常の朝ドラの4倍の広さだ。
「朝ドラ初の時代もので、現代劇よりもコストがかかる。台本をもらった時点で『やばい』と思いました」と大阪放送局編成部映像デザインチーフ・ディレクターの西村薫さん(47)。
朝ドラの総予算は「設定は高めですが、時間単位に換算すると、大河よりは少ない」という。
しかも、今回はプロデューサーの方針で「着物や髪飾りに重点を置いた予算編成」となり、セットなどにしわ寄せが…。どうやりくりしたのか。
「今回、新規のセットは3割程度。そのほかは過去の朝ドラなどで使ったセットを使い回し。全て新規で作るのとはコストは1ケタ違いました」
古くは、2006年放送の「芋たこなんきん」。装飾品やドアの位置を変更しただけというセットもあるとか。「例えば、江戸から明治期に変わる中で登場する、ある部屋は『マッサン』の鴨居欣次郎(堤真一)の社長室。実は『ごちそうさん』の大学のシーンで使っていたもの。よほどのマニアの方は、気付くかもしれませんね」
あさの生家、今井家や嫁ぎ先の加野屋、あさの姉のはつが嫁いだ山王寺屋はすべて同じセットだが「それぞれイメージカラーを決め、ふすまなどを色分けし、視聴者が『この色はこの家』と識別できるように工夫しました。柱や建具を変えるだけで、別の家に見えますから」。
今後、ストーリーは激動の明治期へ。苦難を乗り切るあさの奮闘も気になるが、美術班の苦労の結晶でもある大河級のセットにもぜひ注目を。