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財務省:統計見直し要求 「経済実態より弱い」

毎日新聞 2015年10月22日 20時09分

 財務省が、国内総生産(GDP)の推計に使われる統計の集計方法見直しを関係省庁に求めている。共働き世帯の増加やインターネット販売の普及といった社会の変化を反映させ、より適切な政策を立案するためだ。2015年7〜9月期の実質GDPが2四半期連続のマイナスとなる可能性が指摘される中、「経済の実態より統計が弱含んでいる」との不満も背景にあるようだ。

 麻生太郎財務相が16日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)で、総務省や厚生労働省などに検討を求めた。

 麻生氏は個人消費の推計に使う「家計調査」について、販売側の統計である「商業動態統計」より数字が弱いと指摘。調査対象の世帯主の過半が60代以上で「高齢者の消費動向が色濃く反映された結果が出ているのではないか」と述べた。趣味などに活発なシニア層の消費は堅調な一方、年金暮らしの高齢者は賃上げの恩恵も受けられず、円安などによる値上げの直撃を受ける。こうした高齢者の消費抑制が、統計全体を下押ししているという主張だ。消費はGDPの6割を占め、もとになる統計の精度が悪いと、景気の実態を正確につかめない。

 賃金動向を示す「毎月勤労統計」については、2〜3年ごとに行われる調査対象事業所の入れ替え時に生じる統計のぶれの大きさを問題視。デフレ脱却の重要な判断材料となる「消費者物価指数」の調査対象品目も、現在は健康食品など一部品目に限られているネット通販価格の採用を拡大するよう求めた。

 要請の背景には、安倍政権の経済政策「アベノミクス」が正念場を迎えていることがある。企業業績は過去最高を更新する一方で、家計調査の消費支出は前年同月比プラスとマイナスを行ったり来たり。毎月勤労統計の現金給与総額は、8月発表の6月速報が前年同月比2・4%減と7カ月ぶりのマイナスを記録した。調査対象の事業者入れ替えの影響と賞与支給月が重なる中、下方へのブレが大きくなったためのようだ。

 アベノミクスによる賃上げ効果が疑われかねない結果にあせる政府だが、見直しは簡単ではない。例えば、家計調査は調査対象世帯が専用の家計簿を付ける必要があり、「共働き世帯などにはなかなか調査に応じてもらえない」(統計部門経験者)。家計調査を所管する高市早苗総務相は16日の諮問会議で、販売統計とは調査範囲が異なるとして「二つの統計を直接比較することには留意が必要」と見直しに慎重な姿勢を示した。【宮島寛】

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