野党が憲法53条に基づき安倍首相に出した臨時国会の召集要求がたなざらしにされている。

 政府・与党は来年の通常国会を、例年より早い1月4日に召集することで批判をかわしたいようだ。しかし、このまま野党の求めに応じなければ、憲法に反することになる。

 53条は臨時国会について、衆参両院のいずれかで4分の1以上の議員の要求があれば「内閣は、その召集を決定しなければならない」と定めている。

 召集の期限が書かれていないことから、03年11月と05年11月の要求に小泉内閣が応じず、翌年の通常国会まで持ち越されたことがある。ただ、これらの年は要求とは別に、特別国会や臨時国会が開かれていた。今年は年内に臨時国会がなければ、通常国会1度きりとなる。

 03年の要求の翌月に行われた閉会中審査で、内閣法制局長官は53条の解釈について「召集時期の決定は内閣に委ねられているが、召集のために必要な合理的な期間を超えない期間内に召集を行うことを決定しなければならない」と明確にした。

 長官はまた、「合理的な期間内に通常国会の召集が見込まれるような事情があれば、あえて臨時国会を召集しなくても憲法に違反するとは考えていない」とも答えている。

 安倍首相は「過去には合理的な期間内に通常国会を召集した例もある」というが、今回のように通常国会まで2カ月以上もあっては「合理的な期間内」とは言えないだろう。

 自民党自身、野党だった3年前にまとめた憲法改正草案で、少数会派の権利を生かすとの趣旨で、要求から「20日以内」の召集を義務づけていたことを忘れたわけではあるまい。

 安倍内閣は、集団的自衛権は行使できないとの歴代内閣の憲法解釈を、憲法改正をへることなく閣議決定で変更した。ここで53条に基づく野党の要求を無視すれば、憲法や立法府を軽んじる政権の姿勢はいっそう際立つことになる。

 いま臨時国会で議論すべきテーマは増えるばかりだ。環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意の国民生活への影響は。「1億総活躍社会」とは何なのか。米軍普天間飛行場の移設問題では、沖縄の民意に耳を傾けようとせず、埋め立て本体工事に着手した政府の姿勢を早急にただす必要がある。

 首相が外遊中でも、外相ら担当閣僚が質疑に応じるなど工夫はできる。外交日程が立て込んでいるとしても、議論の場を設けぬ理由にはならない。