じつに3年半ぶりの首脳会談である。日本、中国、韓国の政治の歯車がかみ合わない不毛な現実から、今こそ抜け出さなければならない。

 安倍晋三首相と中国の李克強(リーコーチアン)首相、韓国の朴槿恵(パククネ)大統領がきのう、ソウルの大統領府で一堂に会した。3カ国の首脳会談は08年から毎年開かれていたが、日中、日韓関係の悪化に伴い、12年を最後に中断していた。

 安倍首相は会談後の共同会見で「日中韓の協力プロセスを正常化させたことは大きな成果だ」と語った。だが現実には、成果をうたうのは尚早だ。3カ国の真の協力関係づくりは、やっと再出発したに過ぎない。

 ビジネスや観光などでかつてない規模で人が行き交う時代に、政治トップの往来が止まり、それによって経済や民間の交流が妨げられてきた。まさに政治の怠慢と言うべき惨状であり、ようやく軌道に戻りつつあるのが実情だろう。

 近隣外交は、日本の針路に決定的な意味を持つ。

 たしかに日中韓の間には歴史認識や領土の問題が横たわり、波風が立ちやすい。だとしてもたびたび首脳会談が止まり、政府間でも民間でも交流を滞らせるようでは、いつまでも関係を成熟させることが出来ない。

 日中韓の指導者は、歴史や領土の問題をあおり、ナショナリズムを国内向けに利用する振る舞いを慎むべきだ。日本としては、歴史を直視する姿勢を揺るぎなく継続し、わだかまりなく日中韓が協力できる環境を整えておくことが重要だろう。

 中韓首脳も、日本との歴史を政治カードにするような行動は控え、理性的に互恵関係をめざす指導力を示すべきである。

 その意味で3首脳が「歴史を直視し、未来に向かう」とし、会談の定例化を再確認したことには意味がある。

 日本を含む環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意に、中韓の関心は強い。今回の共同宣言は、滞っている日中韓自由貿易協定(FTA)交渉の加速を盛り込んだ。その言葉通り、着実に対話を進め、地域経済の成長力を高めたい。

 北東アジアは今や世界で有数の経済力をもつ地域になりながら、政府間の連携だけが立ち遅れている。エネルギー、災害、環境、テロ対策など、協働を深めるべき課題は広範にある。

 来年は日本が議長国であり、中韓両首脳が来日する予定だ。再開した3カ国首脳対話の灯を絶やさぬよう、日本は地域の信頼醸成の努力を率先し、責任を果たすべきだ。