2015-11-02

おっさんは光の戦士になりたかった

子供の頃、光の戦士とか、勇者とか、割と世界を救いがちな属性を持った人間になれると思っていた。

少なくとも、勇者が所有する馬車の中には入れると思っていた。

ある朝起きたら、母親

あんた、今日誕生日ね。そういうわけで市役所(城)に行ってらっしゃい

なんて言われて、市役所に行ったら市長自らが出迎えてくれて

「キミは今から巨悪と戦わねばならない。そんな定めなのだ、たぶん」

とか言われて、地域振興券をもらって、ホームセンタープラスチックカラーバットを買って、冒険をはじめ、友達が2人くらいできる。

女の子がひとりと、男の子がひとり。

どんどん強くなって、紆余曲折ありながらも、諸悪の根源をぶっ倒し、根絶した後、テレビ新聞で持ち上げられ、世界中で有名になり、どこかの王族

「ぜひとも、うちの娘でももらってくだっさい」

とか言い出して、見目麗しき病弱な女性カーテンの影からこちらを見ている。結婚しますか? いいえしません。

そして、莫大な贈与、綺麗な嫁候補をすべて放棄したおれは、一緒に冒険をしたあの女の子を迎えに行って、山奥の村でひっそりと暮らす。

幸せな日々が続き、ある日薪割りをしているとヘリコプター政府要人がやってきて

「おれはもう引退したんだよ」

とか言って追い返す。しかし、女房が「あなた世界危機よ、クライシスよ」とか言うもんだから、再び剣を取り、世界を救いにでかける。次回作にご期待ください。

という輝かしい未来を信じて疑わなかった。

もちろん、巨大なロボットパイロットにもなれると思っていた。

それが今や、こうして深夜に匿名日記を書いている。

おれは、あの日なれると思った光の戦士にはなれずに、日陰の戦士になっていた。

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