子供の頃、光の戦士とか、勇者とか、割と世界を救いがちな属性を持った人間になれると思っていた。
少なくとも、勇者が所有する馬車の中には入れると思っていた。
ある朝起きたら、母親に
「あんた、今日は誕生日ね。そういうわけで市役所(城)に行ってらっしゃい」
「キミは今から巨悪と戦わねばならない。そんな定めなのだ、たぶん」
とか言われて、地域振興券をもらって、ホームセンターでプラスチックのカラーバットを買って、冒険をはじめ、友達が2人くらいできる。
どんどん強くなって、紆余曲折ありながらも、諸悪の根源をぶっ倒し、根絶した後、テレビや新聞で持ち上げられ、世界中で有名になり、どこかの王族が
「ぜひとも、うちの娘でももらってくだっさい」
とか言い出して、見目麗しき病弱な女性がカーテンの影からこちらを見ている。結婚しますか? いいえしません。
そして、莫大な贈与、綺麗な嫁候補をすべて放棄したおれは、一緒に冒険をしたあの女の子を迎えに行って、山奥の村でひっそりと暮らす。
幸せな日々が続き、ある日薪割りをしているとヘリコプターで政府要人がやってきて
「おれはもう引退したんだよ」
とか言って追い返す。しかし、女房が「あなた、世界の危機よ、クライシスよ」とか言うもんだから、再び剣を取り、世界を救いにでかける。次回作にご期待ください。
という輝かしい未来を信じて疑わなかった。