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木村岳史の極言暴論! 日経コンピュータ

「日本のソフトウエア品質は世界一」という事実と、その非常識

2015/11/02
木村 岳史=日経コンピュータ (筆者執筆記事一覧
日経コンピュータ元編集長が斬る!IT業界の不条理――。業界を冷徹にウオッチし続けてきた木村岳史の論説を書籍化した「SEは死滅する もっと極言暴論編」。定価1500円+税。好評につき重版!

 いつも、この「極言暴論」でイチャモンをつけているSIerのビジネスだが、彼らにも世界一と自慢できるものがある。それは開発を請け負ったソフトウエアの品質だ。「えっ、嘘でしょ!」と言う読者もいると思うが、これはどうやら事実のようだ。確かに、インドのITベンダーなどが作るものに比べて、バグなどが少ない高品質なソフトウエアを生み出している。

 読者は「あれ、木村さん、SIerを褒めるなんて変節したの?」といぶかっているだろうが、ご安心いただきたい。私はSIerのプロジェクト管理や品質管理が素晴らしいと言うつもりもないし、SIerをはじめとする日本のITベンダーの技術者のスキルがとりわけ高いと主張するつもりもない。そんなことを言えば、それは悪い冗談である。むしろ、逆だと思っている。

 今ではそんな騒ぎも少なくなったが、少し前までインドなどでのオフショア開発は失敗の連続だった。現地のITベンダーへ発注したソフトウエアモジュールがバグだらけ。「これは酷い。作り直してくれ」と言っても、先方からは「仕様通り作ったのだから問題ない。契約書に記述の無いことを要求するなら、別契約で別料金だ」と言い返される始末。で、多くの場合、日本側の技術者が涙目で作り直すことになる。

 こうした苦い経験から、SIerは日本で作るソフトウエアの品質が世界一と思うに至る。その認識は正しい。ただし「ある意味において」という限定付きでだが。世界中どの国のITベンダーや技術者であっても、仕様通りにしか作らないし、契約書に書かれている範囲でしか働かない。仕様書に洩れや矛盾があったり、契約書がペラペラだったりすると、たちまち悲惨な品質の成果物を検収しなければならなくなる。

 それに対して、日本の下請けITベンダーが作るソフトウエアモジュールの品質は素晴らしい。客の要件定義が曖昧で、仕様に多少甘い点があったとしても、今までの経験を生かし、それこそ行間を読んで、何とか作ってくれる。ムチャな要求でも「何とかして」と言えば、契約書に無いことまでやってくれる。結果、客に納品するシステムは十分な出来。まさに「ジャパン・クオリティ」である。

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