オタク定点観測 2000/04
[第22回]−ゲームでしか拾えない感情−『天国から来た男』の場合

 RPGやAVGなど話でプレイヤーを楽しませるゲームから、あらかじめ決められたシナリオをなくせるか? その問いに対する答えとして、オンラインゲームがあるが、この『天国から来た男』もその解答の一つといえる。
 ジャンルは「恋愛・人間関係SLG」とされているが、これは便宜上の分類で普通の恋愛SLGとはプレイ感覚がまったく違う。テキスト画面が主体なので、AVGのように見えるが、人間関係SLGの面が強い。
 ゲームは、タイトル通り、死んでしまったプレイヤー(男か女を選べる)が天使に一ヶ月だけ生き返らせてもらうことから始まる。その間に、様々な登場人物と知り合い、会話や行動を選択していくことによって進行するのだが、このゲームには決まった登場人物がいない。プレイするたびに登場人物が生成され、一回のプレイが終了すると消えてしまう。このゲームの世界は「一期一会」なのである。登場人物と交わされる会話も、登場人物の性格などから生成される。テキストで進行する『ワールドネバーランド』といえば、わかる人はわかるだろうか。
 このゲームの世界では、自分以外の登場人物も自律的に動いている。そのため、好きな子が他の異性とも付き合ったりするなんて事態も発生する。異性とある程度仲良くなるとデートができるのだが、デート中に女の子が他の男の事を聞いてきた時は、思わず嫉妬してしまった。また面白いのが常に確認できる人間関係図。この図はシナプスが繋がるようにどんどん広がっていく。そして、自分の個人情報(○○と付き合っている、など)が自分の知らない情報回路に載って、噂として流通したりする。
 プレイしていて感じたのは『ウィザードリィ』や『ローグ』の匂いだ。これらのゲームというのは、自己完結した世界(箱庭)の中が、一定のロジックによって動いている。また、プレイヤーに提示される情報が圧倒的に少ないが、プレイヤーは少ない情報から頭の中にゲーム世界を創造できる。その辺に海外ゲームっぽさを感じるのだが、『A列車』や『アトラス』などのアートディンクが作る一連のゲームにも通じるものがある。
 世の中には、良いシナリオのゲームは多々あるが、それらをプレイした時の感情は、ゲーム以外の媒体、小説などでも再現できる種類のものだ。そんなゲームが好きな人にこのゲームは勧めない。しかし、『天国から来た男』をプレイした時に起こる感情は、ゲームでしか拾えないものだ。そんな感情を味わいたい人には、ぜひプレイして欲しいのである。

『天国から来た男』
 公式 メーカー●エレクトリックシープ
ジャンル●恋愛・人間関係シミュレーション
価格●8,800円 対応●Win96&98
http://www.electricsheep.co.jp
(C)1999 Electric Sheep Co., Ltd.

掲載=カラフルPUREGIRL 2000年4月号(ビブロス刊)

■コメント
 このゲームは仕上がりこそは荒削りなものの、ブラッシュアップすれば素晴らしいゲームになると思ってます。どこかの会社でリメイクして欲しい。
[Profile]
輸入DVDのためにリージョンフリーのDVDプレイヤーを購入したので、またDVDをがんがん輸入してます。でも、最近のお勧めDVDは国内のOVA『ろろうに剣心 追憶編』です。ハードな描写とテンションの高い演出が素晴らしい時代劇アニメなのですよ。
HOME INDEX  PREV NEXT