韓国社会の現実を認識する政治家たちのレベルは、ケーブルテレビのバラエティー番組よりも劣っている。音楽専門チャンネル「m.net」のオーディション番組『スーパースターK7』に参加し、最も目を引いたグループは「チュンシギバンド」。リーダーは32歳のチョン・チュンシクさんだ。「チョンスラク(田舎くさいロックという意味)」と自嘲しながら自作の曲を演奏し、審査委員たちや視聴者から歓声を浴びた。リアリティーにあふれる彼らの歌は、韓国歌謡界の常軌を逸しているからだ。
最初に歌った『赤ちゃんを産みたいなんて』の歌詞はこうだ。「俺は高卒、お前は地方の大学出身だ/ちょっと計算してみよう/お前と俺は今も食っていくのが大変だ/でも心配するな/このまま俺たちはずっと愛し合っていこう」。100万人を超えるライバルを抑えて「トップ10」入りを果たし、初の生放送のステージで歌った『サンデー・ソウル』ではこう訴えている。「借金までして大学に行かせてくれたおやじ/卒業しても就職できない息子/きょうもPC房(インターネットカフェ)で深夜バイトだ/食事はカップラーメン1個だけ」
ある人たちにとっては、1980-90年代に学生街や運動圏(左翼系の学生運動グループ)ではやった民衆歌謡を思い出させるかもしれない。だが、「チュンシギバンド」は当時の大学生のように闘争をあおるわけではない。諦め感が漂う語調で、自分たちの直面している現実を伝えているだけだ。バンドのメンバーたちは実際に、建設現場や飲食店などで働いて生計を立てている30代前半の若者たちだ。未熟で粗っぽいその歌に人々は熱い反応を示し、大企業やテレビ局は彼らを活用して商業的な利益を得ている。韓国の20-30代の困窮ぶりが、大衆文化の中心的なコンテンツとして消費されるほど常態化したという事実を示す逆説的な現象だ。