人気作家・奥田英朗を救ったロックミュージック

人気作家・奥田英朗を救ったロックミュージック

【新刊】奥田英朗著、クォン・ヨンジュ訳『田舎でロックンロール』(イチョウ社)

 日本の小説家、奥田英朗は1959年生まれだ。奥田は日本はもちろん、韓国でもベストセラー作家に挙げられる人物。岐阜県生まれの奥田は、自らを「田舎者」と呼ぶ。奥田は思春期にラジオを聞いてポップミュージックにはまった。70年代初めの日本の青少年は、ラジオを持つことで初めて「家の中で自分だけの世界を持てる」と喜んだ。奥田もそうだった。奥田はラジオでポップミュージックを聴き、家族や社会の向こうにある別の世界にあこがれ、それで内面世界をつくり上げた。

 本書には、奥田が思春期を振り返りながら好きなポップミュージックを取り上げた散文と、短編小説「ホリデイ・ヒット・ポップス」が収められている。ただ退屈なだけだった学校時代、奥田を救ったのは音楽だったという。ビートルズ、ピンク・フロイド、クイーンの音楽を聴くことで、他人とは異なる「自我」を形成するという錯覚に陥った。騒々しいロックンロールを聴くことで、沈黙と従順を強要する社会に人知れず抵抗した。

 奥田は高校時代、平均以下の成績で、早々に勉強を諦めた。ロックミュージックに全てのエネルギーをつぎ込んだ。「私の大きな欠点は、自意識と自尊心があまりに強かったということ。本気になりさえすれば…という考えを胸の内に抱きながら、実際は、全力を尽くして自分の本当の能力が明らかになるのを恐れていた。だから、何事につけ真剣にやらず、斜に構え、余裕があるふりをした」

 人気作家になった奥田は最近、LPレコードを買い集めることで、消えてしまった思春期を振り返っている。70年代に成長期を送った世代が共有している音楽の言語で、失われた時間を取り戻す一冊。356ページ、1万3500ウォン(約1400円)。

朴海鉉(パク・へヒョン)記者
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