2014年03月14日

今年中に変わるかもしれないニュージーランドの国旗の話

3月11日の時事通信のサイトに「国旗変更投票、9月の選挙後に=ニュージーランドが先送り」という記事が掲載されていました。

記事によると、
 ニュージーランドのキー首相は11日記者会見し、国旗変更の是非を問う国民投票を9月20日の総選挙後に実施すると表明した。総選挙との同時実施を目指していたが、新国旗の図柄選びなどに時間がかかるため先送りした。
とのこと。

現在のニュージーランドの国旗(下)は、青地にイギリス国旗であるユニオンジャックが左上に4つの白縁の赤い星が右側に配置されたデザインです。

800px-Flag_of_New_Zealand_svg.png

ニュージーランドの文化遺産省(Ministry for Culture and Heritage)のHPによると、青地は「周りを取り囲む青い海と空」を、4つの星は同国が南太平洋にあることを象徴する「南十字星」を、ユニオンジャックは「かつてイギリスの植民地・領土であったこと」を表しているとのことです。

このデザインになった経緯が同HPに書かれているので抜粋(拙訳)します。
 The design of New Zealand's national flag emerged over several years before being officially approved in 1902. Its origins date from 1865 when the British Government instructed that vessels from the colonies should fly the Blue Ensign with the seal or badge of the colony on it.
(ニュージーランド国旗のデザインは1902年の正式承認より数年前に登場した。その起源はイギリス政府が植民地から来る船に当該植民地の紋章か記章を記載した青い旗を掲げるよう指導した1865年に遡る。)

New Zealand didn't have a recognised badge at the time, so its vessels flew the Blue Ensign without any markings until reprimanded by the British Government. Mr G Eliott, Secretary of the General Post Office, recommended that the four stars of the Southern Cross be used as New Zealand's badge but this was rejected. Instead the words ‘New Zealand’ were added to the Blue Ensign, and later shortened to ‘NZ’ in red letters with white borders.
(ニュージーランドはそのとき広く認識された記章を有していなかったため、イギリス政府に叱責されるまでいかなる印も付けない青い旗だけを掲げていたので、中央郵便局長のG. エリオット氏がニュージーランドの記章として南十字星の4つの星を使うことを薦めたものの拒否された。代わりに“New Zealand”という文字が記されることになり、その後、白縁に赤い文字で“NZ”と短縮して表記されることとなった。

In 1869, Governor Sir George Bowen directed that the Southern Cross replace ‘NZ’ on the Blue Ensign. The Southern Cross was represented by four five-pointed red stars with white borders to correspond with the colours of the Union Jack. Still officially a maritime flag, the flag was used on land and gradually became recognised as New Zealand's national flag. In 1902, the flag officially became the National Flag of New Zealand.
(1869年、ジョージ・ボウエン総督が“NZ”に代えて南十字星を記すよう指示した。南十字星はユニオンジャックの色に合わせ4つの白縁の赤い五芒星で表された。正式には海洋旗であったが陸上でも使われ、徐々に国旗として認識されるようになり、1902年に正式にニュージーランド国旗となった。)

以上の経緯で作られたニュージーランドの国旗ですが、これと非常によく似ているのが隣国、オーストラリアの国旗(下)です。

Flag_of_Australia_(converted)_svg.png

再びニュージーランド文化遺産省のHPによると、両国が南十字星をモチーフに選んだ理由は「南半球でしか見られないから」だそうです。

ちなみに両国の国旗の違いは、
@星の数
 ニュージーランド…、オーストラリア…

A星の頂点の数
 ニュージーランド…、オーストラリア…

B星の色
 ニュージーランド…白縁の赤、オーストラリア…
です。

ちなみに、@についてはオーストラリアの2個多い星の1つは実際に南十字星の近くにある「ε星」を示したもので、もう1つの大きい星はオーストラリアの海外領土を含めた「連邦」を表しています。
Aの星の頂点の数は6つの州と1つの準州を表しており、ε星だけ五芒星です。

このような違いがあるとはいえ、非常によく似た両国の旗。

キー首相が国旗の変更を提案した背景には、植民地時代を象徴するユニオンジャックを国旗から消すとともに、オーストラリアと間違われないようなニュージーランドらしいデザインにしたいという思いもあるようです。

その新しい国旗のモチーフの候補として挙がっているのが、ラグビー・ニュージーランド代表「オールブラックス(All Blacks)」の旗(下)で使われているシルバーファーン(Silver Fern)です。

All_Blacks_Wallpaper_by_AbdielSeraph.jpg

シルバーファーンはニュージーランドに自生するシダの一種で、ニュージーランドの先住民族であるマオリ族の信仰の対象とされ、1956年から使われている国章(下)にも描かれています。

619px-Coat_of_Arms_of_New_Zealand.svg.png

ということは、これがマオリ族の旗なのかと思いきや、実はマオリの旗は別にあります。
マオリの言葉で“Tino rangatiratanga”(絶対的な主権)と呼ばれる旗(下)が1990年に作られています。

Tino_Rangatiratanga_Maori_sovereignty_movement_flag.svg.png

この旗は2009年12月に政府によって正式に国旗の1つとして認められ、1840年にイギリスとマオリ族の間で結ばれたワイタンギ条約を記念する「ワイタンギデー(Waitangi Day)」(2月6日)には、ニュージーランド国旗とともにオークランドのハーバーブリッジに掲揚されることになりました。

この点で新しい国旗をシルバーファーンをモチーフにした旗にすれば、マオリの旗ともかぶらないので都合が良いのでしょう。

そもそも自国を最も象徴するはずの国旗が他国のものと間違えられるというのは悲しい話です。
ニュージーランドの国旗変更の是非を問う国民投票は先延ばしとなりましたが、ぜひ私も新しい国旗を見てみたいです。


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