高齢の両親の面倒を一人でみている。親父は要介護4,生活全般に人の助けがいる。そんな在宅介護をしていれば,大好きな野球見物もままならない。
でも,数十年来のひいきチームの14年ぶりの日本シリーズ出場だ。1試合ぐらいは見に行きたい。忙しい弟に半日の代打を頼み込んだ。
問題はいつ行くかだ。もちろん福岡に遠征することはできない。地元の神宮3戦のうちのどれにするか。4戦は介護の事情で無理。3戦か5戦かの二者択一。
最初は3戦目にしようと思った。何しろ相手はぶっちぎりの90勝でリーグを制し2連覇を狙うソフトバンクだ。4連敗もありうる。下馬評でそんな声も聞こえた。もっともだろう。
でも俺は,クライマックスシリーズの巨人戦を見る限り(介護の仕事が終わった後,テレビ録画ですべて見た),それはないだろうと踏んだ。巨人に負けるんじゃないかと思ったら,存外強かった。強くなった。そんな印象から5戦目を選んだ。
久しぶりのプロ野球観戦だ。いい試合,いい場面が見たい。これは人情だろう。5戦目なら,下手すりゃ真中監督の胴上げだって見られるかもしれない。4勝1敗でヤクルトが勝つなんて甘い夢か。でも,そういうものに賭けるのがファンってものの心理だろう。
そして,結果はご存知の通りだ。自慢の強力打線は再び零封された。期待していたベテランのエースは持ち味の粘りを発揮することなく,またしても5回も持たずに沈んだ。正規には購入できず,割高のネットオークションで手に入れた内野3塁側の良席で,真中じゃなく工藤監督の胴上げを見る羽目になった。
いま俺は思い切り後悔している。3戦目を選んどきゃよかった。そしたら,山田哲人の歴史的な3連発を見られた。それだけで十分に報われた。それなのに,何で俺はこうも間が悪いのか。これも欲をかいたってことなのか。
翌日は,親父の便失禁の始末から始まった。向こうは体が動かない。こっちは腰が悪い。朝っぱらから重労働だ。昼食後は便意を訴えた。抱えるようにしてトイレに連れて行く。夕食後のおむつ交換のときも失禁していた。今季初のうんこのトリプルヘッダー。そんな日常。いいことなんてこれっぽっちもない。
ホームランにこそならなかったが,山田の最終打席は見応えがあった。球場全体を揺らす大声援の中,追い込まれながら,何球もファールで粘った。そして,難しい低目の変化球を左翼席直前までライナーで運んだ。
「山田哲人」の片鱗は見た。いまはこれで満足しよう。来季こそは,一度でいいから胸のすくような一発を生で見たい。そんなことを思いながら,毎日,俺は親父の尻を拭いている。