海外の研究で明らかに! 「ネコから病気をもらうと“モテ期”が到来する」のメカニズム
ネコから病気をもらって「モテ期」が到来する可能性があることが報告されています。その病気の名前は、「トキソプラズマ感染症」。トキソプラズマとは寄生虫で、ネコが宿主ですが、ヒトにも感染する「動物由来感染症」です。
ネコの寄生虫である「トキソプラズマ原虫」に感染した人は、奇妙なふるまいをすることが明らかになってきたのです。
■「トキソプラズマ感染症」でおこる奇妙なふるまい
この原虫の奇妙なふるまいに気づいたのは、チェコ・カレル大学の進化生物学者ヤロスラフ・フレグル教授。1990年、自分がトキソプラズマに感染していることを知りました。
その直後より、自分の行動が変わったことに気がつきました。不注意な行動が増え反応速度が遅くなり、近づいてきた車にクラクションを鳴らされても飛びのかなくなります。これらの行動が、「この原虫に感染したことが原因ではないか」とひらめいたのです。
この仮説、発表当初は“トンデモ医学”として、全く相手にされませんでした。しかし、その後に数多くの関連する論文が発表され、現在では行動生物学の大御所、スタンフォード大学のロバート・サポロスキー教授を始めとして、数多くの研究者がこの説を支持しています。
■「トキソプラズマ感染症」によっておこる奇妙な行動とは?
「トキソプラズマ感染症」によっておこる奇妙な行動には次のようなものがあります。
・異性に急にモテやすくなるかもしれない
・交通事故に遭いやすくなくなるかもしれない
・犯罪の道に急に走るかもしれない
・自殺をしたくなるかもしれない
どうですか? あり得ないと思いませんか? しかし、寄生虫に感染することで起こる異変のメカニズムがついに解明されてきたのです。
■奇妙な行動にはあのホルモンが関係!?
ネコの糞を食べることなどでトキソプラズマに感染したネズミは、猫の尿の臭いに誘われるように徘徊し、ネコに食べられやすい行動をすることがわかっていましたが、この原因については長年不明でした。
2009年、スウェーデンの研究チームがトキソプラズマのDNAを解析した結果、ドーパミンの合成に関係する遺伝子が含まれていることを発見しました。体内に寄生した原虫が白血球を乗っ取って脳に侵入し、ドーパミンの分泌を促していたのです。それによりネズミは恐怖感や不安感が鈍っていたのです。
■「脳内麻薬」とも呼ばれるドーパミン
ドーパミンは「脳内麻薬」ともいわれ、人が快感や感動を覚えたときに、脳内に放出されるものです。スポーツ観戦で興奮したり、好きな音楽を聴いたりしたときに、脳内で分泌されることが実験的に確かめられています。
ドーパミンが分泌されると、食欲や性欲が湧いてやる気がみなぎり、意欲的に生活することができるようになります。しかし、分泌量が多すぎると、あきっぽく常に刺激を求め、冒険や探検、転職、転居を好み、恋人や自動車を頻繁に替え、スリルを求めるようになるのです。
それではなぜドーパミンで異性にモテやすくなるのでしょう?
■奇妙な行動は過剰なドーパミン分泌によるもの
「異性に急にモテやすくなるかもしれない」のは、女性は社交的で世話好きになり、容姿を気にするようになり、男女関係も活発になるからです。男性はさらにテストステロンという男性ホルモンの分泌が増え、この分泌量が多い男性は女性から言い寄られやすいということが知られています。
「交通事故に遭いやすくなるかもしれない」のは、反射神経が鈍くなると同時にリスクを恐れなくなるからです。感染者が交通事故に遭う可能性は2.6倍というデータもあります。