訃報:佐木隆三さん 78歳=直木賞作家 裁判傍聴ルポも
毎日新聞 2015年11月01日 10時36分(最終更新 11月01日 10時42分)
直木賞作家で、裁判傍聴を重ねる手厚い取材方法により犯罪に迫る作品で知られた佐木隆三(さき・りゅうぞう、本名・小先良三=こさき・りょうぞう)さんが31日午前8時40分、下咽頭(いんとう)がんのため北九州市小倉北区の病院で死去した。78歳。通夜は1日午後6時、葬儀は2日正午、近親者のみで営む。喪主は長男小先隆三(こさき・りゅうぞう)さん。後日、お別れの会を北九州市内で開く予定。
1937年、旧朝鮮咸鏡北道(現・北朝鮮)生まれ。父は太平洋戦争で戦死し、41年に母親に連れられて帰国した。北九州市の福岡県立八幡中央高校卒業後、同市の八幡製鉄(現・新日鉄住金八幡製鉄所)に事務員として入社。勤務の傍ら小説を執筆し、同人雑誌などに発表した。新たな労働者文学の作家として次第に注目を集め、63年に企業のリストラを風刺した小説「ジャンケンポン協定」で新日本文学賞を受賞。「復讐するは我にあり」で直木賞を受賞した。著書に「身分帳」(伊藤整文学賞)、「小説 大逆事件」「越山 田中角栄」などがある。
99年に東京から故郷の北九州市に転居した。2006年から12年まで同市立文学館の初代館長を務め、子供向け文章教室の開講や自分史文学賞の創設など地域の文化振興にも尽くした。99年10月からは毎日新聞西部本社版の紙面で月1回「マンスリー事件簿」を連載し、社会を揺るがす事件や裁判を鋭い視点で読み解いた。