「櫛田文庫」を熱く語る 櫛田神社でシンポ [福岡県]
江戸末期の櫛田神社(福岡市博多区上川端町)に設置され、博多町人なら誰でも借りられる近代図書館だった「櫛田文庫」をテーマにしたシンポジウムが31日、同神社であった。文庫の歴史や時代背景を語り合い、現在の国文学の課題にも触れた熱い議論に約110人が聞き入った。
櫛田文庫は庶民などの勉学、教養を高めるため1818年に設立。神道、国学の本など1300冊以上を所蔵した。シンポでは、中野三敏九州大名誉教授(近世文学)が基調講演。明治政府が現行の一音一字のひらがな字体に統一した施策について「日本人の多くがくずし字を使う江戸期の書物を読めなくなった。英知を学べずもったいない」と指摘した。
続いてパネル討論があり、松尾由美子学芸員は、寄贈者でなければ藩士や身分の高い人も蔵書を借りられなかった文庫のルールを取り上げ、「勉学への博多町人の強い決意と誇りを感じる」と述べた。同神社の阿部憲之介宮司は30年ほど前から補修費をかけ古文書などを守っているとした上で「人口減少で氏子が減って神社などの経営環境は厳しくなっている。今後、行政の支援がなければ宝物は守れなくなるのでは」と問題提起した。
=2015/11/01付 西日本新聞朝刊=