成功した歴史上の人物でもわが子への悩みは庶民と変わらなかったようだ。島津久光は、心を病んでいる次男の久治について「家臣らが責めるのをやめさせてほしい」と西郷隆盛に頼んでいる。
久治は若くして薩摩藩の重責を担っていた。力ずくでの倒幕に強く反対し、戊辰戦争へも自らの出陣を見送った。家臣らには弱腰と映ったのだろう。兄である藩主の面前でも詰問し、久治は面目を失っている。
全国の小学校でいじめが増えたというニュースを見て、心を痛めている親に思いをはせた。7月に岩手県の中学2年男子が自殺したことを受けて、国が再調査を求めたところ過去最多の12万件を超えたという。
ふさぎ込むわが子をどうなだめ、立ち直らせればいいのか。国父とあがめられた久光でさえ特効薬を持ち合わせず、西郷にすがらざるを得なかった。親が学校を頼りにする気持ちも理解できよう。
鹿児島県では、いじめの認知数が大幅に減少したそうだ。県教委は「どんな行為がいじめに当たるかを、子どもが理解するようになった」と分析する。いじめの線引きが難しいのは承知しているが、学校も家庭も粘り強く小さな芽を摘んでほしい。
久治は詰問された数年後、ピストルで自ら命を絶った。父の久光は、どんな思いで報告を聞いただろうか。いじめを受けている子はもちろん、親を孤立させない方策にも心を配りたい。