菓子店車突入:7人けが…過失傷害容疑で運転の76歳逮捕
毎日新聞 2015年10月31日 21時54分(最終更新 11月01日 01時20分)
31日午後1時50分ごろ、愛知県知立(ちりゅう)市山町小林の和菓子店「藤田屋」本店にワゴン車が突っ込み、同県内の16〜74歳の男女7人が重軽傷を負った。県警安城署は車を運転していた同市昭和4、自営業、堀田邦一容疑者(76)を自動車運転処罰法違反(過失傷害)の疑いで現行犯逮捕した。堀田容疑者にけがはなく、「ブレーキとアクセルを踏み間違えた」などと供述しているという。
同署によると、店内には当時、約30人の客がいた。負傷したのは食事などをしていた客5人と従業員2人。このうち、客の女性会社員(64)と従業員の女性(25)が胸などを強く打ち、別の従業員の女性(16)も太ももを切り重傷。4人は軽傷だった。堀田容疑者は同店の依頼で冷蔵庫の修理を終え、駐車場に止めた車を運転して帰るところだったという。
車が突っ込むのを目撃した知立市の男性(70)らによると、車は最初、低速で店に向かって動き出した。店の前で止まると思ったら、加速するように突っ込んで入り口の自動ドアのガラスを突き破った。直進して座敷席の畳に乗り上げ、食事をしていた客らをはねた。入り口から約15メートル奥の壁にぶつかって止まり、堀田容疑者は、ぼうぜんとした様子で車を降りたという。
藤田屋本店は知立名物の和菓子「大あんまき」で知られている。【山本佳孝、金寿英、加藤沙波】
◇後絶たない高齢者事故
高齢者がアクセルとブレーキを踏み間違えるなどして店舗などに突入する自動車事故が、全国で相次いでいる。警察庁は事故防止策を強化しているが、追いついていないのが実情だ。
和歌山県白浜町のスーパーに今年2月、無職男性(当時79歳)の運転する乗用車が突っ込み、この男性が死亡。北海道室蘭市では今年8月、無職女性(同65歳)の乗用車が衣料品店に突入し客ら4人が軽傷を負った。
高齢ドライバーの事故防止のため、免許更新する際に70歳以上に高齢者講習を行っているほか、75歳以上には認知機能検査を課している。
今年6月には改正道路交通法が成立。検査で「認知症のおそれがある」と指摘され、医師に認知症と診断されると免許は取り消し・停止になるなど対応を厳格化した。
しかし、宮崎市で10月28日、鹿児島県日置市の男性(73)の軽乗用車が暴走、歩行者ら7人が死傷するなど高齢者が引き起こす事故は絶えない。男性は同26日まで認知症の治療を受けて入院していた。
高齢者の交通問題に詳しい鈴木春男・千葉大名誉教授(交通社会学)は「高齢者になると認知症でなくても複数の情報を同時に処理する能力が低下する。このことを高齢者自身が認識し、目的地までの道のりを地図で事前に確認してもらうなどの意識醸成が必要だ。ブレーキとアクセルを間違えない車の開発も進めなければならない」と話した。【谷口拓未】