京都地検の女6 2015.10.26


(バスのアナウンス)「お待たせいたしました」「66系統葛野大路経由二条駅前行きでございます」
(ブザー)
(バスのアナウンス)「入り口付近は込みあいますので順に…」
(ブザー)
(ブレーキ音)
(バスのアナウンス)「走行中やむを得ず急停車する場合がございますのでつり革手すりをお持ちください」「次は終点二条駅前二条駅前でございます」
(バスのアナウンス)「ご乗車ありがとうございました」「車内にお忘れ物なきようご注意ください」
(栗原由貴)触ったでしょ。
(川上信平)えっ?ずっと触ってたでしょ!俺は…。
痴漢です!この人痴漢です!違うよ!知らないよ俺。
人違いだから。
出るとこ出ましょうよ!一緒に来てください!
(川上)触ってないから!ちょっと!
(由貴)逃げないでください!
(川上)ちょっと…!
(成増清剛)ちょっと通して!ちょっと通してください。
通して通して通して!通して!どうしたの?警察だ。
この人痴漢です。
捕まえて。
人違いです。
(池内弘二)お互い忙しいんだ。
手早く済まそう。
なっ。
私はやってません。
最初はみんな必ずそう言うんだよ。
しかしあんたの場合は被害者である女性に現行犯逮捕されてるんだよ。
今さら四の五の言ったって…。
彼女の間違いです勘違いです!私はやってません。
すんなり認めれば数十万の罰金で済むんだ。
もちろんすぐ釈放する。
すんなりここからお引き取り頂く。
私は絶対やってません。
どうして満員のバスにわざわざ乗るの?
(川上)だから言ったでしょ。
毎朝自宅から店へ行くのに…。
(池内)いい加減認めろよ!やってません!信じてくださいよ刑事さん。
(ドアの開く音)池内さん和田未也子さんです。
(池内)ああ…。
お忙しいとこすみません。
電話した池内です。
どうぞこちらに。
どうぞ。
2か月前にバスで痴漢に遭われたそうなんですけどもその事で少しお聞きしたい事がありまして。
(和田未也子)はいなんでしょう?
(鶴丸あや)副部長。
被害届を出した女性は2名。
日時は違えど同じ路線バスの中で被害に遭ったというわけですね?
(高原純之介)うん。
被疑者は警察の取り調べに一貫して否認し続けてる。
しかしバスの中で卑劣な行為が行われたのもまた事実だ。
被疑者の供述の真偽をしっかり見極めてほしい。
はい。
「川上信平36歳。
京華重久…」あの老舗の和菓子屋か…。

(ノック)
(太田勇一)どうぞ。
こちらへ。
信じてください検事さん。
私は本当にやってない。
検事はすぐにまいります。
お待たせしました。
担当検事の鶴丸です。
(ため息)何か?ダメだこれじゃあ勝ち目ない…。
川上さん最初から話を聞かせてください。
私…やりました。
バスの中で彼女たちを…。
認めます。
認めりゃあいいんでしょ?川上さん…。
犯行を認めるんですか?そうです。
間違いなく私が…私がやりました。
私あの男に触られてるところを直接この目ではっきり見たので間違いありません。
相手の肘の辺りをつかんでやめさせようとしたんですけどそれから3分以上反対に行為をエスカレートさせて…。
検事さん必ず被疑者を起訴して厳罰を与えてください。
ウチのお尻触りながら平然と新聞読んでるのどっせあの男。
バスの中では被疑者と背中合わせになってたわけですよね?被疑者が新聞読んでるのは首をひねって振り向いて確認を?そうですそうです。
検事さんそろそろよろしおすか?今日はおばあちゃんのデイケアの日やし娘を保育園に迎えに…。
その前に晩ご飯の用意もしときたいし。
わかりました。
今日のところはこれで。
気になるわ〜今回の被疑者。
「あ〜これじゃ勝ち目ない」っていきなり私の顔を見て言ったでしょ?
(太田)言ってません。
(斉藤加奈子)言いました。
斉藤お前せっかくまとまりかけた話をぶち壊す気か!?担当が被害者と同性の女性検事だとわかった途端被疑者は投げやりな気持ちになり頑強に警察で否認してきた供述を変えた。
太田さん真実はどこ?真実…斉藤探せ!
(斉藤)真実…真実は…。
(太田)真実ですよね?こんなとこに…ないか。
私真実を探してくる。
検事!検事…!カムバーック!!
(稽古する声)池内さん?
(稽古する声)池内さん!大会近いんですよ!川上信平の迷惑防止条例違反池内さんの担当でしょ?ですけど?微物鑑定やった?被疑者の手や持ち物に被害者の衣服や下着の繊維が付着していたかどうか。
さあやったかなぁ。
2件ともやってないでしょう。
書類来てないもん。
ねえどうして微物鑑定やらないの?痴漢事件の唯一の客観的物証でしょ?犯人否認を撤回して犯行を認めたんでしょ?なら今さら鑑定も何も…。
地獄耳ね。
九官鳥がしゃべった?すぐ地検に戻ってくれって電話の向こうで泣いてましたよ太田事務官。
そうはいかないの!
(稽古する声)ここのご主人捕まったんでしょう?ハレンチよねぇ。
先代も草葉の陰で泣いてはるわ。
ようはやってたのに嘘みたい。
ほんまやなぁ。
こちらの名物は?おすすめはなんですか?
(川上悦子)「笹雪」という和菓子なんですがあいにく今主人がおりませんのでお売り出来なくて。
(鶴丸りん)かわいい!ねえりん…あんた痴漢に遭った事ある?
(りん)何よいきなり。
ないよ。
私はなるだけ満員の電車やバスに乗らないようにしてるから。
私も幸いにして。
お母さんなんか指の先がちょっと触れただけで大騒ぎされそう。
関係ないから笑っていられるけどいつまでも深い傷が残るのよ。
触られた方も触った方も。
触った方も?うん…。
ねえりん「疑わしきは罰せず」って言葉知ってる?それもう日本じゃ死語だよ。
どうして?だって日本じゃ捕まった途端によってたかってみんなで極悪人に仕立て上げてしまう。
警察に手錠かけられたらもう有罪決定って感じで。
たとえあとで裁判で無罪になってもその頃はみんな事件の事なんか忘れてるし新聞にだって小さくしか出ない。
だからって「疑わしきは罰せず」の大原則をないがしろにしていいはずはないわ。
(加奈子)成増さん!
(加奈子)あっ…。
おう。
おはようございます。
おはよう。
あれ?そっちも体験学習か?えっ警部補も?あの事件な俺がホシを所轄へ引っ張ってったんだよ。
だから満員のバス体感しろってあの鶴丸検事がな。
ちょっとやだ…。
ご苦労さま!おうおう。
あっおはようございます!あら?ちょっと…太田さんは?多分さぼりです。
まったくあのおさぼり九官鳥!
(クラクション)あっ!ちょっとバス来ましたよ。
はい並んではい並んで。
いいの?
(バスのアナウンス)「お待たせいたしました」「66系統葛野大路経由二条駅前行きでございます」おうおうおうおう込んでんなおい。
(ブザー)おっとっと!ちょっとちょっとちょっと…押さないで押さないで…。
アッ…!
(加奈子)ああーっ!
(バスのアナウンス)「ご乗車ありがとうございました」「車内にお忘れ物なきようご注意ください」あ〜ほんとにもう…。
聞きしに勝る込み方だなおい。
なんで人のクツずっと踏んでんのよ!そんであやまんないの。
あーん!触られなかった!何期待してんだよ。
検事さん!ああ和田さん!乗っていかはる?地検まで。
いいえ結構です。
お忙しい和田さんの邪魔しちゃいけないから。
実はこれからパートなんですよ。
お昼休みにいったんうち戻っておばあちゃんにお昼ご飯作って。
夜はママ友の飲み会もあるし。
毎日目の回る忙しさですね。
あかん!急がな遅刻や!ほなまた。
(桜井麗子)病院ってほーんとくったびれるわよねぇ。
(吉川香織)病院ってどっか悪いの?
(漆原さやか)いや病気が逃げていくと思うけど。
からかっちゃダメよ。
深刻な病気かもしれないじゃない。
ご心配なく単なる検査入院よ。
(香織)どうせ結果はどこも異常なしやろ?そのとおり。
だって私たまこちゃんのジュース毎日欠かさず飲んでるから。
あっいつもの!私専用スペシャルドリンク!あ〜私も私も!
(さやか・香織)私も!
(柿野たまこ)アイアイサー!柿と豆乳のスペシャルドリンク。
あー…。
でも病院ってなんであんなに待たせるのかなぁ。
おかげで1日つぶれちゃった。
それで今日フィットネス来はれへんかったんや。
ランチもパスしたやろ。
デザート美味しかったのに。
日本の主婦は一日中スケジュールがいっぱい。
忙しい!あ〜しもた…。
今日も住民税払うの忘れてたわ。
フィットネス行く時間があるのやったら払い込みに行ったらいいやないの。
ほんまやな。
もうすぐ忘れて…。
あっ!そうか…。
忙しい主婦は雑事処理の優先順位があるはずよ…。
今まで気になっててんけどな…。
突然自分の世界に入るやろ?
(3人)謎やなぁ。
(加奈子)太田さん。
検事太田さんがバスの満員体験来なかった事根に持ってましたよ。
怖かないよ。
あいつより俺の方が強いんだ。
鶴丸今までに3回泣かした。
ほんとですか?えっ…。
はっはっはっ…ははっ。
口では生意気言ってても鶴丸も所詮俺頼みなわけさ。
俺がいなきゃ仕事が出来ないはかどらない。
だろ?検事なんていうのはな所詮俺たち事務官の手のひらの上で踊るサルだ。
新発見!
(加奈子)あっ…!和田未也子の被害届栗原由貴の事件で川上が逮捕されたあとに出てる。
和田未也子が痴漢に遭ったのは9月3日。
およそ2か月前よ。
どうして2か月も経ってから警察に被害届を出したのか。
そりゃあにっくき犯人が捕まったから…。
和田未也子は超多忙な主婦よ?被害届一枚出したらそれで終わりってわけじゃないわ。
確かに。
警察や地検に呼ばれてあと裁判が始まったら裁判所にも呼ばれて。
和田未也子被害届を出すのに消極的だったと思うの。
それが警察の強い要請があって出さざるを得なかった。
強い要請?警察は川上信平の事件をもう1つほしがったのかも。
なぜ?それはこれからの我々の捜査で明らかにしていきましょう。
鶴丸検事今の検事の推論はとても論理的で隙がない!鋭く明晰なお話感じ入りました。
斉藤事務官の手のひらで踊らされているサルでもこれぐらいの事は考えるのよ。
(未也子)おばあちゃんウチすぐ帰ってくるしお留守番頼むえ!和田さん!おでかけですか?いや検事さん!油揚げ買い忘れたんでちょっとそこまで。
ちょっとお話ししたい事があって。
(未也子)そうです。
検事さんの想像どおりや。
ウチほんまは被害届なんか出しとうなかった。
やはりそうでしたか。
もう事件の事は忘れてたし早う忘れたかったし。
巻き込まれたらただでさえ忙しいのにこれ以上用事が増えたら…。
それもややこしい用事やし。
ウチの体がいくつあっても足りんわ。
せやし最初警察から言うてきはった時ものらりくらり返事を延ばし延ばしにしてたんです。
でも警察はあなたになんとしても被害届を出すように迫った。
もう嫌んなるくらいしつこかったわ。
しつこかった…。
おはようございます!おいっすおいっすおいっす。
どうしてあんな写真使うのよ!我々は適正な捜査をしてますよ。
池内さん私にはなんとしても川上信平に罪をかぶせたいという警察のどす黒い悪意しか感じられないわ。
いちいちこっちの捜査に口出ししてほしくないな。
私だってくちばし突っ込みたくありませんよ。
どうしたのどうしたの二人とも。
成増さんちょっと聞いてよ!例の痴漢事件中京署は被疑者の川上信平を痴漢常習者にでっち上げるために無理矢理被害者を2人にしようと考えたの。
そしてその第二の被害者に写真で面割りを試みたけど川上信平の写真だけが両手錠腰縄付きで露骨に被害者を誘導して無理矢理被害届を出させた!そんな写真使ってませんよ。
和田未也子川上の写真だけが手錠姿だったとはっきり言ってる。
検事川上は罪を認めたんでしょ?だったらそれで…。
不正捜査がわかったのに起訴出来るわけないでしょ。
だから不正はしてませんって!これが不正じゃなければ何が不正なの!?よせって…。
イッタ!
(鐘)ここへ来てからちょうど1時間よ。
一人も客が来ない。
主人の犯行があっという間に知れ渡ったってわけか。
ネットにも面白おかしく書き込みがあったわ。
成増さん恐ろしいわね。
確かにな。
しかし池内だって川上がホシだと確信したから余罪を追及して第二の被害者を見つけだしたんだ。
捜査員として当然の事をしたまでだよ。
世間では「疑わしきは罰せず」の原則は崩壊してるわ。
一度手錠をかけられた人間は全てが犯罪者で抗弁は許されず社会から手厳しい糾弾を受けるわ。
我々捜査に携わる人間はその事を頭に置いて慎重に行動しないと。
池内もその事はよくわかってると思うよ?私も池内さんはあんな事する人じゃないと思う。
だから今回の強引な捜査手法が解せないのよ。
何か…他に原因があるような気がする。
他に原因って?わからないわ。
(高原)知りませんでした。
被害に遭われたのは栗原管理官のお嬢さんでしたか。
(栗原健一)私も娘に聞いてびっくりしました。
警察官の娘でありながら脇が甘いというかなんというか。
いやいやいや満員の電車やバスの中では女性誰もが等しく痴漢被害の候補者ですから。
あまりお嬢さんをお責めにならない方が。
まことにもって世の中には唾棄すべき卑劣漢がいるもんで。
まあこんな事は釈迦に説法だが地検でも厳粛な捜査をお願いしたい。
もちろん我々も常に肝に銘じております。
実は娘の由貴は司法試験目指して勉強中で将来職場となる法曹界に多大な期待を抱いてる。
幻滅させたくない。
責任重大ですがお嬢さんの期待を裏切らないつもりです。
お願いします。
ところで…こちらにいる鶴丸という女性検事はどういう方ですか?え…?我が京都地検で一二を争う優秀な人材です。
ちょうど栗原管理官のお嬢さんの事件の担当を…。
あまりいい噂を聞かないもんで。
(高原の笑い声)まあ彼女は毀誉褒貶相半ばする人間ですが仕事の腕は間違いないと私が太鼓判を。
本当ですか?間違いありません。
(電話)
(高原)ちょっと失礼…。
(電話)はい高原。
…今来客中なんだが。
…わかった。
すぐ行く。
(太田)ああ…。
(加奈子)182と150で…よし!おぉなんだ君もいたのか。
まあちょっと仕方なく…ええ。
副部長例の痴漢事件検証してみたくなって。
2件のうちの1件被害者和田未也子の供述に疑問を覚えたものですから実地検証してみようと…。
私が被疑者川上信平役182センチです。
へえ随分背が高い男なんだな。
反対に被害者の和田未也子は小柄です。
広報官の魚住さやかです。
おう。
身長は150センチです。
和田未也子も150センチです。
あっ…失礼します。
百…。
百…。
身長差が32センチだな!じゃあそこがバスだと思って。
ああ…はい。
太田さん彼女の後ろに背中向きに立って。
こうですか?そう。
被害者和田未也子は中京署での聴取に背中合わせに立っていた男が臀部に左の手のひらを押し当てて触った。
男は平然と新聞を読みながら何度も同じ行為を5分以上繰り返したと答えています。
太田さんやってみて。
はい。
失礼します。
はい。
太田さん!バスの満員体験来なかったですよねえ。
ああ。
実際はこう…!ちょっと…!このおさぼり九官鳥が!なんですか…。
こうだよこう!これじゃ触れないでしょうが。
はい斉藤定規を太田さんに。
はい!多少手を長くします。
お願いしまーす。
えぇ…?どうですか?ほら…お尻。
もっと下です…。
太田さん膝を曲げて。
えぇ?
(高原)おっ触れた。
しかし満員バスん中でこんな格好出来ますか?それも5分以上も!ねえ太田さん今度は両脚を大きく広げてみて。
はい…。
(太田)よいしょっ!ちょっと…。
はい太田さんそのまま新聞読みながら5分間じーっとして。
はい5分間。
あぁ…!無理…無理…。
もうわかった!わかったよあやちゃん。
32センチの身長差のある被疑者と被害者の間で痴漢行為は極めて成立しがたい。
少なくともこれで和田未也子の事件の犯人は川上信平ではない事が判明しました。
うんお見事!うん。
(拍手)警察は川上信平を常習者にしたかった。
だから類似の事件を探しだし川上を痴漢常習者に仕立てあげた。
あやちゃん…こっちが呼び出しておいてなんだがね軽々に根拠のない推測を口にするものでは…。
ご心配なく!栗原由貴の供述の矛盾もおおよそ見当がついてます。
では栗原由貴の事件も川上が犯人じゃない…冤罪だって言うんだな?川上は警察で一貫して犯行を否認していました。
それが地検に来て担当検事が女性の私だとわかった途端にそれまで頑張っていた緊張の糸がプツッと切れた…。
所詮女は被害者の女の味方をすると決めつけ思い込みもうどうでもよくなった…。
私今回ほど自分が女性である事に責任を感じた事はありません。
だからといって…敢えて冤罪の方向で立証しようと頑張る事も…。
そんなつもりは全くありません!しかし栗原由貴の事件も同様に冤罪かどうかは別問題だ!この2つの事件を分けて考えるべきだ…!!副部長…栗原由貴の事件に何か引っ掛かりでも…?彼女は司法試験を目指しているそうだ。
我々の法曹界に憧れと期待を抱いている。
…だから?いや…それだけの話だ。
(おちょこを強く置く音)
(高原)酒が冷めちゃったな。
新しいのもらうか。
おやじさん熱燗!はい。
副部長…。
私は君が正義を実践しようとする限りずーっと君の味方だ。
心配するな。

(鐘)
(ため息)珍しいなあ。
いろいろあってね。
雑念を払おうと思って座ったけど忘れるどころか…頭の中雑念だらけになった。
逆効果。
(鐘)
(鳥のさえずり)今日中京署行くけど何か池内にあったら言っとくぞ。
そうねえ…。
お互い宮仕えは大変ねって言っといて。
多分それが正解だと思う。
じゃあ。
ご苦労さまでした。
こちらです。
栗原由貴さんあなたの供述で二三確認したい事があってご足労願いました。
疑問があれば何度でも来ます。
あの男を絶対起訴して罰してほしいから。
栗原さんは司法試験を受けるそうですね。
はい。
勉強中とか。
今回は不幸な出来事に巻き込まれましたが途中から検事の仕事ぶりを間近で見るいいチャンスだと頭を切り換えました。
あなたの参考になればいいけど…。
じゃあ本題に入りましょうか。
どうぞ。
栗原さんは警察の聴取でもこちらに来て頂いた時も触られているところを直接自分の目で見たとおっしゃってますが…。
そのとおりです。
その日そのバスは朝のラッシュ時間で車内はすし詰め状態で身動きもままならなかった。
…そうです。
押されて突かれてあの男と向き合う形になり向きを変えたくても動けず…。
もう一度伺います。
そんなぎゅうぎゅう詰めの状態で太ももを撫でられているところをあなたは本当に自分の目で直接見たんですか?間違いありません。
斉藤。
太田事務官を呼んで。
はい!
(ドアの開閉音)その満員のバスの中を再現しましょう。

(加奈子)皆さん!ただ今より痴漢検証実験を始めます。
じゃちょっと位置について頂いて…。
こんな感じですかね?はいはい。
はい!じゃあ皆さん2人を囲んでください。
おしくらまんじゅうの要領で。
はいそこさぼってないでその2人!ほらっはいはい!はいはいもっともっとぎゅーっとねぎゅーっと。
(加奈子)もっとぎゅーっと…ブ〜ンですよここ。
はい皆さん揺れてくださーい。
ここはねえ走る路線バスの中ですよ。
(加奈子)ブ〜ン!栗原さん当日のバスの込み具合はこんなでしたか?はい…この感じです。
は〜い。
太田さん触って。
ああ…はい失礼します。
ああ…触りますよ。
(加奈子)もっともっと周りからぎゅっと!これじゃ無理ですねえ。
触れません。
太ももに触って。
いや無理です…。
太田さん!それでもあんたは痴漢!?周りに押されて…手が自由に動きません。
栗原さん痴漢に触られていると想定してみてください。
はい触られているところ自分で見てください。
栗原さんどうです?見えますか?いえ…見えません。
はいお茶いかがですか?あっどうぞ…。
ありがとう。
どうぞ。
思い出した…。
間にキャリーバッグがあったんです。
そのキャリーバッグはあなたの?いえ…誰のかわかりません。
でもとにかく私とあの男の間にキャリーバッグが。
斉藤キャリーバッグ。
(加奈子)はい!はい。
あっやだ!ちょっと…!
(太田)いきます。
はい!見えます!よく見えます。
栗原さんあなたは相手の右肘辺りをつかんでやめさせようとしたと言ってます。
右肘をつかんでみてください。
はい…。
(由貴)はい!やめさせようとしたが相手はそれから3分以上反対に行為をエスカレートさせたと言ってます。
太田さんそのままの状態で彼女の太ももに触れる?
(太田)ん…!触れません。
簡単に諦めないで…触る!ちょっと…。
いや…手を伸ばそうとすると体が斜めになって…。
いいからやって!太田さんそのまま3分以上。
無理無理無理無理…!腰と膝に負担が…。
やるの!!あんた痴漢でしょう!?お疲れさまでした。
ありがとうございました。
お疲れさまです。
お疲れさまでした。
ありがとうございました。
おわかりでしょう?あなたの供述どおりの痴漢行為はどうも成立しづらいようです。
でも私…あいつに…。
あの男に触られたんです!手のひらで何度も何度も撫で回されて…。
斉藤今日のところは…。
はい。
本日はご苦労さまでした。
もうお帰り頂いても…。
あなた検事失格ですよ。
このままあの男を釈放するんですか?あの男はきっとまた同じ事をする。
善良な市民の仮面をかぶって今までと何一つ変わらない生活をしながらまたバスで同じ事を…。
(太田)お引き取りください!
(ため息)火の用心!
(拍子木)検事。
成増さんから伝言確かに伺いました。
例の迷惑防止条例違反両方とも不起訴にするつもりです。
検事…。
2件とも被害者のあの供述では起訴出来ない!検事!申し訳ありません。
私もあんな取り調べは…。
とても不本意でした。
しかし娘の言い分だけを信じてその過ちを指摘して訂正しもしない正しもしない…そんな愚かな父親の命令に逆らえなくて…。
川上信平さん長い間ご苦労をおかけしましたが捜査を尽くした結果今回の事件は不起訴にします。
えっ…!?検察はあなたの犯行ではないと判断しました。
ほ…ほんとですか…?ありがとうございます…。
ありがとうございます!!いったん中京署へ戻ったあと拘束を解かれます。
ありがとうございます。
川上さん早く美味しい笹雪作ってくださいね。
私とんで買いに行きますから。
…はい!はい…!!川上さん喜んでましたねえ。
これで一件落着…ってわけじゃあないのよね。
まだなんかあんの?
(風の音)
(足音)
(ノック)誰だ?地検の…。
(ノック)由貴さん少しお時間いただけませんか?すぐ済みます。
(栗原)由貴はこれから授業だ。
役立たずの検事さんに付き合ってる暇はない。
痴漢に遭うからと送り迎えをしても…これだ。
あなたの噂はどうやら本当のようだ。
降りて。
あなたが法律の世界を目指すならこれで終わらせてはダメ。
自分の目できちんと見届けないと。
何を…。
行けばわかる。
(クラクション)ドアを閉めなさい!由貴さん。
由貴。
どうだ?よう出来てるわ〜。
おこしやす。
いらっしゃいませ。
笹雪ありますか?はいございますよ。
今作りたてです。
じゃあこれください。
はい。
おいくつですか?3つずつ。
はい!
(鳥のさえずり)このお菓子前は行列が出来るほど売れてたそうよ。
(由貴)お客さん誰もいませんでしたね。
今までと何一つ変わらない生活に戻るのは…大変。
一度警察沙汰になったらたとえそれが起訴されようがされまいが同じ。
犯罪を犯していようがいまいが世間の目は同じ。
私たち法曹界の人間が立つ場所はそんなふうに人の社会的生命を左右するおぞましくて危険なところなの。
時にはやりきれなくなる。
私…司法試験受ける資格ない。
そんな事ないわ。
私だって昔はあなたと似たり寄ったり。
頭でっかちで法律書が全てだと思ってた。
熱い血の通った人間相手の商売なのにね。
法律書から少し顔を上げれば世界が見えるっていうのに…。
(鐘)食べようか。
はい。
美味しい…!う〜ん。
こんな美味しいお菓子売れなきゃおかしいわよ。
ゆっくり時間をかけてきっと立ち直る。
あの店も川上さんも。
満員のバス探してんのか?なんでよ!痴漢体験志願したいのかと…。
悪い冗談はやめて。
私が歯ぎしりしてるのは走るバスのどこかに栗原由貴や和田未也子…。
きっともっともっとたくさんの女性を辱めた奴が涼しい顔で乗ってるって事…。
それを思うと腹が立って腹が立って…。
言えてるなあ。
あぁ〜!えぇ〜!?ちょっと待って
おしゃべりあるき目です
2015/10/26(月) 09:55〜10:53
ABCテレビ1
京都地検の女6[再][字]

2件の痴漢容疑で送致された男。容疑を認めるも、様々な点で疑問を持ったあや(名取裕子)は、部屋に大勢の人を集めて痴漢が行われた状況を再現する大実験を試みて…!?

詳細情報
◇出演者
名取裕子、寺島進、益岡徹、大島蓉子、みやなおこ、山口美也子、小林きな子、小林千晴、脇沢佳奈、福本清三、渡辺いっけい、蟹江敬三
《ゲスト》
 前田亜季、高田賢一、藤巻るも ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32723(0x7FD3)
TransportStreamID:32723(0x7FD3)
ServiceID:2072(0x0818)
EventID:40951(0x9FF7)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: