タクシードライバーの推理日誌 2015.10.26


(夜明日出夫)
タクシードライバーには様々な人間たちがいる
転職組がほとんどで元社長もいればエリート社員だった男もいる
家族を郷里に残し単身赴任で働いている者もいる
夜明さ〜ん。
かわいいべ?娘。
おお…かわいいっすね。
今年小学校に入学してね…。
夜明さんとこの娘さんは大学生でしたっけ?ええ。
いいなぁ〜楽でさ。
こっちは先が長い分仕送りが大変でねぇ。
いやいや…頼られるうちが花ですよ。
お父さん頑張んないと!ね?はい!
様々な事情を背負った人間たちが再起を図り第二の人生を歩むためにタクシーのハンドルを握っているのだ
16461646本部応答願います。
「こちら本部。
どうかしましたか?」防犯灯つけてるタクシー発見!警察に連絡してください。
現在地お台場東通り。
「了解」
(クラクション)
(パトカーのサイレン)アイタタタ…!イテテ離せ!あおまわりさん。
自動車強盗。
違う違う違う!ご協力感謝します!俺は強盗じゃない!行くぞほら。
痛い!あんたばしつこく付きまとうから悪いんだべ!この運転手は俺の女房なんだよ!夫婦!?んだ!んだって降りねぇんだもの…。
俺が悪いんですよ。
半年前私の浮気癖が直らないでこいつ子供置いたままうちを出て行ってしまったんですよ。
タクシーの運転手をやってるって聞いて…やっと見つけて戻って来てくれって頼んだんです!それが嫌だって言うんでそれでケンカになってしまったんですよ!それじゃ何?夫婦ケンカで防犯灯つけたの!?俺は…愛してるべよ!失礼ですが警視庁捜査一課にいらしたあの夜明警部補ではありませんか?ああ…。
これは失礼しました!夜明警部!あの…握手していただけます?夫婦ケンカで防犯灯かよ参ったな…。
あ〜あ!よ〜し帰って寝よ。
(木下係長)夜明さんちょっと。
はいはい…。
夜明さんって…ちょっと!毎回毎回同じ事言わせないでよ〜。
営業成績落ちてるの知ってるよ?しょうがないじゃない昨日ああいう事あったんだから。
あれ以来ツキは落ちる売り上げは落ちる。
売り上げの話じゃありません。
新しいドライバーが入ったので紹介しようと思いまして。
うちの営業所にとっては記念すべき第1号の女性ドライバーでして。
女性ドライバー?ええ。
んなババァに会ったってしょうがないじゃない。
適当に言っといて。
いやいやいや…。
南条秋子さんです。
こちら夜明日出夫さん。
(南条秋子)南条といいます。
あ夜明です…。
お先。
あの…。
はい?失礼ですけど…夜明さん刑事さんなさってた方じゃ?…ええ。
やっぱり!私昔お会いした事があります。
えっと高校3年生の頃ですから…12年前。
12年前?南条さん?はい。
うちに張り込みにいらして。
覚えてらっしゃいません?オルゴール。
…ああ!
12年前練馬区内の質店が襲われ女主人が殺害される事件があった
現場にあった遺留指紋から犯人はすぐにわれた
片桐哲也32歳
片桐には愛人がいた
逃走した片桐が接触してくる可能性がある
俺たちは女のアパートを張り込む事になった
(南条昭一)そういう事情でしたら協力いたしましょう。
(南条敏江)屋上の納戸を使っていただいたら?そうだな…さどうぞ。
ありがとうございます。
(神谷警部)ああそれから…この事はくれぐれも内密に。
あわかりました。
タキさん秋子夏美ちょっといらっしゃい。
お手伝いのタキさん。
それから娘たちです。
(秋子)こんにちは!
南条氏の協力を得て…
張り込みを開始して10日後
神谷!片桐!
無事犯人を逮捕する事が出来た
これはつまらないものですが。
ありがとうございました。
ご丁寧に。
恐れ入ります。
ああ…ルノアールですか。
あ…シャ…シャガールです。
あ…。

(オルゴール)
(南条夏美)犯人が逮捕されたってほんと!?はい。
見たかったなぁ犯人が逮捕されるとこ。
(敏江)夏美!なんです!?その口の利き方は。
もうすいません。
かわいいですね。
私が小さい頃から大事にしている宝物です。
刑事さんよかったですね犯人が逮捕されて。
(笑い声)あそうですかあの時の…。
その節はお世話になりました。
ありがとうございました。
いいえ。
どうも。
あの…。
夜明さん刑事さんお辞めになったんですか?ええ8年前に…。
っていうかまさかこんなとこで会うとは思わなかったですね。
ほんとに…。
新米でわからない事ばかりです…よろしくお願いします。
こちらこそ。
あの時の娘さんが?ほんとですか。
もちろん覚えてますよ。
かわいらしい娘さんたちでしたからね。
うん…そのお姉さんのほう秋子さん。
驚いたよ。
「でも…どうして?」だってそうでしょう?確かお父さんの南条さんは美術品を扱う貿易会社の社長さんで家の中にも高そうな絵が飾ってあった。
確かルノアールの。
違う!シャガール!シャガール…?あんな豪邸に住んでたお嬢さんがどうしてタクシーの運転手に?さあな…。
「訊かなかったんですか?」タクシードライバーってのはみんな色んな事情を抱えてんの!それ訊かないのが同業者の仁義。
そういうもんですかねぇ…。
(東山刑事)夜明さん?すいませんちょっと…。
夜明さん?「おお東山」お久しぶりです。
最近随分お会いしてませんし今晩あたりいかがですか?警部肴に冷酒でもキュッと。
残念ですが今夜は東山は残業がありまして民間人と酒を飲む暇はありません。
あしからず。
あっ!ひでぇ…。
何が酷いだ!お前タタキの報告書はどうなってんだ!?少しも仕事が進んでないじゃないか!少しは国代を見習ったらどうだ!?お疲れ!
(国代刑事)お疲れ様です!さて!今夜のアフターファイブは何しよっかな〜?先輩はどうなさるんです?アフター…イレブン?イレブン。
さすが東大出てるだけあって仕事片すのは早いわ!でも刑事の値打ちっていうのは…。
職事で決まるんじゃねぇんだよ!?おはようございます!おはようございます。
いってきます!いってらっしゃい!
翌日から彼女のタクシードライバーとしての日々が始まった
ねぇ私急いでんのよ!もう少し早く行けないの!?すいません…。
まだ慣れないのはわかるけど売り上げが3万じゃねぇ…。
もう少し頑張ってくれないと!すいません。
ねぇそういう言い方ないんじゃない?この人食べる時間惜しんで働いてんだよ?じゃ何?食べるな!休憩するな!…そういう事言ってるわけ?いやいや私は別にそういう事を言ってるわけではなくて…。
じゃ何言ってんの?ちゃんとわかるように言ってよ。
いやいやだから…。
だから何?ちょっとそうやって迫ってこないでよ!日比谷通りから数寄屋橋の交差点は必ず込むから避ける事。
それと売り上げを伸ばすためにはただ漠然と流すより拠点決めたほうがいいですよ。
例えばあの…。
日中は朝が勝負だから駅を決めて駅出し。
駅から会社戻る駅から会社戻る…。
短距離の客を数でこなす。
あとは官庁街。
官庁街?ええ役人は不景気関係ないですから中には羽田っていう長距離が昼に。
それと稼ぎ時はなんつっても夜ですからね夜は…。
…はい?ありがとうございます。
ああいや…。
わっ!夜明さん。
どうですか?調子は。
…まあまあです。
食事はちゃんととったほうがいいですよ。
そう思うんですけど時間がもったいなくて。
夜明さん私もう行っていいですか?ああ…。
すいません。
(秋子)あの…。
はい?夜明さんの住所教えていただけますか?は?どうしてですか?ちょっと…。
すごーい!すいませんこんな事していただいて。
いえ夜明さんにはお世話になりっぱなしで。
一人暮らしをしてらっしゃるって聞いたものですからお口に合うかどうかわかりませんけどでも腕には自信あります!じゃ遠慮なくいただきま〜す。
どうぞ!いただきま〜す。
うまい…うまい!あの…ご結婚は?離婚しました!娘が1人いて時々遊びに来てくれます。
バカな娘で最近遊びほうけて…。
娘の…あゆみです。
こんばんは南条です。
じゃあ私これで…。
あ…どうもすいません色々。
ありがとうございました。
気をつけて!
(秋子)はい。
(扉が閉まる音)
(あゆみ)まっお父さんが誰と付き合おうと構わないけど。
変な言い方するなよ誤解だよ。
今の人は会社で新人ドライバーで相談乗ってあげてるだけ。
人の相談に乗る前に娘の相談に乗って欲しいもんだわ。
お前…なんか悩みあんの?あるわよ〜私もいよいよ来年大学4年生でしょう?就職を決めなくちゃいけないんだけど多分無理だと思うの。
無理って…。
この不景気だもん女性にとって就職は難しいのよ?いや…そんな事いってもさ…。
私ね将来の事真剣に考えてみたの。
やっぱり技術や資格なり何か身に付けなきゃいけないと思うのよ。
それで…決めたの。
私大学卒業したら留学する。
留学!?ニューヨークにねビューティーアカデミーの専門校があるの。
そこに留学して…。
留学ってそんな…。
費用は400万ほどかかるんだけどヘルプしてくれるわよね?いやいや…か簡単に言うなよ。
俺の知り合いの運転手さんがいて「夜明さんもう娘さん大学生ですか楽ですね」って俺を楽させてくれよ留学なんか…。
ヘルプしてくれないの?いや…。
じゃあ私二種免許とる!え?就職出来なかったら私もさっきの人みたいにタクシーの運転手になるの。
またあゆみ〜。
なんでそういう言い方するの?親子2代で。
(パトカーのサイレン)ご苦労様です。
ご苦労様です。
鈍器で一撃…。
硬直の具合から死後半日は経過してるようです。
という事は昨日夕方からですか?はい。
身元は?名刺や免許証といったものがなかったので今のところわかりませんが所持品の中にこんなものが。
携帯電話?
(国代)電話会社に問い合わせ携帯の端末番号からガイシャの身元がわかりました。
立花登36歳。
念のためガイシャの指紋照会を行ったところ意外な事もわかりました。
前科があったのか?はい。
立花は建設会社に勤めトラックの運転手をしていたんですが2年前人身事故を起こして服役しています。
市原の交通刑務所を出所したのはつい1週間前です。
1週間前?はい。
その事故を捜査した三鷹東署から立花に関する資料を送ってもらいました。
立花の履歴身上および事故の概要はここに。
これは…。
どうかしたんですか?タイヤとマットはタワシで洗ってあとは…水洗い。
先輩!東山。
仕事明け?よし一緒飲もう!いえ…自分ら仕事で来たんです。
仕事…仕事って何?南条秋子さんですよね?…はい。
ああっ!ちょっ…。
先輩…。
ごめんごめん。
今回だけはほんとに民間人は大人しくしといてください。
民間人民間人ってここは俺の会社だよ!?ああ!お前止めてこいよ!はい!悪い悪い悪い…。
今朝方立花登の死体が発見されました。
昨日何者かに殺害されたようです。
立花をご存じですよね?はい。
2年前あなたのご両親を交通事故で死亡させた男です。
失礼ですが昨日10日夕方頃どちらにいらっしゃいました?仕事してました。
タクシードライバーを?はい。
気悪くしないでください。
あの…刑事っていうのは人を疑うのが仕事みたいなとこありますから。
でもビックリしました…。
ご両親が亡くなってたなんて。
お父さん確か貿易関係の…?父は美術品が好きでそれを扱う仕事をするのが夢でした。
父は元々千葉で造り酒屋をしていたんですが東京へ出てきて事業は成功しました。
私も美術品が好きで大学を卒業して父の会社に就職しました。
でも…でも世の中はうまくいきません。
バブルがはじけて父の会社は経営難に陥りました。
でも父は頑張って…なんとか会社を存続させたんです。
2年前…不幸は形を変えて突然やって来ました。
(秋子)
あの夜父は母と2人で外食してくると言っていました
借金のめどがついたのでしょう
笑顔で出かけていった事を覚えています
事故に遭ったのはそのわずか30分後でした
(昭一)敏江!
(悲鳴)トラックを運転していたた…立花さんはその場で逮捕されました。
原因は…居眠り運転だったそうです。
ご両親が亡くなって…それであなたは?父の会社は部下の伊坂さんという方が継いで私は色々あって…。
ほんとに色んな事があって…会社を辞めました。
家三鷹でしたね?その伊坂さんて方と妹の夏美が結婚をして今は2人で住んでます。
私は就職先を探しました。
でも今はどの会社も人が余ってる時代で。
そっか…。
夜明さん。
両親を死に追いやった立花さんを恨んでないと言えば嘘になります。
でもあれは…あれは事故だったんです。
服役して罪を償った立花さんを私は殺したりはしません。
伊坂夏美さんですね?お姉さんの南条秋子さんから妹さんこちらにいらっしゃるとお聞きしたものですから。
それで…昨日の夕方頃なんですが。
(伊坂夏美)つまり私を疑ってるわけ?死んだ両親の恨みをはらすために私が立花を殺したと?いえ…そういうわけじゃないんですよ。
姉はどうだか知らないけど少なくとも私はそんなバカな事はしないわ。
「姉はどうだか知らないけれど」…それどういう意味ですか?私はあの女とは違うと言ってるの。
私には守るべきこの店がある。
今の幸せを失うような事はしないわ。
とにかくアリバイを訊かれる筋合いはありません。
何か訊かれちゃいけない事が…。
まあまあまあ…。
ご主人?なんでもご主人の伊坂さんお父さんの会社を立ち直らせたとか。
すごいじゃないですか…。
こんな立派なお店まで出されて。
ね?刑事さん…帰っていただけません?質問の答えがまだ…。
(ため息)このお店は夜7時まで営業してるの。
夕方なら店にいたわ。
当然ずっとですよね?5時頃お店の子と一緒に食事に出たけど。
もういいでしょう?お引き取りください。
(伊坂忠彦)夏美か。
どうした?立花が殺された?刑事が来て私の事疑うの。
あなたのところにも押しかけて私の事色々訊くかもしれないけどその時は追い返して。
呆れてものも言えないわ。
わかった。
立花が…。
殺された立花があの姉妹と関わりがあると知った時は正直驚きました。
それで夏美さんとこ行ったの?はい。
解剖の結果犯行時刻は昨日の午後4時〜6時の間です。
夏美はその間は店で働いてました。
夕食をとりに外出していますが一緒に行ったというアルバイトの子に確かめたところ間違いないと証言しました。
夏美にはアリバイがある。
比べて秋子のアリバイはあいまいだ。
夜明さん…同業者としてタクシードライバーとしてのあなたの意見を伺いたいんです。
ん?これは秋子の昨日の乗務日誌とタクシーのタコグラフです。
日誌によれば犯行時刻秋子は新宿で客を拾い調布まで走行しています。
調布で客を降ろしたのが17時25分。
ですが乗務日誌は本人が記載する以上嘘を書く事も可能です。
タコグラフも行き先まで記録されるわけじゃない。
そんな事はさぁ本部で訊きゃあすぐわかる事じゃない。
タクシーがどこを走行してたかは本部で車両位置探査システムによって全車両の走行状況が記録されてる。
(神谷)無論確認しました!犯行時刻確かに秋子のタクシーは新宿調布間を走行してます。
そのあと都心に戻り営業を続け翌朝営業所に戻るまで現場の有明埠頭に行った記録はありません…。
だったらさ…。
それでも念のため!夜明さんにお訊きしたいんです。
カラクリの入り込む余地が絶対にないと言えるのか!?神谷はどうして秋子さんを疑うの?カラクリも何も犯行時刻調布にいた秋子さんがどうして有明で犯行出来んの!?犯行現場は有明埠頭とは限りません!じゃ百歩譲って犯行現場が調布だとして死体の問題はどうすんの!?そしたらどうして調布から有明へ捨てんの!?秋子さんが調布から有明に行ってない以上!遺棄したのは夏美かもしれません!2人の共犯という事も。
その可能性は薄いと思います。
夏美に事情を訊いた時夏美はどうも秋子の事を嫌ってるようなんです。
まとにかく今度の事件には秋子が…。
いいかげんにしろよ!?秋子さんが犯人かもしれないとか妹さんに嫌われてるとか!神谷!お前だって覚えてないのか!?10年前の秋子さん…。
暑いですね!…ごめんなさい大っきい声出しちゃった。
張り込みで迷惑をかけてるのにあの子は冷たい飲み物を持ってきてくれた
(秋子)降参?
(夏美)降参。
このねPの角度を出すにはこのAとBをこの公式に…。
秋子さんは…妹思いの心の優しい女性だった。
そりゃ確かに2年前ご両親亡くしてつらい思いしたかもしれない。
けどその悲しさ乗り越えてタクシーのハンドル握って懸命に生きてるんだよ。
そんな人が人殺すわけない!だいたいお前ね短絡なんだ!短絡!交通事故と今度の事件結びつけるなんて。
お前ねそんな推理の力じゃねせいぜい警部止まりだよ。
家族がかわいそうに…。
家族がかわいそうといえばおたくのあゆみちゃんも大変なようですね。
お父さんが留学資金を出してくれないとかでアルバイトして稼ぐしかないって言ってたそうだなぁ!アルバイト!?アルバイト?あ…あの…はい。
ネイルサロンであゆみちゃん見かけたもんですから…。
あえ!?夏美さんの店で…アルバイトしてんの?あゆみ。
じゃあ何?ビューティーアカデミーって爪!?いえいえいえ…ネイルアートです。
向こうでライセンスとりたいんじゃないですか?美容関係の仕事なら将来性もあるし…。
将来性もありますし自分はあゆみちゃんに合ってるんじゃないかなぁと思うんですけど。
留学資金ぐらい出しましょうよ。
何?お前たち…あゆみの心配してくれてんの?
(3人)はい!いいかげんにしろよ!?何が留学だよ…。
娘を1人でアメリカやるなんて…。
向こうにはジェフ君とかガブリエル君とかいっぱいいんだぞ!?ダメ!ダメ!留学なんか絶対ダメ!立花の携帯の通話記録を調べたところ立花は計5回以前勤めていたせいと建設に電話をかけています。
クビになった会社にどうして?以前の同僚に会っていたのか…。
せいと建設はあまり評判のいい会社じゃないですよね?ええ…ゼネコンとしては中堅どころですが暴力団との関係が噂されてて。
立花がそっちの線と繋がってたっていう事は?さぁ今のところは…あそれからもう1つ。
通話記録で妙なものが。
1度だけですが立花がなんとも場違いなところに電話をかけてるんです。
場違いなところ?どこですか?国会議員沼田泰三氏の事務所です。
(沼田泰三)あ…。
警視庁捜査一課の東山といいます。
国代です。
話は今秘書の早瀬から聞きました。
なんでも殺人事件の被害者がうちの事務所に電話をしてきてるとか。
はい立花登という男です。
電話の内容は…なんだったのかと思いまして。
ハハハ…とまあ言われてもねぇ立花という男に心当たりはないし何かの間違い電話じゃ…。
そうとも考えられますが…。
通話記録によりますと3分間の通話が記録されてます。
間違い電話にしては長過ぎます。
その立花という男はせいと建設にいたと言いましたね?はい。
ああ…じゃああれだ。
嫌がらせの電話ですよ。
ああ。
それはどういう事ですか?実は今…千葉で産業廃棄物の処理工場の建設の話が進んでおりましてな。
千葉は私の地元です。
「環境問題の沼田泰三」とまあこういう事になっておりまして。
「認めるわけにはいかない阻止する!」と言った途端に推進派の連中からイタズラ電話だの脅迫状だのが届くようになりましてな。
この1週間は特に酷くて…。
あの…それがどうして立花と?工場の建設を請け負ってるのはせいと建設なんです。
嫌がらせは…依然続いております。
しかし私は屈するわけにはいかない!処理工場の建設は断固私が阻止する!!嫌がらせねぇ…。
沼田氏は環境問題に取り組むクリーンな政治家として有名です。
電話は嫌がらせ以外に考えられません。
立花は出所した後せいと建設の人間と会い再就職を頼み込んだ…。
つまりせいと建設は立花に脅迫や嫌がらせといった裏の仕事を与えていたというのか。
その可能性はあると思います。
まぁそこでなんらかのトラブルが生じて…。
とにかくこうなったら殺害当日の立花の足取りを徹底的に追うしかない。
あの日立花は誰と会っていたのか。
ああ立花さんなら以前はよくお見えになりましたが最近は1度も…。
そっすか…。
立花は随分ギャンブル好きの男だったんですね。
東山さん。
あ…。
わかりました。
立花は事件当日ゲーム賭博の店に平井という男と現れたようです。
しかも店員の話では2人は店の中で口論してたと言ってるんです。
口論?はい。
で平井というのは?平井康明暴力団龍神会の組員です。
いらっしゃいませ!あ珍しいですね。
近くまでお客さん乗せたもんですから。
それにここに来たらひょっとしたら夜明さんに会えるんじゃないかと思って…。
あ何食べてんですか?さんま定食です。
さんま!はい!ご飯大盛り!あいよ!調子どうですか?まだまだです。
売り上げのほうは夜明さんのおかげで少しずつ。
そりゃよかった。
お待ちどおさま!確か田舎千葉だっておっしゃいましたね?大多喜という古い城下町で6歳の頃までそこに住んでました。
出来れば…あの頃に戻りたいです。
東京へ来なければ両親が事故に遭う事もなかったですから。
あの…この間の事件はどうなったんでしょうか?そうですねあの…立花が前いた会社とか交友関係洗ってるみたいですけどどうなったんすかね。
じゃあ私そろそろ。
あ…。
だったらいいよ!他のタクシー乗るから!すいません…。
なんだよふざけやがって!申し訳ありません。
(車が遠ざかる音)
(パトカーのサイレン)
(窪寺刑事)ガイシャは伊坂忠彦40歳。
夏美の夫が!?どうなってんだ…?直接の死因は失血死です。
凶器はナイフ。
刺創は腹部と背中に3か所あります。
3か所も。
ガイシャは背後から襲われ逃げようとしたところをさらに正面から2度腹刺されてます。
殺されてから川に捨てられた…。
死亡推定時刻は?はい。
角膜の白濁具合から死後約12時間は経ってるとの事です。
つけ爪ですね…。
つけ爪…。
奥さんの夏美さんは?それが…家にはいないんですよ。
昨日はずっと店にいました。
夕方所用で外出しましたけど7時に戻ってあとはずっと…。
会社に泊まり込んで働いてらした。
伝票の整理などがたまっていたもので。
ちょっとこれ見ていただけますか?遺体のネクタイの裏に挟まってたものですが…これに見覚えは?失礼ですがあなたのものでは?いえ。
ではあなたのお店で売られた?違います。
店によってデザインに特色があるんです。
うちでは黒はほとんど使わないし社員がデザインしたものも全部私がチェックしてますから。
おたくのでないとなると…。
ご主人の周辺にどなたかつけ爪をされてる…。
愛人がいたというんですか!?主人にそんな女はいないわ!ああすいません…。
では最近ご主人が誰かともめていたあるいは誰かに恨まれていたという事はありませんか?…いいえ。
乗車拒否をしたって本当ですか!?近代化センターにクレームが入ったそうです。
昨日の夕方あなた男性のお客様を乗車拒否したっていうじゃないですか!?だったらいいよ!他のタクシー乗るから!すいません…。
なんだよふざけやがって!申し訳ありません…。
あの時の…。
困るなぁ〜!成田まで行って欲しいってロングの客をどうして断ったりしたんです!?乗車拒否をしたのではありません。
あの方はとても急いでらして7時までに空港に行って欲しいって言われたんです。
私にはそんな自信はありません。
ですから申し訳ありませんと謝ってお断りしたんです。
とにかく明日近代化センターに私と一緒に行きましょう!謝って済めばいいんだけど。
(電話)はい桑原営業所です。
お疲れ様〜。
南条さんお電話です。
夏美?なんですって!?わかったわ…すぐ行きます。
なんかあったんですか?妹の…ご主人が殺されたそうです。
私も一緒に行きましょうか?12年前の…そうでしたか…。
この度はご主人大変な目に…。
…お父さん!あゆみ。
娘です。
お世話になってます。
何しに来たの!?うんまあ色々あってね。
事件の事?あの2人姉妹で昔から知り合いなんだよ。
だから気になって…。
(秋子)伊坂さんが殺されたって本当なの?どうして!?私にもわからないわよ…。
とりあえずあんたには知らせとこうと思って。
もっとも…知らせたところであんたはお葬式にも出てくれないだろうけど。
ざまぁみろって思ってるんでしょう。
バカな事言わないで。
正直に言えばいいじゃない。
伊坂はあんたを裏切った…そのバチが当たったんだって。
夏美…どうしていつもそんな口の利き方を。
私は…あんたみたいに体裁つけてる女は嫌いなの。
だったら…私も1つだけ言わせてもらうわ。
あの男を南条家の墓に入れる事は絶対に許さない!伊坂は私の夫よ…!?あの男はダメだと言ってるの!!夏美…まだわからないの?あの男はあなたに取り入ってお父さんの会社を乗っ取ったのよ!?その伊坂と…だったらあんたはどうして付き合ってたの!?私に伊坂を奪われたからってそういう言い方はないんじゃないかしら…。
何すんのよ!?夏美…どうしてわかってくれないの?秋子さん!
(秋子)情けない姉妹だと思われたでしょうね。
夏美とは会うといつもケンカで。
1つ訊いていいですか?伊坂さんの事なんですけど…。
伊坂は酷い男です。
両親が亡くなって…伊坂は私と夏美を慰めてくれました。
その優しさが嬉しくて…。
伊坂と一時期付き合っていたのは事実です。
でもあの男の魂胆はすぐにわかりました。
会社を乗っ取るため…。
伊坂は父の遺志を継ぐと言っておきながら社長に納まると…事業を切り替えました。
父が愛した美術の仕事など…伊坂にとってはどうでもよかったんです!その伊坂さんと…夏美さんが結婚した。
どっちがよかった?…秋子と私。
(夏美)あんたがどう言おうと私は伊坂さんと結婚するの。
騙されてる事がわかんないの!?あの男に!伊坂は…私のものよ。
負けたからって惨めな事言わないで。
絶対に許さない!結婚なんて!!あんたにそんな事言われる筋合いはないわ!待ちなさい許さないから!!偉そうな事言わないで!!
(秋子)どうしてわかんないの夏美。
(夏美)うるさいわね!
(秋子)あの男はあんたを騙してるのよ!?
(夏美)うるさいって!
(秋子)夏美は私から伊坂を奪った気でいますけど伊坂に利用された事に夏美は気づいていないんです。
私は夏美を許せない。
夏美が伊坂と結婚をした時私たち姉妹の溝は取り返しのつかないものになりました。
夏美は私が通っていた高校の受験に失敗しました。
その頃からです。
何かと夏美はひがみっぽくなって。
揚げ句の果てに同じ男を好きになって憎しみあって…。
姉妹だったからかもしれません。
妹の不幸は…姉の勝利。
姉の悲しみは…妹の喜び。
仲直りしたほうがいいっすよ。
ご両親亡くなってたった2人じゃないですか。
(秋子と夏美のはしゃぎ声)
(南条)ほら買ってきたぞー。
(南条)はい。
(敏江)あっ。
(夏美)あー。
夜明さん。
はい?私も1つ訊いていいですか?ああ。
どうして刑事さんをお辞めになったんですか?8年前ある事件に関わった女性との事誤解されて週刊誌にまで書かれてそれで…。
そうでしたか。
人生って突然不幸が降ってくる。
平穏にはいかないもんですね。
(窪寺)南条秋子さんですね?伊坂さんの事件の事でお伺いしたい事がありまして。
署までご足労頂けますか?はい。
お前たちまだ秋子さんを疑ってんの?今度の事件は夜明さんにも協力してもらわなければならないんです。
おい説明しろ。
あっはい…。
立花続いて伊坂。
この姉妹に関わりのある人間が2人も続けて殺されました。
さすがにこれは偶然だとは思えません。
同一犯の仕業だって言うの?この2人に恨みを持つ人間がいるとしたらそれは一体誰なのか?秋子です。
簡単に言うなよ。
両親を事故死させた立花。
秋子裏切り妹へ寝返った伊坂。
2人に恨みを持つのは…秋子だけです。
物証は証拠は?つけ爪です。
つけ爪?これなんですけども…。
伊坂の遺体のネクタイの裏に挟まってました。
まあおそらく犯人ともみ合っているうちに取れたんでしょう。
じゃ夏美さん?ネイルサロンの。
だと思いますよね。
うん。
でも犯人が誰であれ殺害をしたあとつけ爪を落とした事に気づけば慎重にチェックするのが普通です。
ですからこれは夏美に容疑を向けさせる為に犯人がわざと置いてったんではないかと…。
犯人は夏美をも恨んでる人間だとしたら…。
(秋子の声)姉妹だったからかもしれません。
妹の不幸は…姉の勝利。
調べたところ秋子と夏美の反目は相当なもんです。
バカ言ってんじゃないよそんな。
姉さんが妹に容疑向けさせるなんて全部推測じゃない。
推測でもこれだけ動機が揃ってたら秋子を疑わないわけにはいきません。
まあそこで夜明さんにもう一度確かめてもらいたいんです。
アリバイ?解剖の結果伊坂が死亡したのは昨日16日5時〜7時の間です。
その時刻秋子は5時〜5時12分…。
男性客を乗せ築地へ走行しています。
これは同僚の運転手が目撃しています。
5時25〜5時55分築地の店で夕食をとり6時10分〜7時。
銀座で拾った女性客を乗せて草加方面へ走行しています。
(女性客)へえ…女性の運転手さんなんだ。
珍しいね。
なおこの女性客からは間違いなく秋子のタクシーに乗ったと証言がとれています。
草加から戻ったあとは都心で営業。
車両位置探査システムによると今回も遺体のあった現場多摩川方面へは走行していません。
だったら完璧じゃない。
その5時25分〜5時55分。
築地で食事。
俺一緒だもん。
それはわかってます。
いやだったら…。
伊坂は昨日の夕方殺されてるんです。
しかも現場には争ったあとや血痕は見当たらない。
つまり殺害現場は別でそのあと死体は川へ運ばれた事になる。
彼女川に行ってないんだろ。
夜明さん同業者をかばいたいあなたの気持ちはわかりますよ。
同業者だから言ってんじゃないの!乗務員室の中にからくりが隠されているかもしれないんです。
あなたなら見抜けるはずだ!神谷…お前にはほんとに失望したよ。
私もですよ。
東山その立花の交友関係ってどうなってんの?はいこの男広域暴力団龍神会の平井という男なんですが行方はまだつかめてません。
こいつは?代議士の沼田氏です。
立花は電話をいれてたようですがそれは本件とは…。
じゃあもう決まりじゃない。
こいつを殺したのは逃げてるこいつ。
こいつを殺したのは…つけ爪の女。
これで決まり。
一件落着。
(神谷)東山!はい。
明日は南条家にいたお手伝いさんに話を聞くんだったな。
はい。
秋子はまだ他にも動機があるかもしれない。
徹底的に聞き込んでこい。
東山!はい。
明日迎えに行く。
は?迎えに行ってやる。
あっいや…わざわざ先輩に…。
いいから行くよ。
大丈夫です。
先輩まさか…。
え?え?まずいんだよなぁこういうの。
警察に車いくらだってあるしな。
はい。
赤信号進んでいいやつだってあるんだから。
でも経費で落ちますよね。
まあ都内だから…落ちますよねぇ。
(田中タキ)南条さんのお宅には2年前夏美さんが結婚する前までお世話になっておりました。
それで伊坂さんについてなんですが…。
悪い男ですよー。
南条さんの会社はもちろんあのお屋敷まで奪い取ったんですから。
それどういう事ですか?夏美さんを騙したんですよ。
それだけじゃありません。
あの男は千葉にある南条さんの土地まで売っ払っちゃったんですよ。
先輩いくらなんでも千葉まで行く事はないんじゃないんですか?あの…自分もそう思うんですけど…。
んな事ないよー。
だって神谷は徹底的に調べて来いって言ってたろ。
また上がった…。
(房子)こっちには南条家の人間はもうだ〜れもいませんで昔世話になった私が墓守をさせてもらってます。
そうですか。
それで…。
あっ土地の話ならもちろん私存じております。
昭一さんは会社が苦しくなった時もご先祖様の土地には手をつけようとしませんでした。
あの男はその土地を奪って売っちゃったんですからね。
ほんっとに夏美お嬢さんもとんだ男につかまったもんですよ。
でもどうしてそこまで?莫大なお金になったからですよ。
あの土地は近々道路が通るって話ですからね。
誰かからその情報仕入れたんじゃないですか。
秋子さんはどうでした?伊坂の事を…。
恨んでましたよ。
「あの男だけは絶対に許さない」って。
あの…つかぬ事をお伺いしますけど昔南条さんちで乳母やってたんですよね。
ええ…もうふた昔以上も前の話です。
そりゃあ仲のいいお嬢さんたちでしたよ。
(敏江)お母さんねお父さんの仕事のお手伝いで先に東京へ行かなくちゃならないの。
寂しいけど秋子と夏美はしばらくこっちでお留守番していて欲しいの。
これを2人にあげるから仲良くしてるのよ。
(秋子・夏美)すごーい。
きれい…。
(秋子)パチパチしてる。
(夏美)すごーいきれい。
すごーい。
わぁ。

(オルゴールの音)
(房子)東京に行ってからは仲が悪くなったって聞いてます。
向こうは環境が違いますからねぇ。
昭一さんもどちらかに会社を継がせたいとしていたしもう嫌でも競争するしかないじゃないですか。
こっちにいればいがみ合う事はなかったでしょうに。
悲しい事ですよ。
血の繋がっているのはあの2人だけなのに…。
伊坂は会社を乗っ取っただけでなく家を奪って秋子を追い出し土地までも強奪した。
先輩動機は十分すぎるんじゃないですか?
(秋子の声)出来ればあの頃に戻りたいです。
(房子の声)悲しい事ですよ。
血の繋がっているのはあの2人だけなのに…。
(夏美)いや…ややめて。
(銃声)
(悲鳴)
(クラクション)
(銃声)大丈夫ですか?
(秋子)夏美!な…。
何!?ほんとか?不審な男が目撃されてるんですがそれが平井なんです。
しかも夏美さんだけじゃありません。
夜明さんの話によると秋子さんも平井に襲われてるんです。
平井を追え!全捜査員をあげてだ!平井!
(女性の悲鳴)何するんです!
(平井康明)来るな!健太郎健太郎!平井!来たらぶっ殺すぞ!平井!来るな!
(子供の泣き声)
(銃声)ぶっ殺すぞ!
(子供の泣き声)
(平井)撃つなー!平井!撃つなー!ああー健太郎!
(銃声)健太郎!健太郎!
(平井)放せ!平井!押さえろ!先輩!平井…。
(窪寺)目撃者だけじゃない。
お前の服から夏美さんのものと同一の血液反応が出た。
さっさと吐いたらどうなんだ。
夏美さんを殺したのはお前だな。
ああ。
(銃声)
(悲鳴)それだけじゃないだろ。
立花それから伊坂やったろ。
違う。
お前立花ともめてたじゃねえか。
それから伊坂とも何かトラブルがあった。
原因なんだ?金か?説明してもらおうか。
殺された伊坂のネクタイの裏に…。
これと同じもんが残ってたんだよ!
(オルゴールの音)どうぞ。
なんかあの…自分に出来る事ありますか?大変でしたね。
どうしてこんな事になってしまったのか。
これ…。
家を出る時に私が持って出ました。
シャガールとオルゴールはどうしても手放したくなくて。
でも今は…これだけになってしまいました。
夏美殺しは認めたんですがあとは否認しています。
平井で決まりですよ。
証拠は全部揃ってます。
(ため息)それにしてもつけ爪をしていたのが男だったとはなぁ。
結局夜明さんが言ったとおりになりました。
夏美を殺した動機はなんなんだ?それなんですが…。
口を割ってないのか?はい。
(あゆみ)夏美さんこんな事になるんだったらお姉さんと仲直りしたかっただろうなぁ。
はい。
あっサンキュー。
いつだったかね夏美さんが言ってたの。
「あゆみちゃんは一人っ子でいいわね」って。
夏美さんのお父さんね昔っから勉強が出来るお姉さんばっかりかわいがってたんだって。
子供差別する親いないよ。
妹にはそう思えるのよ。
洋服だってお古押し付けられるわけだし。
妹は張り合うしかないんだよ。
フッ…わかったような事言っちゃって。
わかるわよう。
私だってこれまで何回もお母さんとぶつかってるんだもん。
女同士ってね難しいの。
事件は解決したんでしょ?う〜ん…。
お父さんどうしてそんなに秋子さんの事気になるの?お父さん昔…あの家族見て羨ましいと思った。
真面目なお父さん優しいお母さん仲のいい子供たち。
それに比べて俺仕事ばっかで家族に迷惑ばかりかけてたからなあ。
そんな事ないよ。
そんな幸せな家族をたった1つの交通事故が壊してしまった。
それでも秋子さん立て直そうと懸命に頑張ってる。
夏美さんとだって仲直りしたかったはずなんだ。
そんな秋子さん見てるとほっとけない…。
《平井はどうして秋子さんを襲い夏美さんを殺したのか…》あー。
「環境問題を提起し続ける沼田代議士」「長男・博さんは平成9年12月イギリスへ留学」あれ?この絵どっかで…。
シャガールだ南条さんちの。
《南条家にあったシャガールの絵がどうして沼田氏の家に?》《2人知り合いだったのか…》そういえば…。
代議士の沼田氏です。
《殺された立花も沼田に電話をいれてたと…》《一体なんの為に…》南条さんちにシャガールの絵がありましたよね?はい。
あの絵は南条さんが沼田さんに?いえ伊坂さんが沼田先生に譲ったんです。
あっ伊坂さん沼田さんと知り合いだったんですか?そうです。
それが何か?いえ…あっ最後にもう1つだけ。
はい。
2年前事故に遭われる前南条さんのご主人と奥さんなんか変わった様子ありませんでしたか?変わった様子って言われても…。
なんでも結構です。
そういえば事故に遭う2日位前だったかしら旦那様と奥様が妙な話をしてらしたのは覚えてます。
妙な話?
(南条)いやぁそれにしても大変なものを見たもんだな。
(敏江)本当ですねぇ。
でもこれでもう火事が起きないかと思うと…。
そうだな。
これから安心して寝られるってもんだ。
火事?「大変なものを見た」と。
ってなんの事です?さあ…。
《沼田は南条氏立花だけではなく伊坂とも繋がってた》《しかも絵を譲ってもらう仲だった》あの土地は近々道路が通るって話ですから誰かからその情報仕入れたんじゃないですか。
伊坂と沼田…。
あっ神谷…ちょっと調べて欲しい事がある。
2年前南条さんご夫婦が事故に遭った頃三鷹でなんか事件がなかったか?2年前三鷹で事件って…。
ああそれと立花と伊坂の関係も洗って欲しいんだ。
被害者同士の関係を?夜明さんどういう事ですか?ああ上手く言えないんだけどなんかもやもやしたもん感じんだよ頼むぞ。
わかったか?
(神谷)はい。
2年前南条夫妻が亡くなった頃三鷹で起きていた事件はこれです。
これだよ。
放火が何か?
(南条)いやぁそれにしても大変なものを見たもんだな。
(敏江)でもこれでもう火事が起きないかと思うと…。
南条夫妻がそんな事を?じゃあ…。
放火魔を目撃した。
あっしかしまだ犯人は逮捕されてません。
南条さん放火魔を目撃した。
しかし警察に通報しなかったという事は放火魔は南条さんの知り合いだった…。
ちょっ…。
「沼田代議士…長男・博さん…2年前平成9年12月イギリスへ留学」ちょっと新聞記事。
「三鷹の連続放火平成9年11月26日」南条さんのご両親が事故に遭ったのが平成9年12月7日。
長男・博さん12月にまるで逃げるようにイギリスに留学してる。
タイミングが良すぎると思わない?じゃあ…沼田の息子が放火を?ちょっと待ってください。
自分にはなんの事だか…。
放火と今度の事件がどう繋がるんですか?平井となんの接点もない秋子さん夏美さんが狙われたという事は平井に指示を出した人間がいた。
(神谷)その男は伊坂と立花が殺された事を知りあの姉妹の復讐だと考えた。
そして自分の身に危険が及ぶ前に2人を殺そうと…。
それが沼田なんですか?まっ推測だが…2年前に起きた事ってこういう事なんだろう。
(南条)おっ君は…博くん…。
ほらほらっコートコート。
放火犯を目撃した南条夫妻はほっておく事が出来ず沼田の家を訪ねた。
博…本当なのか?見逃すわけにはいきません。
これまで死者も出てるんです。
どうか自首をさせてください。
わかりました。
私が責任持って自首させます。
事件が明るみに出れば沼田の議員生命は終わりだ。
沼田は南条夫妻の殺害を考えた。
以前から伊坂とも知り合いだった沼田は伊坂の野望を見抜いていた。
南条氏の土地を奪えば莫大な金が手に入ると情報を与え殺害を依頼した。
伊坂にしても自分の手を汚すつもりはない。
殺害の実行を立花に指示した。
夜明さんに言われた立花と伊坂の関係ですが…。
立花はせいと建設に勤める前美術品を運ぶ運送会社に勤めてます。
その線からいけば伊坂と繋がっていた可能性も十分にあります。
そうかそれで立花は沼田のところに電話をした。
報奨金でトラブったんだろう。
じゃあ立花と平井がもめていたと言うのは…。
沼田の指示を受けた平井は立花に2度と電話しないように脅した。
つまりこういう事なんですね?2年前の交通事故は事故じゃなくて…殺人だった。
だとすると…立花と伊坂やったの…秋子ですよ。
アリバイだよアリバイ!アリバイ…。
秋子さんのアリバイ崩さない限り秋子さんの犯行立証する事出来ない…アリバイだよ。
神谷タコグラフ。
(神谷)タコグラフ!
(国代)はい。
これだ!立花が殺された夜秋子さん1時間の休憩とってる。
死体を遺棄する為には車を乗り換えなきゃならない。
休憩を装って死体を別の車に?そこまでやりますかね?ちょっ…ちょっちょっちょっと待ってください。
立花の時はそうでも伊坂の時は発見されるまで休憩をとってません。
アリバイは完璧です。
ああ…2年前の放火事件なら私も捜査を行いました。
犯人の手掛かりはなかったんですか?まああるにはあったんですが当時犯人の割り出しに結びつかなくて。
(国代)その手掛かりってなんです?犯人は簡単な発火装置を使って放火を行ってました。
その発火装置に1つだけ指紋が付着していたんですが…。
指紋?《伊坂が殺された日彼女は多摩川へは行っていない》《アリバイは完璧だ》《じゃあ伊坂を殺したのは彼女じゃないのか…》《殺したのならどうやって死体を…》すいませんトランクをお願いします。
あっはい。
(木下)「1646夜明さん応答願います」はい夜明。
夜明さん。
先輩っすか?本部に秋子のタクシーの車両位置を調べてもらったところ都内から消えてる事がわかりました。
さっき千葉方面へ向かった事はわかってるんですが…。
千葉?先輩嫌な予感がします。
今日沼田は地元の千葉で遊説を行う事になってるんです。
…了解。
すいません急用出来ました。
他の車引き止めてください。
え!?
(パトカーのサイレン)
(拍手)どいてください!どいてください。
どいてください!どうして邪魔をするんですか?
(沼田)誰なんだその女は!?警察を呼べ!あっ君…。
(沼田の叫び声)先生!先生…先生…先生。
東山!あとを頼む!はい。
あっ…あっ…。
警察です。
おっ…あっ…。
沼田泰三さん。
伊坂夏美さん殺害及び2年前の交通事故の件でちょっとお話伺いたいんですが。
んなんの話だ?放火犯の指紋と息子さんが留学の際学校に提出した指紋が一致しました。
残念なんですが息子さんすぐ帰国してもらってください。

(オルゴールの音)ちょっ…!あっ…。
放して!死んでどうする?どうして私が犯人だとわかったんですか?乗車拒否です。
あなた成田までのお客さん乗車拒否した。
拒否した理由は時間までに空港に着けないから。
あの客は旅行客で大きなボストンバッグを手にしてた。
乗車拒否をしたのはあの客を乗せれば嫌でもトランクを開けなければならないからです。
あの時あなた既に伊坂殺し伊坂の死体トランクに入れてた。
死亡推定時刻は5時〜7時の間という事はあなたが店に来る前。
築地まで乗せた男性客が伊坂だった事になる。
目撃者がいたと言っても客の顔までは覚えてはいない。
あなたは築地のどこかで伊坂を降ろし殺害した後店へ行ったんです。
あっ珍しいですね。
問題は伊坂の死体をどうやって多摩川まで運んだか?あなたのアリバイ完璧です。
考えられるのはただ1つ。
伊坂殺しの時だけ夏美さんが協力した。
いがみあってた姉妹が伊坂殺しの時だけ…。
違います。
伊坂は私1人で殺したんです。
夏美は関係ありません。
タクシードライバーにならなければ…。
今度の事件は起きなかったんです。
始まりは10日の午後4時頃私のタクシーに立花が乗車してきた事からです。
(立花登)新宿まで行ってくれ。
はい。
(秋子の声)立花は2年前裁判所で何度か見ただけです。
その時はすぐにわかりませんでした。
(立花)沼田さんとこだったら確かに電話しましたよ。
俺だって好き好んで電話したわけじゃないんだ。
おかげでヤクザには脅されるしあんたが金渋るからだろう。
2年間も臭い飯食わされて3000万じゃ安すぎるって言ってるんですよ。
いいですよ。
嫌だって言うんだったらあれは事故じゃなかった。
あんたに頼まれてやったってバラしてもいいんだ。
とにかくすぐそっちに着きますから会って話しましょうや。
(秋子の声)立花である事に気づいてそして…。
電話の相手が伊坂である事を知りました。
あんたはさっきの…いいか。
じゃあ調布まで行ってくれ。
おいなんだよ。
なんで止まんだよ。
立花登さん…。
私南条秋子と言います。
南条?2年前あなたに両親を殺された南条の娘です。
(秋子の声)事故の真相を知りたい。
話してくれなければ警察へ行くと言うと立花は驚くほどあっさりと全てを喋りました。
沼田の事伊坂に頼まれてやった事。
(立花)俺はあの頃借金がふくれて夜逃げすら考えてた。
伊坂から「だったら2〜3年刑務所に逃げてそのあと大金貰うのはどうだ」って言われ…。
(立花)この国じゃ刃物や毒で人を殺せば殺人だが車で殺せば事故だからなぁ。
それにしてもあんたどうかしてるぜ。
俺に喋らせたらどうなるか…それくらいわかるだろうに。
嫌!てめえ!てめえ!このヤロウ!あ…。
(秋子の苦しむ声)
(立花)うわぁー!うわっ…あっ…あっ…。
(秋子の声)殺す気はなかったんです。
このまま死体を放置すれば車両位置で私が殺した事がばれてしまう。
都心に戻ったあなたはレンタカーに死体を移し変え埠頭で死体を遺棄した。
そうです。
立花の事夏美さんに話した。
私が…立花を殺したの。
どうしてそんな事?黙って聞きなさい。
あっ…。
お父さんとお母さんの事故あれは殺人だったの。
伊坂もそれに絡んでるわ。
バカな事言わないで。
伊坂はそんな男じゃないわ。
だったらあなたも一緒に来て。
あいつの話を聞けばどんな男かわかるわ。
立花から話は全部聞いてるわ。
証拠がどこにあるんだ?幸い立花は死んでくれたしあんたの言う事夏美が信じるわけがない。
たとえそれが…事実でもね。
夏美は俺を信じてるんですよ。
あんたが殺されたとしても俺を疑う事はない。
バカな女でねぇ。
許せない…。
夏美!
(伊坂)あぁ…あぁ…。
うっ…うっ…。
あ…。
私が殺したの。
いいわね。
嫌よ!私は伊坂の妻として許せなかったからやったの。
あんただけに任せられない。
私のせいだわ。
私がバカだった。
ごめんね…夏美。
…お姉ちゃん。
お姉ちゃん…。
どうして夏美さんに話したんです?喋ったら夏美さんが伊坂を殺す…。
そうは思わなかったんですか?立花と伊坂が死ねば夏美さんの身に危険がせまる。
そうは思わなかったんですか?伊坂が父の会社を乗っ取ろうが千葉の土地や実家を売り払おうが私はそんな事は許せたんです。
でも夏美は許せない。
伊坂と結婚をした夏美を私は許す事は出来なかったんです。
私の愛情を踏みにじり…そんな伊坂を許す事は出来ない。
夏美はもっと許す事が出来ない。
確かに私たちは血を分けた姉妹です。
でもその前に私は…ひとりの女なんです。
ひとりの女なんです。
夏美さんが殺されたからその復讐をする。
罪の上に罪重ねてどうするんです?人を殺す時しか仲直りが出来ない姉妹なんて…。

(オルゴールの音)夜明さん…。
私は夏美を愛していました。
だからこそ憎かったんです。
それ違う。
憎みあってもいいいがみあってもいいけど許しあうのが家族です。

(オルゴールの音)仲直りがしたかった…ほんとに夏美と…。
でも心の底から言えませんでした。
ごめん…ごめんね夏美。
罪を償ってやり直してください。
夏美さんの為にも…。
(泣き声)ほんと家族ってのは難しいよなあ。
生きてる間はいがみあって死んで初めてありがたみがわかる。
私もお母さんとは仲良くやりたいんだけど。
だけどって何?お母さん「心配だから留学は絶対に許さない」って言うの。
頭ごなしによ。
私のね考えなんかちっとも聞こうとしないんだから。
いやそりゃ心配だから。
あっどうしてお母さんのほうにつくのよ?いえいえ俺は…。
ねえ心配するって事は子供を信用してないって事なの。
そうじゃないと思うけど…。
もうお父さんにまでそんなふうに言われたら私ますます留学したくなってきた。
あのさぁ養育費アメリカに送るっていうのは…。
そうだこの際アメリカに永住しようそうだ…。
なんでお前そんな事簡単に言うの?あの家族っていうのはさぁお互いもっと思いあって…。
あゆみ!親の言う事聞けよ!あゆみ!もうちょっとだけ。

(会場内拍手)2015/10/26(月) 14:00〜15:51
ABCテレビ1
タクシードライバーの推理日誌[再][字]

殺意のハンドル・美人ドライバーに殺人容疑が…腹に2つ背に1つ、3つの刺し傷の謎とは?

詳細情報
◇出演者
渡瀬恒彦、国生さゆり、平田満、風見しんご ほか

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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