急増する外国人観光客。
皆さん、ある悩みを抱えています。
慢性的なホテル不足が続く中今、急速に広がっているのが民泊。
空き家やマンションの空き部屋をホテル代わりに有料で貸し出す新たな宿泊の形です。
日本の新たなおもてなしとなるのか。
民泊の可能性と課題に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
日本を訪れる外国人観光客はことし、過去最多の1900万人に達するものと見られています。
5年後の東京オリンピックに向けてさらに増えると見られています。
外国人観光客の急増で宿泊施設の不足が深刻化しています。
こうした中で、急速に広がっているのが、民泊です。
空き家やマンションの空き部屋に旅行客を泊めて料金を取る民泊はこの2年ほどの間に、爆発的に広がっていると見られています。
インターネット上の仲介サイトを通じて旅行客と部屋の貸主の多くがつながり、去年1年間でおよそ30万人の外国人が日本で民泊を利用したともいわれています。
旅行客にとって民泊が宿泊先の選択肢の一つになりつつあるわけですが宿泊料を受け取って人を泊めるには、本来ならば自治体の許可が必要です。
ところが民泊の多くが無届けで厳密にいうと法律に抵触しています。
急増するニーズを受けて無秩序、自由に広がる民泊。
提供される宿の衛生面や安全性に問題はないのか。
近隣住民とのトラブルをどうやって防ぐのか。
また治安のため旅行者の宿泊先の把握が必要との声もあります。
国はご覧の地域を特区に指定し自治体が条例を定めれば条件付きで、民泊を認める方針で大阪府では、あす条例案が可決される見通しです。
外国人にとって日本の暮らしに近い体験を味わってもらえる可能性を秘め貸し手と借り手双方にとって都合のよい民泊というサービスが社会に受け入れられていくために何が求められているのか。
まずは、民泊の実態からご覧ください。
大阪市内のマンションの一室です。
宿泊しているのは中国から来た大学の同級生ら5人のグループです。
市内のホテルは予約できず民泊を利用することにしました。
2LDKのこの部屋の宿泊料は1人1泊7500円。
周辺のホテルのほぼ半額です。
このマンションを所有している男性です。
建物が老朽化し空き部屋になっていた2部屋を民泊として貸すようになりました。
賃貸で貸すよりおよそ3倍の収入が得られるようになったといいます。
会社のビルを民泊に活用しているケースもあります。
この寝具メーカーではことし6月使わなくなった社員寮を改装し民泊を始めました。
社員の四村保雄さん、78歳。
長年、営業を担当していましたが突然、民泊の仕事を任されました。
この日四村さんが迎えたのはマレーシアからの団体客24人。
1人1泊4500円です。
四村さんは英語はしゃべれませんが気さくな人柄ですぐに打ち解けました。
民泊が広がった背景にはあるインターネットの予約サイトの存在があります。
サイトでは、空き家などを持つ家主が物件の情報を登録。
旅行者は、宿泊料や間取り過去に利用した人の評判などを見て希望に合った宿泊先を選び簡単に予約できる仕組みです。
国内で登録された物件はこの1年で5倍に増え1万6000件に上ります。
このサイトを運営するアメリカの会社です。
世界191か国に展開しています。
日本での民泊は今後さらに拡大していくと見ています。
新たに生まれた民泊という宿泊の形。
現在の法律では認められていません。
通常のホテルや旅館の場合自治体などの許可を取ってさまざまな規定に従いながら営業しています。
しかし、民泊は明確なルールがないまま急速に拡大し続けているのです。
民泊で大きな利益を得ようと賃貸物件をまた貸しする人も出てきています。
この男性は賃貸マンション8部屋を借りて民泊として貸し出し月80万円の利益を得ているといいます。
ほとんど家主の許可を得ていません。
都心にあるこの部屋の家賃は月12万円。
それを1泊およそ1万円ほどで貸し出しています。
ほぼ毎日客が入るため家賃や光熱費などを支払ってもひとつき10万円以上の利益が出るといいます。
男性は、それまでの仕事を辞め民泊だけで稼ぐようになりました。
一方、民泊に利用される部屋の近所からは苦情も出ています。
大阪市の中心部にある賃貸マンションに住む女性です。
数か月前から、隣の部屋に外国人観光客が出入りするようになりました。
民泊の利用者がごみを分別せずに捨てたり夜中に騒いだりすることが相次いでいるといいます。
不満の声はネット上にも広がっています。
火災や事故が起きることへの懸念や、宿泊客との間でトラブルになったケースなどが多数書き込まれています。
民泊に使われることに警戒心を高めているこちらのマンション。
住民で作る管理組合では管理規約を改正して民泊を禁止しました。
プールなど住人専用の共有施設に不特定多数の旅行者が出入りすることは受け入れられないといいます。
今夜は、観光業、宿泊業にお詳しい、立教大学特任教授の、玉井和博さんをお迎えしています。
以前、大手ホテルの社長兼総支配人を務められた経験もお持ちなんですけれども、この民泊の広がりの中で、社会との摩擦も生まれてきている。
どう見てらっしゃいますか?
一番大きいのは社会、インターネットというツールが出来たことによって社会が変わってしまう、新しいビジネスパターンが出てきたということですね。
これは1つは技術革新が起こり、それから、マーケットが変わり、今、制度を変えようとしている。
こういうことが、このインターネット社会における、新しいシェアリングビジネスという、エコノミーという概念になってきます。
もう1つは、これが出来たことによって、社会にあるいわゆる非稼働資産、遊休不動産というのをうまく利用できる、新しいまたビジネスがチャンスが出てきたということだと思いますね。
このシェアリングエコノミー、みんなであるものをシェアするという概念ですけれども、こうした民泊というものが急速に広がる中で、賛否が起きている中で、一番違和感をもって見ている業態というのはどこでしょうか。
一番はやはり、既存の宿泊業をされてる皆さん方ですね。
これは1つはやはり、どの視点から見るかによって賛否がものすごく分かれてきます。
1つはやはり、既存の日本の法律の中での宿泊業のルールにのっとってないじゃないかということが1つ、大きなポイントになってきますね。
これにはやはり2つ、民泊といってもスタイルがありまして、1つは、本来の民泊という言い方はおかしいんですが、やはりホームステイ型、お客様をきちっと家庭がおもてなしするというスタイル。
もう一つは、今急速に広がってます、いわゆる投資型とでもいいましょうか、ビジネスとして、民泊、マンションの空き室とかですね、空き家を利用していこうという2つに向かってるわけですね。
これが日本の業法にきちっとマッチしているかどうかというところが非常に問題になっておりますね。
具体的に、観光のホテルや、そして旅館業に課せられてる規制や、あるいはルールというものは、どういったものが主なものとして挙げられるんですか?
そうですね。
これは世界も同じでしょうけど、基本的にはお客様の安心安全、従ってスプリンクラーがあって、火災のときにきちっと対応できるとか、あるいは食品衛生法で、O157とかですね、いろんな問題にきちっと対応ができるとかいうことが宿泊業の許可を取っていない、民泊できちっとできるんだろうかという問題。
それからもう一つはやはり近隣住民の皆さんとの問題というのがありますね。
分からない方が出たり入ったりする。
騒音、あるいはごみの問題、こういうことで近隣とのトラブルとなりということも大きな問題になってくると思いますね。
そうすると、投資や人手をかけながら、そういった対応をしているホテルや旅館業がある一方で、全くそういうことはしなくてもいいという民泊というのは、フェアじゃないんではないか、不公平ではないかという気持ちがやっぱりあるっていうことですか?
そうですね、これは先ほど申し上げた見方によってどちらなのかということになると思います。
ですから、既存の法律に適合してないんじゃないかという視点から見れば、これは限りなく黒に近いグレーということがいえるんですね。
でも、そこにはニーズがあって、そしてその民泊のビジネスをやってみたいという人たちもいるっていう中で、これ、難しいんですけれど、国は特区を指定して、条例を通せば、民泊を認めるということで、あす、大阪でその条例案の可決が予想されてるんですけれども、その主な内容というのがこういうものなんですけど、どう見てらっしゃいますか。
全く今の状態に比べれば、これ、数段これが進んだ形になりますね。
ルールを作ると?
ルールを作るということはいいことだと思います。
これはゲスト、ホスト、あるいは地域住民にとっても何か起こったときに、これを一つの基準にするということができます。
ただし、この内容1つずつ見ていきますと、なかなか実効性等、果たしてどうなんだろうかというところは、例えばパスポートの確認をどうやってするんだろうか。
ホームステイ型ですと、ホストがいますけれども、そうでない場合に、いちいちそれをどう確認するんだろうか、あるいは7日以上の滞在という場合に、お1人のお客様が連続して7日間、そこに泊まる確率というのはどのくらいあるのだろうか。
かなり低いと思いますね。
こういう場合に、じゃあ、そうでないスタイルを取ったときに、どういう形でそれをチェックしていくのかというようなことで、実効性をこれからどうやって高めていくかということが重要になってくると思いますね。
それはこれから試行錯誤っていうことになっていきますか?
これは、一番はやはり、地元の地域社会とどうやってうまく折り合いをつけていくかということになると、これはやはり、試行錯誤、トライ&エラーというのが絶対必要になってくると思いますね。
さあ、ビジネスとして注目されている民泊ですけれども、一方で今、お話がありましたように、ホームステイ型というのもあります。
大阪郊外で2年前に民泊を始めた関原一郎さん、63歳です。
仕事を辞めたあと築80年の古民家を改装し民泊として貸し出しています。
日本ならではの和室や仏壇そして庭園。
外国人に喜んでもらえると考えました。
ゴー・トゥー・ヨドヤバシ。
この日の宿泊客はシンガポールの大学生です。
家は駅から離れているためみずから送り迎えします。
こんにちは、いらっしゃい。
家では母、かづ子さんが着物姿で出迎えます。
日本の文化に触れたいとこの家を選んだ大学生。
日本の伝統的な家でアットホームな雰囲気を堪能しました。
観光客一人一人に合わせたおもてなしを始めた人もいます。
2年前から都心にある自宅で民泊を行っている島崎夢さんです。
親から譲り受けた2世帯住宅で民泊を始めたところ外国人旅行客と交流を深めることが楽しくなっていったといいます。
宿泊客を迎える前には何度もメールでやり取りをしどんな旅をしたいと思っているのか、丁寧に聞きます。
この日の宿泊客はオーストラリアから来た3人組。
日本の伝統文化に触れたいという要望に応え、事前に用意していた観光プランを伝えました。
ベランダからの何気ない風景も3人にとっては新鮮でした。
この日の夜、島崎さんは日本酒を味わってみたいという3人の声を受け一緒に楽しむことにしました。
こんなときのために日本酒の種類や作り方を手帳に記していました。
くどき上手、口説き上手ってなんていうんだろう?
島崎さんのおもてなしはインターネット上の口コミで評判となり、今では世界中からリピーターが続出しています。
本当にお客様、お客様に対して、個性的なサービスができて、またそれを受け取る側の、本当になんかこう、うれしそうな表情っていうのが印象的ですね。
やはり、民泊ということばどおり、ある意味ではきちっと、ホストとゲストが、情報をきちっとやり取りできる、事前にきちっと分かっているということが、非常に重要なポイントになってくると思いますね。
逆に言うと、ここがきちっとできれば、本来のホームステイ型民泊というのは、観光立国を目指す日本にとっては、非常に優位なスタイルだと思います。
ですから、そういう意味では、事前のそのやり取り、それはリスクヘッジにもなるわけですね。
そこが一つポイントになってくると思います。
日本にとって、これは優位になるというのは、どういうことですか?
これは、ご承知のように、観光というのは、やっぱりその国、あるいはその地方の日常をどうやって体験できるか、見れるかということになります。
自然ですとか、あるいは食ですとか、これは国、あるいは地方の特色というのがあって、観光が成り立ちますね。
そういう視点から見ますと、このホームステイ型民泊というのはその一つの要素になりえる可能性がある。
きちっと地域社会と共存できるということが大前提になりますけれども、そういう意味では、観光のキーになりえるんだろうというふうに思いますね。
地方創生の可能性もささやかれてますよね。
民泊を通して。
日本にとっての地域を活性化させるツールにもなりますけど、一方で、本当にこれだけ多くの観光、外国の観光客が一気に日本に押し寄せて、とにかく泊まる所のスペースを確保するだけでも、特に2020年に向けて、どうするんだっていう空気が広がる中で、この民泊っていうのを、どう位置づけていくのか。
そうですね、今、申し上げたように、長い目で見ると、やはり観光を目指すうえで、非常に一つのキーワードになるんでしょう。
でも、喫緊の今、これだけ外国のお客様がいらっしゃる、これをどう対応するかについては、ある意味、投資型のものも用意しなくてはいけない。
でもこれについては、きちっとやはり法規制をかけていくということが、重要になってくると思いますね。
社会の中で、摩擦も生まれてる中で、どうすれば、この社会に受け入れられる、その民泊というものを、根づかせていけますか?
私は、基本は今も申し上げたように、その地域地域ごとに、やはり都市部と地方では、やはり違いますでしょうから、地域社会が、この民泊をどういう形でうまく使っていこうかということが重要になってくると。
そういう意味では地域社会との共生、最終的にまた使っていただいたお客様にまた行ってみたい、あそこの場所に行ってみたいというふうに思っていただくことが重要なんではないでしょうか。
そうすると、その規制の在り方やルールの在り方も、一律ではないということになりますか?
そういう形で、いくつか試行錯誤をしていくという形になると思います。
厳しい規制にするのか、緩やかにするのか、地域で話し合って、決めていくと。
多くは国が決めますけれども、基本、地域が重要になってくると考えますね。
ありがとうございました。
玉井和博さんと共にお伝えしてまいりました。
(土橋)刑事って2015/10/27(火) 01:00〜01:26
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「過熱する“民泊”〜新たなおもてなしのかたち〜」[字][再]
海外からの観光客が増え続けるなか、住居などを宿として活用する「民泊」が急速に広がっている。その実態を描き、東京五輪を前に観光客をどう受け入れていくのか考える。
詳細情報
番組内容
【ゲスト】立教大学 特任教授…玉井和博,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】立教大学 特任教授…玉井和博,【キャスター】国谷裕子
ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
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