くらし☆解説「“医療事故死”家族の身に起きたら」 2015.10.27


生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
きょうは、こちらのテーマです。
手術に伴うアクシデントや薬の取り違えなどで患者が命を落としてしまうそんな医療事故死の再発防止のため、今月から医療事故調査制度がスタートしました。
万一、家族の身に起きたらどうすればいいのか。
担当は土屋敏之解説委員です。
そもそも医療事故死、どれくらい起きているんでしょうか。
そこがあまりはっきりしていないんです。
医療事故で亡くなる人の数については年間1300人から2000人という推計があります。
そもそもすべての医療事故というのを報告分析するような制度がありませんので全体数がはっきりしないんです。
こちらの死亡数も確実な数字ではなくてもっとずっと多いという推計もあるんです。
参考までに交通事故で亡くなる人の数が年間、大体4000人ぐらいですからそれに近いぐらい身近な問題だと言えます。
そんなに多いわけですね。
そもそも把握する制度自体がなかったというのはびっくりしました。
そこで今回、死亡事故に限られますが初めて調査をする法律が作られたんです。
ただそこにもいろいろ課題も指摘されています。
順番に説明します。
基本的な仕組みです。
患者さんが亡くなるような医療事故が起きた場合まず医療機関から新たに厚生労働省が指定しました第三者機関、医療事故調査・支援センターというところに発生の報告が行われることになりました。
その後、医療機関はみずから事故原因などの調査を行います。
その結果は遺族に説明するとともに報告書を第三者機関に提出するということが義務づけられたんです。
考えたくないんですがもし実際に自分の家族に起きたら自分が遺族になってしまったらどうしたらいいんでしょうか。
そういうときは本当に混乱していると思いますがまずはご家族が亡くなってその死亡に疑問点がある場合はなんといっても医療機関側に詳しい説明を求めることです。
この制度では医療機関から第三者機関に事故の発生報告をすることになっていますので医療事故の可能性があるとして報告するかどうか確かめることが大事です。
事故として発生報告がされなければ、その後の調査も行われないからなんです。
事故原因の調査を行う場合遺体の解剖を行ったり画像診断なども必要になる場合もありますので火葬してしまう前に確かめておく必要があるわけです。
ショックで気が動転しているでしょうが、そこは慌てずにということですね。
遺族が直接、第三者機関に訴え出るわけではないんですね。
この制度では、医療事故と判断するのは医療機関となっていまして報告も医療機関だけになっています。
そもそも何を医療事故死というんですか。
医療事故死というのは予期しなかった死亡や死産と定義されました。
例えば事前に患者さん側に対して具体的にこういう死亡の可能性がありますと説明していてそれがカルテなどにも記載されている場合は予期しなかった死亡にあたらないからそれは医療事故ではありませんよとなったんです。
亡くなる可能性があると説明されていたら医療事故死として扱われないということですね。
ただこれは考えてみますと課題もありまして例えば医師のほうから腹くう鏡であなたのような状態のがんを手術する場合成功率は何%ぐらいでまれに亡くなることもありますよと説明していれば実際には医療ミスで亡くなったとしてもそれは調べるまでは分からなかったりしますので医療事故だと扱わなくて報告も調査もされないということも考えられます。
ですからもしご家族が亡くなって不審な点があったら原因を医療機関側に聞くということが大切です。
それが事前に説明されていたものにあたるのかどうか確かめなくてはいけません。
もし原因がよく分かりません不明だということであればそれは予期していたと言えないので報告調査をする対象ではないかと言えるわけです。
説明が事前にあったかどうかがポイントです。
実際に医療事故として報告をされたら調査が行われるわけですけれども調査をするのは第三者機関ではなくて事故を起こした当事者である医療機関の院内調査になるわけですね。
この点も議論があった点です。
厚労省は医療機関に対して地域の医師会などに支援を求めて院内調査といえども第三者外部の目を入れることを求めてはいるんですが法令で義務づけはされませんでした。
もし当事者だけでの調査ということになれば仮に医療ミスがあったとしたら正直に報告されるのかといった懸念が指摘されています。
調査結果は説明を受けるわけですか。
この点が問題となっているのは報告書の扱いをどうなるかというのは議論になりました。
第三者機関に対しては報告書を提出することになっていますが法令上、遺族に対しては説明ということになっていて書面を渡すことまでは義務づけられてはいません。
多くの病院はちゃんと渡すんじゃないかと思われるんですが義務づけられてはいないので中には口頭での説明だけで済ませる医療機関もあるだろうとみられます。
なぜこういう制度になったんですか。
制度を議論する厚労省の検討会などで医療者サイドから責任追及につながるような制度はいけないという強い主張があったためです。
報告書を遺族に渡しましてその中に仮に医療ミスなど責任が分かるようなことが書かれているとそれが裁判を起こすときに使われて証拠として使われる可能性があるということで反対の声が上がったんです。
本当にミスや過誤があれば責任になりますよね。
普通はそう思いますけどただ医療関係者の間ではこういう考え方は少なくなくて例えばここのところ全国各地で医療関係者向けにこの事故調制度の説明会がしばしば開かれています。
医師の間からは原因が分からなくても報告しなくちゃいけないのかとか過失を認めたら、それで責任追及されないのかといった患者からすると関心はそこですかというような質問も実際にあります。
ただあえて医療者側の立場に立って考えますと例えば救急医療の現場というのはベストを尽くしても患者さんが亡くなるケースはよくあります。
そういうときに患者さんを救おうと試行錯誤した結果なのにその医療のせいで亡くなったのではないかと疑いをかけられて警察の取り調べを受けたり裁判で不当な扱いを受けるのではないかと根強い不安があるんです。
もし医療現場側がそれであったらなかなか難しそうな急患は受け入れを断ろうと萎縮してしまうとそれは患者さん側にとっても不幸なことです。
もし調査結果の説明を受けても納得できない場合は遺族はどうしたらいいんでしょうか。
これまでそういうケースがしばしば訴訟になったりということもあったわけですが今回の制度ではそうした場合遺族から第三者機関に改めて調査を依頼することができます。
第三者機関が調査してくれる仕組みもあるわけですか。
これは一から調査するというわけではなく院内調査の報告書の内容を検証するのが中心になります。
第三者機関から関係者への直接の聞き取りもできますしこれについては報告書もきちんともらえる仕組みになっています。
これを通じて院内調査でどんなことが書かれていたのか。
概要は知ることができると考えられます。
調査してもらうのにお金はかかるんでしょうか。
遺族からの場合2万円が自己負担として決められました。
調査をきちんとやるともちろん調査費用はもっとかかるんですが国の予算がついているためです。
この価格は一般にセカンドオピニオンがありますね。
医療機関に求めると大体数万円というケースが多いのでそれをもとに設定されました。
今月からスタートしたというこの制度ですが本当に課題が多いなと感じました。
ただそもそもこれまでは真相究明につながるような仕組み自体がありませんでしたから、ようやくたたき台になるような枠組みができたという面では半歩前進かなとも言えます。
この制度はできるときから議論が紛糾したものですから来年の6月までには見直して必要な措置を講ずることは検討するという法律に決められていたりします。
土屋敏之解説委員でした。
次回は、竹田忠解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
2015/10/27(火) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「“医療事故死”家族の身に起きたら」[字]

NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢

詳細情報
出演者
【出演】NHK解説委員…土屋敏之,【司会】岩渕梢

ジャンル :
ニュース/報道 – 解説
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
情報/ワイドショー – 健康・医療

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

OriginalNetworkID:32080(0x7D50)
TransportStreamID:32080(0x7D50)
ServiceID:43008(0xA800)
EventID:24083(0x5E13)

カテゴリー: 未分類 | 投稿日: | 投稿者: