もしあなたが今の自分に物足りなさをお感じなら思い切ってこんな街を訪ねてみませんか?「もう一人の自分に出会いたい」。
砂漠の街を目指し悩める若者がやって来ました。
俳優冨浦智嗣23歳。
一回僕来てみたかったんでうれしいですね。
あと僕この前帽子買ったんですけどそこに「SFO」って書いてるんですよ。
だから何か運命だったのかなみたいな。
こんな村がいいんです。
何か変わってるなお前。
独特の声と中性的なキャラクターを武器に活躍中。
しかしデビューから10年一度も主役を張った事はない。
素顔の彼は極度の人見知りで人づきあいが苦手。
砂漠の街で役者として人間として一皮むけたいんだそうだ。
砂漠のど真ん中で開かれるバーニングマン・フェスティバル。
ここリノは参加者が水や食料を調達できる最後の街です。
これから1週間電気もガスも水道もない場所でサバイバル生活を送ります。
ふだん料理しないんで何買っていいか分からない…。
とりあえずこの辺全部買ったら?あっ全部?そうそう。
スタッフ合わせて男6人が1週間食いつなぐための飯だ。
あるやつ全部買っちゃったんですけど…。
ハロー。
ハ〜イ!ナイストゥミートユー。
アイムサトシ。
ナイストゥミートユー。
あっまだ見てないです。
うん?スーパーに地図?あっえ〜…アイムジャパン。
なるほど。
バーニングマン参加者の出身地って訳か。
日本からも九州とか東京からも来たりしてるんですね。
へえすごい。
あっすごい。
バーニングマンのシールですか?バーニングマン行かれるんですか?イエス。
あっそうなんですね!僕初めて参加なんですけどいい出会いというか自分が成長できるような事ってあったりするんですか?名前って何ていうんですか?ホワットユアネーム?サトシですアイムサトシ。
はい行かしてもらうんで会えるの楽しみにしています。
さあサトシ現実の世界とはしばしお別れだ。
これから1週間携帯もネットもつながらない砂漠で共同生活が始まるんだぞ。
もう今日から…そうですよね。
もう一日中一緒にいて寝る時も一緒みたいな…。
ほんとに大丈夫かなみたいな。
結構1人の時間好きだったりするんで何かこう1人で音楽聞いてたりとかネットでYouTube見てたりする方が楽っていうとこもありますね。
携帯はサトシにとって1人の世界に閉じ籠もる格好のアイテム。
旅が終わるまでお預けだ。
ブラックロックと呼ばれるこの砂漠の中に巨大な街が造られるという。
おお砂嵐…。
あっほんま砂嵐真っ白になりますね。
アメリカ・ネバダ州にある砂漠に造られた巨大な街その名もブラックロック・シティ。
広さは東京ドーム315個分人口は6万5,000。
不毛の砂漠地帯に年に一度真夏の1週間だけ出現するかりそめの街です。
ここで繰り広げられるのが世界最大の野外アートの祭典…砂煙舞うむき出しの大地をギャラリーに200を超える不思議なオブジェが無造作に展示されています。
このアートすごいですね。
めっちゃでかいです。
こちらは「抱擁」という今年一番の注目作品。
ベニヤ板で作った高さ22メートルの巨大アートです。
抱き合う2人に性別はないのだという。
親子か兄弟かあるいは敵同士かもしれない。
通りをにぎわすのは奇抜な「アート・カー」。
これも立派な作品の一つ。
何だかSF映画の世界に迷い込んでしまったかのようだ。
実は参加者の中にプロのアーティストはほとんどいません。
ふだんは皆それぞれ真面目に働いているんだそうです。
何せ砂漠の街の住人は6万5,000。
あったら便利なこんなものも作られます。
公共機関やお店も全て手作り。
街としての機能も充実しています。
なんとこの街ではお金のやりとりは禁止されているそうだ。
その代わりに食料を分け合ったり歌やダンスでお返ししたり感謝の気持ちを表現し合うのだという。
サトシはこのバーニングマン・フェスティバルの楽しみ方を一番よく知るという女性を訪ねる事にしました。
ハ〜イ!ナイストゥミートユー。
この道15年。
バーニングマンの運営にも関わってきたアシーナさん。
何かたくさんのいろんな方がいたりとかたくさんのいろんなアートがあったりとかたくさんのいろんな建物があってすごい衝撃を受けてるんですけど何かこのバーニングマンで大切にされてる事ってありますか?あ…まだ行ってないです。
ちょっと行ってみたいと思います。
「傍観者になるな」かあ…。
緊張した?カチカチだったね。
いや〜もう…僕初めての人と話す時はほんま手が震えてきてパニックになって…。
涙目になってるけど大丈夫?いや〜もうほんと緊張してるんです…。
楽しめそう?1週間。
ちょっとまだ不安なんですけど…でもどうせ来たからには楽しみたいと思います。
ありがとうございます。
イエス!バーニングマン!サトシは極度の人見知り。
大丈夫かな?イエ〜イとか何かできないですね。
抵抗があるというか…。
あっすごい!次から次へと不思議なものが…。
お〜!アートフェスティバルといっても作品の出来を競い合っている訳ではないらしい。
お〜…。
だったらサトシアシーナさんが教えてくれた言葉を思い出してみたら?すごいな。
そう「傍観者になるな」。
オクトパス。
オクトパスファイア!タコ。
ベア?どんどん街の雰囲気にのみ込まれていくサトシ。
とにかくまあ踊ってみるか?う〜ん…何なんだこの世界は?OKOK!どうやら作品は6万5,000の住人が出会うためのきっかけらしい。
あとは歌って踊って大騒ぎ。
確かに楽しそうだけどこれで自分を変える何かが見つけられるんだろうか?見えてきた巨大な人形。
あれが「ザ・マン」です。
言ってみりゃこのブラックロック・シティの市長ってとこですかね。
すごい…これが「ザ・マン」ですね。
いや想像してた以上にでかいです。
すごい…。
街の真ん中に仁王立ちする高さ30メートルの巨人像。
フェスティバルの最終日この巨人に火が放たれます。
それが「バーニングマン」の名前の由来。
今から28年前失恋したある男が悲しみを癒やすために仲間を集めてサンフランシスコの浜辺で人形を燃やしました。
それが全ての始まり。
そこに音楽やアートが加わり夏の恒例イベントになりました。
やがてインターネットが普及すると世界中で話題となり参加者が急増。
今では6万人を超える巨大イベントに成長し運営会社も設立されました。
参加者はインターネットでおよそ3万円のチケットを購入しこの街の住人となります。
都市部での生活から逃れ砂漠の街でつかの間の非日常を過ごすのです。
世界中から人々が押し寄せるとさまざまなトラブルも発生します。
街の安全を守るのはレンジャーと呼ばれるボランティアグループ。
参加者の中から500人がメンバーに登録されていて交代でパトロールに当たっています。
参加者はイベントを楽しむだけでなく自ら街の運営にも関わり世界最大の砂漠の祭典を支えているんです。
(「BillieJean」)世界65か国から砂漠の街に集った人々。
つかの間の非日常に何を求めているんだろうか?イエス!バーニングマン!ところでサトシの砂漠生活は?あっオリーブオイルだ!これまでほとんど料理をした事がないというサトシ。
それでもまあ肉ぐらい焼けるだろう。
ちょっとやばいですか?ちょっとじゃあ…ありがとうございます。
あっ…。
まだちょっと中…。
焼けてなかった?でも見た目焼けてないんですけどめっちゃおいしいです。
鶏肉って大丈夫なんですか?焼けてなくても。
もうちょっと焼きましょう。
ブラックロック・シティの長い夜が明けた。
砂漠の街での1週間はサトシに何を与えてくれるのだろうか?「傍観者になるな」。
それがバーニングマンの楽しみ方。
何か参加できそうな事見つけなきゃなあ。
ハロー。
そうアート作品が作れなくてもその手伝いや街の運営を支える事はできる。
とにかく参加する事が重要らしい。
氷屋さんだ。
意外にも体力には自信があるというサトシ。
選んだのは力仕事でした。
氷は灼熱の砂漠を生き抜くために必要不可欠なもの。
特別にお金で買う事が許されています。
でも業者は氷を運んでくるだけ。
販売は全てボランティアの手で行われています。
6パック。
ファイブブロック。
OK!慣れない英語に苦しむサトシ。
するとさりげなく仲間がフォローしてくれた。
サンキュー。
サトシ1人が好きだって言ってたなあ。
でもいつもとは違う自分になって人と関わるのも悪くないだろう?お疲れさま。
お疲れさまです。
氷頂きましたバイト料で。
ありがとうございます。
ちょっと迷ってきました。
この日サトシはある女性を捜していました。
砂漠に入る前食料の買い出しをした街リノで出会ったベルさんです。
ハロー!ナイストゥミートユー!アイムサトシ。
イエス!サンキューベリーマッチ!サンキューベリーマッチ!お〜久しぶり。
イエス!ワンダフル!グレート!ベルさんは10年前この砂漠の街で今のパートナーに出会いました。
2人はバーニングマンに欠かせないある重要な役割を担っているんだそうです。
えっバーン?リアリー?ハウアーユー?ベリーグッド。
かりそめの街。
かりそめのアート。
かりそめの自分。
ここでは皆置き去りにしてきた現実世界の自分を語らない。
燃え盛る炎に何かを託し全てが焼き尽くされる瞬間をただ皆で分かち合うのだ。
なるほど。
僕もここに初めて来たんですけど人がすごい思いやりがあったりとかふだんの環境と全然違うんで自分を見つめ直すすごいいい機会になったと思います。
(雷鳴)あっこれで?よ〜し!まだまだ。
ちょっとだけシャンプー。
急いだ方がいい急いで。
やばいやんでしまう。
サトシも随分たくましく見えてきたなあ。
(笑い声)ああすいません。
分かりました。
めっちゃ怒られた。
砂漠の街ではゴミはもちろん料理や歯磨きに使った水も全て持ち帰る決まりになっています。
しかし主役の姿が見当たりません。
サトシは?サトシ〜!実はサトシ少し無理をし過ぎていたようだ。
突然感情を爆発させ「預けている携帯電話を返してほしい」と言いだした。
1人の世界に戻りたいのだという。
携帯を手に取ったものの立ち去ろうとしない。
自分の殻を破りたいって言ってたよなあ。
サトシは1人砂漠の街で自分自身の未来と向き合い続けていた。
ある撮影現場で大先輩の俳優がサトシに言った。
「その甲高い声ウイスキーでうがいでもして早く潰してしまいなさい。
いつまでもそんな声でいたら役の幅が広がらないよ」。
サトシを気にかけての言葉だったが自分の個性を否定されたように感じ苦しかった。
役者として自分に将来はあるのか。
砂漠の街でもう一度見つめ直したかった。
でも答えはなかなか見つからない。
「傍観者になるな」。
この言葉を教えてくれたアシーナさんから誘いがありました。
何でもサトシに会わせたい人がいるんだそうです。
ハ〜イ!グッドモーニング。
ハウアーユー?初めてバーニングマンに参加した母のヘレンさんでした。
これが結婚された時の。
そんなヘレンさんが今年初めて参加を決めました。
きっかけは長年連れ添った夫の死でした。
去年夫を亡くした時娘のアシーナさんが教えてくれました。
砂漠の街にテンプルと呼ばれる美しい追悼の場があるという事。
そこでは国や宗教を超えただ心を一つにして祈りをささげるのだといいます。
ハロー。
「サトシよ砂漠の1週間も今日で終わりだ」。
OK?OK?思った以上に疲れた。
「お前はこの街で何かをつかむ事ができたかい?」。
「この世界最大の砂漠の祭典に終わりを告げるのが俺の役目だ」。
「そうこの俺がバーニングマンだ」。
「俺が燃え尽きた時この街も消える」。
「サトシよ迷ったら何度でも来るがいい。
ただし帰るべき場所で精いっぱい生きると約束できるなら」。
(歓声と花火の音)
(歓声)これから先不安になってどんな状況になったとしてもここと一緒で何もない砂漠にマンとかいろんなアートとかいろんなとこ作ってるの見て何かゼロから作り上げればいいんだよとかあとみんなもうたくさんのいろんな方たちがいて…自分がやりたいようにすればいいんだよみたいなそういう感じの事を教えてもらったような気がしますね。
2015/10/28(水) 14:05〜14:53
NHK総合1・神戸
地球イチバン セレクション▽世界最大の砂漠の祭典バーニングマン・フェスティバル[字]
砂漠の真ん中、1週間で消え去る巨大都市へ。燃えさかる巨人像。現実とは違う自分に出会い、6万5千人がつながる“非日常”。一生に一度くらい、こんな旅もありかも!?
詳細情報
番組内容
真夏の砂漠に、1週間だけ出現する巨大都市。次々、炎に包まれ消えゆく巨大なオブジェ。炎とアートの祭典に熱狂する参加者は6万5千人。水も食料も全て持ち込み、お金のやり取りは禁止。携帯もネットもつながらない。それでも、この過酷な環境にやってくる人は年々増え続けている。現実とは違う自分に出会い、つかの間の“非日常”を味わう7日間。一生に一度くらい、こんな旅に出かけてみたら、何かをつかめるかも!?役所広司
出演者
【ナビゲーター】役所広司,【旅人】冨浦智嗣
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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