<老いて介護が必要な時に、人は漂流する>特養待機52万人の一方で介護職員不足で施設の閉鎖も
山口道宏[ジャーナリスト]
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新聞の報道によれば、大都市の介護施設で求人難が深刻で、職員の定数割れで閉鎖の施設もでているという。介護職員の有効求人倍率は東京都で4.34倍、愛知県で3.96倍、大阪府で2.77倍という報告もある。
一方で、地方の特養(特別養護老人ホーム)の東京進出の新設計画も、その半数が都外の法人であるという。高齢社会到来のいま、大都市の公的な介護施設は一体どうなっているのか。
都内特養468施設中(2014.10.1現在)、公的介護保険以後に設立された184施設うち45施設は都外からの進出組。だが、それは東京の高齢者人口の数は、地方の比ではないことから納得できようか。
しかし、特養への入居待機者はなんと全国で52万人。多くの人が病院や自宅で、そこに入れる「その日」を待っている。待機の相場は2~3年。となれば、その間に一層の体調悪化も想像に難くない。また家族同居では共倒れや介護離職といった事態も十分にあり得る。長くなれば虐待だって起こる危険性だってあるだろう。
そもそも高齢化というのに特養不足に加え介護士不足とはなにごとか。これでは、国のサボタージュではないか。この状態を放置して誰がほくそ笑むのか。
国は「サ高住」と呼ばれる「サービス付高齢者住宅」(ただし介護サービスは外付け型)の建設に熱心だが、介護のある生活には身近に介護してくれる人がいなければ話にならない。高額な有料老人ホームは高値の花。では庶民はドコへいけというのか。
老いて介護が必要な時に、ひとは漂流する。不条理な話である。
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山口道宏
山口道宏(やまぐち・みちひろ)
ジャーナリスト、星槎大学教授、NPO法人シニアテック研究所理事長
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