浅野温子さんと金子貴俊君がやって来たのは…明日香村稲渕の棚田。
秋の青空に照らされて輝きを増す稲。
1,000年以上変わらぬ風景です。
古代人々がこの地に暮らし始めたのは光や風森や土がどこよりもすばらしかったから。
そんな地の恵みを生かそうと人々はさまざまな工夫を重ね暮らしを豊かにしてきました。
例えばはるかに見える高い棚田にどこから水を引いたのか?その答えは…。
棚田の5キロメートル上流にある飛鳥川。
(金子)おお〜!今2人が渡ったこの場所よく見ると左に水門が見えます。
実はこれ…山の上の棚田に水を引くため先人が作った水路。
(浅野)一番高い所に流れている訳ですよね。
そこから棚田に流れている。
1,000年もの間清き水を棚田に送り極上の米を育んできました。
今回の「えぇトコ」は古の神々の思いを舞台で演じる浅野温子さんと日本のふるさとをこよなく愛する金子貴俊君が現代に古の知恵がとけこみ時を超えて生き続ける暮らしを訪ねます。
そこには今でも十分通用する便利な工夫がありました。
でも渡りやすいですね。
緻密な計算で作られた石の橋。
うわ〜すてきじゃないですか!本物の素材を使い手間を惜しまない葛切り。
あっうまい!おいしい!すごい!今なお現役。
計算された江戸の工夫が随所に残る町。
火事から町を守る堅ろうな土壁。
自然の声を聞き先人たちが磨き上げた大和の暮らしを訪ねる旅の始まりで〜す!まず訪ねた明日香村の稲渕という集落で…。
わあ〜あそこすごい流れてる水。
あ〜きれいだな〜!わあ〜きれ〜い!あれ?飛鳥川の上に張られた綱。
そこにぶら下がるわらで作った謎の物体。
一体これは何のためにあるものなのか?聞いてみましょうか。
聞いてみましょ。
野菜を売っている方に聞いてみる事に。
なるほど!昔から集落の入り口に絶やさず張られてきた男綱。
子孫繁栄を願うとともに病気や災害をここから中に入れないための結界。
ちなみに川の上流にある集落の入り口には女綱が掛かっています。
2つの綱は毎年1月に張り替えられずっと村を守ってきました。
今もなお集落を守り続ける大事な綱です。
作ってらっしゃるんですか?これ。
ところでこちらのお二人は自分で作った取れたて野菜を毎日ここで売っているのだそうです。
芋の上の茎の部分がいわゆるずいき。
ここを食べる?えっここも食べれるんですか?ずいきの根の部分に出来る里芋。
その形からえび芋と呼ばれます。
えっ!作って頂けるんですか?なんと取れたてのずいきを料理してもらえる事に。
飛鳥時代には既に暮らしが営まれていたというこの集落。
古くからの知恵が生きています。
地元の人が今でも毎日使う石の橋…作られたのはなんと飛鳥時代。
「万葉集」に「明日香川明日も渡らむ石橋の遠き心は思ほえぬかも」と詠まれている石橋はこの橋の事。
1,500年の間川を行き交う人を支え続けてきました。
そんな飛び石渡ってみる事に。
表面が大きくて平らなためお年寄りや子どもでも渡りやすく一定の歩幅で歩けるよう石の間隔も計算されています。
古代の人が考え抜いた橋の構造。
踏み外す人はめったにいないそうです。
あっ!ハハハハハハ!飛鳥時代の人々に感謝しながら使い続ける飛び石です。
飛び石を渡りやって来たのは…。
どうぞ。
すみませんお邪魔してよろしいですか?落ち着きますね。
ねえ。
こちらのお宅は築120年以上。
ここに住む料理上手の寺西さんが先人が考え後代に伝えた伝統のずいき料理を作ってくれます。
お酢を使って何度もアクを抜いたずいきを軽く絞り生姜醤油であえた郷土料理です。
ずいきのおひたし。
あ〜また全然違う様子になりますね。
今が旬のずいきのおひたし。
大地の恵みを無駄なく食べるための工夫が生んだ料理です。
あっシャキシャキしてる!すごいおいしい。
あっおいしい!爽やか〜。
全然癖ないですね。
かめばかむほど…すごいすごい。
これは…あ〜…。
あっ本当だ本当だ。
そしてこちらは小芋を使った…秋の料理として古くからこの集落に伝えられてきたもの。
みそ砂糖ごまを合わせそこに煮た芋を入れてあえた料理です。
うん!あっおいしい。
う〜ん。
サクッと歯切れがよくてでもかめばかむほどちょっとねっとり来る…。
それでお芋さんがねもうすごいねっとりというんですか?この粘りが…。
これね意外にねしつこくない。
この辺りでは…今思ったら…いろんな知識じゃないけどいろんな事分かってくるとやっぱりお花見ても「ああこのお花どう生けようかな」とか何かこのお水でねおいしいお野菜炊けるなとか…。
あります。
そういうふうに…旬の…姑さんからお嫁さんへ更に次のお嫁さんへと絶える事なく受け継がれてきた財産。
旅の最初に早速奈良の深さに触れました。
ここで2人は一旦お別れ。
金子君は昔の知恵が息づく町があると聞き訪ねました。
だいぶこっちは違う景色になってきたな。
何だ?ここは。
町の入り口橋を渡ると…。
あ〜!ハハハッすごい!やって来たのは橿原市今井町。
一向宗の寺内町として誕生し江戸時代に商人の町として繁栄しました。
当時から残る古い建物はどれも今も人々が暮らす現役の住居。
子どもたちは築数百年の木造建築で育ちます。
町では家を新築する事はほとんどありません。
できるだけ古い家を補修して住み続けます。
こんにちは〜!すいません。
どうも初めまして。
金子貴俊と申します。
いつもお目にかかってます。
ありがとうございます!200年以上前の家を修繕している最中。
新たに家を建てるよりも時間は3倍かかりますが古い建物は新築には代え難い利点があるため壊しません。
竹で骨を組み土を塗って仕上げる土壁。
昔の人の知恵が込められています。
ないんですか?今井町は。
へえ〜。
火事から家と町を守る工夫。
40年以上今井町の家の修繕を手がけてきた的場さん。
古い家を知れば知るほど先人の工夫に感心するといいます。
玄関を入った土間は庭までつながり通り庭と呼ばれます。
外からの風をよく通すための造りです。
無双窓と呼ばれる窓。
涼しい時は開けておいて寒い時はワンタッチで閉まります。
アイデアにあふれた江戸時代の家。
先人が生んだ暮らしの工夫がこの町の快適さを支えています。
そして更にもう一つ。
町の人々が大切に受け継いでいるものがあります。
それは…お子さんも手伝ってますね。
こんにちは!隣同士が助け合いながら守ってきた町の歴史は今井町の誇り。
懐かしい日本の姿が今も生きています。
あばら家でございます。
ここでございます。
あっこちらですか!的場さんのご自宅に伺い町の集まりの時には必ずふるまうという自慢の料理を食べさせてもらいました。
どて焼き。
この辺りではどて炊きと呼ぶおなじみの味。
的場さんの作るどて炊きは今井町の名物だそうです。
町では代々行事の時に炊き出しをする担当が決まっていてその歴史を今受け継いでいるのが的場さんなんです。
うわ〜!うわ〜!もうこれ目でもおいしいですね。
う〜ん!うわっおいしい〜!お米と合いますね!トロトロですね!おいしい!建物も食べ物も町のみんなが工夫を重ねて積み上げてきました。
町並みに人に温もりが受け継がれる今井町です。
一方…実りあふれる棚田を抜けて秋の空気を胸いっぱいに吸い込みながら山の上を目指します。
やって来たのは…明日香の中でも一番高い所にある集落です。
壬申の乱の時に大海人皇子を助けたと伝えられる隠れ里。
ここでも昔の知恵に出会いました。
急斜面の畑へ伺う事に。
これが白菜ですか?これ白菜。
お〜白菜ってこんなちっちゃいんですか。
冬場ですか?これは。
そうそうそう。
「急斜面で野菜を作る事には利点がある」と言うのは先祖代々この土地を耕してきた森本さん。
先人がここを畑と決めたのは水はけがよいから。
険しい立地を利用した先人の知恵。
1,300年以上昔から変わらない景色の中であるがままを受け継いで暮らしています。
それだけ言えるわ。
ほかの事はもう言えんけど。
澄んだ空気が空高く広がる集落から見えるのは古代人も眺めたであろう山の連なり。
はるか向こうには大阪の街が見えます。
受け継がれてきた先人の知恵ときれいな自然。
古代からの恵みの中で静かに営まれる山里の暮らしです。
昔と今が深く溶け合う奈良を巡る旅。
奈良といえばおなじみなのがそう…石舞台古墳をはじめとする古墳王国の奈良。
1,300年以上崩れずびくともしない精巧な石組みの技術。
外からの雨が中をぬらさないよう雨水を遮断するために彫った天井の溝など知恵と工夫でいっぱい。
そんな太古の歴史がすぐそばにあるのが奈良のすごいところ。
立派な古墳があると聞きやって来ましたがここは住宅街。
僕も詳しくないんであれなんですけど。
すいませんこれ…気付かないですよこれ。
だってここ行ったら木にどん詰まりだよ。
住宅街のうちよ。
そうですよね。
なんとそこには…。
何が?住宅地の真ん中にある…7世紀の中頃に建てられた方墳です。
古い歴史を持つ古墳ですが誰でも中を見る事ができます。
え〜っ?行ってらっしゃい。
せっかくですから浅野さんも…。
スタッフが…すごいですよ。
分かりやすいように何か。
懐中電灯を用意してました。
暗いんですね。
暗いんですね。
埋まってんの?そりゃそうですよね。
あれが石棺じゃないですか?僕こういう事苦手なんです。
一個一個の大きさが。
あれ石棺じゃないですか?目の前にあるの。
暗がりに石の棺が!この中にどなたか入ってるの?さすがにもう入ってはいないんじゃないですか。
そう?分かんないよ。
見てごらん。
人一人入れる。
そっち行ける。
僕を閉じ込ようとしないで下さいね。
閉じ込めない閉じ込めない。
結構大きいです。
大きい?うわっすごい!そうすると…嫌だ嫌だ嫌だよ。
何?どうしたの?何?裏に行くとこっち側にですね…慌ててちょっと怖くなっちゃいまして…。
これのぞいていいの?マジで。
はい行ってらっしゃい。
せっかくですから…。
という事で…一番奥が一番しっかりした石になってますよ。
本当だ本当だ。
うわ〜いやいやいや…。
ちょっとちょっと…。
(2人)せ〜の。
あっ本当だ本当だ本当だ。
あっ何もない。
何もないですよ。
何もないですね。
何もないです。
石棺の中は広く昔盗掘に遭ったのでしょうか埋葬品など何も残されていませんでした。
どうもありがとうございました。
お邪魔致しました。
すごいですね。
すごいですよね。
本当に今ドキドキしてるんだけど。
暮らしのそばにはるかな古代。
それが奈良です。
次に2人がやって来たのは見渡す限りの緑が広がる桜井市の鹿路という集落。
だいぶ山深い所に来ましたね。
また目の前の木もすごい大きいですよ。
杉林が集落の周りを取り囲みます。
あちらで何か作業されてる方がいらっしゃいますね。
こんにちは!こんにちは。
すいません。
お邪魔しております。
飛鳥時代から大和の建物を支えてきた木々。
桜井や吉野の山のヒノキや杉は年輪が均一で細かく詰まっているため特に質がよいといわれています。
そんな先祖からの贈り物である山の木を我が子のように育ててきたのがこの地で生まれ育った森本さん。
杉やヒノキは手をかけてやればかけた分だけまっすぐきれいに成長してくれる確かな存在。
木を知れば知るほど愛着と畏敬の念が深まるといいます。
そんな森本さんが祈りをささげる大切な場所があります。
ひときわ高い杉が生い茂る森。
失礼します。
うわ〜すごい!あの木の根っこ。
すご〜い!また苔がきれいについてますね。
樹齢数百年の巨木たち。
中でも…。
拝殿の後ろにそびえ立つ杉の大木。
神として敬われいにしえから人々の祈りを受け止めてきました。
(かしわ手)本当にそんな感じですよね。
神秘の古木に癒やしをもらいました。
そして森本さんが2人を工房に招いてくれました。
お邪魔致します。
お邪魔致します。
うわ〜すごい。
とても木の香りがいいですね。
森本さんが育てた木で作っているのはさまざまな筆記具。
鉛筆や色鉛筆そして…。
すてき!杉の木をペン軸に使ったボールペン。
一本一本違う木目がオンリーワンの魅力を放ちます。
中でも森本さんがこだわっているのが…。
こぶ?どこがこぶ?
(森本)全体がこぶです。
いやすてきですね。
(森本)気持ちいいでしょ?愛着を持って育ててきた杉の木。
こぶだけが捨てられてしまうのが忍びないとの思いで作り始めたボールペン。
コツとかあるんですか?ポイントは?まあ少しずつ削って頂いたらいけますから。
やってみますか?軸を通した角材の角を削って丸くしていく作業。
浅野さん森本さんの手を借りながらボールペン作りに挑戦。
刃先から手に伝わる確かな振動。
削っていくごとに杉に新たな命を吹き込んでいる実感がわいてきます。
とっても何かねいい絵でしたよ。
自分で形や模様を作り出していく快感。
およそ30分ほどで削りあがったペン軸。
仕上げに磨いて金具を取り付ければ…。
人が出るんじゃないですか?やっぱそうかもしんない。
僕もやしっぽい感じでねシュッとしてますから。
そうね。
私は何て言うの…人間的ふくよかなね。
いいじゃないですか。
すばらしいよね。
杉のこぶから生まれた世界に2つとないペンです。
早速今の思いをしたためてみる事に…。
ジャジャ〜ン。
ジャ〜ン。
(金子浅野)「立身出世」。
すばらしい!またこれ浅野さんはどういった思いを込めて…?技と感謝。
匠が生み出す逸品はいつの時代も大和の森が育んだ木の恵みを受けて作られています。
そんな木から生まれた1,200年前の宝があります。
女人高野だって。
あら〜。
また仁王像はすごい迫力ですね。
赤と青なんですか?やって来たのは宇陀の室生寺。
周囲を深い森に囲まれた奈良時代末期の創建といわれる山岳寺院です。
本当はまってますよね。
はまってますよね。
室生寺の最大の見どころそれは…。
失礼します。
はい失礼します。
うわ〜!うわっすばらしいですね!うわ〜!うわ〜すっごい…。
室生寺の宝。
ほとんどが国宝と重要文化財という金堂に納められた仏像たち。
近づかせて頂きたいと思います。
失礼します。
許可を頂きふだんは決して立ち入れない至近距離へ。
うわっ。
うわっすっごい。
リアルだ表情が。
何かまたこの木の目といいますかそれが本当人間の筋肉の柔らかさみたいの感じますね。
ほら森本さんの「木を生かす」っていう。
あ〜。
ねえ。
1,200年の時を超え2人を見つめる仏像たち。
昔と今が一つにつながる。
奈良の至福の時間です。
長い歴史を持つ宇陀の町。
その起源は室町時代という昔と変わらぬ方法で作られるスイーツがあります。
うわ〜すてきじゃないですか!あらまあわらぶきですかね。
うわ〜。
このかやぶきの民家で食べられる昔から受け継がれてきた絶品スイーツが…。
あっどうも…。
(2人)ありがとうございます。
葛切り。
わざわざこれを目当てに遠くから人がやって来るといいます。
ほかにはないというそのお味は?うんうわっ…。
おいしい!今…本物はないんですか。
葛切りの材料となる本葛。
今は芋のでんぷんなどを混ぜたものが多く昔からの葛切りは少ないそうです。
そう葛は掘るもの。
山に自生する葛の木の根が本葛になるのです。
葛の根っこから取ったでんぷんを水に何度もさらしアクを抜いて乾かす事でようやく食べられるようになるのです。
清浄な葛を使った本物の葛切り。
作り方は受け継いできた昔のまま。
作り置きがきかないため注文の度に20分かけて作ります。
水で溶いた葛を湯せんしたのち冷ますと固まります。
色も透明になり艶やかに輝きだす葛。
手間はかかりますがこのやり方でないと本物の葛切りは味わえないといいます。
本業は漆職人の岸本さん。
山で漆の木を育てているため宇陀の山の事は知り尽くしています。
葛切りを出すようになったのは子どもの頃食べさせてもらった本物の葛の味を絶やしたくないとの思いからです。
でも本葛ってちゃんと世間に広めた方がいいよね。
間違いなくこれはオンリーワンですからね。
昔のもの昔の知恵に触れた今回の旅。
こういう感じですよね。
本当感謝ですね。
1,000年前と変わらず輝く夕日。
こんな夕日に出会わせてもらった奈良に感謝ですね。
2015/10/29(木) 15:15〜16:00
NHK総合1・神戸
ろーかる直送便 えぇトコ「昔が生きてる!すごい奈良」[字]
歴史が暮らしにとけこむ奈良。みんなが使う飛鳥時代の橋。室町時代の本物のくずきり。超快適!江戸時代の家。昔の知恵が現代にも息づく奈良の魅力を再発見する旅です。
詳細情報
番組内容
人々の営みの中に千年以上の歴史が地層のように積み重なっている奈良。飛鳥時代から使われてきた橋や平安時代のインフラ技術が生かされた用水路。そして江戸時代のたたずまいを残す町で見つけた土壁や通り庭には暮らしの知恵がいっぱい!機能や使い勝手を追求してきた先人の知恵があったからこそ今に息づいています。古事記をこよなく愛する浅野温子と金子貴俊が、爽やかな秋風を受けながら、歴史を、里山を、人々を巡ります。
出演者
【旅人】浅野温子,金子貴俊,【ナレーション】島よしのり,橋本のりこ
ジャンル :
バラエティ – 旅バラエティ
ドキュメンタリー/教養 – 歴史・紀行
情報/ワイドショー – グルメ・料理
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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