ダーウィンが来た!「謎の大聖堂をオーストラリアで発見!」 2015.10.29


大地にそびえるまかふしぎな土の塔。
一体何でしょう?ここはオーストラリア熱帯の草原地帯。
塔の高さはなんと6メートルにも達します。
まるで「ふしぎの国」に迷い込んだよう。
その独特な姿はヨーロッパの大聖堂にも例えられます。
謎の大聖堂の正体とは?一体誰が何のために作ったのか?さあ調査開始です。

(テーマ音楽)取材班が向かったのはオーストラリア北部。
低い木がまばらに生える草原です。
確かに謎の大聖堂があちこちにありますね。
道路のすぐ近くにも。
家のそばにも。
さらに農場にも。
何か手がかりはないか。
まずは地元の人たちに聞いてみましょう。
(たたく音)家の庭に謎の大聖堂があるお父さん。
作者の姿を見たといいます。
これは貴重な情報です。
ならば夜を待つことにしましょう。
夜7時過ぎ。
あれ?表面で何か動いています。
穴を開けて中から出てきたようです。
正体はシロアリ。
大きさわずか5ミリほど。
その名もずばり「セイドウシロアリ」といいます。
このちいちゃ〜い虫こそ謎の大聖堂の作者だったんです。
ちょちょっと待った!おっ早いですねヒゲじい。
だってシロアリって家をかじって壊しちゃう困った虫じゃありませんか。
中から出てきたのは作者だからじゃなくてかじったからじゃないですか?うたぐり深いですね。
実はシロアリには大きく分けると2つのタイプがいるんです。
どんな?はい。
1つは朽ちた木などの中に住んで住みかそのものを食べて生きるタイプです。
こちらは家の柱なども食べるので害虫として嫌われてしまいます。
でしょ?私も正直シロアリはちょっと苦手ですなぁ。
でもねヒゲじいもう一つのタイプは生き方が全く違うんですよ。
枯れ草などを食べ住みかとなるアリ塚を作ります。
今回のセイドウシロアリはこちらのタイプなんです。
ふ〜んじゃあ悪さはしない?しません!それどころかセイドウシロアリは世界最大最強のアリ塚を作ると言われているんです。
ほうそうなんだ。
そんなすごいアリ塚を砦にして灼熱の太陽火事集中豪雨といった大自然の猛威に立ち向かうんです。
はあ〜!さらに怖〜い天敵には驚きの必殺技で対抗。
セイドウシロアリの懸命な姿を見ればヒゲじいのシロアリのイメージもきっと変わりますよ。
う〜んそうですか。
ではシロアリだけに頭の中を真っシロにして見させてもらいますぞ。
世界最大のアリ塚を作るセイドウシロアリ。
まずはその建築現場を見てみましょう。
黒っぽく見える所が今まさに工事中の場所です。
こちらは「働きシロアリ」と呼ばれます。
口にくわえたものは土と唾液を混ぜた建築材料です。
唾液には土を固める成分が入っていて乾くとかたくなるんです。
頭を振り振りしながら丁寧に塗りつけていきます。
シロアリたちは日ざしや暑さに弱いため夜の間だけコツコツと増築工事を続けるんです。
部屋の仕切りになる壁が出来てきました。
まるで設計図があるかのようにテキパキと作業が進みます。
働きシロアリに交じって黒っぽいとんがり頭のシロアリがいます。
工事は任せっきりでキョロキョロするばかり。
でもこれが仕事なんです。
「兵隊シロアリ」と呼ばれ仲間とアリ塚を守っているんです。
工事中シロアリたちは危険な塚の外に出なければなりません。
案の定草むらからアリが攻めてきました。
この兵隊の動きにご注目。
頭を小刻みに振っています。
こうして空気や壁を振動させ危険を伝えるんです。
サインを受け取った兵隊たちが現場に駆けつけます。
おっと!とんがり頭をかまれた。
アリが優勢です。
おや?アリが逃げました。
兵隊シロアリにはとっておきの武器があるんです。
突起の先からビーム?発射したのは「テルペン」という化学物質です。
粘着力があってベトベトくっつきます。
攻撃された相手は身動きがとれなくなり命を落とす危険にさらされます。
こうして兵隊たちが敵と戦っている間に部屋を覆う屋根がかけられていきます。
働きシロアリと兵隊シロアリの連係プレーで朝が来るまでにはどこもかしこも作業完了です。
では巨大な塚の中はどうなっているんでしょう?そこでシロアリの研究を20年以上続ける三浦徹博士の調査に同行しました。
特別な許可を得て切り取ります。
まずは上の部分。
薄い壁が網の目のように走りたくさんの部屋に分かれています。
続いては中ほどの部分。
比べてみると上の部分よりも部屋が小さく壁が厚くなっていることが分かります。
どういうことでしょう?アリ塚は大きくなるにつれどんどん重さが増していきます。
それを支えるためシロアリたちは塚の下のほうに行くにしたがい壁をより厚く頑丈に作っていたんです。
さすがは名建築家です。
観察のために切り出した部分を元に戻すとただちに修復が始まります。
2時間足らずで見事に塞がりました。
長年の研究からアリ塚の中でのシロアリたちの暮らしぶりも少しずつ分かってきました。
まず塚の中央部。
ここは働きシロアリや兵隊シロアリが暮らす場所です。
大きなアリ塚だとその数は300万匹にもなると考えられています。
頑丈な下のほうには子ども部屋があります。
生まれて間もない幼虫は小さくて真っ白。
傷つきやすいので安全な場所で守られているんです。
さらに塚の一番奥深くに最も大切な場所があります。
王と女王の部屋です。
王はアリ塚にたった1匹だけ。
役目は女王と共に家族を増やすこと。
こちら女王も1匹だけ。
大きさは3.5センチもありその大部分がおなかです。
1日に数万個もの卵を産み続けます。
女王と王は寿命が1年ほどの働きシロアリや兵隊シロアリと比べはるかに長生きすると考えられています。
そして女王と王が生きているかぎりアリ塚も大きくなり続けます。
中には50年以上にわたって使われ続けるものもあるんです。
深夜地面を進むセイドウシロアリの集団を見つけました。
どこへ行くんでしょう?草の上にやってきました。
枯れた茎に働きシロアリが次々と登っていきます。
アゴで枯れた茎を切り取り始めました。
そう食べ物となる枯れ草の収穫現場だったんです。
刈り取った枯れ草を運ぶのも働きシロアリの仕事。
地上の敵に備えたくさんの兵隊シロアリが警戒しています。
ところが…。
カエルの攻撃です。
さらに食虫植物。
赤い部分に粘液があってくっつくと逃げられません。
このまま体ごと溶かされてしまうんです。
兵隊シロアリでもかなわない手ごわい敵に対しては奥の手があります。
地下道です。
危険な場所をなるべく通らないよう収穫場所の近くまでいくつも掘ります。
こちらが地下道の出入り口。
用心のため収穫が済んだらすぐ塞ぎます。
こうして一生懸命集めた枯れ草。
運び込んでどうするのかというと…。
塚の表面に近い部分に貯蔵庫を作って蓄えます。
その量は家族全員が数か月も食べていけるほど。
こうして天候の悪化などで収穫できない場合に備えるんです。
季節は乾季。
熱帯の太陽の日ざしは強烈です。
気温は40度近くまで上がります。
日ざしと暑さに弱いシロアリたちは灼熱の太陽にどう立ち向かうんでしょうか?その答えは細い塔が立ち並ぶ大聖堂のような独特の形にあります。
こちらのアリ塚なんて世界遺産サグラダ・ファミリアそっくり。
この独特な形のおかげで太陽の光をどの方角から浴びてもたくさんの日陰が生まれます。
温度を測ってみるとひなたの壁では42度6分。
塔の陰では28度9分。
15度近くも差がありました。
こうしてアリ塚の温度の上昇を抑えていると考えられています。
見事なデザインです。
ある日草原に火の手が上がりました。
乾燥しきった草木に雷などで火がつきたびたび燃え上がるんです。
こんな時セイドウシロアリの塚の大きさが威力を発揮します。
たとえ炎が迫ってきても分厚く巨大な壁で遮り熱も通しません。
シロアリたちはアリ塚の中心部に近い安全な場所で火事をやり過ごすことができます。
巨大なアリ塚は灼熱の太陽にも燃え盛る炎にも負けない鉄壁の要塞なんです。
今度は激しい雨の試練。
アリ塚の意外な弱点が明らかになります。
さらに恐るべき強敵の出現。
セイドウシロアリは生き抜けるんでしょうか?地球にはシロアリの大聖堂のような生きものたちが作る不思議な景観がまだまだあります。
びっしりと並んだ砂山。
20キロにわたって続いています。
ここは中東オマーンの海岸。
砂山を作ったのは5センチほどのカニ。
砂山はオスがメスを誘うためのもの。
山が高いほどモテるんです。
こちらはメス。
低い山は…素通りです。
あっ足を止めました。
立派な砂山です。
カップル誕生!続いてはアメリカカリフォルニアから。
わっ穴だらけの奇妙な木!さらに穴の中には無数のドングリ。
誰がこんなことをしたんでしょう?ドングリ好きといえばリス?危ない!実はこちらのキツツキの仕業。
この不思議な景観はドングリの貯蔵庫だったんです。
拾ってきたドングリにぴったりの穴を探ししっかり埋め込みます。
冬を越すのに欠かせない食べ物なんです。
わあ〜!夜空に浮かぶイルミネーション。
大きな木の全体が光っています。
まるでクリスマスツリーみたいですね。
ここはパプアニューギニアの深い森。
光っていたのはこちらのホタルです。
オスたちが一致団結してメスに恋のアピールをしていたんです。
生きものたちのひたむきな営みが不思議な景観を生んでいたんですね。
12月下旬。
オーストラリア北部を厚い雲が覆うようになります。
雨季の始まりです。
1日に何度か激しいにわか雨に見舞われます。
でもこの程度の雨ならアリ塚は平気です。
雨上がり。
不思議な光景を目にしました。
アリ塚の周りに無数の虫が羽ばたいています。
正体はセイドウシロアリのオスとメス。
新たな子孫を残すために生まれてきました。
この大乱舞「結婚飛行」と呼ばれています。
それぞれのアリ塚から飛び立ったオスとメスがパートナーを探します。
オスとメスは羽を捨てカップルになります。
そして地下に潜り王と女王として子孫を残し始めます。
こうしてセイドウシロアリの新しい家族が生まれるんです。
雨季に入ったこの時期草原では生きものたちが一斉に活動を始めます。
そんな中恐ろしいハンターも活発に動き回るようになります。
ツムギアリです。
大きさは1センチほど。
特徴は緑のおなかと大きなアゴ。
集団で獲物に襲いかかりはりつけにして動きを封じます。
強力なアゴで体にかみつきしとめるんです。
小さな昆虫たちにとって最もやっかいな天敵なんです。
本格的な雨季に入りました。
激しい雨が一日中降り続きます。
至る所に水があふれています。
アリ塚の周りも水浸しです。
大丈夫なんでしょうか?そんなある日。
塚が崩れていきます。
作ったばかりの軟らかい部分が雨の影響ではがれてしまったんです。
すぐに働きシロアリが出動し修復作業を行います。
ところがその矢先無情にも再び雨が降り始めました。
崩れても崩れてもシロアリたちはくじけることなく修復を続けます。
(雷鳴)日没後。
修復を続けるシロアリたち。
でも様子が変です。
兵隊シロアリが何か警戒しています。
アリ塚を登る怪しい影。
どう猛なハンターツムギアリの軍団です。
修復作業で外に出ているシロアリたちを狙ってやってきたんです。
あっ危ない!ツムギアリが攻撃。
大ピンチです!ツムギアリが中に入ろうとします。
その時です。
テルペンを発射!兵隊シロアリが出すベトベトの粘着物質が相手の動きを封じます。
体に付いたテルペンは簡単にははがれません。
仲間が敵を食い止めている間に働きシロアリは必死で作業を続けます。
ところがツムギアリ軍団が反撃!強力なアゴでかみつきます。
こうなってしまうと万事休す。
実は1匹の兵隊シロアリが発射できるテルペンの量は限られています。
セイドウシロアリ絶体絶命!働きシロアリたちの修復作業は間に合うんでしょうか?ツムギアリは続々と攻め込んできます。
でもシロアリたちも負けません。
援軍が仲間のもとへ駆けつけます。
そして後ろからテルペン発射!さらに前からも。
集中攻撃です。
ついに形勢逆転。
シロアリたちは力を合わせて押し返します。
壊れた壁の修復もあと少しです。
テルペンの連続攻撃を受け続けるツムギアリ軍団。
もう壊滅寸前です。
ついに撃退に成功しました。
いつの間にかシロアリたちの姿は見えなくなりました。
壁の穴を塞ぎきりみんな塚の中に戻ったんです。
セイドウシロアリは見事な連係プレーで無事ピンチを乗り越えました。
雨季の晴れ間。
草原で小さなアリ塚を見つけました。
新しい王と女王が作り始めたばかりのものです。
これから長い年月をかけて立派なアリ塚へと成長していくことでしょう。
いや〜感心しました。
確かにシロアリのイメージが変わりましたなぁ。
あ〜ヒゲじいちゃんと分かってくれたんですね。
安心しました。
火事にも負けず雨にも負けず恐ろしい敵の襲撃にも負けない。
試練にまっすぐ立ち向かうその姿。
これからは「セイドウシロアリ」改め「正々堂々シロアリ」なんて名前にしたらいいんじゃないですかね?あっヒゲじいうまくまとめましたね。
はい。
巨大なアリ塚はシロアリたちの知恵と勇気そして団結力のまさに結晶だったんですなぁ。
2015/10/29(木) 16:20〜16:50
NHK総合1・神戸
ダーウィンが来た!「謎の大聖堂をオーストラリアで発見!」[字][再]

オーストラリア北部に不思議な土の塔が数多くそびえている。高さは6メートル、独特な姿はヨーロッパの大聖堂のよう。誰が何のために作ったのか?謎の大聖堂の正体に迫る!

詳細情報
番組内容
オーストラリア北部、熱帯の草原地帯にまか不思議な光景が広がる。高さ6メートルもある巨大な土の塔がいくつもそびえているのだ。その独特な姿は、ヨーロッパの“大聖堂”にも例えられている。土の塔は乾季の暑さや火事、雨季の豪雨など大自然の猛威に耐え、50年以上立ち続けているものもあるという。誰が、何のために作ったのか?「塔の作者は、夜に現れる」という証言をもとに取材開始!謎の大聖堂の正体に迫る!歌:平原綾香
出演者
【語り】中山準之助,龍田直樹,豊嶋真千子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア

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