うわっ!誰か!誰か!誰か消火器を!
(人々の悲鳴)
(カメラのシャッター音)
(榊マリコ)どう?
(乾健児)前の2件と同じ仕組みの発火装置のようです。
これが先々週こっちが先週使われたものです。
固形燃料も使用されてる。
前の2件と同じ手口ね。
(吉崎泰乃)警備室で防犯カメラの映像チェックしてきます。
うん。
(土門薫)3件目となると連続放火で間違いないな。
何か見つかりました?
(原口衿果)あっ…いいえ。
連続放火という事はやっぱり同一犯がやったんでしょうか?それを今から調べるのが僕たちの仕事だから。
すいませんでした。
パンフレットの辺りは防犯カメラの死角になっていて犯人の姿は映っていませんでした。
(日野和正)犯人はあらかじめカメラの位置を計算に入れてたのかもしれないね。
そっちはどう?
(宇佐見裕也)着火用の固形燃料は過去の2件と同じアルコール系の固形燃料です。
登山などによく使うものでアウトドアショップならどこででも手に入ります。
灯油も市販品でした。
犯人を特定する手がかりにはなりそうもありません。
(泰乃)発火装置の方は何かわかりました?うん。
タイマーは基板からプリントした手製のものだった。
でパーツの中に製造元が特定出来ないICチップがありました。
特定出来ないって?たぶん海外で作られたものだと思うけど入手経路を調べてみます。
(権藤克利)失礼します。
連続放火事件としてついさっき捜査本部が立ちました。
所轄署に上げさせた資料のコピーです。
ありがとう。
(日野)これが1件目…。
(権藤)2週間前河原町にある消費者金融の自動契約機コーナーでイスに置かれた紙袋が燃え出した。
2件目はホテルでしたね。
(権藤)先週の水曜京都駅近くのホテルの地下駐車場に置かれたセカンドバッグが突然燃え上がった。
2件とも延焼は免れたのね。
これが犯人ですか?ええ1件目の無人契約機の防犯カメラの映像です。
(日野)これじゃあモンタージュは無理だね。
犯行がエスカレートしてる気がしない?確かに発火装置のサイズが大きくなってますね。
場所も気になるわ。
無人契約機や地下駐車場なら人の出入りは少ないけど今回は大勢の人間が出入りしているビルのエントランスだった。
もし次があるとしたらその時は負傷者が出るかもしれない。
(権藤)とにかくこっちは目撃者捜しをします。
(日野)さて…鑑定も一通り終わったみたいだし今日は帰れる人間から帰るようにしよう。
(日野)みんなこのところ残業続きだったから少し休んだ方がいい。
お疲れ。
(一同)お疲れ様です。
(泰乃)お父さん大丈夫なんですか?お父さんどうかしたの?倒れたって今電話が。
えっ!じゃあすぐに帰った方が…。
いえただの医者の不養生だから。
ねえ乾君。
なんですか?まだお父さんのところ帰ってないんでしょ?一度ちゃんと帰った方がいいわ。
仕事の方なら私たちでどうにかするから。
余計な心配しないでください。
すいません。
でも今は仕事の事だけ考えてたいんです。
(乾)これなんですが…。
(店員)うちでは扱ってませんね。
そうですか。
いらっしゃいませ。
(乾)あっ…。
君…確か鑑識の…。
(衿果の声)原口です。
鑑識班にこの4月から。
こんなとこで何してんの?あっいや別に…。
あの…昼間の放火事件の事なんですがもし犯人が逮捕されたらかなりの罪になるんですよね?ああ…仮に建物なんかが燃えたりした場合は結構重い罪になるし万が一人が亡くなったりしたらそれこそ殺人罪にだって…。
そんな…。
君ひょっとして何か心当たりがあるんじゃないか?
(ノック)彼女は?ええ鑑識班の原口衿果さんです。
原口です。
犯人に心当たりがあるそうだな?どんな事でもいいからお願い聞かせて。
はい。
ひと月ほど前同じ大学だった高松史生という人から何年ぶりかで電話がかかってきたんです。
もしもし?高松君?久しぶり…。
えっどういう事?その時に連続放火をほのめかしたのか?正確にはなんて?よく覚えてませんがひどく思い詰めた声でした。
同じ大学って言ってたよね。
どこ?英京大学です。
高松君は法学部でした。
でも中退しちゃって今は住所もわかりません。
どうしてその高松って人はあなたにそんな電話を?わかりません。
そうか。
とにかく大学に問い合わせてみる。
(衿果)お願いです。
彼を…高松君を救ってあげてください。
高松史生は英京大学を中退したあと洛西工業大学に入り直している。
それも工学部だ。
当然時限発火装置を作るだけの技術は持ってるわね。
ああ。
(管理人)実は高松さん3週間ほど前から姿が見えなくて。
3週間前…。
最初の事件もちょうどその頃ですよね。
事は急を要します。
お願いします。
はい。
(乾)発火の実験をした残骸みたいですね。
あっ3件の放火に使われたのと同じものです。
乾君。
あっそう…これです。
インターネットを使って海外から直接購入したのね。
あっ権藤か?高松史生を重要参考人として行方を捜すように捜査本部に伝えてくれ。
うん頼む。
もしもし泰乃さん?今から現場に来られる?よかった。
場所は右京区のフタバアパート。
よろしく。
(乾)マリコさん。
(乾)これ彼女ですよね?原口です。
ただの友達ではなかったのね。
高松史生の部屋にあった焦げた基板からも同じ固形燃料と灯油の成分が検出されました。
ですがどちらも部屋にはなかったんですよね?発火の実験をやっていたとすれば犯人はどこか別に隠れ家か何かを持っていて危険物はそこに保管しているのかもしれないわね。
指紋はどうでした?工具類や食器から出たのはどれも渦状紋。
一人の人間のものとみて間違いないね。
当然住人の高松史生と考えていいだろう。
(宇佐見)他の人間は出入りしてないって事ですね。
(日野)なんか妙な切片が見つかったって?成分はニトロセルロースアクリル樹脂酢酸エチル。
マニキュアですか?でも色素は検出されなかったの。
これだけだとまだなんとも言えないわね。
乾君の方は?残ってた基板の材料や電子パーツも全て過去3件のものと一致しました。
発火装置があの部屋で作られたのは間違いありません。
残りのICチップの数から考えてまだ4個は作れるはずです。
(日野)だとすると連続放火はまだ続くって事か…。
泰乃君の方は?
(泰乃)空き缶の中からタバコの吸い殻が見つかりました。
フィルターに唾液も残ってたんですけど血液型は検出出来ませんでした。
非分泌型。
つまり唾液や汗などの中に血液型を示す物質が分泌されないタイプの人間の可能性がある。
高松史生はその非分泌型って事ですか?それはまだ当人の血液を調べないとわからないわ。
(泰乃)インターネットのサイトへのアクセス履歴も調べたんですけど3件の被害場所に関するデータはありませんでした。
(日野)犯人は無作為にターゲットを選んで放火してるのか?あるいはなんらかの共通点があるのか?
(権藤)失礼します。
容疑者に関する情報です。
高松史生24歳。
父親の高松由尊は京都中央弁護士会の副会長で長男である史生は市内の名門私立高校を卒業後現役で英京大学の法学部に進学しています。
絵に描いたようなエリートって事ですね。
周囲の人間も当然父親の跡を継いで弁護士になるものだと期待していたそうですが2回生の時になぜか突然中退しています。
(日野)まあそれで洛西工業大学の工学部ってのも随分な変わりようだね。
変わりようと言えば高松史生は中退直後に家を出てアパートで一人住まいを始め実家にはほとんど立ち寄る事もなかったそうです。
結局また残業になっちゃったわね。
かえって助かります。
え?ここでマリコさんやみんなと仕事をしている時は何も考えなくてすむから。
ひょっとしてお父さんの具合よくないんじゃ…。
倒れた時には手の施しようがなくて…。
ガンの末期だそうです。
今は都内のホスピスに入院してます。
ホスピス…。
長くてもあと1年くらいだって…。
だったら今すぐにでも帰った方が…。
皮肉なものですね。
親父の事精一杯考えないようにしてたのにこんなものと出くわすなんて…。
それ高松史生の部屋にあった…。
鑑識の彼女以外はたぶん家族で撮った写真みたいですね。
母親やこれはきっと弟かな?でも…父親の写真だけは1枚もありません。
あぁ…。
最初にこれを見た時似てるって感じたんです。
似てるって高松史生と乾君が…?よかったら乾君とお父さんの事聞かせてくれない?親父は町医者です。
僕が子供の頃おふくろが亡くなったんでずっと父一人子一人で…。
東京の下町で30年以上小さな病院だけど深夜の急患や往診にも文句ひとつ言わず患者さん一筋って感じの…。
熱心なお医者さんなんだ。
僕も親父の跡を継いで医者になる。
子供の頃から当たり前のようにそう思ってました。
で医学部を受けようとしてた高校3年の時…。
(乾の声)夜更けに急患が担ぎ込まれてきて…。
(今藤弘之)早く診てくれよ。
親父早く!
(乾尚仁)どうしました?親父が急に苦しみだして…。
親父…親父…。
(乾の声)クラスメートで親友の父親でした。
なのに親父は…。
乾医院です。
緊急病院へ患者の搬送をお願いします。
(乾の声)手当も何もせず救急車を呼ぶだけで…。
そのお友達のお父さんは…。
搬送の途中容体が急変して救急車の中で亡くなりました。
そう…。
たぶんその時のうちの設備では治療出来る状態じゃなかった。
今なら少しはわかる気がします。
でもその頃の僕にはどうしても納得なんか出来ませんでした。
その時の事お父さんは乾君になんて?何も答えてはくれませんでした。
ひょっとしてそのせいで医者になるのを…。
同じなんです。
僕が京都に来た時もおふくろや友達の写真は持ってきたけど親父の写真だけは1枚も持ってきませんでした。
確かに高松史生も父親と同じ弁護士になるのをやめてまるで畑違いの工学部に…。
そのあたりに連続放火の動機もあるような気がするんです。
わかった。
土門さんに連絡してみる。
その代わり約束して。
この事件が解決したら必ずお父さんに会いに行くって。
大学の同級生に聞き込みをした結果君と高松史生が恋人だった事がわかった。
悪いが君の経歴も調べさせてもらった。
高松史生が法学部を中退するひと月前君もまた大学をやめている。
4年前何があったのか話してもらえないか?きっかけは子供向けのオモチャの事故でした。
その年の春ミンワトーイという玩具メーカーのオモチャで遊んでいた子供がやけどを負うという事故が何件か立て続けに起きたんです。
確か製品に欠陥があったってニュースにもなったね。
被害に遭った子供たちの親はミンワトーイを相手に損害賠償の訴訟を起こしました。
ひょっとしてその裁判を担当したのが…。
高松君のお父さんは顧問弁護士でしたからミンワトーイ側の弁護士として法廷に立ちました。
そして事故の原因はミンワトーイ自身にはなく下請けの部品工場が指定した規格どおりに部品を作らなかったせいだと主張したんです。
その結果裁判は?ミンワトーイにかなり有利な条件で和解が成立しました。
でも一番の被害者はその部品工場だったんです。
君の父親が経営していた工場か?欠陥工場のレッテルを貼られて倒産に追いやられました。
そのせいで私も大学をやめざるをえなくなって…。
それを知った高松君は…。
(高松史生)どうしてだよ!あんな会社弁護しておまけに工場に責任なすりつけるようなまねしたんだよ!
(高松由尊)お前に裁判の何がわかる!私の仕事に口出しをするんじゃない!
(史生)ああっ!そのせいで法学部を中退した。
大学をやめたあと高松史生とは…?彼の方からもう私とは会えないって距離を置くようになって最後は連絡も取れなくなりました。
でもついひと月ほど前突然電話が…。
もしもし?高松君?久しぶり…。
(史生)「もうすぐ衿果への借りを返せるから待ってて」えっどういう事?親父が間違ってたって思い知らせてやるんだ。
えっ…。
あれだけの火を見れば絶対…。
そのすぐあとでした。
市内で立て続けに放火事件が起きて…。
ひょっとしてあの夜電気街にいたのも高松史生を捜してたんじゃ…。
高松君付き合ってた頃から機械工作が好きであの辺りに何度か一緒に行った事があるんです。
ひとついい?高松君はタバコを吸ってた?いいえ。
私の知る限りは嫌いでした。
3件の被害者がつながったぞ。
何かわかったの?高松史生の父親が担当していた訴訟記録を地裁から取り寄せて調べたところこの3社の代理人を引き受けていた。
みやこローンホテルカリエン日向証券。
みやこローンは過払い分の利息の返還訴訟。
ホテルカリエンは従業員が些細なミスで解雇されその撤回を求めた訴訟。
日向証券は社員の説明が不十分で老後の生活資金を失った老夫婦が起こした訴訟。
3件とも高松由尊は企業側の代理人として被告に有利な判決を引き出している。
つまり強者の味方をし弱者をくじく弁護だった。
彼にはそう映ったのね。
ああ。
一連の放火の目的は全て父親への復讐だったんだ。
高松史生が4年前の裁判のせいで恋人と別れるはめになった事を恨んだ末に父親が弁護した企業ばかりを狙っているとしたら…。
次に狙われる可能性があるのは…。
(携帯電話)はい。
(権藤)「土門さん4件目が起きました」「今度はケガ人も出てます」軽度の熱傷と煙でのどを痛めてるけど命に別状はないわ。
あの柱の脇に段ボール箱が置かれているのを不審に思って近寄った途端突然発火したそうだ。
間違いありません。
前の3件と同じ手口です。
高松君のお父さんは顧問弁護士でしたからミンワトーイ側の弁護士として法廷に立ちました。
4年前の裁判の…。
すごい煤です。
かなりの高さまで火が上がってます。
前の3件より派手に燃やそうとしたって事ですか?犯行は確実にエスカレートしてるな。
って事は…。
まさか…。
高松史生が原口衿果と別れるきっかけを作ったこのミンワトーイが狙われた以上次は高松由尊本人かもしれないな。
そんな。
それを防ぐためにも高松史生の居場所をなんとしても見つけ出さないと。
(泰乃)マリコさんこれ見てください。
(宇佐見)灯油がかなり燃え残ってますね。
灯油の量が不自然に多かったみたいですね。
そのせいで箱の中で不完全燃焼を起こしたからこれだけの煤が出たのね。
妙ですね…。
これまでの3件では着火用の固形燃料や灯油の量が効率よく燃え上がるように細かく計算されていたんです。
なのに今回は無理やり灯油だけ増やしたみたいで。
それだけ発火の規模を大きくしたかったんでしょうか?でもそれなら他に方法はいくらでもあります。
着火点を増やして固形燃料を分散させるとか。
この犯人ならそれぐらい簡単に出来るはずなのに…。
ひょっとして…。
(乾)無人契約機の防犯カメラの映像です。
これだけだと人相は特定出来ないわね。
ですがこれを取り込んで後ろのポスターと比較すれば…。
身長178から183センチ。
高松史生は173センチです。
恐らく高松史生の役割は発火装置を作る事でそれを仕掛けて回ったのがこの男の方ね。
でも高松史生の部屋には他の人間が出入りした痕跡は見つかってません。
いいえ1つだけあるわ。
高松史生の部屋から吸い殻が見つかったでしょ?高松君はタバコを吸ってた?私の知る限りは嫌いでした。
高松史生がタバコを吸わないのなら共犯者が吸ったものかもしれないわ。
という事は共犯者が非分泌型…。
でもどうやってそれを証明すればいいんです?彼の実家なら何か残ってるかもしれない。
土門さんに頼んでみる。
だったら僕もいきます。
ご子息の史生さんは現在連続放火事件の重要参考人です。
動機は先生が4年前に担当されたミンワトーイの裁判にあると思われます。
そう言われましても私はなんの心当たりも…。
事故は下請けの部品工場のミスにより起きた。
その主張のせいで倒産した部品工場は史生さんの恋人の父親が経営する工場だったんです。
息子さんの部屋にあった証拠から共犯者がいる可能性が出てきました。
それを確かめるためにも捜査にご協力をお願いします。
はっきり申し上げます。
息子の犯した罪と私とは無関係です。
あいつは私の期待を裏切り弁護士の道を捨てて勝手に家を出てったんです。
それ以来一度も顔を合わせていません。
犯行はエスカレートしています。
次に狙われるのは先生かもしれません。
必要ならば警護をつける事も…。
そんな必要はない!申し訳ないが予定が入ってますのでお引き取りください。
わかりました。
ちょっと失礼しますよ。
え?いや…。
乾!
(乾)発火装置!すでに送られてきていたんですね。
どうして黙ってたんですか!それは…。
土門さんこれ…。
脅迫状だ。
息子を助けてください…。
(日野)高松史生の父親にこれが送られてきた?ええ。
脅迫状と一連の事件を報じる新聞記事と一緒に。
(泰乃)脅迫状にはなんて?
(宇佐見)ああ…。
「4件の放火は全てお前の息子の高松史生が行った」「証拠はそろっている」「世間に知られたらお前の弁護士生命も終わる」「それが嫌なら明日までに1千万円を用意しろ」高松史生が父親から金を脅し取ろうとしたってわけ?ううんそうじゃない。
脅迫状の最後の方には「警察に知らせたら息子の命は保証しない」って書いてあるわ。
どういう事です?一連の放火事件には高松史生とは別の共犯者…というより主犯格の真犯人がいたの。
無人契約機の防犯カメラに映っていた男ですね。
恐らく真犯人はなんらかの理由で高松史生が父親の高松由尊さんを恨んでいる事を知りそれを利用して金を奪う計画を立てた。
弁護士会の副会長という立場なら息子が放火犯である事は絶対に隠したいと思うだろうし1千万くらいなら簡単に払えると踏んだんだろうな。
だとすれば高松史生は真犯人に利用されて時限発火装置を作らされただけ…。
なおかつ真犯人にとっては大事な人質よ。
ひょっとしたらどこかに監禁されているかも…。
これを送ってきたのが真犯人だとすればこの中に絶対その人物につながる証拠が残っているはず。
よし手分けしてみんなで調べよう。
泰乃君は映像の解析。
はい。
私も手伝います。
(日野)脅迫状は僕がやるとして…。
発火装置は僕が。
高松史生の高校時代の帽子を預かってきました。
私はそれを。
文書ソフトもプリンターもかなりの数出回ってるものだった。
入手ルートをたどるのは難しいな。
そうですか。
送られてきた発火装置は放火現場のものと一致しました。
ただし電池が切れていたので発火はしません。
やっぱり恐喝のためのダミーだったんだ。
高松史生の帽子から検出した汗を分析した結果血液型はA型。
彼は非分泌型じゃありませんでした。
って事はタバコの唾液はやっぱり真犯人の?真犯人は非分泌型って事か。
それと送られた段ボール箱の中に部屋で見つかったのと同じこれが。
(日野)アクリルの切片か。
マニキュアみたいなやつ?分析した結果皮脂とわずかですが指紋が見つかりました。
(乾)指紋?マニキュアなのに指の腹の側に塗ったって事ですか?思い出して。
高松史生の部屋には本人以外の指紋は一切見つからなかったでしょ?だけど吸い殻があった以上真犯人は間違いなく部屋に出入りしていた。
指紋を消すのにマニキュアを使った…。
どうしてわざわざそんな面倒なまねを。
恐らく真犯人は最初から高松史生を利用する目的で接触したのよ。
用心深く自分につながる証拠を残さないように部屋に出入りする時には怪しまれないように手袋ではなく指の腹にこれを塗っていたの。
ネイルプロテクター?本来は傷んだ爪を保護するために使うものよ。
指の腹に塗れば指紋を残さないようにも出来る。
聞いた事あるな。
確か爪を酷使する野球選手とかほらギタリストとか。
ギタリストってひょっとして…。
そっか!場所がわかった。
高松史生の身長と比較して天井の高さを割り出したんですけど…。
天井まで3メートル。
通常の住居より高いわね。
(泰乃)しかも天井から何かがたくさんつり下がっているようです。
背景音も全く無音に近く相当防音が施されています。
(乾)天井に何かがつられている。
防音。
たくさんのイス…。
ひょっとしてライブハウス?ええ。
だからギタリストって聞いてピンときたんです。
待って。
この映像では実際に発火をさせてるわ。
時間貸しで借りたとしてもそこまではさせてもらえないでしょうね。
だったら…。
ちょっといいですか?
(乾)市内にあるライブハウスで現在営業してないのは…。
3か所です。
室内の写真とか見られる?
(乾)ここは広すぎますね。
次は…。
ここよ。
紫舞町のC7ってライブハウスです。
(ギター)
(東田誠人)なんだよてめえ。
何すんだよ!
(東田)離せよ!東田誠人か?東田誠人だな。
(権藤)土門さん。
高松史生だな。
監禁並びに恐喝容疑で逮捕する。
高松は無事だ。
ケガはしていないようです。
詳しい話は府警本部で聞かせてもらおう。
(乾)マリコさんこれ!最後の時限発火装置。
(乾)着火剤と灯油もあります。
真犯人の東田誠人って男やっぱり非分泌型だったわ。
そいつ鑑識の原口衿果さんのいとこだったそうだ。
彼女から父親の工場が潰れた時の顛末や高松史生の事も聞いていたのね。
売れないミュージシャンでライブハウスの店長やってたんだけどそのライブハウスまで潰れて金に困った揚げ句今回の計画を思いついたんだそうです。
あいつ人を疑う事を知らねえから衿果の親父が工場が潰れたせいで死んだって言ったら確かめもせずに真に受けて…。
そうやって父親の由尊氏に一緒に復讐しようと持ちかけたわけか。
毒薬でもナイフでもなんでもよかったんだけど火がいいってあいつの方から言い出して。
なのに…いざ金を奪おうって時になってそんなつもりじゃないとか言い出しやがって。
てめえの親父なら1千万ぐらい簡単に払えるだろ?え?どういう事ですか?約束が違うじゃないですか。
(宇佐見)4件目の発火装置に灯油を増やしたのもこの真犯人の東田だったって事ですよね?ええ。
被害をエスカレートさせた方が恐喝の効果が上がると思った東田が高松史生に無断でやったそうよ。
って事はやっぱり高松史生には父親を恐喝するつもりはなかったんだ。
東田に恐喝をやめさせようとして逆に監禁されてしまったの。
もし仮に父親の高松弁護士がお金を払ってたとしたらひょっとして…。
東田は高松史生を口封じのために殺害していたかも。
土門さんたちもそうにらんでいるみたい。
じゃあある意味彼は被害者でもあったんですね。
だけど父親を逆恨みして時限発火装置まで作ったんだ。
装置を仕掛けたのが東田だったとしても放火の共同正犯は免れないんじゃないかな。
でも恐喝するつもりがなかったんならなんで高松史生は東田の計画に乗ったんでしょう?衿果のお父さんは元気なんですか?
(権藤)ああ。
心労で死んだっていうのは東田が君をその気にさせるためについた嘘だ。
そんな…。
どうして放火だったんだ?え?東田の話では時限発火装置にすると言い出したのは君の方からだったそうだな。
どうしてだ?思い出してほしかったから…。
え?
(史生)「4年前のあの事故を…」4年前起きたのはミンワトーイのオモチャが突然発火して子供がやけどするという事故でしたね。
はい。
東田にそそのかされた息子さんが放火を選んだのは彼の中で4年前の事故がまだ決して終わってはいなかったからではないでしょうか。
最初私たちは犯行の動機はあなたへの復讐だと思っていました。
でも今は一連の犯行はあなたへのメッセージだったように思えてなりません。
メッセージ?4年前のミンワトーイの裁判を思い出してほしい。
そして弁護士としてこれまでしてきた仕事の事も全て立ち止まって考え直してほしいという…。
もちろん歪んだメッセージです。
彼のした事は決して許されません。
(乾)1つ聞いていいですか?4年前の裁判でどうして事故の責任を部品工場に押し付けるようなまねをしたんです?メーカーの顧問弁護士である以上社員や会社の利益を守るのは当然の責務であり私はそれを全うしたつもりです。
だったらどうして今おっしゃった事を4年前息子さんに話してあげなかったんです?え?親子だから言わなくてもいつかわかってくれる。
そんな甘えを言い訳にして肝心な事を語らずに放っておいていたんじゃありませんか?もちろんあなただけではありません。
彼の方だって…。
思い出してほしかったから…。
4年前のあの事故を…。
話すべき事を話し伝えなくてはいけない事を伝えていれば多くの誤解や憎しみですら避けられたのかもしれないのに。
生意気な口をきいて申し訳ありません。
高松さんへのさっきの言葉ほんとは僕に聞かせるためだったんですよね?ようやくわかりました。
僕も親父と話すべき事をまだ何も話してなかったって。
事件も解決したしこれでようやくお父さんのところへ帰れるわね。
いやでもまだ迷ってるんです。
どうして?突然倒れたと思ったらもう助からないだなんて…。
そんな親父と今さら向き合っても僕に何か出来るわけじゃないし…。
正直ずるいですよ。
だっていきなり余命1年だなんて聞かされたら何も言えるわけないじゃないですか。
まだ1年あるじゃない。
その時間出来る限りお父さんと言葉を交わしてあげて。
互いに話したい事はまだたくさんあるはずよ。
だってこの世でたった2人きりの親子なんですもの。
お世話になりました。
お疲れさまでした。
ほんとに辞めちゃうんですか?戻ってくればいいのに。
1年くらいなら休職扱いも出来るって言ったんだけどね。
いい機会ですからこれから先の事をじっくり考えようと思って。
わがまま言ってすいません。
本当に長い間ありがとうございました!長い間お疲れさまでした。
見送りに顔出さないと思ったらここにいたんだ?苦手なんだよ湿っぽいのは。
土門さんらしいわね。
お前こそ寂しくなるなって顔してるぞ。
東京だもの。
いつだって会えるわよ。
そんな事言って…親父さんともしばらく会ってないくせに。
そっちこそ美貴ちゃんの事そろそろ心配でたまらなくなってきてるんじゃない?バカ言え。
なんだって俺があいつなんかの事を…。
そうだ!同じ東京なんだし乾君に美貴ちゃんが何してるか土門さんに報告するよう頼んでおこうか?余計なお世話だ。
そうと決まればまだ乾君そのへんにいるはずだからお願いしてこようか?ちょっと待て待て。
あっいたいた!あそこ!えっどこ?冗談よ。
2015/10/29(木) 16:00〜16:58
ABCテレビ1
科捜研の女11[再][字]
『隠された発火装置!連続放火、消された指紋の秘密!!』
乾研究員は発火装置の調査中に新人の女性鑑識員と出会う。彼女は「容疑者に心当たりがある」と言う…。
詳細情報
◇出演者
沢口靖子、内藤剛志、風間トオル、斉藤暁、泉政行、奥田恵梨華、高橋光臣
【ゲスト】
鈴木亜美、石垣佑磨、斉木しげる
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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