(拍手)
(観客たちの声)
(ヒロコ)あーやっぱりいいわね栗原ななみの舞台は!
(杉下右京)舞台はロンドンのウエストエンドで観た『リア王』以来なんですが今日のお芝居も楽しかったですね。
楽しかったわね〜。
いいものを観せていただきました。
でしょ!同じ舞台でもね彼女はね毎回セリフを変えたりすんのよ。
だからいつ観ても新鮮なの!
(亀山薫)俺にはよくわかんなかったですけどね。
薫ちゃんはね芸術を愛する心がないもんね〜。
あっ失礼なこと言わないでよ!俺にだってわかりますよ。
芸のイロハぐらいは…。
あらっゲイのイロハ?ほんと?そっちのゲイじゃないの!
(笑い)あら!川島ちゃん!
(川島弘基)おおー!お知りあいですか?この舞台のプロデューサー。
ちょくちょくね店に顔出してくれんのよ。
どうでしたお芝居は?もう最高!ちょっと薫ちゃん持ってて!ねぇ楽屋通してくんない?頼まれちゃったのよ〜お店の子たちにこんなにサイン。
(ヒロコ)ごめんなさいねもう何枚も何枚も。
(栗原ななみ)いいえ。
でもやっぱり綺麗だわ。
間近で見るともう癪に障るくらい!ありがとうございます。
こんなことなら色紙持ってくればよかったですね俺たちも。
ええ。
ご用意いたしましょうか?すいません催促したみたいで。
(ななみの携帯電話)ミカちゃんお願い。
(ミカ)はい。
はい栗原です。
あっ武先生の!どうもご無沙汰してます。
え!?武先生が亡くなった?どうしてそんなことに?ええもちろん後ほど伺います。
亡くなったってどういうこと?武先生殺されたって…。
やだ…。
殺された!?あっ失礼ですけども武先生ってのは?
(川島)この舞台をお書きになった劇作家の先生です。
劇作家の…。
(三浦信輔)指紋は?
(米沢守)こりゃ出ませんね…。
連れて来ました。
(伊丹憲一)ああご苦労。
おたくが第一発見者?
(魚住)はい。
発見当時のことを話してもらえますか?昨日寿司届けたんで寿司桶取りにあがったんです。
そしたら…。
(チャイム)ちわーっす宝来寿司です。
寿司桶いただきにあがりました。
(チャイム)武先生!ちはーっす宝来寿司です。
武先生?
(悲鳴)
(芹沢慶二)死亡推定時刻は昨日の午後3時から4時の間だそうです。
昨日寿司を届けたのは何時?2時半に注文を受けて届けにあがったのは…3時少し前だったと思います。
その時武先生は間違いなくいらっしゃったんですね?なんで警部殿がここにいるんですかね〜?いきがかり上。
なんすかその理由は!現場は俺たちの舞台なんだよ。
わけわかんねーんだよおめぇは!お前にはわかんなくていいんだよ。
もう一度お聞きします。
その時確かに武先生はいらっしゃったんですね?はい。
ちゃんと代金もいただきました。
そうですか…いらっしゃった。
中よろしいですか?邪魔しないでくださいよー。
ではお言葉に甘えまして。
くそー余計なことだけはするなよ!寿司が届けられたのが3時少し前。
死亡推定時刻が3時から4時の間。
つまり被害者は寿司が届けられた直後に殺されたってことになりますね。
いえ届けられた直後ではありません。
え?あっ…。
寿司を食べた直後。
そういうことになりますね。
はい。
おかしいですね…。
え?何か?湯のみが出てませんね。
湯のみ?お寿司を食べたのにお茶1杯飲まなかったのでしょうかねぇ。
ああ…。
ああ!洗っちゃったんじゃないですか?洗っちゃった?ええ食べたあとすぐに。
そういう几帳面な人間ているじゃないですか。
あっ美和子なんてね茶碗にご飯粒がこびりついちゃうからって俺食べたらすぐに洗わされてましたもん。
しかし几帳面な方とは…。
ああ…思えませんね。
(物音)あっなんすかこの音?下の階でリフォームしてるんですよ。
先ほどから時折…。
(工事の音)はぁ…またかよ。
おい芹沢!はい。
やめさせろ。
もうよろしいでしょうかね?それは俺らが決めるんだよ。
てめえらにそんな権利はねぇんだよ。
なんだとこらぁ!なんだよ!亀山君。
どうもありがとう。
ありがとうございました。
先ほどはどうも。
お忙しいところ恐縮です。
いえ。
私も突然のことで驚いてるんですよ。
まさかこれが武先生の遺作になるとは思いませんでしたから…。
まっどうぞ。
あっ…。
恐縮です。
実は私昨日武先生から電話をもらいましてね。
電話?何時ごろですか?お待ちください。
午後2時55分の着信です。
2時55分。
また死亡推定時刻の直前じゃないですか。
ええ。
どのようなお話をされたのでしょう。
お差し支えなければ。
差し支えちゃう話の方がこっちとしては聞きたいんですけどね。
ちょうどその時間はゲネプロの最中でした。
ゲネプロって?初日の前日に行う最後のリハーサルです。
(役者)「始めますか」「本気なの?奥さんが上で眠ってるというのに…」
(役者)「ご安心を。
ぐっすり眠ってます」「可哀相な奥さん私があなたに余計な遊びを教えたばっかりに」
(役者)「心にもないことを」
(武龍一)「そろそろ一幕が終わるころだろうと思ってね」「どうだい芝居は?」それが30分押してまして…。
「30分!?またあの馬鹿女優がセリフを変えてるんじゃないだろうな」あっいや…。
「やっぱりそんなことか…」「こっちが血反吐吐いて書いてるセリフを一体なんだと思っとるんだ」申し訳ございません。
「君も君だよ!」「女優のわがままを許してどうするんだ!」「プロデューサーなら脚本を守るのが当然だろ!」ですからあのマスコミの目もありますのでせめて明日の初日だけでも顔を出していただかないと…。
「行かないよ明日も僕は」「ことによっちゃ名前外したっていいんだ」それだけはご勘弁を!
(電話から聞こえる工事の音)まだ続いてるんですか下のリフォーム?「ああうるさくて仕事になりゃしないよ」「どいつもこいつも腹の立つ奴ばっかりだ!」「あっ寿司屋が来たんでねまた改めて」申し訳ございません。
そこで寿司屋の登場ですか。
寿司は武先生の大好物でしたから。
しかし作家が自分の書いた舞台の初日にも顔を出さないというのは普通じゃありませんよね?まあ…。
武先生と女優の栗原ななみさんはそんなに仲が悪かったんですか?仲が悪いなんてそんな生易しいもんじゃありませんでしたよ。
まるで犬と猿。
間に挟まれて私は生きた心地がしませんでしたよ。
大変でしたねぇ。
あんまり大きな声じゃ言えないんですけどね武先生こんなこともおっしゃってました。
どんなこと?「今度セリフをいじったら殺してやる」って…。
殺してやる…。
それは穏やかじゃありませんね。
はぁ…くだらないセリフ。
役者の生理がまったくわかってない。
よくこれで作家だなんて言えたわね。
ちょっとミカちゃーん!はい。
何か?嫌がらせ?サバが入ってる。
サバはいつも抜いてって言ってるでしょ!
(ミカ)あっでも昨日はお食べになっていたからもう大丈夫なのかなと思って…。
サバお嫌いなんですか?どうも!ああさっきの…。
警視庁特命係の杉下と申します。
亀山です。
亡くなられた武先生のことで少しお話をお聞きしたいと思いまして。
そうだったわねごめんなさい。
もういいわ下がって。
(ミカ)失礼します。
どうぞ!失礼。
お邪魔します。
お二人が刑事さんだなんて思ってもみなかったわ。
よく言われます。
(笑い)でどういったお話すればいいのかしら?栗原さんあなたはお芝居のセリフのことで武先生と喧嘩が絶えなかったとお聞きしたんですが。
作家が机の上で考えてるセリフなんて所詮は作り物。
生きてるセリフとは言えないわ。
それで毎回台本を書き換えるわけですか。
杉浦さんとおっしゃいましたっけ?まさかそれで私が武先生を殺したと?杉下です。
あっ失礼。
武先生の死亡推定時刻は昨日午後3時から4時の間です。
その時刻あなたはこの劇場でリハーサルをなさってたとお聞きしました。
しかもこの劇場と事件現場のマンションは車でも片道1時間はかかる距離です。
あなたが武先生を殺害することは100パーセント不可能です。
完璧なアリバイね。
完璧なアリバイです。
安心したわ。
ですからうかがったのはその件ではありません。
じゃ何かしら?つまらないほどありきたりな聞き込みです。
武先生に最近何かトラブルがあったとか…思い当たることはないかと思いまして…。
どんな些細なことでも結構なんですが…。
ほんとにつまらないセリフ。
お好きに書き直していただいて結構です。
書き直すまでもないわ。
私は女性関係だと思います。
女性関係…。
死者に鞭打つわけじゃないけど武先生はかなりのプレイボーイでしたからね。
私の周りの女優さんも泣かされた子はたくさんいます。
なるほど。
ごめんなさいそろそろ夜の部が始まるの。
ああ。
貴重な休憩時間にお邪魔しまして申し訳ありませんでした。
お役に立てたかしら?十分に。
この芝居私必ず成功させてみせます。
亡くなられた武先生のためにも。
ご健闘を…。
そちらも。
恐縮です。
課長2つもお食べになるんですか?
(角田六郎)いやいや近頃のコンビニもねうまい商売をするもんでね。
うまいとは?どちらの寿司にもね食いたいものと食いたくないものがこれ混じってんだよなぁ。
なるほど。
これを振り分けるとこうなるよ。
カニねこれ食いたくない。
タマゴ食いたいね!イクラこれちょっとだめだこれな…。
ああネギトロもいいじゃない。
あーエビも全然食いたくない。
アナゴ…いいねこれね。
つまりね食いたいものを食いたいだけ食おうとするとどうしても2つ買わなければならない。
こういうシステムになってるわけだよ。
しかしそれはシステムと言うより好みの問題だと思いますが。
ううん…。
右京さん。
あっ寿司ですか…。
え?2つも食うんですか?いやいや近頃のコンビニもねこううまい商…また説明すんのかよ!は?もういいよ。
あっ亀ちゃん。
はい。
これあげる。
え!?いいんすか?おごり。
ほんとに!いつもお世話になってるから。
いやいやいや。
はいどうぞどうぞ。
ご馳走様です。
どうしちゃったんですかね?でなんですか?ああ今一課で耳にしたんですけどね。
奴らの聞き込みによると死亡推定時刻の3時から4時。
マンションの住人たちがずっとエレベーターホールで立ち話をしてたらしいんですよ。
立ち話を。
はい。
(住人たちの話し声)ちはーっす。
でその時間通ったのは寿司屋だけだったって言うんです。
あのマンションの非常階段は確かエレベーターホールの脇にありましたよね。
ええ階段を使ったとしてもどのみちエレベーターホールは通らなきゃなりません。
だとしたらどうしたって犯人は寿司屋ということになりますね。
そうなんですよ。
だから一課は寿司屋一本に絞って任意でしょっぴくそうですよ。
手際のいいことで。
よろしいでしょうか?ああどうも。
どうも。
匂いに惹かれてやって来ちゃいました。
あっ今日はアールグレーですね。
いかがですか?それではお言葉に甘えまして。
寿司もありますからね。
あっカニだ。
好きなんですよ。
あーそうっすか。
先ほど武先生の検死解剖の結果が出たんですが…。
何か?それが妙なあんばいでして…。
妙とは?ウニとアワビが消えてるんです。
ウニとアワビ?はい武先生が注文したのは特上の握り寿司なんですが…。
つまり胃の内容物からはウニとアワビが検出されない。
そうなんですよ。
甘エビ中トロホタテそれからイクラ…。
他のものはすべて検出されてるんですけどね。
でも残ってた寿司桶は空っぽでしたよ。
妙でしょ?妙ですね。
どうぞ。
あどうもありがとうございます。
だとすると犯人がウニとアワビを食べて残りを武先生が食べた。
つまりホシとガイシャは寿司を分け合う仲。
かなり親しい顔見知りってことになりませんか?しかしエレベーターホールを通ったのは寿司屋だけですよ。
ああ。
だけど寿司屋が一番上等なウニとアワビを食べちゃいますかね?まあ行儀の悪い寿司屋だったら考えられないこともないっすけどね。
ちなみにサバはどうですか?サバですか?サバは消えてませんね。
ちゃんと食べられてます。
そうですか…。
ウニと…。
アワビ。
(劇場アナウンス)「ただ今より30分間の休憩を頂戴いたします」「第二幕の開演時間は4時で…」
(舞台スタッフ)ななみさん戻ります。
(劇場アナウンス)失礼します。
はいお疲れ。
お疲れ様です。
はいお疲れ様。
お疲れ様です。
はいお疲れ様。
キッカケ間違えてすいませんでした。
キッカケずれてたわよ照明!栗原さんあのさっきの…。
すいません。
ふぅ…。
(ノック)どなた?ちょっとよろしいっすか?まだ私に何かお話が?またあのつまらない聞き込みを…。
どうぞ。
あっすいません。
失礼します。
あの事件のあった日あなたはゲネプロつまり最終リハーサルをこの劇場でされていました。
ええ。
リハーサルが始まったのが午後2時。
で終わったのが4時30分。
他の方たちにも聞いたんですけどね。
間違いありませんよね?ええ。
でそのあとどうされたのかなぁっと思いまして。
そのあと?ええ。
リハーサルが終わったあとはスタッフと一緒に食事に行きました。
赤坂にある焼肉屋さんに。
ああ焼肉。
ええ。
翌日からの本番に備えて精をつけようってことになりましてね。
なるほど。
そのお店には何時まで?8時ぐらいまでいたかしら?そのあと六本木のバーに流れて解散したのが11時ぐらいだったかしらね。
11時。
それからは?一人でマンションに帰って2時近くまで台本のチェックをしておりました。
わかりました。
でもどうしてそんなことお聞きになるの?だって武先生が殺されたのは午後の3時から4時までの間なんでしょ?はい。
事件と関係があるとは思えないけど。
それはですねえーっとその…。
お寿司はいつお食べになったのでしょう?お寿司?スタッフ用に用意されたサバの握りの入った。
サバが入ってる。
サバはいつも抜いてって言ってるでしょ!でも昨日はお食べになっていたからもう大丈夫なのかなと思って…。
ああ幕間の休憩に。
このお芝居は一幕とニ幕の間に30分の休憩があるんです。
今もその休憩なんですけどね…。
ではその間にあなたはこのお部屋でお寿司をお食べになった。
お一人で?ええ。
幕間の休憩はいつも一人になるんです。
気持ちを集中させるために。
するとその30分の間だけあなたにもアリバイがないということになりますね。
あの日のリハーサルは一幕目が30分押して休憩は確か3時半から4時の間だったとお聞きしました。
あっ!武先生の死亡推定時刻と同じですか…。
ちょっと待って。
なんでしょう?30分ですよ杉山さん。
杉下です。
たった30分の間に車でも片道1時間はかかる武先生のマンションへ行って殺して戻るなんてどうやったらできるのかしら?あなただっておっしゃってたじゃないですか。
とても不可能だって。
ええ確かに。
あっ貴重な幕間の時間を5分も頂戴してしまいました。
申し訳ありません。
行きましょうか亀山君。
ああはい。
すいませんでした。
我々も仕事なもんで…。
あっでもほんとにどうしてなんですか?はい?いやだって栗原ななみのアリバイは完璧なんですよ。
あれじゃまるで彼女を犯人だって疑ってるようなもんですよ。
いけませんか?え?絶妙のタイミングですね。
お願いして一ついただいていきましょう。
は?
(宮部たまき)あっお店はまだ…。
承知してます。
よろしいですか?あっ寿司持って来ましたんで!
(奥寺美和子)持ち込み禁止ですよ。
なんでお前がいるんだよ…。
仕事してるの!ここ静かですから。
考えることは一緒ですね。
並です。
特上です。
まいりますか。
はい。
中トロ。
中トロ。
甘エビ。
甘エビ。
イクラ。
イクラ。
タマゴ。
タマゴ。
サバ。
サバ。
ホタテ。
ホタテ。
鉄火巻。
鉄火巻。
なくなりました。
こちらにはウニとアワビが残りました。
検死解剖で出なかったウニとアワビですよね。
ええ。
おいおいっ!なっあれ何食ってんのお前!食べ比べ。
うんこっちはどうかな?おいおいおい…。
(ため息)うんちょっと!何?特上は全然違う。
モノがいい!よろしかったらこちらも。
えっほんとですか!じゃアワビをゲットする!これほら持ってけほら!すいません。
すいませんもう…。
亀山君武先生ですがあの時間ほんとに部屋にいたんでしょうかね?うーんまあ…でも寿司屋もいなかったものをいたとは言わないでしょうしねぇ。
そうですよね…。
あらでも最近は留守でもインターホンから自動的に携帯電話に繋がるサービスがあるんですよ。
は?それ空き巣の防犯に結構役立つって聞いたことがありますよ。
え?この間ね友人のところに行った時に玄関のインターホン押したんです。
そしたらちょっと待っててって言うんでちょっと待ってたら彼女スーパーから帰ってきたんですよ。
お出かけになってたわけですか?ええ。
え?でも声はインターホンから聞こえたわけですか?そうですよ。
行きましょう。
はい。
魚住さん先日はどうも。
武先生のことでちょっとお話伺いたいんすけどね。
今日はお休みでおそらくこちらだろうとお聞きしたものですから。
だから何度も言ってるじゃないっすか。
俺はやってないって。
ああそういう話じゃないんですよ。
あっそれポン。
ポンはないんじゃないかな…。
黙っててくださいよ。
あっ黙ってるわけにはいかないんですよ。
寿司を届けた時武先生はいたんですよね?いましたよ。
それも何度も言ったはずです。
はいはいはいじゃ質問変えますよ。
武先生と会った?チー!チーじゃなくてどうなんすか?あっ…会ってはないけど…。
会ってない!右京さん。
そのようですね。
でもおたくほら代金もらったって言ってたよね?いつものことですからね。
いつものことって?
(チャイム)先生!宝来寿司です。
(武)「ああ早かったねありがとうそこに置いといて」「代金はいつものとこに置いてあるから」毎度あり!どうしてそれ先言わないかな…。
五萬。
ポン!どうもありがとう。
あんまり鳴きすぎないようにね。
ロン!大三元!う〜そ〜…。
マジで〜…。
(拍手)
(観客たちの声)お疲れ様です。
お疲れ様。
お疲れ様です。
お疲れ様。
お疲れ様。
お疲れ様!お疲れ!お疲れ!お疲れ!よかったわねー今日ねー!よかったわね!お疲れ様でした。
もう今日パーフェクト!ありがとうございます!
(ノック)はいどうぞ。
お疲れ様でした!また?また来てしまいましたふふふっ。
で今度はどんなつまらない話を聞かせていただけるのかしら?つまらないかどうかは話をお聞きになってから判断された方がよろしいかと。
楽しみだわ。
(笑い)実は武先生はどこか別の場所で殺害されてあのマンションの部屋に運びこまれた可能性が出てきましてね。
例えば…あっこっから先は僕の勝手な想像なんですが…。
殺害現場はこの劇場の近く。
そうですねぇ30分あれば行って戻って来られる場所。
その場所にあなたは武先生を呼び出して殺害した。
そして死体をどこかに隠し深夜こっそりとあのマンションに運びこんだ。
だとしたら私にも犯行は可能だとおっしゃるのね?ええ。
面白いお話だけど杉内さん。
杉下です。
その推理には1つ大きな欠点があるわ。
欠点とは?もし私が呼び出したとしたらどうして武先生は川島プロデューサーやお寿司屋さんにさもその時間自分がマンションの部屋にいたかのような偽装工作したのかしら?まるで意味のない行為じゃない?おっしゃるとおり。
ですから例えばと…。
つまらない話でしたか?とっても!あっ電話だ。
ん?捜査一課からです。
一課から?なんでしょうね。
さあ…。
ちょっと失礼します。
もしもし?ええそうです。
はい。
犯人逮捕のいい知らせだといいんですが…。
是非そう願いたいもんだわ。
わかりました。
はい。
はい。
失礼します。
杉下警部…。
万年筆を…。
ええ。
それは興味深い話ですね。
はい。
早速戻りましょう。
はい。
大変失礼いたしました。
また何かおたずねしに来ることがあるかもしれませんがその時はよろしくお願いします。
お願いします。
ちょっと待って!万年筆って?ああ。
武先生がねいつも上着の内ポケットに入れてらした万年筆がなくなってたそうなんですよ。
べっ甲でできたかなり珍しい物らしいんですけどね。
亀山君…。
捜査一課ではきっと殺害現場かあるいは運んでる途中で落としたとみてるんですけども。
亀山君!あっ…。
すいません。
申し訳ありませんが今お聞きになったことはなにぶんご内密に…。
ええもちろん。
失礼。
すいませんでした杉下警部。
(拍手)
(賑わう劇場の声)
(ななみ)お疲れ様でした!
(一同)お疲れ様でした!お疲れ様でした。
ありがとうございました。
最後まで連日満員御礼。
武先生へのいいはなむけになりましたね。
そうね。
またあなたたち。
また俺たちですいません。
構わないわ。
私もあなたたちに会うのが楽しみになってきたもの。
そう言っていただけると光栄です。
で今日は一体どんなお話を聞かせていただけるのかしら?先日お話した武先生の万年筆見つかりましてね。
そうどこにあったの?武先生のマンションの駐車場です。
じゃそこが殺害現場だったのかしら?かもしれません。
あるいは…。
駐車場なら死体をマンションに運ぶ途中で落ちたのかもしれないわね。
ええ。
じゃ万年筆から殺害現場の特定は難しそうね。
へへっ…残念ながら…。
手がかりを見つけては失いか…。
しかし捜査はいつもそういったことの繰り返しです。
壁にぶつかったり迷ったり…。
似てるかもしれないわね。
私たちの舞台作りと…。
しかし最後には答えを見つけ出さなければなりません。
そうね答えを見つけなければ上演はできない。
ええ逮捕も。
話はそれだけ?だったら今まで一番つまらない話ね。
ああもう1つ!よかった。
つまらない話じゃなければいいんですが…。
万年筆のことで…。
何?駐車場から見つかった万年筆なんですがね。
あれ現場の特定には至りませんでしたが犯人の特定には繋がりました。
犯人の?指紋が検出されたんです。
犯人の指紋が?いいえ僕の指紋です。
実はあれ…僕の万年筆なんですよ。
昨日あなたの楽屋にお邪魔した時にどうやら落としてしまったようなんですがそれが今日武先生のマンションの駐車場でみつかった。
おかしな話です。
ですからどういうことだろうと考えてみました。
そして辿りついた答えは1つ。
犯人が殺害現場を特定させないためにあえて万年筆を駐車場へ移動させた。
すなわち殺害現場はあなたの楽屋。
そして犯人は万年筆のことを知っているあなたということになります。
そもそも武先生が万年筆を落としたという事実はありませんからね。
動機は何?私に武先生殺す動機はないわ。
ええあなたに動機はありません。
しかし台本を書き直された武先生にはあります。
武先生は人一倍プライドの高い人だったみたいですからね。
あの日武先生はあなたを殺害するつもりでこっそりとあなたの楽屋に忍び込んでいたんじゃありませんか?自分はマンションにいるという完璧なアリバイを作って。
そろそろ一幕が終わるころだろうと思ってね。
どうだい芝居は?それが30分押してまして…。
30分!?またあの馬鹿女優がセリフを変えてるんじゃないだろうな。
あっいや…。
やっぱりそういうことか…。
こっちが血反吐吐いて書いてるセリフを一体なんだと思っとるんだ。
申し訳ございません。
君も君だよ!女優のわがままを許してどうするんだ!プロデューサーならホンを守るのが当然だろ!ですからあのマスコミの目もありますのでせめて明日の初日だけでも顔を出していただかないと…。
行かないよ明日も僕は。
ことによっちゃ名前外したっていいんだ。
それだけはご勘弁を!
(工事の音)まだ続いてるんですか下のリフォーム?ああうるさくて仕事になりゃしないよ。
どいつもこいつも腹の立つ奴ばっかりだ!
(呼び出し音)あっ寿司屋が来たんでねまた改めて。
申し訳ございません。
先生!宝来寿司です。
ああ早かったねありがとうそこに置いといて。
代金はいつものとこに置いてあるから。
毎度あり!30分も延ばしやがって…。
いただいとこうか。
あの馬鹿…どこまで僕をコケにすれば気がすむんだ!そして3時30分。
ななみさんさっき仕事場の武先生から電話があって先生明日の初日来ないっていうんですよ。
好きにさせたらいいじゃない。
別に構わないわよ私は。
でも…。
むしろ今更来られても困るんじゃないのあなただって!色変えときました。
そカーテンの色お願いしますね。
栗原さんさっきタイミングすいませんでした。
そうよ人のセリフを…。
すいません通ります。
どうもすいません。
気をつけます。
ああ…ったくもう。
馬鹿ばっかり…はあ…。
きゃ…。
僕のセリフをめちゃくちゃにしやがって!たっ…武先生…。
これ以上プライドを踏みにじられてたまるもんか!あなたは驚いたはずです。
仕事場にいるはずの武先生がどうしてここにいるのかと…。
そこであなたは気付いたんじゃありませんか?武先生が完璧なアリバイを作ってあなたを殺しに来たことを。
そこであなたは武先生のアリバイ工作を逆手に利用しようと考えた。
楽屋に隠しておいた死体をスタッフと別れた深夜こっそりと武先生の部屋に運んだ。
いかがでしょうつまらない話でしたか?
(ため息)そのとおりよ武先生を殺したのは私。
さすがね杉下さん。
初めてちゃんと呼んでいただけました。
いつから?はい?いつから私が犯人だってわかったの?最初からです。
楽屋であなたがサインをしているのを見た時から。
最初から?武先生が亡くなったという電話が入ったにもかかわらずあなたはサインを続けてらっしゃった。
あっ武先生の!どうもご無沙汰してます。
え!?武先生が亡くなった?知り合いが亡くなったと聞いたら普通はサインどころじゃありませんよね。
考えられることは2つ。
1つは余程物事に動じない人かあるいはもう1つはその時すでに武先生の死を知っていたか…。
それが確かめられたのは2度目にお会いした時でした。
(ミカ)あっでも昨日お食べになっていたからもう大丈夫なのかなと思って…。
サバお嫌いなんですか?どうも!あなたは物事に動じない人じゃなかった。
演技が下手ね…。
私もまだまだだわ…。
しかしそれ以外は完璧な演技でした。
非の打ち所もないほど…。
でも1つだけわからないことがあるんです。
何?武先生の方から殺しに来たっていうのは事実ですよね。
自分のアリバイまで作ってたんですから。
そうね。
で襲われてる最中にあなたは思わず武先生を刺してしまった。
これって立派な正当防衛じゃないっすか!ええ。
とするとですよ死体さえ移動させなければあなたは無実になった可能性もあるわけなんです。
なのにどうして死体を動かしちゃったんですか?例え正当防衛だとしても人を殺したことにはかわりないわ。
表ざたになれば間違いなくこの舞台は中止よ。
女優として一度始めた舞台をやめるなんてできるわけないじゃない。
行きましょうか。
最後に1つだけ。
プロデューサーの川島さんにお聞きしたのですがこのお芝居の題名はあなたがお付けになったそうですね。
『殺したいほど愛してた』。
その題名にはあなたのどのような思いが込められているのでしょう。
これは僕の勝手な想像ですが…もしかしたらあなたと武先生は…。
(拍手)杉下さんあなた作家になる気はない?はい?あなたの書いたホンなら一行も変えずに上演できそう。
僕にそんな才能はありませんよ。
そう…。
残念だわ…。
さあ幕にしましょうか。
(喝采)2015/10/31(土) 14:25〜15:25
ABCテレビ1
相棒season3[再][字]
「書き直す女」
詳細情報
◇番組内容
“警視庁一の変人”だが天才的頭脳で鋭い推理をみせる杉下右京(水谷豊)と“おひとよしな熱血刑事”亀山薫(寺脇康文)の名コンビがあらゆる難事件に挑む!
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、鈴木砂羽、高樹沙耶(益戸育江)、高畑淳子、中丸新将、川原和久、大谷亮介 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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日本語
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