エアバスA319が通過するまで待機して下さい。
イギリスの玄関口ロンドン・ヒースロー空港。
年間旅客数7,300万人以上を誇るヨーロッパ最大規模の空港です。
パスポートを拝見します。
何名様ですか?ヒースロー空港はとにかく大きくて複雑です。
時には45秒おきに離着陸が行われます。
お呼び出し致します。
全てが過密なスケジュールで動いているためミスは許されません。
ヒースローがくしゃみをすれば世界が風邪をひきます。
ほんの小さな問題が大混乱を引き起こし…。
915便と919便は欠航になりました。
ばく大な経済的損失につながる事もあります。
責任重大です。
ストレスを感じる事もあります。
空港の舞台裏には…。
ふだんは見られない場所です。
時間と闘いながら働く多くのスタッフがいます。
ぞくぞくします。
すごいな。
ホント。
小さな町ほどの大きさのこの空港では警察官や…。
ご同行願います。
救急救命士宗教家清掃スタッフ手荷物スタッフグランドハンドリングスタッフに航空管制官まで誰もが大切な役割を担っています。
燃料を入れています。
巨大空港の舞台裏に潜入します。
神頼みですよ。
(女性管制官)「アメリカン航空135便現在位置で待機して下さい」。
航空管制官の仕事はシフト制です。
早朝始まる事も夜始まる事もあります。
航空管制官のポール・フーパーが業務を開始します。
287便は周波数118.5です。
了解ありがとう。
2番滑走路への進入を許可します。
風は40度1ノット。
ポールは90秒に1機飛行機を着陸させていきます。
管制官は90分働いたら30分間の休憩が義務づけられています。
とても大変な仕事です。
混雑時には1時間に45機着陸させる事もあります。
ヒースロー空港の2つの滑走路には84か国から飛行機が着陸します。
ヒースローがくしゃみをすれば世界が風邪をひきます。
ここの滑走路が1つでもダメになったら世界中に影響が及ぶでしょう。
飛行機は急に引き返して出発地に戻る訳にはいきませんからね。
ヴァージン航空45便グランド・コントロールと交信して下さい。
飛行機の安全な着陸をサポートするのは管制官だけではありません。
(ポール)私たち管制官が管制塔から航空機を誘導できるのは滑走路など制限区域内の安全を迅速に確認してくれるチームがいるからです。
午前8時。
制限区域内に異常がないかを確認するためグランドハンドリングスタッフのグレンが見回りを始めました。
FODなし。
(インタビュアー)FODとは?異物。
要するにゴミの事です。
飛行機にゴミは禁物です。
例えこんな小さなボルトでもエンジンが吸い込んだら大変な事になります。
ああ…ありました。
何かははっきりしませんが。
さ〜何かな。
一体なぜ男性のパンツが誘導路に落ちているんだか。
僕のじゃないよ。
一方滑走路ではグレンの同僚が異物がないかを確認しようとしています。
滑走路の点検準備ができました。
2人は滑走路への進入を許可する管制官からの指示を待っています。
管制官は点検のために時間を作ります。
私たちが滑走路にいる間も飛行機は近づいています。
遠くに小さな光が見えますか?あれがこちらへ向かっている飛行機です。
着陸まで…。
4分です。
どんな異常も見逃さないように一定のスピードで運転します。
もし何かあって事故になったら責任問題ですからね。
滑走路の表面に亀裂があるのを見つけたら滑走路を閉鎖する事もあります。
異常を見つけたら彼らはそれが自分たちで対処できるものなのかそれとも滑走路を閉鎖しなくてはならないほど深刻なものなのかを判断しなくてはなりません。
(女性管制官)「現在滑走路の点検中です」。
そこに何かある。
センターラインの外。
あと3分で次の飛行機がやってきます。
飛行機は時速240キロで着陸します。
ほんの小さな異物でも事故の原因になりかねません。
ポリ袋が飛行機のエンジンに入り込めば溶けてエンジンを損傷する危険性があります。
異物がエンジンに入り込めば重大な損害が生じるかもしれません。
私たちはこうして点検する事でそれを防いでいるんです。
滑走路の安全が確認されるまで飛行機は一切着陸できません。
到着が遅れるごとに損失が生じます。
滑走路に異常がなく一日がスムーズに進むとホッとしますね。
滑走路への進入を許可します。
飛行機はまた多くの物語も運んできます。
22歳のルイスは到着ロビーで初対面のアメリカ人女性を待っています。
これが彼女と犬の写真です。
インターネットで知り合いました。
5,000キロも離れた相手に恋をするなんて思いもしませんでした。
バラも僕も少しくたびれちゃいました。
彼女の飛行機は上空を旋回していたんですが燃料が足りなくなり一旦別の空港へ回される事になりました。
戻ってくるのをずっと待っています。
ルイスは3時間近く待っていますが到着の情報はありません。
緊張してもう4回ぐらいトイレに行きました。
到着した。
彼女が到着しました。
喉がカラカラだ。
ドキドキする。
予定では到着は第5ターミナルだったけど…。
やっとですよ。
良かったわね。
到着ターミナルは第3ターミナルだ。
さあ行って。
30分あるから。
でももう到着しちゃっている。
いや…よし。
ありがとう。
ヒースロー空港にはターミナルが5つありその広さはサッカー場1,700個分です。
空港の業務がスムーズに行われているかを把握するのは1人の責任者です。
この日の責任者はアヌージュ。
以前は映画館のマネージャーでした。
映画館でトラブルが起これば350人ほどが見たかった映画を見られなくなります。
でも空港でトラブルが起こればもっと多くの人に影響が及びます。
ここは1日25万人が過ごす小さな町です。
私はいわば保安官です。
やあマーク。
どうも。
どんな様子?夕方のピークを迎えています。
今は第4ターミナルが忙しそうですね。
出入国審査が混んでいます。
ここオペレーションセンターは私たちの仕事の中枢指令室です。
到着が集中しています。
入国審査は45分待ちだそうです。
忙しそうだな。
行って手伝ってくるよ。
分かりました。
じゃ。
必要であればすぐに駆けつけます。
到着時刻は?12時5分。
だからもう着いているはずなんです。
入国審査で20〜30分待ちますよ。
そうね。
お子さんたちの年齢は?女性はアメリカから来たおいとめいがなかなか現れず心配しています。
「どうすればいいか分からない」って。
えっ?着信はいつ?たった今。
電話番号は?連絡がつけば我々が迎えにいきます。
どうすればいい?あの子たちの父親が半狂乱になるわ。
番号入ってないわ。
ママは?知らないの。
若い2人はゲートから到着ロビーまでの間で迷ったようです。
ママ何泣いてるの。
大丈夫だって。
手を借りられないかな。
あるお客様たちが2人の未成年の乗客を待っている。
2人からは「ここには迎えの人が誰もいない。
パスポートは客室乗務員が持っていてどうすればいいか分からない」というメールが来ている。
迎えにきている皆さんは心配しているんだ。
(無線)「了解。
まだゲートに乗客がいるはずだと連絡して確認してもらいます」。
了解ありがとう。
2人とも心細いでしょうね。
空港で迷うなんて。
空港の方に助けて頂けて良かった。
大丈夫2人をほったらかしにはしませんよ。
ええそうですよね。
もしかしたら2人は私たちが到着ゲートにいると思ったのかもしれないわね。
(無線)「デルタですか?」。
ああそうだ。
(無線)「ちょうど今担当者から連絡がきました。
2人とも出口に向かっています」。
すぐに来ますよ。
ロビー側にいて下さい。
あ〜。
こんにちは。
不安だったでしょう。
よしこの辺りだ。
インターネットで知り合ったアメリカ人女性を迎えにきたルイス。
遅延により到着ターミナルが変わったため急いで駆けつけます。
観覧車に乗るのは難しそうですね。
2時に予約していたんですがもう12時半なので。
しかたない。
夜はミュージカル。
明日はロンドン塔を予約してあります。
それから2日間パリへ行きます。
こっちでいいはずだ。
ロンドンに戻ったら僕のふるさとデヴォンに向かいます。
水曜日にカーディフで人気テレビドラマの展示を見て木曜日に帰国です。
きっとあれがアマンダだ。
まあ…。
あ〜やっと会えた。
これを。
ありがとう。
バラはしおれちゃったごめん。
ううん待ったでしょう。
あ〜信じられない。
会いたかったよ。
ええ私も。
ホントに何て言ったらいいか分からない。
僕も同じだ。
感激で胸がいっぱいだよホントに。
ヒースロー上空を旋回している間すごく緊張していました。
今彼に会えてとてもうれしいです。
すばらしい冒険が始まるのが待ちきれないわ。
午前9時。
この時間帯ヒースロー空港には1時間におよそ5,500人の乗客と彼らの荷物が到着します。
これから荷物を降ろしにいきます。
貨物スタッフは飛行機が来る前にスタンバイしているのが基本です。
移動する時は周囲をよく確認します。
常に飛行機が優先です。
こっちより大きいしね。
スティーブたち貨物スタッフは乗客に荷物をできるだけ早く引き渡す責任を負います。
お客様に満足してもらいたいですね。
お客様が喜べば僕らも仕事を失わずに済みます。
スティーブは限られた時間内に飛行機から荷物を降ろす責任を負っています。
飛行機のドアを開けてから普通は12分から15分で手荷物受取所に最初の荷物を運ばなくてはいけません。
皆さん待ってますから。
だから貨物スタッフは一番乗り。
そのあと機内食のトラックや清掃スタッフ危険物を探知する犬が来てまた飛行機に荷物を詰め込む訳です。
責任者なのでかなりのプレッシャーです。
どれから先に出しますか?ファーストクラスだ。
1つのコンテナに35から50の荷物が入っています。
搭乗客数によって詰め方は変わります。
コンテナは電動のローラーを使って動かします。
ローラーを使ってコンテナを飛行機から出したら留め具をもれなく掛けます。
積み荷やコンテナがぐらぐら動いてしまわないようにね。
コンテナに入れられない積み荷は飛行機の後方貨物室に収められます。
お金金遺体それに野生動物など何でもここに入ります。
荷降ろしが終了したので本部に連絡します。
乗客の皆さんをできるだけ待たせないように荷物を手荷物受取所へ運びます。
飛行機から降りたら早く荷物が欲しいですからね。
お疲れ。
乗客に荷物を届けるための奮闘はターミナル内でも続きます。
とにかく大量の荷物です。
コンテナが10台くらい一度に来る事もあって大変ですよ。
飛行機から届いた300個のスーツケースをたった4人で処理します。
オレンジ色のシールが貼ってないか確認します。
もしシールがあれば「取り扱い注意」です。
ヒースロー空港では多くの作業が自動化されていますが第3ターミナルでは荷物をベルトコンベヤーに乗せるのは人間の仕事です。
この空港では多くの仕事が人の手で行われています。
できるだけ早くさばきます。
荷物を待っている乗客の皆さんの事を思ってね。
この日飛行機から降ろされるのはカバンだけではありません。
そこにフェレットはいますか?ええいますよ。
埋もれてないですよね?大丈夫。
良かった。
受け取れるタイミングになったら教えて下さい。
よろしくお願いします。
動物受付センタースタッフのミシェルはフェレットが空港を出る前に書類を確認します。
貨物スタッフはカバンを早く届けるようにと航空会社からプレッシャーをかけられています。
また動物たちが奥に入れられ物理的にすぐに運び出せない場合もあります。
でも時々ドアの真ん前に犬のケージがあるのにカバンを先に運び出す人がいるんです。
生きた動物よりもカバンを優先するなんて信じられません。
この事でよく貨物スタッフと議論になるんです。
わ〜見て。
この日フェレットはすぐに運び出されてきました。
かわいい。
こんにちは。
ミシェルはフェレットをヒースロー空港の動物受付センターへ連れていきます。
わ〜すごい。
大きいな。
でかいよ。
蓋をしておきましょう。
起こしたくないし。
ヒースロー空港の動物受付センターでは空港を利用する人間と同じくらいの数の動物に対応しています。
2014年には1万6,000匹のペット数十万匹のは虫類2,500万匹の魚を扱いました。
イギリスへの動物の輸入には厳格な法律があります。
スタッフは到着した動物を一つ一つチェックします。
最初にその動物の身もとを確認します。
人間の場合はパスポートの写真で確認しますが犬の場合は皮膚の下に埋め込んだマイクロチップで身もとを特定します。
そして獣医師による書類を確認するんです。
さ〜おいで。
ほら。
マイクロチップや書類に問題があれば検疫が必要になる事もあります。
大変な1日だったとしても動物を見ると幸せになります。
ここのスタッフは人間より動物を相手にしている方が好きなんです。
シャノンは動物受付センターに入ったばかりの新人です。
空港で動物の仕事をするなんて思いもしませんでした。
あ〜何てかわいいの。
ダメひっかかないで。
気に入っちゃった?書類に不備がある飼い主への対応はつらいですね。
飼い主がペットを取り戻したいのと同じように私たちも返してあげたいんです。
でも規則や法律は守らなければなりません。
飼い主が泣いたり取り乱したり怒ったりしても私たちは規則に応じた対応をするしかないんです。
もしもしデブラ・ジョーンズです。
留守電を聞いたらすぐにロンドンの動物受付センターに電話して下さい。
検疫に関する書類に不備があってとても困っています。
デブラはこの日飼い猫2匹とともにヒースロー空港に到着しました。
ボブとソフィーが検疫所から出てくるのを5時間も待っています。
ボブとソフィーはデブラの飼い猫です。
手前に1匹奥にもう1匹います。
ちょっと怖がっていますね。
こちらの番号は受付センターのスタッフから既にそちらに伝えてあります。
すぐに折り返し電話を下さい。
あるいはボブの狂犬病ワクチンのロット番号を5分以内にファックスして下さい。
5分以内ですよ。
お願いします。
では。
連絡がこなかったら?もしこなかったら検疫を受ける必要があります。
でもまだあと48時間あります。
2匹とも?いいえボブだけです。
検疫は何日かかるんですか?21日間です。
ああ…。
でもその心配は要らないと思います。
こうした緊急の問い合わせをする事はよくあるんです。
アメリカには毎日のように用紙を送っているので。
私たちのミスじゃないの。
ええ。
私もできるだけ早く2匹をお返ししたいです。
会う事もできないなんて。
ちゃんとお水は飲んでますか?元気なのは確かですが。
特にボブが心配なの。
もし獣医師の診察をご希望であれば手配します。
2匹ともまだトイレを使ってないんでしょう?ええまだです。
そうねえ…。
はい。
消防警察救急どちらですか?ヒースロー空港のオペレーションセンター。
空港内の緊急用回線に電話がかかってきました。
ではそのままお待ち下さい。
空港内の警察におつなぎします。
毎日およそ20万人の乗客がやってきます。
できるだけ迅速にサポートする事が大切です。
救急車を呼ぶ電話は日に30〜40回かかってきます。
ヒースロー空港には救急救命士が待機しています。
ターミナル内で最も速い移動手段は自転車です。
私たちはいわば救急車です。
救急車にあるものは何でも持っています。
(デメトリアス)「男性意識あり。
呼吸も正常です」。
救助の要請です。
患者は旅先で背骨を負傷した男性です。
状況は?水に飛び込んだ時に背中を痛めたそうです。
あとは彼女が。
了解。
泉に飛び込んだ時にああ…背骨を折ったんです。
ああ…10日前の事です。
現地で手術を受けました。
理学療法を受けたくて帰国したんです。
できればロンドン西部の病院で診てもらいたいです。
ええ。
診察してもらわないと。
病院に行くのは救急車でないと無理そうですか?いいえ支えてもらえればうちの車でも行けると思いますが。
ええ支える人が必要ですね。
ちょっと待って下さい。
手術したんですね?ええメキシコで。
応答願います。
患者の両親は彼を車に乗せるだけの力がありません。
介助が必要です。
患者さんは病院への移動手段を必要としています。
背骨を負傷しているため救急車で移動しないと難しい状況です。
以上。
(無線)「了解。
救急車が今出払っているのでそちらに向かえるようになったら連絡します」。
了解。
今確認をしたところすぐに来られる救急車がないようなんです。
もしよろしければもう1人救急救命士を呼んで2人で車に乗せる事もできますがどうしますか?救急車が来るまで待った方がいいですか?車に乗せて下さい。
よろしいんですね?はい。
ロブありがとう。
行きましょう。
両側から腕を貸しますね。
痛くないようにしないとね。
足は下ろして。
向こう側に回ろう。
ううん大丈夫。
もう片方も入れられますか?さあ…乗れた。
良かった。
何とか患者を車に乗せる事ができました。
帰るには救急車という選択肢もありました。
でもしばらく待つ事になったかもしれません。
命には関わらなかったので優先度は低いとされたでしょう。
今ここでケガをした訳じゃないしね。
一件落着ね。
ああ。
助かったわ。
今メールを受信しました。
ありがとうございます。
では。
動物受付センターでは猫のボブとソフィーの書類問題が解決しました。
まあボブ!ソフィー!良かったわね。
さあ。
待つ事7時間。
ようやく2匹を家へ連れて帰れます。
本当にゴメンね。
嫌になっちゃうよね。
無事で良かった。
もう大丈夫よ。
本当にゴメンね。
車に入れて下さる?ええもちろんです。
ヒースロー空港はイギリス最大の空港です。
ロンドン警視庁は空港警備のために400人の部隊を配置しています。
指名手配犯がいないかデータベースをチェックして調べるには絶好の場所です。
時には容疑者が飛行機に乗ってこちらに向かっている事を到着の12時間前に知る事もあります。
そういう時はしっかりと準備して待ち構えて逮捕します。
ある事件の容疑者がカナダ発の飛行機に乗っているとの情報が入ってきました。
準備完了。
ああ。
詐欺容疑でかなり重い罪です。
本人は逃げおおせたと思っているかもしれませんが男が搭乗したのを捜査員が確認しています。
到着時間が分かっているので機内に入って男に接触します。
入国審査場だと取り逃がす可能性が僅かながらあります。
万が一にもそうした事がないようにしたいんです。
他の乗務員にも伝えておいて下さい。
動かないように?ええよろしくお願いします。
行こう。
あとに続いて。
すみません。
お名前を伺えますか?パスポートを拝見します。
立ってご同行願います。
説明はあとで。
荷物を持って。
それで全部ですね?俺が何をしたってんだ?詐欺で指名手配されています。
あなたには黙秘権がありますが黙秘すると不利に働く事があります。
また話した事は証拠とされる事があります。
前を向いて。
危険性の高い容疑者が公共のスペースを通り抜ける事はありません。
別の完全に管理された状態で連行します。
動物受付センタースタッフのビッキーもある乗客の到着を待っています。
アメリカから到着する便の機内にアニマル・セラピー用の犬2匹が乗っているので迎えにいきます。
アメリカの法律では乗客の精神衛生上必要だという医師の診断書があればペットと一緒に搭乗する事ができます。
ハリネズミを連れていた人もいたそうです。
ハリネズミがどんな助けになったのかは分かりませんけど。
セラピー用の動物を客席に乗せるにはお金がかかります。
ただ貨物室に入れる方がずっと高くて倍以上かかります。
こんにちは。
トニさんですか?ええ。
動物受付センターのビッキーです。
フライトは快適でした?ええまあ…。
私飛行機が怖いんです。
母が飛行機事故で亡くなったものだから。
まあ…。
セラピストに犬と一緒なら気持ちが楽なんじゃないかと言われて。
ええ。
マイクロチップを確認しますね。
人見知りしますか?大丈夫です。
ただちょっとショックを受けているかもしれません。
あらこんにちは。
調べるね。
13時間ぐらい我慢しているのでトイレをさせてあげられる場所はありますか?あいにくですが手荷物の受け取り所を抜けるまではないんです。
戻りたくないのね。
この子力が強くて。
ファスナーを閉めてもらえますか。
少しの間よ。
手荷物と一緒に犬を申告して下さい。
もしかしたら犬を見せてくれと言われるかもしれませんが書類はこちらでチェックしていて問題ありませんので。
イギリスは狂犬病がない国です。
ですから狂犬病にかかっておらず入国しても大丈夫だと認める仕事は責任重大なんです。
ありがとうございます。
こちらこそ。
さようなら。
乗客の多くは荷物を受け取るとすぐ空港をあとにします。
しかし元株式ブローカーのマイケルは12日前に到着して以来ここから動けずにいます。
お金も帰る家もありません。
服を洗濯する場所がないので清潔にしておくのが大変です。
もうすぐグッと寒くなります。
屋根のない路上で過ごすのは怖いですね。
恐ろしいです。
マイケルはビザが切れて強制送還されました。
イギリスには11年ぶりに帰ってきました。
ずっとタイで働いていたんです。
イギリスに資産はありません。
友人もみんなアジアにいます。
到着したら身動きがとれない状況でした。
安いものの方がたくさん買えますよ。
ヒースロー空港にはイギリスで唯一空港に拠点を置くソーシャルワーカー団体があります。
私たちは国外追放者ホームレス犯罪被害者強制送還者などケアが必要な人たちの手助けをしています。
こんにちは。
今日の午後職業紹介所に予約を入れていますよね。
はい3時10分前に。
バスに乗るためのICカードは持っていますか?ええ昨日10ポンドもらったので買いました。
これで行って帰ってくる事ができます。
職業紹介所行きのバス停まで一緒に行きましょうか?そうしてもらえるとありがたいです。
家族や友人に電話してすんなり問題が解決する人もいます。
でもマイケルのように簡単にはいかない場合もあります。
こうして助けてもらえて感謝しています。
自分だけではどこに行けばいいのかも分からず途方に暮れていたと思います。
彼らが空港から出られるように努力しています。
停留所はアナウンスされますし表示もされています。
ええ。
では。
マイケルは無事に約束の場所へ向かう事ができました。
しかし夜はまたここに戻ってこなければなりません。
救急救命士のクレアは優先度の高い要請を受けました。
到着するフライトに急病人が出たのです。
患者さんが機内にいる場合正確な状況が分からないので予断を許しません。
心臓発作もあればひん死の状態の事もあります。
飛行機は途中で降りられないので患者さんにとってはなおさらつらいんです。
不安も増します。
飛行機が到着する前に待機します。
到着すると乗客が次々に降りようとするので患者さんのもとへ行くのが大変になってしまうからです。
ありがとう。
そちらです。
分かりました。
どうしましたか?気分が悪くてお腹が刺すように痛いんです。
刺すように痛いんですね。
痛むのはどこですか?ここです。
そこですね。
少しお腹を触りますよ。
痛いですか?いいえ。
目まいがします。
何回か深呼吸をして下さい。
ここでは原因を特定する事はできませんがもしかしたら虫垂炎の可能性があります。
大丈夫心配しないで。
患者さんがひどい腹痛と同時に他の強い症状も訴えている場合は深刻な可能性があります。
虫垂炎や腹膜炎かもしれません。
強い痛みがまだ続いているようなら病院へ行った方がいいと思います。
タクシーで家に帰れると思いますか?あなたの状態次第です。
腹痛を訴えていた女性患者は病院への搬送を断り車で帰宅する事になりました。
必要な場合はあとで医療機関に相談するとの事です。
きっと良くなりますよ。
心配しないで。
本人が望むなら帰るのも自由です。
私たちはアドバイスするだけです。
この女性はのちに病院へ急行。
緊急手術で3センチ大の胆石が取り出されました。
ヒースロー空港は夜を迎え離着陸のピークも過ぎました。
これから来るのは10便ぐらいでしょう。
そのあとは眠りたいですね。
帰る家がないマイケルは空港での13回目の夜を迎えようとしています。
ここは一つ一つの椅子が肘掛けで区切られているので横になれません。
向こうに行きましょう。
ここはどちらも肘掛けがありません。
昨日はここで眠りました。
私のベッドです。
眠っている間にカバンを取られないように肘掛けに押し当てておきます。
こうすればカバンも落ちないので目も覚めません。
家が完成した時の写真です。
写っているのは全てマイケルが海外に置いてきた生活です。
これは元妻です。
あのころは幸せでした。
こうなるなんて考えもしなかった。
これももっと近くに置かないと。
結婚が破綻した時マイケルには何も残りませんでした。
タイで働き続けられる気でいて。
まさか強制送還になるなんて。
靴を脱ぎ足を上げ横になる。
あ〜極楽だ。
労働年金省の給付が承認されるまでマイケルはターミナルでの暮らしを続けるしかありません。
どんな箱に入っているんですか?夜。
動物受付センタースタッフのタラと同僚たちは危険な動物を迎える準備をしています。
夜10時の到着は理想的とは言えません。
スタッフが2人しかいないし。
かなり危険な動物です。
素早い対応が必要ですしケージもしっかりしていないと。
ちょっと緊張しています。
ギリシャから箱が到着し翌日アメリカの動物園に送られます。
ものすごく大きいです。
通るか心配。
中に入っているのはトラ。
フォークリフトを使って安全な場所に移動します。
箱を持ち上げたまま扉を通れるか分かりません。
箱が丈夫かどうかも心配です。
曲がりますよ。
この操縦苦手なんです。
まっすぐ。
そのまま。
ダメですね。
バックしないと。
大きいわね。
(トラのうなり声)
(男性スタッフ)うまくいったな。
トラは出発してから何も食べていません。
鶏肉と牛肉があります。
好みは分かりませんがとにかく与えてみます。
腹ペコなのね。
あの歯を見て。
はい。
トングをかんで放さないわ。
どの動物にも多かれ少なかれストレスはあります。
ケージに入る訓練などはされていても周りの音などで実際どんな反応をするかは予測できません。
このトラもおびえていたはずです。
エサを食べて落ち着いたみたい。
どうなるか全く予測できないところがこの仕事の面白さですね。
ヒースロー空港は乗客以外の人々も引きつけます。
飛行機を見るのが大好きなんです。
5分でお茶ができますよ。
グレアムは航空ファンです。
この車を買おうと決めた理由の一つが飛行機見物でした。
飛行機は楽しい旅行に連れていってくれる単なる乗り物かもしれませんが私は飛行機そのものが好きなんです。
航空ファンにはとにかくたくさん見たい人機種が目当ての人などさまざまなタイプがいます。
お〜これも書いておこう。
「トリプルセブン」と。
この日は20人以上が飛行機見物に来ています。
このパソコンには最新のものも含めて世界中の全ての飛行機の情報が入っています。
気が向いた時にふらりと見にきます。
くっついてくるだけですが嫌いじゃないです。
今日は…9時半に着きました。
夜8時までいるつもりです。
明日もまた同じように過ごす予定です。
ヒースロー空港では駐機位置への誘導はほぼ自動化されています。
しかし時には人の助けが必要になる事もあります。
飛行機に回ってきてもらいここで止めます。
そこに運搬車両が来てスタッフが移動のための作業をします。
私はとにかく飛行機が大好きなんです。
飛行機とともに働く事には特別な思いがあります。
誘導に使う手袋です。
スティックなどを使う事もありますが私は手袋を使います。
オレンジ色なのは目立つためです。
ごう音から耳を守るために耳当ても使います。
人の話はもともと聞こえてませんがね。
この日誘導した飛行機には競走馬が乗っていました。
ヒースロー空港を経由してオーストラリアに向かいます。
この馬はメルボルンで開催されるレースに出場します。
勝つ可能性は大いにあると期待しています。
競馬はしませんが馬はきれいですよね。
でも飛行機の方がいいです。
ヒースロー空港で働いて30年のグレンは飛行機の生き字引です。
写真もスライドもデータも何千と持っています。
まさに飛行機だらけです。
飛行機がやる気のもとなんです。
乗客は…やめておこう。
ハハハッ。
タイから強制送還されて以来2週間以上空港から動けずにいたマイケルについに良い知らせが届きました。
とても変わった体験をしました。
ターミナル内にある表示をたどって礼拝堂に行ったんです。
私は信心深い人間ではありません。
でも礼拝堂を出たあと労働年金省への申請が認められた事を知りました。
礼拝と関係があるかは分かりませんがこれで全てが変わります。
マイケルは給付金を受け取れる事になりました。
今夜からは小さくてもホテルのベッドで休めます。
そこを拠点に仕事を探します。
ヒースロー空港ともようやくさよならです。
普通の生活への第一歩です。
ベッドで寝るのが待ち遠しいですね。
キリンだ!2015/10/31(土) 19:00〜19:45
NHKEテレ1大阪
地球ドラマチック「巨大空港の舞台裏 到着編〜ロンドン・ヒースロー空港〜」[二][字]
普段見ることのできない巨大空港の舞台裏に密着!舞台は欧州最大の旅客数を誇るロンドン・ヒースロー空港。航空管制官から動物ケアの専門スタッフまで、到着を巡る物語。
詳細情報
番組内容
一日25万人が訪れる巨大空港、ヒースロー。安全でスムーズな運営のために多種多様なスタッフが働いている。手荷物の上げ下ろしはスピードが命。猛獣を預かることも少なくない。また、空港内にソーシャルワーカーが常駐し、強制送還された人のために奔走する。さらに、ネットで知り合った恋人との初対面をドキドキしながら待つ青年も。到着を巡ってさまざまな物語が渦巻く空港の舞台裏に密着する。(2015年イギリス)
出演者
【語り】渡辺徹
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
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英語
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