(亀山薫)せ…宣誓。
良心に従って真実を述べ何事も隠さず偽りを述べないことを誓います。
亀山薫…。
(武藤かおり弁護士)亀山さん。
あなたは警視庁の刑事ですね?階級と所属を聞かせてください。
階級は巡査部長です。
所属は…。
…特命係です。
では特命係の亀山さん。
あ…あの…!わざわざ“特命係の”って付けないでください。
は?細かいことですけど。
あ…すみません。
話の腰を折って。
では亀山さん。
11月5日の夜のことをお伺いします。
あなたは当夜9時過ぎ杉並区阿佐ヶ谷の路上でここにいる被告人黒岩繁に職務質問しましたね?はい…。
(薫)〔あちょっと?〕〔こんばんはー。
どちらへ?あ…警察です〕
(かおり)いつもその程度のことで職務質問なさるんですか?その程度って言いますけどね…なんかこう…ピンと来るんです。
その勘が当たったからこそ…。
訊かれたことだけ答えてもらえれば結構です!それからどうしましたか?それからですか…?被告人の所持品を検めたんじゃありませんか?ええ…彼が鞄を抱えてたんでその中身を見せてもらいました。
許可は取りましたか?そりゃあもちろん。
被告人の了承を待たずに中身を調べたのでは?…えっ?職務質問においては鞄の外側から触って中身を確かめる程度のことは許されていますが了解を得ずに鞄を開ける権限までは認められていません。
あなたは本当に被告人に了承を取りましたか?被告人によるとあなたはそうしなかった。
あなたは先ほど宣誓しましたね?…正直に答えてくださいね。
…わかってますよ。
…どうぞ。
了承を得る前に…。
鞄を開けたんですね?だったと思います。
(かおり)令状もなしにそんなことが認められるんですか?…いいえ。
結構です。
さてあなたはその違法な行為によって鞄の中から何を発見しましたか?
(宮城検事)裁判長!ただ今の弁護人の質問は証人に対する悪意を含んでます。
(裁判長)弁護人いかがですか?“違法な行為”という部分がお気に障りましたか?わざわざそれを協調せずともできる質問だったと思いますが?わかりました。
その部分は撤回します。
あなたは何を発見しましたか?あの…マスクです。
これですね?はい。
〔じゃあ中身ちょっと見せてもらっていいかな?〕
(黒岩繁)〔あ…〕〔大丈夫大丈夫…〕〔すぐ終わるからね〕
(かおり)これを発見したときあなたはどう思いましたか?モンスター強盗じゃないかと…。
世田谷区池尻…目黒区自由が丘…中野区大和町と立て続けに3件発生してる通り魔強盗ですね。
(かおり)怪物のマスクを被って若い女性を狙い金品を強奪したという。
そうです…。
被告人が犯人だと思ったんですか?鞄の中からいきなりフランケンシュタインのマスクが出てきたわけですから当然疑いますよ。
疑いを持ったあなたは被告を最寄りの阿佐ヶ谷4丁目交番に連れて行きましたね?…はい。
まさか強制的に連れて行ったりはしていませんよね?その時点では任意です。
いくらあなたが疑いを濃くしていたとしても無理やり同行させるのは違法です。
被告人が自ら交番に同行したんですね?答えてください。
イエスかノーだけで結構ですよ。
…ノー。
確かにいくらか強制的だったかもしれませんよ…。
あなたは無理やり交番に連行してそのまま帰さずに身柄を警視庁に移した。
単なる職務質問から強制捜査に切り替わってます。
違法ですよね?あのいや…交番に行ったらね…ちょうど近所で通り魔強盗が起こった直後だったんですよ!
(警官)〔先ほど強盗事件が発生しまして〕〔強盗?〕〔はいマスクを被って〕〔ホントに?〕
(警官)〔2丁目でついさっき!〕
(薫)4件目のモンスター強盗が発生した直後だったんです!
(かおり)だから被告人が犯人ですか?つまりその時点で決定的な証拠でもあったんですね?いやあそりゃあ…ありませんでしたけど…。
ハァ〜…!確たる証拠もなく任意同行の延長で身柄を拘束できるんですか?あなたは違法な拘束と不当な取り調べによって被告人が裁かれてもいいと思ってるんですか!?裁判長!不当な取り調べがあったという事実は立証されてません。
失礼。
今の発言は後段撤回します。
被告人の自白の任意性と信憑性は別の機会に争う予定ですから。
よろしいですか?結構です…!少なくともこれで被告人が違法に連行され不当な拘束を受けたことが明らかになりました。
質問は以上です。
お忙しい中どうもありがとう。
(杉下右京)どうやら…亀山君の完敗ですね。
(奥寺美和子)…はい。
亀山さんありがとうございました。
(内村警視長)亀山の次は伊丹か…!
(中園警視正)弁護人は自白は強要されたものと主張してます。
まあいずれにしても弁護人の証人として呼ばれるようではな。
マヌケな刑事のやることだ!
(かおり)被告人の肋にヒビが入ってます。
全治1か月だそうです。
このケガを負わせたのはあなたですか?
(伊丹刑事)さあ…?知りませんねえ。
あなたじゃないのであれば三浦刑事でしょうか?それは本人に確認してくださいよ。
もちろん…言われなくてもそうしますが。
取調室という密室で被告人は大ケガを負わされた…。
なぜか?自白を強要するためではないのですか?強要なんかしてませんよー。
ならばなぜ被告人はこんなケガをしたんですか!?さあ…?
(伊丹)どこかに自分でぶつけたんじゃないですか?正直者の亀山ァ!
(伊丹)おっといけねぇ!バカが抜けてた。
バカ正直の亀山ァ!なんだとぉ…!?テメェのせいだぞこの野郎!なにィ!?テメェがバカ正直に違法行為を認めちまうから野郎の自白の任意性まで疑われちまっただろうが!肋へし折って吐かせた供述なんか誰も信用しねえよ!俺はそんなことしてねえよ。
どうだかなぁ!
(角田課長)無罪?その可能性もありますねえ。
だけどさぁ…。
アチィ…!奴はこいつを持っていたワケだろ?そのマスクを持っている人間は日本中に5千人近くいますから。
メーカーによると5千個限定で昨年売り出したものだそうです。
ほぼ完売…僕もその5千人のうちの1人です。
ヘッあんたも物好きだよな。
わざわざ現物買うなんてさ。
どんなものか確かめてみたかったもので。
でもさ仮に5千人いたとしてもだよ?あの夜犯行現場の近くをウロウロしていたのは奴だけだ。
それは状況証拠にすぎません。
襲われた女性の証言にしても決定的な証拠にはなりませんしね。
ま確かにな。
こんなモノ被ってたんじゃ肝心の顔がわかんねえもんな。
面通しもできねえ。
状況的には相当怪しいですよ。
しかし決定的な証拠はない。
それでも起訴に踏み切ったのは本人の自白があったからです。
ところがその自白をひるがえしちまったワケだ。
ええ公判になった途端否認に転じました。
弁護士に知恵つけられたか。
(右京)なかなか優秀な弁護士のようですよ。
(裁判長)黒岩繁。
右の者に対する強盗致傷被告事件について当裁判所は検察官宮城義之弁護人武藤かおり各出席のうえ審理を遂げ次のとおり判決する。
主文被告人は無罪。
(ため息)落ち込むな。
薫ちゃんのせいじゃないよ。
そうか?俺のせいじゃないか?俺がもっと奴を慎重に引っ張ってくればあんな判決出なかったんじゃないのか?ま…薫ちゃんのせいだけじゃないよ。
みろ!やっぱり俺のせいじゃないか!次があるって。
あ?どうせ検察は控訴するでしょ。
(伊丹)控訴断念?そうだ。
しかし…!控訴して有罪にできるのかっ!?…新たな証拠でも挙がるのか?んっ?控訴されないってことは僕の無罪は確定ってことですよね?…そういうことね。
ねえ先生。
裁判には「一事不再理」っていうのがあるんでしょ。
えっ…?「何人も同じ事件について二度裁かれることはない」って…。
よく知ってるわね。
(黒岩)もう誰も僕の無罪にケチをつけられない。
そういうことですよね?ええ…。
先生にめぐり会って良かった…。
何のご用?いえ別に。
どんな顔して出てくるか見届けに。
こんなとこ来るヒマがあったら警察学校行けば?なにィ…!?イロハから勉強し直したほうがいいんじゃないの?職務質問の仕方とかさ。
余計なこと言わないの!僕はこいつのおかげでひどい目に遭ったんだ!少しは言ってやりたいんです!もういいから帰りなさい!…あなたもこれ以上妙なマネをすると自分の立場が危ないわよ。
何やってるのよ!早く帰りなさいよ!それじゃ先生…このご恩は一生忘れません。
先生はあいつが本当に無罪だと思ってるんですか?彼の言うとおりね。
え?あなた警察学校で勉強し直したほうがいいかも。
被告人はすべて無罪よ。
「被告人の段階では誰もが無罪と推定される」。
近代刑事法の基本原則よ?わかってますよそんなことは。
原則論じゃなくて今回のケースについて訊いてるんです。
彼が有罪か無罪かを判断するのは判事の役目でしょ?私は自分の役目を果たしただけ。
だけどもしあいつが犯人だったとしたら結果として先生が犯人を野放しにしたことになるんです!そういうことは考えたりしないんですか?今回は強盗事件ですけど…もしも殺人事件だったらどうですか?同じね。
私の立場は変わらないわ。
今回の一件だって責任はあなた方警察と検察にあるんじゃない?ずさんな捜査で起訴するからいけないのよ!…違う?なに笑ってんだよ!仕事しろよ!あ今笑いました?笑ったりしてませんよ。
…わかってますよ!俺がマヌケだった。
うかつだった。
それは認めます。
けどね…!わかっているのなら怒るよりも前に反省すべきじゃないですかね。
してますよ!普段見過ごされてしまうような些細な行為でも違法は違法。
そこを突っつかれたら我々はひとたまりもありません。
それが法治国家です。
だからわかってますって!なぜ君は法廷で違法行為を認めたんですか?あ?すべて合法的に事を進めたと主張すれば弁護側はその主張を突き崩せなかったと思いますよ。
被告人が何を言おうと証拠はない。
水掛け論に終わります。
だって…!はい?宣誓しちゃったでしょ俺。
嘘はつけませんか?あそこで嘘をつけって言うんですかぁ?そんなことは誰も…。
だったら何ですか?君のそういう正直なところ僕はかなり高く評価しています。
ある意味好ましくさえある。
…バカにしてんすか俺を?僕はほめたつもりですがねえ。
ほめたように聞こえませんけど!そうですか。
君はかなりひねくれてますねえ。
〔先生にめぐり会って良かった…〕あれ…右京さん?ああ…。
亀山君の家はこの近くでしたね。
今お帰りですか?はい。
右京さんは?ここはモンスター強盗の4件目の犯行場所ですね。
調べてるんですか?1件目から順に回ってきました。
黒岩繁…無罪になっちゃいましたね。
そのようですねえ。
どう思います?裁判所が無罪と判断したならば無罪でしょう。
そりゃそうですけど…。
しかし無実ということではない。
えっ?無罪と無実は違います。
裁判所が判断したように彼が犯人だという証拠はありません。
しかし犯人じゃないという証拠も同様にない。
だったら黒岩が…?いいえ。
僕は誰が犯人であってもかまいません。
えっ?大事なことは今犯人は野放しになっているということです。
つまり再び犯行が起こる可能性がある。
だからこうやって調べているんです。
見落としはないか…手がかりはないか…。
ハァ〜…爪の垢煎じて飲ませたいな。
はい?うちの亀山君に。
無罪判決が出たもんだからすっかりしょげちゃって…。
そうでもないようですよ。
えっ?彼は彼なりに闘志を燃やしているようです。
犯人確保に向けて。
ま是が非でも彼は黒岩繁を犯人として捕まえたいようですが。
(美和子)何かといろいろお世話をかけるかと思いますがよろしくお願いします。
(ノックの音)何やってんだよテメェは!?テメェこそ何だよ?どの部屋だ?…2階の角部屋。
(伊丹)またやると思うか野郎?ああ奴が犯人なら必ずな。
俺もそう思う…奴が犯人だ。
俺もそう思う。
飯は?あ?食ったのかよ?食ってねーよ。
ほら。
余計なお世話だよ。
食わねえともたねえぞ。
長丁場になるかもしれない。
いらないねぇって言ってんだろ!チッ…アンパンじゃダメか?ジャムパンならどうだ?いらねえよそんなもん!テメェに恵んでもらうほど落ちぶれてねえんだよ。
つーか足りねえじゃねえかよ!まけとけよ…。
(玄関のチャイムの音)
(ミカ)はーい!どうぞ。
突然すみません。
別にいいですよ。
ちょうど刑事さんも来てますから。
えっ…?これはどうも。
武藤弁護士でしたか。
先日うちの亀山君がお世話になりました。
ねぇ弁護士さんは何の用?強盗にね遭ったときの状況を聞かせてもらいたいの。
弁護士さんもだって。
聞かせてあげたらどうですか。
またぁ!?
(ミカのもがく声)なるほど…何度聞いても調書のとおりですねえ。
だって本当のことだもん。
嘘言ってないよ。
もちろんです。
しかしほかに何か気づいた点とか言い忘れた点とかありませんか?だからそんなのないってば…!しつこいな刑事!どんな些細なことでもいいんです!そんなこと言われたってさあ…。
不意打ち食らってガムテープでぐるぐる巻きにされて何が何だかわかんないうちにドスーンだもん!ガムテープで目も口もふさがれたわけですよね?そうだよ〜ひどいでしょお?しかし耳はふさがれてませんよね?例えば犯人の声を聞いたとかそういうことはありませんか?声?ああ…そういえば一瞬ね。
聞いたの?一瞬ね。
「ウッ」って。
(かおり)ウッ?地面に倒されたとき犯人のこと思いっきり蹴飛ばしてやったの。
どこ蹴飛ばした?
(ミカ)いや〜わかんないなあ…。
私目隠しされてたから。
でもどっかには命中したんだと思う。
(かおり)杉下さんは肋の一件どうお考えになりますか?黒岩繁が取調室で負ったというケガ…。
あなたはもうお帰りになって次のお仕事をなさったほうがよろしいかもしれませんね。
えっ…?弁護士のあなたは黒岩さんを追求する役目にはありません。
無罪を勝ち取った以上黒岩繁がはっきりと無実であってほしい。
そういう思いであなたは今日いらしたんじゃありませんか?無実である証拠が何か発見できないかと思って…。
しかし…例え黒岩繁が犯人でもあなたに責任はありませんよ。
法廷でのあなたは正しかった。
誰に非難される謂れもない。
ですからお帰りになったほうが…。
そこまで私の立場をわかっていただいてるのなら言いますね。
何でしょうか?彼…犯人ですよたぶん。
もちろん個人的な心証です。
何も証拠はありません。
だから私は無罪を主張して戦った。
被害者の供述調書を読むと全員があっという間にガムテープで体の自由を奪われてバッグを持ち逃げされているようですね。
4件とも同じ手口みたいですね。
同一犯の犯行だということはほぼ間違いないと思いますけど。
しかも犯行に要した時間は5分とかかってない。
見事なものです。
確かに犯人はムダなことは一切していない。
そういう意味では見事ですけどね。
そうでしょうか?えっ?犯人はムダなことを一切していませんか?…と言うと?目をふさいでしまうことまで必要でしょうか?犯人は被害者の口をふさぎ体の自由を奪った後必ず目もふさいでいます。
わざわざマスクで顔を隠しているにもかかわらずどうして目までふさぐ必要があるんでしょうねえ?武藤弁護士はどうしてだと思いますか?さあ…?顔を隠したいのであればマスクがその役目を十分に果たしています。
ところがなぜか犯人は目もふさぐ…とてもムダに思えます。
慎重を期しているのでは?念には念を入れて。
確かにそういう考え方もできますね。
…しかし気になる。
ま考え過ぎかもしれません。
僕の悪い癖です。
おい。
んっ?ドジ踏むなよ。
こっちは面が割れてんだ。
テメェこそヘマするなよ。
おいっ!おいっ!チッ…!黒岩繁の肋にはヒビが…。
(三浦刑事)知るか。
取り調べのことを詳しく…。
いいか先生。
はい?終ったことだから教えてやるが太々しく口を割らないような被疑者にはそれなりのことはするさ。
やっぱりするんですね。
けどなケガさせるようなマネしねえよ。
こっちは昨日今日の新米じゃないんだよ。
ケガさせたら元も子もないことぐらいわかってんだよ!これからは気をつけなさいよね!
(三浦)なにィ?取り調べ中に煙草を勧めることも厳密に言えば利益誘導の恐れがある。
それぐらい法律はデリケートで杓子定規なの!もっと慎重に行動しなさいよ!だからややこしくなるのよ…!
(米沢鑑識官)奪われたバッグがですか?供述調書によると4件目の犯行ののち財布から現金を抜き取った後バッグもろとも現場近くの公園の草むらに捨てたということなんですがねえ。
発見されなかった。
ええ。
もっともバッグの捨て場所については供述が二転三転したようですからあてにはなりませんが。
結局バッグは発見されないまま起訴したわけですか?公園の草むらに捨てたのならば誰かが拾って行ってもおかしくないだろうということらしいですね。
なるほど…自白を強要したときにありがちなでっち上げですね。
こちらの都合がいいようにストーリーを作り上げてそれを被疑者に認めさせる。
ちなみに…私はいつまで巻いていればよろしいでしょうか?はいもう結構ですよ。
そうですか。
本当はガムテープのほうが感じ出るんですけどね。
おっしゃるとおりですが後が大変ですから。
致し方ありませんね。
今度は左巻きに巻いてください。
はっ?今のは右巻きですよね。
今度は左巻きに。
左巻きですか?…はい。
(米沢)こっちじゃない…こうか…。
なぜテープを持ち変えたんですか?いやこっちのほうがやりやすいですからね。
そうなんですよ…逆に巻くのは巻きづらいですよねえ。
誰かと待ち合わせか?みたいだな。
ムッ!意外な人物のご登場だな。
黒岩さんでしょうか?帝都新聞の奥寺と申します。
(黒岩)どうも…。
…そういうわけですからね僕はまったくの濡れ衣なんですよ。
警察はひどい…許せませんね!
(美和子)なるほど。
僕の人生メチャクチャですよ…!会社もクビになるし…全部警察のせいです!ほかにおっしゃりたいことはありますか?とにかくそっとしておいてください。
今回の取材だって僕の言い分をキッチリ載せていただけると言うからお受けしたんですよ?
(美和子)ええそのつもりですよ。
では…こちらからも質問させていただいてよろしいでしょうか?何でしょうか?ズバリ訊いちゃいますね。
はい。
あなた…本当に犯人じゃないんですか?あ…怒らないでくださいね。
あっ!ふざけんなよ…!お前も僕を犯人扱いかっ…!?あの野郎…!よせっ!僕は被害者なんだぞっ!?
(美和子)いい加減にしてよっ!!おいっ!!薫ちゃん!?何やってんだコラァ!?…大丈夫か?うん…。
何であんたが…?何なんだあんたたち…!僕を監視してたのか!?たまたま通りかかったんだよ!嘘つけっ!そんなに僕を犯人にしたいのか?冗談じゃねぇぞーっ!!このクソバカ野郎っ…!大バカ野郎のクサレこんこんちきっ!!うるせえなあ!…わかってんだ何べんも言うな。
とっとと郷里へ帰れ!あ?お前刑事に向いてねえよ。
お前だって彼女があんな目に遭ったら出て行ったはずだよ!テメェと一緒にすんな!…俺には彼女はいねえんだよ。
お前威張るところおかしいよ。
訴えたい?今だって僕のこと監視してるんですよ!こんなこと許されるんですか!?無実なら監視されたって何も恐れることはないでしょう。
警察もそのうちあきらめるわよ。
言っときますけどね先生…僕は恐れてなんかいませんよ。
ただ不愉快なだけで…許されないでしょう!?それよりケガの具合どう?あ?…何なんですか急に?
(かおり)「心配してるのよ」もしもし?聞こえてる?もう結構です。
先生には頼みません。
失礼しました…!お飲みになりますか?
(小野田公顕)いやいらない。
そうですか…。
解決しそう?何がですか?これモンスター強盗。
お前今これ調べてるんだろう?近いうち解決すると思いますよ。
そうか…それは結構。
ところでご用件は何でしょう?実はこっちも…いよいよ本格的に調査に乗り出そうと思っている。
そうですか…。
ちなみに何の調査ですか?知りたい?興味ある?いえ特には。
ま…少しでも興味があったら僕の部屋においで。
大きな声じゃ言えないが…おーきな事件だぞ。
(小野田)しかもおーきな謎だ。
お前が来るのを首をながーくして待ってる。
おいまた出たぞ!例のフランケン!出ましたか。
出たよ〜!
(無線)「警視庁より各局。
丸の内管内強盗容疑事件」「千代田区大手町2丁目常盤橋公園においてマスクをかぶった…」
(伊丹)これ…モンスター強盗か?いや…だってお前…!
(扉をたたく音)あまだいたんですか?何か?
(被害者)いきなりここから現れてガムテープで口をふさがれて体を縛るみたいにされて…。
ここに倒されてバッグを盗られました。
目隠しはされませんでしたか?目隠しですか?いいえ。
そうですか。
右京さん…!ああおそろいで。
間違いなくモンスター強盗ですか?そのようですね。
クソッ…犯人は別人かよ!黒岩…部屋にいましたずっと。
張り込みがバレたそうですね。
どこかのマヌケのおかげでね!あなたがついててだらしない。
しかしどうやらこれで謎が解けました。
あなた方の張り込みも決してムダではなかったようですよ。
特にバレてしまったことは功を奏した。
えっ…どういうことですか?今回の犯行は右巻きでした。
…はっ?
(黒岩)どういう心境の変化ですか?
(かおり)よく考えたらねこれ以上追求されるのは私にとっても迷惑だから。
(黒岩)えっ?確かに無罪は確定したわ。
けれどもし新事実が出てきたら警察は手を出さなくてもマスコミの餌食になる。
そうなると私の名誉にも傷が付く。
訴えましょう。
訴えてつまらない詮索は止めさせましょう。
なんだか僕が犯人みたいな言い方ですよね。
だって犯人でしょあなた?怒りますよ?いくら先生だからって…。
そのケガ…被害者から蹴飛ばされたんでしょ?〔ウッ!〕
(かおり)警察に連れて行かれる前に実は肋にヒビが入っていた。
まさか…。
警察もそのことに感づいたのよ!ほーら顔色が変わった。
早く手を打たないと大変なことになるわ。
もしヘマをしたらマスコミから袋だたき。
それでもいいの?私は嫌よ。
もちろんあなたが本当に犯人じゃないのならいいの。
私の取り越し苦労なら幸い。
でももし身に覚えがあるのなら訴えましょう!お互いのために。
どうするの?訴える?それとも放っておくの?ハッキリしなさいよ!グズグズしてたら共倒れよ?…訴えちゃおうかな。
そう…訴えるんだやっぱり。
先生が言ったとおり僕がやったんだよ。
ありがとう。
これでスッキリしたわ。
もう無罪は確定してるんだから関係ねえだろ今さら?ただしそれは過去4件の強盗についてです。
オイッ…!?どういうことだよっ!?ゆっくりとさあ5件目について話そうぜ。
5件目?さっき起きたモンスター強盗です。
我々はその件で来ました。
僕がやったって言うのか?バカバカしい!僕はやってないぞ!あんた証明できるだろ?できるよぉ。
ほらみろ。
もちろん今夜の犯人はあなたではない。
やったのは…あなたの相棒でしょうね。
つまりあなたは教唆犯。
5件目については強盗教唆です。
罪は実行犯と一緒ですが。
潔白を証明するつもりで5件目やらかしたんだろうけどアワくってやるからボロ出すんだぞ?何の話だか…。
なぜ怪物のマスクを被って強盗をするのか?普通に考えれば顔を隠すため。
それは間違いありません。
しかし顔を隠したい真の理由は単独犯ではなかったから。
つまりあなたには共犯者がいるということですよ。
マスクを被ればあなたもその共犯者も同じフランケンシュタインになれる。
そのためのマスクだったんです。
手口はこうです。
あなた方はスリの要領で犯行を重ねた。
片方がマスクを被って女性を襲いバッグを奪うと待ちかまえていたもう片方がそれを受け取りいち早くその場を離れた…。
だからこそ被害者の目をふさぐ必要があった。
そうしないと複数犯ということがバレてしまいますからね。
あなた方は交互にフランケンを演じたんじゃありませんか?1件目は相棒2件目はあなた3件目が相棒4件目があなた…。
ワケのわからないこと言うな…。
巻き方が反対なんですよ。
あなた方は必ず被害者の背後に回ってガムテープを巻きました。
ところが利き腕が違うために巻き方が逆になってしまった。
相棒は右巻きあなたは左巻きです。
あなたの利き腕は左ですよねえ?そりゃ間違いねえよなあ。
俺はこの目でしっかり見てるぞ。
そういうわけで4件目の犯行についてバッグの捨て場所の供述が二転三転したのもムリのないことだったんですよ。
4件目はお前がフランケンだからな。
バッグは相棒が持ち去って処分した。
あなたは捨て場所を知らなかったわけですよ。
だからって…!はい?今夜の強盗僕が指図したってことになるのか?今夜の強盗は被害者の目をふさぎませんでした。
だから何だって言うんだっ!?なぜでしょうねぇ…?今夜に限ってなぜ目をふさがなかったのでしょう?知らないよそんなことっ!!モンスター強盗だということをハッキリ印象づけるためですよ。
怪物のマスクをしっかり被害者に見せつけ間違いなく5件目のモンスター強盗だと強調したかった。
だから今夜に限ってわざわざ目隠しをやめたんですよ。
あなたのアリバイはこっちの相棒亀山君が証明してくれますから。
そっちの相棒に連絡して単独でやらせたんだろう?白状しろよ。
その野郎が捕まるのは時間の問題だぞ。
何とか言えっ!!弁護士に…。
ああっ!?相談したい…。
何をっ!?もちろんですよ。
あなたにはその権利があります。
どなたに頼みますか?あなたバカだわ!せっかくのチャンスをフイにしたんだもの。
自由の身のままで罪を償えるチャンスだったのに…。
わかってる?あなたが無罪になったのはたまたま運が良かっただけ。
警察がヘマしたおかげなのよ。
だから刑務所行きも免れた。
刑務所に行かなくても罪は償えるわ。
(かおり)心から自分のしたことを反省して悔い改めればいい。
なのにあなたはそうしなかった。
あげくにこんな工作までして…。
今度は本当のことを話して。
黒岩繁さん。
ご足労ですが署までご同行願えますか?もちろんまだ任意です。
拒否してもかまいませんよ。
こんな調子でよろしいでしょうか先生?いつでも弁護は引き受けるわ。
あなたの最低限の利益は守ってあげる。
行こうか。
妙な役目をお願いして申し訳ありませんでした。
面と向かって言われると…正直こたえるんですよね。
はい?〔もしあいつが犯人だったら結果として先生が犯人を野放しにしたことになる〕〔そういうことは考えないんですか?〕考えますよしょっ中。
考えないわけがない。
悩みますよいつも。
だけど…。
あなたは弁護士です。
個人的に被告人が怪しいという心証をお持ちになったとしてもそれにとらわれてしまっては弁護士の役目は果たせない。
それは検察官の役目です。
でなければ法律の専門家がわざわざ右と左に別れて戦う意味がありません。
1人の無実の人間を牢獄に送るぐらいなら100人の犯罪者を取り逃がしたほうがいい。
裁判制度の根本精神です。
私の弁護士としての正義もそこにあると思ってます。
人を裁くことは難しい。
だから慎重でなければならない。
ええ。
黒岩繁はいい弁護士にめぐり会いましたねえ。
2015/10/31(土) 16:25〜17:25
ABCテレビ1
相棒〜警視庁ふたりだけの特命係[再][字]
「仮面の告白」
詳細情報
◇出演者
水谷豊、寺脇康文、松下由樹、鈴木砂羽、岸部一徳、長谷川朝晴、川原和久、山西惇 ほか
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
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日本語
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