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水野敬・上級研究員
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水野敬・上級研究員

 虐待を受けるなどしたため母親らへの愛着を感じられない「愛着障害」がある子どもの脳では、特定の機能が低下していることを、理化学研究所ライフサイエンス技術基盤研究センター(神戸市中央区)と福井大などのグループが解明した。「お金を得る」「褒められる」といった「報酬」について喜ぶ部位が機能低下していた。愛着障害の診断や、治療薬の効果を検証する際に役立つ可能性がある。研究成果はオランダの科学誌電子版に発表された。(金井恒幸)

 愛着とは、子どもと、母親など養育者との間でつくられる強い情緒的な結びつき。身体的な虐待や養育放棄(ネグレクト)などを受けると子どもの中で愛着がうまく育たず、愛着障害となる場合がある。

 愛着障害の子どもは自己肯定感が低く、褒め言葉のような「報酬」が心に響かない傾向があり、感情の制御がうまくいかないなどの問題を起こしやすい。だが、脳のどの部分が関与しているかは未解明だった。

 グループは、愛着障害がある10~15歳の子ども5人と、愛着障害と症状が似ているとされる注意欠陥多動性障害(ADHD)がある同世代の子ども17人、健康な同世代の子ども17人を、血流を含め画像化する機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って脳の状態を比較した。

 3枚のカードから1枚を選び、金額が書かれていればその額がもらえる、というゲームをした結果、愛着障害の子どもは金額が書かれていても、報酬を喜ぶ感情や意欲・行動の制御に関わる線条体と視床が活性化しなかった。一方、健康な子どもは報酬の多少に関係なく金額が書かれていれば活性化し、ADHDの子どもは報酬が多いときだけ活性化した。

 報酬を喜ぶ機能は、神経伝達物質の「ドーパミン」が関係しており、愛着障害の子どもはドーパミンが不足している可能性があるという。同センターの水野敬上級研究員は「研究成果は愛着障害とADHDの鑑別診断にも活用できる可能性がある」と話している。

  
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