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舞台男子

文化を創る、ということ──編集後記。

カテゴリ:おーちようこ
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「いい連載じゃない。ここに登場してくれる若い俳優さんに、いつかうち(講談社)がお世話になる日が来るかもしれない」
 今でも忘れません。
 この連載の第一回目となった伊勢大貴さんのインタビュー記事を読んでくれた、この企画にGOを出してくれた方の言葉です。
「大きなメディアを扱う場所は、そういった文化貢献も義務のうちだと思うから、がんばって続けてね」
 そう言って送り出していただき『舞台男子』は始まりました。Web媒体、それも無料。さらに自由。さて、この場所でなにを描(えが)こうか──?

 それはもちろん、決まっていました。
 彼らのことばを紡ぐこと。
 改めまして、こんにちは。初めましての方もいらっしゃるかもしれません。

 おーちようこ、と申します。この連載の執筆者であり、編集者です。縁あっての持ち込み企画でしたので、取材対象のセレクトからアポ取りから各種手配。写真選定に原稿確認、もちろん当日の記事アップまで、文字通り、全部を担当しています。今も、この最後の記事を。

 普段の私の仕事はライターが中心です。取材して、書く。それが生業です。自分では創作しない、誰かの創作物を大切に読み砕き、あるときは広く、あるいは狭くともしかるべきところに深く、お届けする、という毎日です。永遠に誰かのふんどしで相撲を取る仕事であり、前面に出るべき仕事ではありません。
 ですが、今回、このような機会を与えてもらえたことに勇気を得て、少し、編集後記をつづらせてください。

 ずっと、雑誌の取材記者をやっていて、忸怩たるものがありました。その媒体の宿命として、これから公開される作品について話を聞くことが多かったからです。たとえば「小説」といった作品ならば、すでに完成品はあり、事前に拝読することもでき、実際に書き終えた想いを伺うことはできますが、「舞台」となると、そうはいきません。なんといってもこれから上演するのですから。
 それはもちろん雑誌の宿命であり、事前のパブリシティ活動として当然のことで、そこに取材陣は全力で挑みますし、取材を受けてくださる俳優陣も真摯に応えてくださいます。そのための誌面であり、告知の場である。わかっています。
 けれど。
 やっぱり話が盛り上がると、本題からそれて話は意外な方向へ転がったり。むしろ、そういったこぼれた部分がおもしろかったり。けれど、そこは泣く泣くカットすることも多く。あるいは後日、上演された舞台を観て、ああ、あれが聞きたい、これも聞きたい、となってしまうことも多く。

 与えられた時間に取材を終え、与えられた目的のために記事を書き、与えられた誌面で記事を収めるというなかで、読み応えのある記事を書くのも、腕の見せどころで、仕事です。話したことをただすべて載せるのではなく目的に合わせた取捨選択で文字数でまとめることも、仕事の内──とはいえ、全部、取っ払った場所がほしい。もっと俯瞰で話を聞きたい、届けたい。それが、ぜんぶ叶えられたのがこの場所でした。

 舞台というものは、生で観るべきものだとやっぱり思っているので、その日、板の上で起こったことがすべてです。もしかしたら、それだけ見てくれたら、いい。多くは語らない。という役者さんもいるかもしれない。けれど、その一方で、どう演じたか? を伝えたい役者さんもいるはずだ。

 そして、なにより、私は聞きたい、と思っている。その願いを存分に叩きつけたのが、この連載でした。正直に言ってしまえば、1年、毎月続けることは大変でした。けれど、とてつもなく楽しい時間でした。話は常に縦横無尽に広がり、ヘアメイクさん、カメラマンさんが生み出す撮影空間にわくわくし。
 もともと舞台はたくさん観ていましたが、お話を聞きたいと思った方の舞台のDVDや資料をどこまでも観たり、読み込むことも楽しかった。伺った話を聞きながら、原稿を書き上げ、まとめていく作業は毎月、「間に合うのかな?」とドキドキしながら、それでも、急いで手を抜くことはしたくない。大丈夫、大丈夫と言い聞かせ……毎回、褒めていただいた、各俳優さんにつけたタイトルは、いつもまとめているうちに心に浮かんできた単語でした。
 不思議なもので書くうちに、テーマみたいなものが見えてきて、あ、これだ、というのがいつも最後にわかりました。

 すべてを担当していましたが、独りではありませんでした。かなり無理なスケジュールの依頼でも聞き届けてくれて、とてつもなく魅力的な姿を撮ってくださったカメラマンさんをはじめ、ヘアメイクさん、デザイナーさん、講談社の方々、記事に共感しスケジュールを調整してくださった各所属事務所のマネージャーさん、取材の内容が多岐に渡るため、それぞれの舞台の宣伝担当者さんに何年も前の舞台について確認をお願いすることもありました。赤字戻しの原稿に毎回、ひとこと感想を添えてくださる方もいました。とてもとてもたくさんの方に助けていただき、この記事は成立していました。
 読んでくださった、みなさんからの声も本当にうれしくて。Twitterの反応も、サイン入り写真プレゼントのアンケートも(個人情報保護法により、どれがどなたのお声かはわからないのですが)すべて読ませていただき、とても励まされました。

 そして、1年間続ける内に、あれよあれよと2.5次元の舞台は世間に浸透し、特集やインタビューもずいぶんと増えました。昨今はDVDリリースに向け、雑誌でもWebでも事前の取材とともに公演後に改めて伺う記事や個人を掘り下げたロングインタビューが増えたようにも感じます……手前味噌でしょうか。また、『舞台男子』でその存在を知り、役者さんに興味を持ったという制作の方の声を伺うこともあり、いろいろなところへ届けることができたのかもしれない、と感じています。私個人のTwitter宛に熱い思いを届けたくださった方も多く、書籍化希望のメールを直接、講談社BOOK倶楽部宛に送ってくださった、という方もおられました。

 記事を書いたからには、読まれてこそ完結する、と思っています。
 読んでくださってありがとうございます。
 最初にもらったことば通り、少しは文化を創る足がかり、となれたでしょうか。

 ですが、始まった連載はいつか、終わります。
 今回、定期連載を終わらせていただくこととなりました。サイト閉鎖にともない、すべての記事も11月11日(水)をもって掲載終了となります。ただ人生はまだ続きますし、これからも私は取材して書き続けていくので、どこかでまた、いろいろなことばを届け続けます。読んでくださった方々はじめ、関わってくださったすべての方々に感謝を込めて、お礼を伝え。また、黒子に戻りたいと思います。
 ありがとうございました。

 

 2015年10月31日  おーちようこ

 

 

 「舞台男子」取材スタッフ 敬称略
 カメラマン/江藤はんな(SHERPA+)、為広麻里、福岡諒祠(GEKKO)あいうえお順
 ヘアメイク/BELLEZZE
 タイトルデザイン/ナカノケン(アルフェイズ)

 今後の「舞台男子」について、その先へと続く動きがありましたら、舞台男子Twitter( @b_danshi )にてお知らせいたします。

 

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