ドラマチック関西「人をつなげる魔法の料理 〜さすらいの料理人 堀田裕介〜」 2015.10.30


バイクで疾走するこの男。
実はさすらいの料理人。
自分の店も持たず一ところにとどまる事を知らない。
その名は堀田裕介37歳。
今メディアがこぞって彼の斬新な料理スタイルに注目している。
自らを料理開拓人と称する堀田。
彼が開拓するもの…。
それは日本全国の飛び切り魅力的な食材たち。
食の現場を訪ねその土地で料理をする。
堀田が生み出す料理は五感全てに訴えるユニークなものばかり。
料理がまるで芸術であるかのような感覚へといざなう。
さまざまな料理を1枚の絵画のように美しく並べる食のモザイクアートfoodscape!。
美しく盛られた大皿の料理をみんなで一緒に食べる事でこれまで味わった事のない食体験を生み出す。
地元の食材で描く風景はその地方の風土への興味をかきたてる。
彼のスタイルはこれだけにとどまらない。
料理に音楽の楽しさを融合させるライブパフォーマンスEATBEAT!。
野菜をかじる音。
たまねぎを切る音。
食にまつわるさまざまな音をリズムや音色に加工しその音楽を聴きながら料理を楽しむ。
味覚と聴覚を同時に刺激する堀田の魔法に人々は酔いしれる。
一見クールな堀田のスタイル。
しかしその発想の源は生産者一人一人との出会いにある。
魅力的な食と人を求めて西へ東へ。
自らの厨房は全国の現場であるという堀田の日々に密着した。
高松からフェリーで40分。
瀬戸内海に浮かぶ…人口およそ200。
島民の多くが漁業に携わっている。
5月。
料理人の堀田裕介がこの島に降り立った。
島民と観光客との交流会で出す料理を任されたのだ。
島に着いて早々調理スタッフを引き連れて取りかかったのは食材探し。
こんにちは。
市場にでも行くのかと思いきややって来たのは普通のお宅。
どうやらお目当てのものが庭にあるらしい。
取り始めたのはツツジの花。
一体これで何を作るのだろう?次にやって来たのは浜辺。
ハマダイコンは海岸や砂浜に自生する野草。
これが食材になるとは島の人もほとんど知らない。
続いて向かったのは漁港。
地元の漁師に頼み込んで急きょ漁に同行させてもらう事になった。
魅力的な食材が取れる場所ならどこでも堀田のフィールドだ。
この日取れたのは舌平目。
島の人からゲタという愛称で親しまれるこの時期旬の食材だ。
交流会当日の朝。
堀田は一人机に向かって何かを書いていた。
スケッチ画のようだ。
ゲタの南ばん漬け。
昨日取った舌平目だ。
さまざまな料理の盛りつけが記された大皿料理の設計図だ。
これまでも堀田は料理で日本の風景を描いてきた。
鳥取の大山。
地元のナシやリンゴで夕焼けに染まる山を表している。
そして琵琶湖。
滋賀県産の新米で作ったお握りや取れたての野菜が盛りつけられている。
目でも舌でもその土地を味わう事ができるfoodscape!。
地域ならではの食材を楽しく食べる体験がその土地への新たな興味につながる。
堀田は男木島のfoodscape!にどんな思いを込めたのだろうか。
「島のもんでこんなにきれいに見せれるんや」とか…続々と観光客が集まり始めた。
堀田はイメージしていたアイデアを形にし始める。
島の名産たこ飯を揚げたライスボール。
島で取れたイノシシ肉のロールキャベツ。
堀田の手で地元の食材に新たな息吹が吹き込まれる。
見た事もない料理の盛りつけに島のおばあちゃんも気になる様子。
こうして島の食材で作った20種の料理が並べられる事40分。
色鮮やかな男木島が姿を現した。
スタッフが島の人にゼリーを手渡していた。
そのゼリーで島の人が周りを縁取っている。
そこに堀田のねらいが隠されていた。
実はこれ昨日採ったあのツツジを使ったゼリー。
この日のために堀田が考案したスペシャルデザート。
島の人が自らの手で島を完成させるという演出は堀田の粋な計らいだ。
堀田のアイデアが隅々にまで行き届いた男木島がここに完成。
今自分たちが立っているこの島が料理で表現される。
未知の体験に皆興奮気味。
じゃあ皆さん手を合わして下さい。
じゃ頂きま〜す。
(一同)頂きま〜す。
じゃあの〜けんかしないように。
なじみの食材なのに今日はいつも以上においしい。
その土地の食材の持つ可能性を堀田が最大限に引き出す瞬間だ。
堀田はその土地土地で料理をする事にこだわる。
そのスタイルは彼の料理人としてのある信念から生まれる。
料理を作るようになったのは10歳の時。
母親の料理がきっかけだった。
(取材者)それを出してくるんですか?出してきて…高校卒業後料理人に。
念願だった自分の店も構えた。
順風満帆に滑り出した料理人人生に転機が訪れたのは30歳の時だった。
店と家を往復するだけの生活。
ファックス一枚の注文で簡単に届けられる食材。
その食材の現場について何も知らない事に疑問を持ち始めた。
料理の仕事って一次生産の人たちがいないと成り立たない仕事なんで…。
その人たちがあっての僕らなんで…。
やがて全国の産地を訪ね始めた堀田。
その土地だけで出回る幻の食材や生産者の知られざる熱意に触れ料理人としての視界がどんどん広がっていった。
そして堀田は店を辞めた。
自ら各地に赴きイベントや結婚式で腕を振るうさすらいの料理人になった。
これまで食にまつわるさまざまなイベントを仕掛けてきた堀田。
彼の既成の枠にとらわれない活動についに行政が関心を寄せ始めた。
香川県高松市が地元で料理と音楽を融合させたイベントEATBEAT!を開催してほしいと申し出たのだ。
瀬戸内の豊かな食に関心を持ってもらうため堀田独自のスタイルで生産者と消費者をつなげてほしいという。
まずは高松の食の現場を自分の目で確かめる。
やって来たのは高松市郊外にある養蜂場。
果樹栽培が盛んな高松では数多くの種類の蜂蜜が採れるという。
うまっ!食材のよしあしは生産者の熱意で決まる。
堀田は食材を一番よく知る現場の生産者ならではの声に耳を傾ける。
まあ特徴として…それはやっぱりケーキ屋さんとか。
う〜ん!すごいね!ゆでるんはみんななんですけどやっぱり…高松の食の現場にじかに触れた堀田。
どんな料理を作ろうかイマジネーションがどんどん膨らんでいく。
迎えたイベント当日。
この日は一年をかけて展開するキャンペーンのキックオフイベント高松でのEATBEAT!初披露となる。
食材を切る音潰す音など料理にまつわるさまざまな音を録音していく。
そしてこれらの音をシンセサイザーを使って加工し即興でリズムや音色メロディーにして楽しむ。
行政と初めてタッグを組む事になった堀田。
これまで若者に好評だったEATBEAT!が高松の幅広い世代に受け入れられるのか。
まず1発目はこのニンジンのスティックのかじる「カリッ」という音をとりたいと思います。
EATBEAT!にはお客さんも参加する。
自分たちの発した音が目の前で音楽となりそれを聴きながら料理を楽しむ。
まさに五感で楽しむイベントだ。
ニンジンをかじる音がたちまちビートを刻みだす。
(ニンジンをかじる音)いちごをミキサーで潰す音も…。
この会場で作られた曲がこちら。
この日の食材は堀田が自ら生産地で吟味したもの。
生でかじっておいしかったアスパラはサラダに。
酸味の強いいちご女峰は甘いムースとよく合うソースへと変貌を遂げた。
今回堀田は生産者たちもイベントに招いていた。
消費者が喜ぶ姿を生産者は目の当たりにできる。
今回のイベントは無事終了。
次回は8月。
瀬戸内の島で開催される。
滋賀県長浜市。
ここに堀田が毎年欠かさず会いに行く人がいる。
専業米農家の2代目だ。
2人が知り合ったのは若手農家グループの農業体験イベント。
年が近く食に対する考え方も似ていた2人はすぐに意気投合した。
以来堀田は立見さんに頼んで毎年田植えの手伝いをしている。
現場で汗をかく堀田の姿が立見さんの心を動かした。
どうせ言っても分からんやろ的な。
でも僕はそれが嫌やから実際実体験をして…それの方がおっきいですね。
一人で毎日毎日やってるとやっぱり精神的に参ってくるんでそういう時に…少しでも食材を作る人の気持ちに寄り添いたい。
堀田の思いが生産者と料理人の深いつながりを生み出していく。
7月。
高松市から依頼を受けたEATBEAT!が目前に迫っていた。
今回の会場は女木島。
5月にイベントを成功させた男木島の隣にある島だ。
いつものように自らの足で食材を探す事にした堀田。
まずは島に詳しい料理店を訪ねる事に…。
こんにちは。
いらっしゃいませ。
麦みそ。
地元の漁師に知り合いが多いという店主松内さん。
早速協力してもらえる人がいないか尋ねてみた。
今日はありがとうございました。
はい気を付けて。
結局地元の漁師を紹介してもらう事はできなかった。
その後も島を訪ね歩くものの協力者を見つける事はできないまま…。
生産者の生の声を聞く事で自分の料理を生み出してきた堀田。
いつものやり方が貫けず思わず弱音が口をついて出た。
人とのつながりの中でこそ本当の料理が作れると言う堀田。
なぜそこまで人とのつながりにこだわるのか。
幼少期に両親が離婚。
堀田を引き取った母は再婚するが堀田はその新しい環境になじめなかった。
ずっと孤独だった少年はいつしか会話の絶えない温かい家庭に強い憧れを抱くようになった。
一つの料理を大勢で楽しく囲むスタイルはまさに堀田の思い描く理想の形。
共に食べる事で人とのつながりを実感できるのだ。
そういうシーンってなかなか出会えんくないすか?日常生活で…。
食材を生み出す生産者料理人そしてそれを食べる人。
人と人をつなげる料理を女木島で作りたい。
堀田は改めてそう思った。
再び女木島にやって来た堀田。
こっちから続いてるかちょっと分からへんけど。
方角は向こうや。
島に着いて早々高松市から紹介してもらい生産者に会える事になった。
こんにちは。
落花生の谷さんです。
南京豆を作っているベテラン農家の谷君子さん。
収穫には少し時期は早いというが畑を見せてもらった。
これが…島の乾燥した風土に適した女木島の特産品だ。
あっ入ってる入ってる。
あっ結構おっきい。
(谷)粒も入っとるよこれな。
これはいっぱい入っとるやろ。
色ももうきれいな…。
谷さんから南京豆を少し分けてもらった堀田。
ようやく自分のペースを取り戻し始めた。
会場に着いて慌ただしく準備をしていた時だった。
先ほどの谷さんが会場にやって来た。
(谷)見せてもいいしあれしてもいいし…。
あれはあんまりようけなかったから…わざわざ堀田のために畑を回って大粒の南京豆を見つけてくれたのだ。
続いて訪ねてきたのは料理店の松内さん。
以前堀田の力になれなかった事を気にして様子を見に来てくれた。
(松内)そうそう。
もちろん。
同じ料理人として何か役に立てる事はないかと自分の畑で作った小麦を堀田のために分けてくれるという。
これ1つ。
そのまま。
混ぜもんなしでそのまま。
自分を気遣ってくれる島の人たち。
この島のために明日はできる限りの力を注ごうと決めた。
僕たち自身が…イベント当日の朝堀田は厨房に立っていた。
冷まし。
お客さんを最初にもてなすウェルカムフードは谷さんからもらった南京豆にした。
この日参加したのは事前に申し込んだ一般のお客さん60名。
地元高松だけでなく遠く大阪や東京からも堀田の活動に興味を持つ若者たちがやって来た。
何か生っぽい。
ほんまや。
あっおいしい。
おいしい!めっちゃおいしい!EATBEAT!in女木島開催したいと思います。
(一同)イエ〜イ!
(拍手)EATBEAT!の幕開けは恒例の野菜をかじる音から。
(野菜をかじる音)
(一同)おお〜!
(野菜を切る音)イエイ!321…。
(スープをすする音)いい音いい音。
いい感じ。
いい感じです。
イベント終了後堀田は松内さんを特別に会場に招いた。
よし。
女木島産の小麦を持ってきてくれた松内さんを堀田は自分の料理でもてなそうと考えたのだ。
松内さんの小麦で作る特製のピザ。
島の麦みそもふんだんに使った女木島スペシャルだ。
堀田は松内さんと一緒にこのピザを食べたいと思っていた。
是非。
是非。
僕も食べますので。
一番乗りに。
一番乗りに。
ちょっと香りやっぱしますね。
うん。
ねぎとみそがいい感じで。
きれいね。
うまい!うまい。
これはうまい!粉が貴重すぎですね。
人と人が料理でつながる瞬間。
ここ女木島でも新たなつながりが出来た。
ありがとう。
ごちそうになりました。
いえいえこちらこそ。
ありがとうございました。
また。
また。
また来ます。
ごちそうさま。
ああいう一人でも何か向こうから関わってくれようとしてる人たちとか落花生の農家さんとかああいう人たちと出会えたのは…今年堀田は地元大阪に拠点となるカフェを立ち上げた。
これまでにつながった生産者の食材を使って料理を作りそれを都会の消費者に広めていきたい。
この場が地方と都市生産者と消費者の出会いの場になってほしいという堀田の願いが込められている。
多分みんな…例えばお金もうけたいとか一軒家買いたいとかいい車乗りたいとか。
でも僕は多分…いい人と出会えばストレスのない毎日を過ごせるんでだから…人と人をつなげる魔法の料理を作り出すために。
今日も堀田はまだ見ぬ食材人との出会いを求めてさすらい続ける。
2015/10/30(金) 20:00〜20:45
NHK総合1・神戸
ドラマチック関西「人をつなげる魔法の料理 〜さすらいの料理人 堀田裕介〜」[字]

さすらいの料理人・堀田裕介。彼のちゅう房は全国各地の第一級の食材がそろう現場だ。地元食材を使って美しい風景も描く。食の可能性を広げ続ける料理人の日々に密着した。

詳細情報
番組内容
さすらいの料理人・堀田裕介。彼のちゅう房は全国各地の第一級の食材がそろう現場だ。披露する料理もユニーク。地元食材を使って美しい風景を描く『foodscape!』、料理と音楽を組み合わせ、味覚以外の刺激も誘うイベント『EATBEAT!』など食に興味のない人にもアプローチする方法を編み出している。今年堀田は瀬戸内の島でイベントを開催。食の可能性を広げ続ける料理人の日々に密着した。ナレーション:谷原章介
出演者
【出演】堀田裕介,谷原章介

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – ドキュメンタリー全般
ニュース/報道 – ローカル・地域
情報/ワイドショー – グルメ・料理

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