生字幕放送でお伝えします岩渕⇒こんにちは。
「くらしきらり解説」です。
きょうはこちらのテーマです。
担当は村田英明解説委員です。
村田さん、解雇というのは会社を辞めさせられたりすることですがそれをお金で解決するというのはどういうことですか?村田⇒解雇を巡るトラブルが後を絶たずに、裁判に発展するケースも多いんですが企業が解雇した人に金銭を支払うことで解決を図る制度を政府が新たに作ろうとしているんです。
これに対して労働組合は企業が金さえ払えば解雇できるようになるのではないかとして制度の導入に反対しています。
どういうことか詳しく話していきたいと思います。
岩渕さんはマタハラということばは聞いたことありますか?マタニティーハラスメントですね。
妊娠した女性が職場で嫌がらせなどを受けることですね。
本人は働きたいと思っているのに雇い主から一方的に辞めさせられる、これを不当解雇といいますが女性を結婚や妊娠、出産を理由に解雇することは男女雇用機会均等法で禁止されているので不当解雇になります。
働く人が育児休業や介護休業を申し出たことでそれを理由に解雇するのを禁止されています。
企業の業績悪化を理由にした解雇はどうでしょうか。
いわゆるリストラですね。
ちゃんとした理由があれば認められるのではないですか。
正当な理由があれば認められます。
整理解雇といって不況の際に企業が取る手段ですがただし条件があります。
従業員を減らさなければ経営が成り立たないなど必要性があるか。
解雇を回避するためにどんな努力をしたのか。
なぜその人を解雇の対象者に選んだのかなどのこうした条件に誰もが納得できる説明ができなければ解雇は認められずに不当解雇と見なされるんです。
厳しい条件があるんですね。
にもかかわらず実際には不当解雇が後を絶ちません。
都道府県の労働局に寄せられる解雇を巡る相談の件数は年間に4万件近くあります。
その中には裁判になるケースも多くておととしの裁判所の調査では、解雇の無効を求めた民事裁判は947件ありました。
このうち企業側が金銭を支払うことなどで和解したケースは444件。
不当解雇と認められて解雇無効の判決が言い渡されたケースは195件あります。
ただ裁判で不当解雇と認められてもすべての人が職場復帰できているわけではないんです。
解雇無効なのになぜ復帰できないんですか?こちらの図で説明します。
勤めていた会社から一方的に解雇を言い渡されたキラリさん。
職場復帰を認めるように裁判所に申し立てました。
そして裁判所は解雇には正当な理由がないとして不当解雇であると認めて解雇は無効だとする判決を言い渡しました。
ところが会社側は復職を拒否したんです。
そんなことができるんですか?不当解雇は労働契約法という法律で禁止されていますが、違反しても雇い主に職場復帰を強制することまではできないんです。
法律にはそこまでの強制力がないんです。
職場復帰を望んでいる人は解雇無効になっても結局泣き寝入りするしかないんですか。
今の法律ではそうなんです。
労働契約法には違反しても罰則がありません。
それが不当解雇を許す一因になっているという指摘もあります。
そうした中で政府はさらに企業が解雇しやすくなるルールを作ろうとしています。
ここからがきょうの話の本題です。
先ほどのキラリさんのようなケースつまり裁判で不当解雇と認められても職場復帰できない人たちを対象に政府が新たに導入しようとしているのが解雇の金銭解決制度の仕組みです。
お金で解決する制度ですね。
この制度の在り方を検討するために厚生労働省は法律家や経営者と労働組合の双方の代表が参加する会議を設けて昨夜から議論が改正されました。
詳細はまだ決まっていないんですが考えられているのは裁判で不当解雇が認められた労働者が職場復帰を諦める代わりに雇い主に解決金を支払うように申し立てることができるようにする。
そしてこの申し立てを受けた雇い主は国が定める一定水準の解決金を支払わなければいけません。
そのような仕組みが想定されています。
不当解雇された人は納得できますか?復職できても会社側との信頼関係が壊れている場合が多くて居づらくなって辞めてしまう人も多いんです。
解決金を受け取ることで円満な解決が図れるのではないかと政府は考えているようですがただ不当に解雇されて職を失ったわけですから、金銭的な補償を受けるのは当たり前ですよね。
それよりも労働組合が懸念しているのは企業の間で最後は金銭で解決すればいいという風潮が広がって安易な解雇が増えるのではないかといったことです。
そもそも金銭解決制度の導入は経済界が求めてきました。
今は解決金による解決の申し立ては労働者の側にしか認められていないんですが制度を導入したあとで経営側も申し立てができるようになるのではないかそうなれば解決金で決着を図る企業が増えて安易な解雇が増えて復職が一層難しくなるのではないかと労働組合側は懸念しています。
そもそも経済界は、なぜ解雇しやすい環境を作りたいんでしょうか?それは雇用の流動化をすすめたいからです。
具体的にはどういうことですか。
簡単に言えば、これまでのように終身雇用の形で同じ従業員が、同じ会社でずっと働き続けるのではなく、転職しやすくするということで、そうすればそれぞれの会社に必要とする人材が集まって生産性を高められるという考え方が経営者の中にはあります。
雇う側の考えですね。
安倍政権はこうした経済界の要望を受けて雇用の流動化を促すために労働分野では実現が難しかった3つの岩盤規制を壊そうとしています。
まずは労働者派遣法の改正です。
これは先の通常国会で実現しました。
正社員より賃金の安い派遣スタッフを同じ職場で何年でも受け入れられるようにとしています。
次に目指すのが高度プロフェッショナル制度の導入です。
対象となる社員は何時間でも働けて仕事の成果に応じて報酬を支払うために残業代は支払われません。
残業代ゼロ制度ともいわれていますね。
企業の中にはメリットがありますね。
働く側の目線ではないんですね。
企業の使い勝手がよい働き方を増やそうとしています。
3つ目の岩盤が金銭解決制度の導入です。
こうした一連の規制緩和をセットで見た場合、そして今不当解雇が後を絶たない状況を考えれば、この制度が従業員を解雇して必要な人材を採用するために使われるのではないかといったおそれが労働組合側はそこを心配しています。
今後の課題は何ですか?1つは国が決める解決金の水準をどうするのか。
今の裁判の和解で支払われている解雇を巡る解決金は10万円や20万円といったものもありますが200万円程度が相場だと言われています。
賃金や勤続年数に応じて金額を変えるのかどうかなど、今後その内容は具体的に検討していくことになります。
中でも中小企業の水準をどうするかが焦点です。
実は2003年に小泉政権時代に一度この制度の導入が検討されましたが中小企業が負担が大きくなるとしてこの制度の導入を見送った経緯があります。
金額を低く設定すれば中小企業は納得するかもしれませんが安易な解雇が増えるといった懸念はふっしょくできません。
解決金の額は解雇を防ぐ歯止めにもなりますし不当解雇したことへのペナルティー的な意味合いを考えればそれ相当の金額にしなければ働く側は納得できません。
そして不当解雇を防ぐ手だても考えなければなりません不当解雇を放置したまま金銭による解決を進めたのでは本末転倒だと思います。
企業の利益だけではなくて働く人の利益を守ることを十分に考えて慎重な議論を進めてほしいと思います。
村田英明解説委員でした。
担当は寒川由美子解説委員です。
ぜひ、ご覧ください。
肉大好き!肉最高です!2015/10/30(金) 10:05〜10:15
NHK総合1・神戸
くらし☆解説「“解雇”をお金で解決?」[字]
NHK解説委員…村田英明,【司会】岩渕梢
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出演者
【出演】NHK解説委員…村田英明,【司会】岩渕梢
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ニュース/報道 – 解説
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