NHKスペシャル「新島誕生 西之島〜大地創成の謎に迫る〜」 2015.10.30


ここは一体どこだろう?闇に浮かび上がる溶岩の流れ。
拡大を続ける火山島西之島だ。
カメラが初めて捉えた超接近映像。
この島で徹底的な科学調査が行われた。
今黒い煙を上げて噴火が起きました。
噴火を始めたのはおととし11月。
実に1年半以上も続き島は直径2キロに拡大した。
新しい島の誕生は世界でも数十年に一度の珍しい現象。
しかもこれほどの大きさになるのを観測できたのは人類史上初の事だ。
実はこの島ただの火山島ではない。
地球の歴史の大きな謎を解く手がかりになるという。
えっ大陸?どういう事だ?この夏NHKは研究機関とプロジェクトを立ち上げ西之島に向かった。
最新鋭の無人調査機で噴火を続ける島に極限まで接近。
空から海から島の全貌に迫った。
うお〜でか…でか!でかいでかいでかい…!西之島で一体何が起きているのか?火山の国日本の知られざる姿が明らかになる。
西之島は本州から南へおよそ1,000キロ。
人が住む父島から船で8時間もかかる絶海の孤島です。
もともとあった旧・西之島。
そのすぐ隣の海底で噴火が始まりもとあった島をのみ込みながら拡大を続けてきました。
これまでに噴き出したマグマの量はおよそ3億トン。
日本の火山の噴火の中で最大級のものです。
これまで月に1回海上保安庁の飛行機が飛ぶ以外観測はほとんど行われていません。
火山の常識を覆すこの島に世界中の科学者が注目しています。
噴火予知連絡会のメンバーで西之島の観測を続けています。
もっと近づいて詳しく観察したいと考えていました。
一方地質学者の田村芳彦さんは西之島の全体を調べたいと考えています。
実は海上に現れた西之島はほんの一部。
海の中には4,000メートル級もの巨大火山が隠れています。
その全体を調べる事である謎が解けるといいます。
なんと…およそ40億年前誕生したばかりの地球の表面には起伏がなく全て海で覆われていたと考えられています。
その後大きな陸地大陸ができました。
しかしどうやって大陸が生まれたのか驚いた事に現代の科学でも解明されていません。
田村さんはその謎を解く鍵が異常な拡大を続ける西之島にあるのではないかと考えています。
噴火が続く今だからこそ行いたい調査。
しかし大きな問題がありました。
現在島から4キロ以内には立ち入る事が禁止されています。
火口から飛び散る噴石や海底で起きる噴火の危険があるからです。
これまでの観測はこのエリアの外からしかできていません。
そこで…私たちは前代未聞の挑戦をする事にしました。
6月下旬。
横浜港の岸壁に見慣れない機械が次々と集まってきた。
これら全て西之島を調べるために集められた無人調査機だ。
大量の機材を積み込んでいざ西之島へ。
ノンストップで50時間の船旅だ。
西之島周辺の海は年間を通して波が高い。
調査できるのは梅雨明け後数週間に限られる。
プロジェクトには第一線の研究者と世界有数の技術力を誇る民間企業のエンジニアが集まった。
最高のチームで西之島を目指す。
小笠原の海。
水平線に巨大な雲の壁が見えてきた。
その先に現れたのは…。
西之島だ。
噴き上がる噴煙が雲となってたなびいていた。
ちょっと興奮しますね。
すごい今テンション上がってます。
正直ちょっと怖い部分もあるんですけど。
ついに島から4キロの地点に到着した。
ここが人間の近づける限界。
この先は無人機だけが頼りだ。
西之島に挑む無人機作戦。
空には2種類の無人ヘリが発進。
海上には無人ボート。
海中には4種類の無人探査機。
全てが初挑戦。
果たしてうまくいくのか?最初に挑むのは島の超接近撮影だ。
技術者たちが動き出した。
使うのは産業用無人ヘリコプターだ。
ふだんは地震計の設置や災害状況の確認などにも使われている。
今回の調査のために特別な改造を加えた。
ハイビジョンの4倍の画質4Kカメラを装着して準備完了だ。
しかし無人ヘリを船から飛ばすのは初めての挑戦。
風速8メートル。
この風に無人ヘリ操縦の大ベテラン則博之さんの表情は硬い。
飛んだ瞬間少しでも風にあおられると船の構造物に当たってしまう。
飛び立つタイミングが重要だ。
はいお願いします。
取り囲む構造物を避けながら見事ヘリは飛び立った。
船から離れると則さんからの電波は届かない。
遠距離用の電波に切り替える。
この先は本田さんと中山さんの担当。
遠隔操縦の達人だ。
島に向かいますよ。
はい。
上昇しながら向かいますよ。
ゆっくり行きます。
無人ヘリから送られてくる映像を頼りに操縦する。
飛び立ってから7分。
西之島の全景が見えてきた。
直径は2キロ。
生まれたばかりの大地だ。
海岸線から煙のようなものがもうもうと上がっている。
何が起こるか分からない。
慎重に近づいていく。
海岸線の様子がはっきり見えてきた。
波をかぶって蒸気を上げている。
岩はかなり熱そうだ。
海へ突き出すように並んでいる。
島が拡大している最前線だ。
更に内陸へ火口を目指す。
その時…。
(警報音)突然ヘリに異変が起きた。
エンジンの冷却水の温度が急上昇。
危険な状態だ。
火山から放たれる熱のせいだ。
とっさの判断で機体を風上に向ける。
エンジンに風を当て冷やそうというのだ。
なんとか危機を脱して火口へと近づいていく。
火口はすさまじい勢いの噴煙を上げている。
じりじりと火口の中をのぞき込める位置へ機体を寄せていく。
ヘリを火口間近でホバリングさせじっくり観察する。
噴煙が渦を巻いている。
噴き出す岩石は大きいもので3メートル。
こうした岩石が降り積もりこの山ができた。
高さは140メートルを超える。
山の麓に川のような黒い筋を見つけた。
その筋をたどっていくと山の中腹から始まっていた。
噴煙の影がよぎるとうっすらと赤く見える。
高度を下げていく。
岩の隙間から赤い光が見える。
溶岩に違いない。
表面だけが冷えて固まりそれが黒く見えていたのだ。
溶岩流を間近で見たいと考えていた…映像を見てある事に気付いた。
真ん中見てるとよく分かります。
動いてますね。
早送りしてみる。
本当だ。
確かに動いているぞ。
溶岩流はゆっくりとだが着実に動いていたんだ。
温度を色で表すサーモカメラで溶岩流を撮影してみた。
赤い部分は400度以上。
所によっては1,000度にもなる。
しかし溶岩流の先端は海岸まで届いていない。
では海岸で蒸気を上げていたのは何だったのか?再びサーモカメラで見る。
すると海岸付近でまた熱い溶岩が現れ海に流れ込んでいる事が分かる。
野上さんはこの映像から西之島の拡大の仕組みが分かるという。
山の中腹から流れてきた溶岩と海へ注ぎ込む溶岩。
これらはつながっておらず二重構造になっているという。
もともとは海に流れ込む溶岩流だけがあった。
その表面が冷えて固まり溶岩は地下を通るようになった。
そしてその上にかぶさるようにして新たな溶岩流が現れた。
こうして二重構造の溶岩流ができたのだ。
溶岩流が次々と重なる事で島は今急速に厚みを増しつつある。
西之島は面積が拡大するだけでなく高さ方向にも成長しているのだ。
これほど複雑な溶岩流が観察されたのは世界でも初めての事だ。
火山の知られざる一面がまた一つ浮き彫りになった。
西之島の夕暮れ。
夜間飛行が始まる。
昼間は太陽の光で隠されていた溶岩のしゃく熱の輝き。
闇に包まれその正体を現した。
高温の岩石がまき散らされる。
火口のすぐ下までマグマが近づいている。
湧き出す溶岩が海へと注ぐ。
毎夜人知れず繰り返されてきた大自然の営みだ。
驚異的な噴火を続ける西之島。
火山以外の研究者からも注目されています。
小笠原諸島の鳥を研究する…噴火前旧・西之島にいた鳥たちが今どうしているのかを知りたいと考えています。
そこには緑があり2,000羽以上の鳥が集まる鳥たちの楽園でした。
中でもアオツラカツオドリはこの10年旧・西之島でしか子育てが確認されていない貴重な鳥です。
島は鳥たちにとって大切な繁殖地だったのです。
しかし状況は一変しました。
旧・西之島のすぐ横で噴火が始まり湧き出した溶岩が元の島をのみ込んでいきました。
今は僅かに残るだけです。
旧・西之島の繁殖地は今どうなっているのか。
調査を行う事になりました。
用意したのは特別な定点カメラ。
4方向にカメラが付いていて周囲360度を24時間録画できます。
この定点カメラをかつての鳥の繁殖地旧・西之島部分に設置。
ところがこのカメラの回収が困難を極めました。
設置から3日後回収のためのミッションが始まった。
なんとフックで定点カメラをつり上げるというまるでクレーンゲームのような大胆な作戦だ。
西之島に到着した。
まずは定点カメラを捜す。
ちょうど崖の上だもんね。
はい。
あったあったあった…OK。
フックを引っ掛けるなんて本当にできるのか?出発前何度も練習を繰り返した。
高度30メートル。
これが島でヘリを下ろせる限界だ。
そこからワイヤーを伸ばしてフックで引っ掛ける。
ビルの10階に相当する高さだ。
練習の成果を西之島でも発揮できるか?フックを定点カメラに近づけていくと…。
あ〜鳥が!えっ鳥?本当だ鳥がいる。
大噴火に負けずに残っていたんだ。
定点カメラにも映っているに違いない。
早く見たい!はい。
うまく引っ掛かった。
ところが…。
外れてしまった。
気を取り直して再びフックを近づけていく。
さあ上げるぞ。
よ〜しついたOK。
OKヒット。
なんとか定点カメラのつり上げに成功した。
横倒しになったバランスの悪い状態。
船に降ろすのが難しくなった。
甲板ではエアクッションを敷き詰めてカメラを受け止める準備が進む。
最後の操縦は則さん。
則さんの緊張をほぐそうと本田さんが声をかける。
無理?ああ。
こけてるから無理?無人ヘリが船に戻ってきた。
せっかく回収してきた定点カメラを海に落とす訳にはいかない。
切り離しのタイミングが難しい。
なんとかクッションの上に載った。
お疲れさまでした。
4つのカメラでどんな映像を撮ってきてくれたのか?これは設置の時の映像。
4方向の風景が映し出される。
噴火してからまだ誰も足を踏み入れていない西之島に着陸。
映像をつなぐと360度の風景になる。
西之島に降り立った気分で見回してみよう。
噴煙を吐く火山。
すぐそばまで真っ黒い溶岩が迫っている。
草は全く見当たらない。
あっ鳥だ。
随分たくさんいるぞ。
数え切れないほどの鳥が島に残っていた。
おおすごい!いや〜もう何かすごい。
こんなに鳥が残ってるとは思ってませんでした。
鳥の多さに驚いた川上さん。
噴火中の島で鳥たちがどんな生活をしているのか調べ始めた。
これアオツラカツオドリの大人ですね。
いやすばらしい。
きちんと残ってますね。
この10年旧・西之島でしか子育てが確認されていなかったあのアオツラカツオドリもしっかり生きていた。
更に決定的な瞬間が撮れた。
若鳥ですね。
この春ここで生まれた若鳥だ。
あこれあはいやってますね。
おすばらしい。
鳥たちはこの地で繁殖を続けていたのだ。
川上さんがアオツラカツオドリの若鳥を数えると9羽が発見された。
親鳥を含めると少なくとも30羽近くいるはず。
もともと旧・西之島にいたアオツラカツオドリは数十羽。
かなりの数が残っていた。
しかし草木が無くなり鳥たちは巣を作るのに苦労しているようだ。
ほかの鳥が落とした羽根もすかさずくわえて巣の材料として集めるほどだ。
まそれがあってもですね…僕らが知っている…お〜お〜。
いいですね。
うんきれい。
すごいすごい。
おお〜。
出た!でかいでかい!すげえ!でかいでかい。

(歓声)すげえ。
かつてない大規模な拡大を続ける西之島。
実はこの噴火は単なる島の誕生ではなく地球の歴史の中で重要な意味を持っている可能性があります。
いよいよ西之島調査で最も大がかりなミッションが始まります。
地質学者の田村芳彦さん。
今大きな謎に挑もうとしています。
およそ40億年前。
原始の地球の表面には起伏がなく全て海で覆われていました。
そこに大きな陸地大陸がいかにして生まれたのか?地球の歴史に残された最大の謎の一つです。
そこで注目されているのが異常な拡大を続ける西之島。
こうした島がどんどん拡大して大陸になったのではないか?それが本当かどうかは西之島の溶岩を調べれば分かるといいます。
そもそも大陸と火山島では岩石の性質が大きく違います。
普通火山島が噴き出すのは重い岩石です。
もし拡大を続けても長い年月の間に自らの重みでマントルの中に沈み込んでしまいます。
一方大陸は軽い岩石でできています。
そのためマントルに浮くような形になり下に沈む事はありません。
大陸ができるためには軽い岩石が必要なのです。
もし西之島が軽い岩石を噴き出していれば太古の昔に起きた大陸誕生の再現かもしれません。
田村さんは巨大火山西之島のさまざまな場所で岩石を取り分析しようとしています。
岩石の採取はまず周辺の海から始まった。
海の中まで広がる西之島。
田村さんにとっては宝の山だ。
順調に進む海底からの岩石採取。
しかし肝心なのは今まさに噴き出している岩石。
島の上から溶岩を取らねばならない。
人が立ち入れない島から溶岩を取る方法は一つ。
あの無人ヘリで史上初遠隔操作での溶岩採取に挑む。
最後にして最難関のミッションが始まった。
溶岩を取るために特別に作ったのがこの採取機。
回転するブラシで溶岩をかき込む仕組みだ。
できるだけ大きいものが取れればそれだけいろいろな分析できますから大きい礫を取るっていうのがいいかなと…。
採取器は5センチ程度のものまでは取れる。
分析のためには少しでも大きい溶岩が必要だ。
狙うのは溶岩が波で砕かれて細かくなった場所。
4キロ先の無人ヘリから送られてくる不鮮明な映像に目を凝らし採取機で取れそうな最も大きい溶岩を探す。
ようやくめぼしい場所が見つかった。
これは採取機につけたカメラの映像。
操作する2人には見えていない。
溶岩は動いているが取れているのか?上昇を始めた時…。
あっ!溶岩が落ちた…。
取れているかどうかは分からない。
駄目なら再挑戦。
そのためには採取器を壊さないように船へ降ろす必要がある。
重責がかかった則さん。
採取器を発着台の上にそっと降ろすという。
発着台は随分狭いぞ。
はい。
則さんお願いします。
またしても大きく揺れている。
則さん大丈夫ですか?
(則)まだまだ。
はい切って切って。
やった〜!見事に降ろした。
(取材者)やりましたね。
ええやりました。
今回はやりました。
(取材者)見事!期待と不安。
あっ!いくつか…小さいけど。
これでは小さすぎる。
もっと大きいのが欲しかった。
あった!溶岩だ!見るからに溶岩。
やりました。
非常に手ごろな大きさで本当にいいサンプル取れました。
誰も手にした事がない西之島で生まれたばかりの溶岩だ。
異常な拡大を続ける西之島。
それは大陸誕生の現場なのか。
島で取った溶岩の分析が始まった。
貴重なサンプルを慎重に切断。
溶かして分析器へと入れた。
結果が出た。
軽い成分が多い安山岩という石である事が分かった。
安山岩は大陸の材料となる軽い岩石の代表的なものだ。
火山島で見つかる事は非常に珍しい。
今回島とその周辺5か所で安山岩が取れた。
これは巨大火山西之島の全体が安山岩でできている事を意味している。
西之島は大陸と同じ軽い岩石でできていたのだ。
この島は太古の地球で起きた大陸誕生の再現である可能性が高い。
ではなぜ西之島では軽い岩石が作られしかも噴火が延々と続くのか?田村さんは特殊な地下の構造が関係していると考えている。
西之島ではほかの火山と違い地下のマントルが地表近くまで来ている。
マントルの最上部は岩石が作られる場所だ。
ここで何らかの作用によって軽い岩石が大量に作り出されているのではないか。
更にマントルが地表に近いため噴き出し続けているのではないか。
田村さんの推論だ。
実は原始の地球ではマントルが至る所地表近くに迫っていた。
そのため地球上のあらゆる場所で西之島のような巨大な海底火山が現れ軽い岩石を噴き出し続けた。
それが次第に集まり大陸になったと考えられるのだ。
私たちは今太古の地球に起きていた光景をこの目で見ているのかもしれない。
この先西之島はどこまで大きくなるのだろうか?ワンちゃんも笑顔。
2015/10/30(金) 01:30〜02:20
NHK総合1・神戸
NHKスペシャル「新島誕生 西之島〜大地創成の謎に迫る〜」[字][再]

東京から南へ1000km、謎の拡大を続ける「西之島」に無人機で大接近。迫力の映像と貴重な科学的データの収集に成功した。大地創成の謎に迫る科学アドベンチャー。

詳細情報
番組内容
「西之島」では、人類が初めて目撃する壮大な現象が進行している。海底火山の噴火により新島が姿を現したのは、おととし11月。今も拡大を続け、火山学の常識を根底から覆す現象として科学者たちを悩ませている。番組では、圧倒的な自然のエネルギーを、迫力の超接近映像で捉えるとともに、科学的データを収集する大オペレーションを展開。日本を代表する火山、海洋、生物などの科学者が集結し西之島の謎を徹底的に解明していく。
出演者
【語り】役所広司,片山千恵子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
ニュース/報道 – 報道特番

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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