クローズアップ現代「海に漂う“見えないゴミ”〜マイクロプラスチックの脅威〜」 2015.10.29


ても、データの流用を確認したことを明らかにしました。
一見、ごみもないように見える東京湾。
しかし、その中を調べてみると。
小さなプラスチックのかけらが大量に見つかります。
マイクロプラスチックです。
私たちの生活の中で広く使われているプラスチック。
それが粉々に砕け世界中の海に漂っています。
その数、推計5兆個以上。
最新の研究ではマイクロプラスチックが海水中の有害物質を濃縮させさまざまな生物の体内に取り込まれていることが明らかになってきました。
広がるマイクロプラスチック汚染。
私たちに何をもたらすのかその実態に迫ります。
こんばんは。
「クローズアップ現代」です。
全世界で大量に生産されるプラスチック。
リサイクルされるものもありますがその多くが使い捨てです。
ペットボトルに包装容器そしてレジ袋。
ごみとなったプラスチックその一部が海に流れ出ています。
その量は全世界で年間1300万トンとも呼ばれています。
海に流れ出たプラスチックは太陽の光や、そして紫外線によって劣化し波や風といった物理的な力によって細かく砕かれていきます。
中には、目に見えないほど小さなものもあり5ミリ以下のものはマイクロプラスチックと呼ばれています。
プラスチックによる海洋汚染それ自体、大きな問題ですが最新の研究によってマイクロプラスチックが海水中の汚染物質を吸着させ高い濃度に凝縮させる役割を持っていることが新たに分かってきました。
プランクトンよりも小さなマイクロプラスチックもあり私たちが日常的に食べる魚や貝などに含まれているという報告が世界各地から相次いでいます。
海の生態系に大きな影響をもたらす新たな環境問題。
ことし開かれたG7の首脳会議でも、世界的な課題だという指摘がありました。
発展途上国が急速な経済成長をするに伴いプラスチックの消費が急増すると見られています。
マイクロプラスチックの発生を予防するためにはプラスチックの海への流出を防ぐ手だてが今、急務となっているんです。
マイクロプラスチックは生態系そして、私たちにどのような影響を及ぼすのかまずはその実態からご覧ください。
今月、東京湾で環境省による調査が行われました。
日本近海に、どれだけのマイクロプラスチックがあるのか去年から各地で調査が続けられています。
小さなごみでも採取できる特別な網を引きます。
色とりどりの小さな破片。
マイクロプラスチックです。
分析に当たっている九州大学の磯辺篤彦教授です。
プラスチックとそうでないものを一つ一つより分けていきます。
1ミリ程度のものは肉眼でかろうじて見えます。
しかし、0.3ミリ程度になると顕微鏡で確認しなければなりません。
200トンの海水から集めたマイクロプラスチック。
分析の結果、およそ1300個が見つかりました。
これは1立方メートルの海水の中に、およそ6個ある計算です。
調査によると、東京湾だけでなく日本近海の50か所以上で同じようにマイクロプラスチックが見つかりました。
平均すると1立方メートル当たり3個程度。
これは世界の平均のおよそ30倍の密度になります。
なぜ日本近海はマイクロプラスチックの密度が高くなっているのか。
世界の海で調査をしているアメリカのNGO代表マーカス・エリクセンさんです。
エリクセンさんはマイクロプラスチックのもととなるごみに着目し各地で調査を行ってきました。
中国インドネシアフィリピンなどアジアの国々から大量のごみが海へと流出。
それが粉々になりながら日本近海へと流れてきていると見ています。
先進国では、新たな発生源も明らかになっています。
エリクセンさんが川で見つけたのは…。
汚れを取るため洗顔剤などに含まれている青い粒、マイクロビーズです。
大きさは僅か0.1ミリ。
チューブ1本に数万個入っているといわれています。
増え続けるマイクロプラスチック。
生態系への影響が懸念され始めています。
東京農工大学の高田秀重教授は海の生物を解剖し調査してきました。
この日、解剖したのはハシボソミズナギドリという海鳥です。
高田教授が分析を進めたところ、食べていたマイクロプラスチックの量に比例して、海鳥の脂肪からある有害な物質が検出されたのです。
PCBはかつて食用油の中に混入され食品公害、カネミ油症の原因となった有害物質。
皮膚障害や肝機能障害を引き起こしました。
石油から出来ているプラスチックは、油に溶けやすいPCBなどの有害物質を表面に吸着させる働きを持っています。
高田教授が実験で調べたところ海に溶け込んでいる有害物質を次々に集め、最大100万倍に濃縮させることが分かりました。
これを海鳥が食べると有害物質が体内に溶け出し脂肪や肝臓にたまっていくのです。
さらに、高田教授が懸念していることはより小さな生物までマイクロプラスチックを体内に取り込むことです。
東京湾のイワシを調べると64匹中、49匹から平均3個のマイクロプラスチックが見つかりました。
小魚がマイクロプラスチックを取り込むと、それを食べる魚に有害物質が蓄積されます。
食物連鎖の中で、有害物質が濃縮されていくと考えられているのです。
マイクロビーズのようなさらに小さなプラスチックの場合食物連鎖の底辺にあるプランクトンまで、体内に取り込むことが確認されています。
今夜は、今のVTRでもご紹介いたしました、東京農工大学教授の高田秀重さんとともにお伝えしてまいります。
小さな魚からも、マイクロプラスチックが出てきて、食物連鎖によって、有害物質が高濃度に濃縮されるおそれというのがあるということで、怖いですね。
怖い問題だと思いますが、プラスチック自体は、それを含んでる魚を私たちが食べたとしても、排せつされてしまいますので、それ自体を恐れる必要はないかと考えております。
むしろ、今のVTRにもありましたように、プラスチックが汚染物質を吸着しております。
100万倍、最大、吸着しておりますので、そういう汚染物質は排せつされずに、一部は私たちの脂肪に溶け込んできて、体内に入ってしまいますので、そういうことは、これから気にしなければいけない問題かなというふうに考えております。
これまでの研究で、生き物たち、あるいは人間への有害物質の具体的な食物連鎖による害っていうのは、明らかになってるんでしょうか?
プラスチックを通しての、そういう有害物質の人、それから野生生物への影響というものは、野外では観測されておりません。
しかし、室内実験では観測されております。
アメリカでメダカにプラスチックを食べさせて、そのプラスチックには有害な化学物質がくっついていて、それを3か月、食べさせ続けると、肝臓に腫瘍、あるいは肝機能障害が起こるというようなことが、アメリカの研究者によって、報告されております。
リポートでは、PCBがマイクロプラスチックに吸着していたということだったんですけれども、ほかにどんな有害物質が吸着するんでしょうか?
油に溶けやすい汚染物質であれば、なんでも吸着してくるということになりますから、油そのもの、石油汚染で、石油流出事故で出るような、石油はもちろん、濃縮されていきます。
ほかにも、過去に作られた農薬のDDTというものがありますが、そういうものも吸着されております。
リポートで、アジアの国々で、ごみとなって、海の中に流れ出たプラスチックが粉々になって、日本近海の濃度が、マイクロプラスチックの濃度が高いというリポートがありました。
それに加えて、こちらも、ご覧いただきたいのですけれども、そのプラスチックの中のPCBの濃度というものが、先進国、日本もそうなんですけど、濃度が高くなってるんですね。
どうしてこういうことになるんでしょうか?
このPCBという物質は1960年代に、先進工業国で、工業製品として使われておりました。
この時代に海に入ってきたわけですが、海底の泥の中に、今も堆積しております。
そういうものが水のほうに入ってきて、プラスチックにくっつくということが考えられております。
そうすると、マイクロプラスチックが、ある意味では、それを呼び起こす可能性もあるってことですか?
そうですね。
洋溶効果というふうに言いますが、プラスチックが一回沈んで、海底で眠ってる汚染物質をまた水の表面に持ち上げてくるようなことが、起こるんじゃないかというようなことも懸念されております。
そうやって汚染されたマイクロプラスチックが、ほかにも漂っていくという懸念もあるわけなんですけれども、もう一つ、新たな発生源として、今のリポートにもありました、われわれが日常的に使っている生活用品の中に、マイクロビーズ、0.1ミリのプラスチック、これが海に出ていってる可能性があるかもしれないということですけど、下水処理場などでは、捕えきれないんですか?
通常の先進工業国で使ってる下水処理のシステムであれば、99%程度は、除去されるという報告が出ております。
ただ、それは晴れてるときの話で、日本でもそうですが、雨が降りますと、下水があふれるということが起こります。
そうなると、使ったものがそのまま海域に出てくるということがありますので、そういう結果として、私たちがイワシの中で見つけたり、東京湾の海水の中に、そういうマイクロビーズがあるということを見つけてるということになってるかと思います。
イワシが取り込んだマイクロビーズの割合って、どの程度なんですか?
全体のマイクロプラスチックの中では、約10%程度になります。
90%、9割は、私たちが使っております、いろんなプラスチック製品の破片ということになります。
こんなふうに、ぼろぼろと割れてきますので、こういうものが主ではありますが、確実に10%はマイクロビーズであるということが分かっています。
増え続けています、このマイクロプラスチック。
それに歯止めをかけることはできないのか。
世界中で取り組みが始まっています。
アメリカ・カリフォルニア州。
マイクロプラスチックの問題への危機感から対策に乗り出しました。
ことし7月、レジ袋の客への提供を禁止する法案を全米の州で初めて成立させました。
さらに今月化粧品などに使われているマイクロビーズの製造と販売も5年後に全面禁止することを決めました。
州議会議員のリチャード・ブルームさん。
規制強化に取り組んできました。
すでにマイクロビーズを使わない方針を打ち出している化粧品メーカーです。
ほかにもアーモンド砂糖など、環境に優しい素材を使用しています。
価格は2倍以上になりますが環境問題に関心の高い層から支持を集め、売り上げを伸ばしています。
消費者の意識も変わり始めています。
カリフォルニア州に住むベス・テリーさんです。
プラスチックが海を汚染していることをニュースで知り、できるかぎり使わないよう心がけています。
しかし、プラスチックを減らす生活には、苦労もあります。
買い物に行くときには買う種類ごとに布製のバッグが必要です。
生活のすべてでなくすことはできませんが意識しだいで、減らせる部分は大きいといいます。
プラスチックを使いながらもごみを出さない技術を開発しようという研究も始まっています。
群馬大学の粕谷健一教授です。
使い終えたプラスチックを微生物で分解する、生分解性プラスチックの研究をしています。
重要な役割を果たすのが土の中にいるバチルスという特殊な細菌。
酵素によって、プラスチックを水と二酸化炭素に分解します。
粕谷教授は、この微生物を眠らせた状態にしてプラスチックに閉じ込めました。
分解は始まらず、普通のプラスチックとして使えます。
廃棄のときに傷をつけると微生物に空気や水が行き渡り活性化。
さらに増殖することでプラスチックを分解していきます。
実際にプラスチックが分解していく様子です。
水が入った容器に、傷をつけた生分解性プラスチックを入れます。
日にちがたつごとにプラスチックは溶けていきます。
1週間を過ぎると、ほとんど何も残っていません。
現段階では普通のプラスチックに比べコストが5倍以上かかる課題はありますが2年後の実用化を目指しています。
生分解性プラスチックの可能性、どうご覧になられました?
非常にすばらしい技術だと思いますね。
将来性もあって、コンポストを作るような閉鎖的な…で使うと、よりよいんじゃないかなと思います。
ただ一方で、技術的な解決だけでなくて、粕谷先生もおっしゃいましたけど、制度的な面、経済的なアプローチ等、いろいろ必要だと思います。
でも、完全に水と二酸化炭素に分解してしまうというのは、ちょっとわくわくするんですけど、技術面ではほかに、どういったところに開発が必要だとお考えですか?
生分解性プラスチックも、もちろんなんですが、私たち日本人が昔からよく使っております、木とか、それから、紙を、今の技術を使って、有効に使うというようなことが、大切じゃないかなと考えております。
少しぬれたものでも、運べるようなもの?
セルロースナノファイバー等の、そういう技術も進んできておりますので、そういうものを積極的に使って、不便さを感じさせずに、プラスチックから抜け出していく、そういうことが必要なんじゃないかなと考えております。
そして、政策面で求められていることはなんでしょうか?
そうですね、政策面ではやはり、今、進めております3Rが大切かなと思います。
削減、それから再利用、それから、リサイクルってものを促進していくということがありますが、この3つのRの中でも、実は順番があります。
まずは削減を進めないと、大量消費、大量リサイクルでは、この循環型社会の道がないということで、まず削減していくということ、それに向けて、行政がイニシアチブを取るということが大切だなと考えております。
具体的に、リサイクルでは賄いきれない例って出てるんですか?
そうですね、ペットボトルが端的な例です。
リサイクル率が高いんですが、経済的には、ペイしておりません。
リサイクルすれば、するほど、私たちの税金が減っていくという形になっておりますので、まずは減らしていかないと、社会全体、循環的にならないということになります。
そして、レジ袋ですけれども、アメリカではもう提供しないと、そういうふうなルールも出てましたけれども。
レジ袋については、大体日本では1人平均、1年間に300枚ぐらい使っております。
最近出ましたEUの削減方針では、1人、年間40枚に削減すべきだろうというようなことが出ておりますので、それを考えても、日本は使い過ぎかなとは思います。
マイバッグ等を持ち歩くという、そういう意識の改革も必要なんじゃないかなと思います。
プラスチックの海への流出量ですけれども、現在、国別、こうなっていまして、急成長するアジアの国々、20年後、10倍になるのではないかと、見通しがある中で、私たちは、このマイクロプラスチックを減らすうえで、どういう姿勢で、これから取り組んでいくべきでしょうか?
やはりプラスチック、長持ちしてしまいますので、海の中に入っても、長もちしてしまいますんで、問題がありそうであれば、それを避けるということ。
アインシュタインのことばにありますが、利口な人は技術的な開発、問題を解決すると。
賢い人は問題を避けるということがありますので、私たちも、このプラスチックの問題、問題であれば、これは避けていくようなことを、進めていく必要があるんじゃないかなと思います。
2015/10/29(木) 19:30〜19:56
NHK総合1・神戸
クローズアップ現代「海に漂う“見えないゴミ”〜マイクロプラスチックの脅威〜」[字]

いま世界各地の海に大量に漂っている微細な物質“マイクロプラスチック”。生態系への影響も懸念されている。その実態と対策を追う。

詳細情報
番組内容
【ゲスト】東京農工大学教授…高田秀重,【キャスター】国谷裕子
出演者
【ゲスト】東京農工大学教授…高田秀重,【キャスター】国谷裕子

ジャンル :
ニュース/報道 – 特集・ドキュメント
ドキュメンタリー/教養 – 社会・時事

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