さまざまな憶測

当時の週刊誌の記事を参考までに記載します。


岡田有希子さん「自殺原因」に衝撃新証言
「ガス自殺未遂(左手首切創)」と「飛び降り」に、
それぞれ別の理由が隠されていた!

2度にわたって自ら命を断とうとした岡田有希子さんの自殺の動機は、
以前として憶測の域を脱していない。しかし、ここへきて有力な証言者が
現れた。彼女を見いだし、そして最後までそばについていた福田時雄氏
(サンミュージック専務)である。彼の口をついて出た”意外な動機”とは?


 まだそこに岡田有希子さんのうつ伏せになった遺体があるかのように、冷たい雨の中を呆然と立ち尽くす
男の子たち。四谷4丁目角の落下現場に供えられたおびただしい献花と線香は片付けられ、目の前の
大木戸ビル1階の一隅に新しく祭壇がしつられた。そこで合掌するファンもあとをたたない。
 そのだれの胸の底をも重苦しくふさいでいるのが
<ユッコ、なぜこんな死に方をしなければならなかったの?ほんとうの原因はいったい何だったの?>
という痛切な思いだ。遺書の細かい内容については関係者は一様に口をつぐみ、自殺の真因については
ただ憶測が語られているだけだからだ。
 そんなおり、有希子さんの最後の瞬間までそばにいた最大の関係者、福田時雄専務が本誌に始めて
口を開いてくれた。福田専務といえば4年前彼女を名古屋で見いだした人である。
 岡田有希子というスターの短いが異様に輝いた芸能生活の初めから最後まで、多感な少女のあまりに
はかない人生を見届けた唯一の証人の告白は、有希子さんの死の動機について意外な証言となった。
 「あの子は、人に対して遠慮がすごいんですよね。そういうことを何回も感じたんですけど、なかでも一番
強く感じたの一昨年、章を総なめしてレコード大賞最優秀新人賞をとったときのことです」
 福田専務はあるエピソードの中の岡田有希子像を語りだした。これはのちほあるどふれる死の動機をも大
きく結びつくので、彼の言葉をそのまま伝えることにしよう。
「あのとき、吉川晃司とはりあったんです。賞をもらうと、歴代どの子もうれしそうな顔をするんですけど、あの
子はちっともうれしそうな顔をしない。なぜだろうって、あとで聞いたら、吉川晃司のファンに申し訳ないっていう
んです。
 新宿音楽祭のように2人そろってもらうと喜んでるんですけど、吉川とはりあって彼女だけしかもらえなかった
賞 これが2つあるんです。レコード大賞と銀座音楽祭。そのときはすごく悲しそうな顔をするんです。”場合
によっては吉川さんのほうが上なのに・・・”っていうんです」
 福田専務は有希子さんの異常なまでの遠慮と気に病む性格を物語るもうひとつの小さなエピソードを付
け加えた。
「あるとき名古屋のデパートの屋上でサイン会をやったんです。そしたら同じ日に堀ちえみがコンサートをやって
た。それをすごく気にしているんです。なんでそんなに気にしたのかいまもってわからないけど。もしかしたら、同
じレコード会社の堀ちえみのコンサートの日にサイン会で大勢集めちゃって申し訳ないとでも思っていたんでしょ
うか」


「誤算」が思いもしない「悲劇」へと彼女をつき進ませてしまった・・・

 そんな有希子さんが東京・南青山のマンションで手首を切り、ガス栓を開いて北青山病院に運び込まれた
という知らせを聞いて福田専務が病院に駆けつけたのは8日の午前11時45分だった。
「病院で”もうマンションには帰れないよ。事務所に帰るか、社長宅に行くか、どうする?”と山崎(付き人)を
通して聞いたら”事務所に帰りたい”っていうんです。それでタクシーを呼んで、2人を後ろに乗せて、ぼくは前に
乗ったんです。
 タクシーの中では終始無言で、シクシク泣いていました。それで事務所に着いて社長の部屋に入れて、そう
したらじっと落ち着いてきまして。”きのう何時ごろ帰った?”と聞いたら”10時ごろ”っていっていました。このこと
は溝口マネージャーが10時ごろ電話したらいたそうですからほんとです。”何時ごろ寝た?”って聞いたら”分か
らない”と。そこでぼくが”人生って長いし、いろんなことがあるけど、大人がいっぱいついているから、みんなで助
け合ってやるから、なにも心配しないでいいよ”といったら”うん”とうなずいたんです。
 それを見て、ああ、落ち着いたなあ、と思ったんです。そうして話しているうちに社長から電話がかかってきたん
です。で、ぼくがその電話にでているスキに・・・山崎がそのときいたんですけどね。魔がさしたんでしょうかね」
 魔がさした 有希子さんが死に神に魅入られた瞬間について福田専務はこういう表現を用いたあと、重い心
の扉を開くように、ゆっくりをした口調で、2度目の自殺の動機について語り始めた。
「あれは思うんだけど、最初のね、青山での自殺未遂と、ここで飛び降りたのは動機が違うような気がするんで
すけどね」
 それはなぜそう思うのか。
「うん、まあ、遺著から、話からね・・・2度目のときは、これは大変なことになってみんなに迷惑をかけちゃう、これ
で終わりだとおもったんじゃないかなあ。手首を切ったときも死のうと思っていたんでしょうけどね。遺著を用意して
たのはそれよりも・・・」
 自室で手首を切り、ガス栓を開いたとき、彼女の頭の中を占めていたのはおそらく愛する男性 峰岸徹のこと
だった。死を選ぶ理由をピンクの便箋2枚に18行にしたためピンクの封筒に入れて残していたという。その心境
について福田専務は言葉を続ける。
「うん、だからね、峰岸さんに最初に発見してほしかったんじゃないですかね、彼女はね」
 前日、彼女は「ロッキー4」の試写を見たりして夜10時には自室にいた。そしてガス栓を開いたと思われるのが
翌朝6時。その8時間の間に彼女を死に誘う何があったのか。福田専務は、
「そう、何かがあったんですね」
 としか語らない。ともあれその結果、死を決意した彼女は峰岸に最初に発見してほしいと思いながらガス栓を開
いた。がその計算ははずれ、自殺未遂騒ぎは自分の予想を超えて大きくなっていった。遺書は警察に渡り、マス
コミは集まってくる・・・福田専務とタクシーで事務所へ向かう彼女はしだいに落ち着きを取り戻していったが、冷静
になればなるほど前述の異常なまでに周囲に気をつかう性格が彼女をどんどん追いつめていった。峰岸のこと、
事務所にかけた多大な迷惑、両親、姉が受けた衝撃、そしておおくのファンへの思い・・・。第1の誤算が第2の思
いもしない悲劇に彼女を突き進ませてしまったのか。
 一橋大学名誉教授で日本心理センター所長の南博さんもこうみている。
「ガス自殺をはかった時点では死ぬ意思はなかったはず、一番好きな人に助けにきてほしい狂言だったといえます。
それが外部に一番もらしたくない遺書まで人手に渡ってことの重大さに気づく。この段階で彼女は初めて死を決意
したものと思われます」
 有希子さんはいま毎晩、福田専務の夢枕に立つという。その顔はいつも笑っているというのだが・・・




週刊平凡 昭和61年5月2日号

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